夢中の少女 第一章

流川おるたな

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目を離さない

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 結局、小学6年生で迎えたクリスマスの日から母は帰らず、捜索も行われたのだが見つから無かった。

 物語は僕が少女と会話をした世界から強制的に飛ばされた母の失踪当日の朝に戻る。

 奇跡的に母の失踪の真相を知る機会を与えられたのだから、何としてでも真相を突き止めなければならない。
 

 洗濯機から洗濯物を取り出す母の後ろ姿を眺めている17歳で幽体の僕。

 この日の天気予報では雪。母は洗い立ての洗濯物を外には干さず、風呂場の壁につっかえ棒を付け、そこへ鼻歌混じりに干していった。

 母が洗濯物を風呂場に干していたことは父に訊いて覚えている。

 失踪事件から5年ほど経っているが、未だに母が家から居なくなった時間帯は不明のままだ。
 僕は母からとにかく目を離さずに行動する。

「さぁ!次は家の中を綺麗にしなきゃね」

 洗濯物を干し終わった母はそう言って、休む事なく家の掃除を始めた。

 居間の押し入れから掃除機を取り出し、奥にある父と母の寝室からかけていく。

「手伝えなくてごめん...」

 せかせかと動く姿を浮いてただ眺めている僕は、申し訳無い気持ちになりボソッとつぶやいた。

 もう慣れてしまったけれど、当然、幽体の僕が発する声は届かない...

 母は寝室の掃除機がけを機敏な動きで一通り済ますと、流れるように隣りにある僕の部屋へ移動する。

「小学生の男の子なのに凪の部屋は相変わらず整理整頓されてるわねぇ」

 近くに本人がいるとも知らずに褒めてくれて嬉しくもあり、少し気恥ずかしくもあった。
 しかし自分で言うのも何だが、僕は17歳という年齢に達するまで一般的な反抗期も無く、学校の成績は優秀で、休みの日には畑仕事を手伝うできた息子なのである。
 
 それもこれも大好きな父と母に好かれたい一心で行動して来た結果なのだが...

「よ~し!凪の部屋はこれでお終い。あとでクリスマスカードにメッセージを書かないと」

 母の言ったクリスマスカードは、今でも僕の机の中に仕舞ってある。
 なんせあれは母が僕に残してくれた最後のメッセージなのだから...

 クリスマスの翌日に父から訊いた話では、あのベッドのプレゼントは母が置いてくれたのだとか。
 当時は折角もらったプレゼントのゲーム機で遊んでだのは正月になってしまったけれど...

 台所、洗濯場、廊下の順で回って行き、最後に居間を丁寧に済ませて掃除を押し入れに戻した。

「ふ~、ちょっとお茶でも飲んで休憩しようかな」

 寒いのに動いて額に滲む汗をエプロンで拭きながらそう言ったあと、母がお茶を飲み始めた時の時刻は午前9時くらいだった。
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