夢中の少女 第一章

流川おるたな

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暗い草原

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 光球に両手を伸ばしてそっと包み込む。
 やはり光球は「カッ!」と閃光を放ち、僕は眩しさで目を瞑り一瞬意識が遠のく。

 しかし、ここでは前回同様とはならず瞑っていた目を開くと、僕は広大な草原に立っていた。

 風が嵐のように強く吹き、空はどんよりとした雲で覆われ辺りは薄暗い。

 強い風で靡く草の音が「ザワザワ」と聴こえ心が落ち着く環境のはずなのに何故か落ち着かない...

 身体も幽体じゃないような気がする。

 内心穏やかでない僕がその場に突っ立ったままでいると、目の前にこちらへゆっくり歩いて来る人影が視界に入った。

「...彼女なのか?...」

 僕は思ったことを口に出してそう呟く。
 
 普通であれば人が近づくと顔がハッキリ分かりそうなものだが、その人影の顔は暗い影を落としたまま輪郭がかろうじて認識できる程度だった。

 夢の中でしか会ったことの無い少女であることだけは理解できる...

 その少女の口元が歪んで笑みを浮かべ、良く聞いていないと聞こえないようなか細い声で言う。


「久しぶり、って訳でも無さそうね...」

「や、やあ...」

 確かに彼女とは「久しぶり」というわけでは無い。過去へ飛ばされる直前に夢の中で会ったばかりだ。

 あれ?、僕が今居るこの世界は...
 夢の中なのか?それとも光球に飛ばされた現実世界?

「貴方、父親のことは許せたの?」

「えっ!?」

 この少女は僕が過去に行ったことを知っているのだろうか?...

「許せたかどうかは分からないけど、少しは理解できたような気がする...」

「人間なのだから仕方が無いわよね。でも、良かったんじゃないかしら」

 顔がハッキリしないため、表情からは言葉の意図が読み取れない。
 本当に「仕方が無くて」「良かった」のだろうか...

 それより、今なら少女の名を訊けるかも知れない。

「何度も会っているのに、お互い名前すら知らないよね?」
 
「そう...な...ども...あ...い...にね」


 なんだ!?
 少女の声が途切れ途切れに聞こえ、笑っているような顔が徐々に透けて行く。

 不味い、間に合わないかも!?

「君の名を教えて欲しいんだ!」

 焦りで大声を出してしまったが、少女の表情は変わらないように見える。

「わ...し...まえ..............」

 最後まで聞こえず、口元に集中して読み取ろうとしたけれど、残念ながら今回も少女の名を訊き出すことは出来なかった。

 彼女が完全に消えてしまったあと、今度は僕の身体が地面からフワッと浮き、またもや幽体に戻った感覚がした。
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