28 / 28
第一章 最終話
しおりを挟む
いきなりの大声に母と僕が同時に自己防衛反応を起こし身体をビクッとさせる。
雪の降り積もる静まり返った状況で、視覚に入っていない人の声が唐突に響けば誰だって驚く筈だ...
母が声に気を取られ、トイレの窓を開けっ放しにして後ろを振り返り玄関へ向かう。
先回りして声の主を確かめねば!
緊迫するこの場面で判断を間違うことは許されない。僕は自分の頭の回転に自信を持っているわけではないが、とにかく短い時間で必至に考えた結果、母に張り付く作戦を急遽中断し、母が声の主と接触する前に正体を突き止めることにした。
普通の人間ならば音を立てないよう慎重に動くところだけど、幽体の姿は普通の人間の目では認識出来ないし、浮遊状態なので足音がすることもない。まぁ物理的な物に触れることは元々不可能なのだが。
それはともかく、現在の状態の利を生かし、庭を通って玄関に向かいスーッと素早く移動する。
遠目に見て玄関の前に人が立って居るのがハッキリと分かった。
インパクトとのある紺色の制服を着ているその風貌は誰から見ても警察官だと直ぐに判断するだろう。
僕は警察官の顔を確かめるため躊躇せず更に近づき、その顔を見て誰なのかが分かり驚愕して思わず呟く...
「...あの時の警察官...」
この人は母の失踪事件当日の夜、家を訪れた二人の警察官のうちの一人でもちろん顔はしっかりと覚えている。
父と僕が居間で事情聴取を受け、事件当日の翌日からもずっと献身的に接してくれたあのベテラン警察官だった。
名前は確か、中之島さんだったか...
しかし何でこの人が僕の家に来てるんだ!?
家に来たのは事件当日の夜に若い警察官と訪れたのが初めてでは無かったのか!?
僕の思考速度は急速に遅くなりドロドロとした黒い血が、自身の血管に流れる不気味な感覚に襲われたのだった。
「こんなところへどなたでしょうか?」
母が玄関の内側から警戒して戸を開けずに尋ねた。
中之島さんが特に表情を変えずに答える。
「羽柴署所属警官の中之島と云います。実はある事件捜査のためにこの近辺を訪問していまして...よろしければご協力をお願いしたいのですが?」
「...............」
相手が警察官を名乗っているとはいえ、母は直ぐには戸を開けず考えているようだ。
それにしても、当時この地域で事件があったなんて聞いた事も見た事も記憶がない。そりゃ世の中には新聞記事に出来なかったり、掲載するほどでも無いような事件は多数存在するだろうけど...
「...分かりました。いま戸を開けますので」
母は中之島さんの言葉を信じ、玄関の戸を開けてしまったのだった...
夢中の少女 第一章 完
雪の降り積もる静まり返った状況で、視覚に入っていない人の声が唐突に響けば誰だって驚く筈だ...
母が声に気を取られ、トイレの窓を開けっ放しにして後ろを振り返り玄関へ向かう。
先回りして声の主を確かめねば!
緊迫するこの場面で判断を間違うことは許されない。僕は自分の頭の回転に自信を持っているわけではないが、とにかく短い時間で必至に考えた結果、母に張り付く作戦を急遽中断し、母が声の主と接触する前に正体を突き止めることにした。
普通の人間ならば音を立てないよう慎重に動くところだけど、幽体の姿は普通の人間の目では認識出来ないし、浮遊状態なので足音がすることもない。まぁ物理的な物に触れることは元々不可能なのだが。
それはともかく、現在の状態の利を生かし、庭を通って玄関に向かいスーッと素早く移動する。
遠目に見て玄関の前に人が立って居るのがハッキリと分かった。
インパクトとのある紺色の制服を着ているその風貌は誰から見ても警察官だと直ぐに判断するだろう。
僕は警察官の顔を確かめるため躊躇せず更に近づき、その顔を見て誰なのかが分かり驚愕して思わず呟く...
「...あの時の警察官...」
この人は母の失踪事件当日の夜、家を訪れた二人の警察官のうちの一人でもちろん顔はしっかりと覚えている。
父と僕が居間で事情聴取を受け、事件当日の翌日からもずっと献身的に接してくれたあのベテラン警察官だった。
名前は確か、中之島さんだったか...
しかし何でこの人が僕の家に来てるんだ!?
家に来たのは事件当日の夜に若い警察官と訪れたのが初めてでは無かったのか!?
僕の思考速度は急速に遅くなりドロドロとした黒い血が、自身の血管に流れる不気味な感覚に襲われたのだった。
「こんなところへどなたでしょうか?」
母が玄関の内側から警戒して戸を開けずに尋ねた。
中之島さんが特に表情を変えずに答える。
「羽柴署所属警官の中之島と云います。実はある事件捜査のためにこの近辺を訪問していまして...よろしければご協力をお願いしたいのですが?」
「...............」
相手が警察官を名乗っているとはいえ、母は直ぐには戸を開けず考えているようだ。
それにしても、当時この地域で事件があったなんて聞いた事も見た事も記憶がない。そりゃ世の中には新聞記事に出来なかったり、掲載するほどでも無いような事件は多数存在するだろうけど...
「...分かりました。いま戸を開けますので」
母は中之島さんの言葉を信じ、玄関の戸を開けてしまったのだった...
夢中の少女 第一章 完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる