4 / 28
沈黙する親子
しおりを挟む
「いやだ」と否定する言葉に対し、普段なら怒りをあらわにするコイツが首を振って薄い笑みを浮かべている。
「凪、殴られたくなかったら出て来て一緒に外へ出るんだ」
最初よりも穏やかな言い方で再度呼び掛けた。
「.........」
一時の沈黙が流れ、カタッと静かに襖が開いて幼い僕が顔を出す。
正直言って顔が汚く見える。風呂には一ヶ月に一回くらいしか入れて貰えていなかったからだろう。
「よし、やっと出て来な。外に出て車に乗るんだ」
「ど、何処に行くの?」
「ファミレスに飯を食べに行くだけだ。今日は何を食べても良いぞ」
「本当に?」
「ああ、本当だ。早くしろ」
コイツと二人で外食をするのは、暴力が始まる以前もあったかも知れないが余り記憶に無い。
幼い僕は納得の行かない顔をしながらも、暴力を振るわれるのが恐かったのだろう、コイツの言う通りに外の駐車場に移動した。
当然だけれど僕は二人に着いていく。
金が無かったのか自家用車は錆びれてオンボロを絵に描いたようだった。
幼い僕は助手席に座り、幽体の僕は後部座席に座る。
ファミレスに着くまでのあいだ幼い僕はずっと俯いたままで、コイツも一切口を開かず、親子二人は一言も口を聞かなかった。
なんて哀れで寂しい親子関係なのだろう...
30分ほどでファミレスに着き二人は黙ったまま席に座った。
コイツがメニューを手に取り幼い僕に差し出す。
「凪、好きな物を選べ」
幼い僕はメニューを広げてお子様ランチとハンバーグを見比べ、1分ほど迷ったあとハンバーグを指さした。
「何だ、色々あるのにハンバーグか?」
そもそも6歳の子供にファミレスのメニューを見せても選ぶのは大体決まっているだろうに...なんだコイツは。
「これがいい」
幼い僕は、俯いたまま頑なにハンバーグを指さしていた。
注文した料理が届き二人は食べ始めたが、相変わらず互いに何も語らず沈黙したままだった。
先にコイツが食べ終わり、幼い僕が食べている様子を黙って眺めている。
ここで幽体の僕はあることに気付く。
顔こそ豹変してしまっていたが、幼い僕を眺めるコイツの目が、表情が、僕の記憶に微かに残っている優しかった頃の父親になっていたのだ。
俯いたままの幼い僕はそれに気付かない。
幽体の僕はこのあと自分の身に起こる出来事を知っている。だからコイツの見せた目と表情の意味が分からず動揺した。
食べ終わるとコイツが話しかける。
「凪、美味かったか?」
「...うん」
幼い僕は俯いたまま頷く。
二人はファミレスを出て、季節的に冷えている車内に乗り込んだ。
「凪、殴られたくなかったら出て来て一緒に外へ出るんだ」
最初よりも穏やかな言い方で再度呼び掛けた。
「.........」
一時の沈黙が流れ、カタッと静かに襖が開いて幼い僕が顔を出す。
正直言って顔が汚く見える。風呂には一ヶ月に一回くらいしか入れて貰えていなかったからだろう。
「よし、やっと出て来な。外に出て車に乗るんだ」
「ど、何処に行くの?」
「ファミレスに飯を食べに行くだけだ。今日は何を食べても良いぞ」
「本当に?」
「ああ、本当だ。早くしろ」
コイツと二人で外食をするのは、暴力が始まる以前もあったかも知れないが余り記憶に無い。
幼い僕は納得の行かない顔をしながらも、暴力を振るわれるのが恐かったのだろう、コイツの言う通りに外の駐車場に移動した。
当然だけれど僕は二人に着いていく。
金が無かったのか自家用車は錆びれてオンボロを絵に描いたようだった。
幼い僕は助手席に座り、幽体の僕は後部座席に座る。
ファミレスに着くまでのあいだ幼い僕はずっと俯いたままで、コイツも一切口を開かず、親子二人は一言も口を聞かなかった。
なんて哀れで寂しい親子関係なのだろう...
30分ほどでファミレスに着き二人は黙ったまま席に座った。
コイツがメニューを手に取り幼い僕に差し出す。
「凪、好きな物を選べ」
幼い僕はメニューを広げてお子様ランチとハンバーグを見比べ、1分ほど迷ったあとハンバーグを指さした。
「何だ、色々あるのにハンバーグか?」
そもそも6歳の子供にファミレスのメニューを見せても選ぶのは大体決まっているだろうに...なんだコイツは。
「これがいい」
幼い僕は、俯いたまま頑なにハンバーグを指さしていた。
注文した料理が届き二人は食べ始めたが、相変わらず互いに何も語らず沈黙したままだった。
先にコイツが食べ終わり、幼い僕が食べている様子を黙って眺めている。
ここで幽体の僕はあることに気付く。
顔こそ豹変してしまっていたが、幼い僕を眺めるコイツの目が、表情が、僕の記憶に微かに残っている優しかった頃の父親になっていたのだ。
俯いたままの幼い僕はそれに気付かない。
幽体の僕はこのあと自分の身に起こる出来事を知っている。だからコイツの見せた目と表情の意味が分からず動揺した。
食べ終わるとコイツが話しかける。
「凪、美味かったか?」
「...うん」
幼い僕は俯いたまま頷く。
二人はファミレスを出て、季節的に冷えている車内に乗り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる