夢中の少女 第一章

流川おるたな

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第一章 最終話

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 いきなりの大声に母と僕が同時に自己防衛反応を起こし身体をビクッとさせる。

 雪の降り積もる静まり返った状況で、視覚に入っていない人の声が唐突に響けば誰だって驚く筈だ...

 母が声に気を取られ、トイレの窓を開けっ放しにして後ろを振り返り玄関へ向かう。

 先回りして声の主を確かめねば!
 
 緊迫するこの場面で判断を間違うことは許されない。僕は自分の頭の回転に自信を持っているわけではないが、とにかく短い時間で必至に考えた結果、母に張り付く作戦を急遽中断し、母が声の主と接触する前に正体を突き止めることにした。

 普通の人間ならば音を立てないよう慎重に動くところだけど、幽体の姿は普通の人間の目では認識出来ないし、浮遊状態なので足音がすることもない。まぁ物理的な物に触れることは元々不可能なのだが。
 
 それはともかく、現在の状態の利を生かし、庭を通って玄関に向かいスーッと素早く移動する。

 遠目に見て玄関の前に人が立って居るのがハッキリと分かった。
 
 インパクトとのある紺色の制服を着ているその風貌は誰から見ても警察官だと直ぐに判断するだろう。

 僕は警察官の顔を確かめるため躊躇せず更に近づき、その顔を見て誰なのかが分かり驚愕して思わず呟く...

「...あの時の警察官...」

 この人は母の失踪事件当日の夜、家を訪れた二人の警察官のうちの一人でもちろん顔はしっかりと覚えている。
 父と僕が居間で事情聴取を受け、事件当日の翌日からもずっと献身的に接してくれたあのベテラン警察官だった。

 名前は確か、中之島さんだったか...

 しかし何でこの人が僕の家に来てるんだ!?
 家に来たのは事件当日の夜に若い警察官と訪れたのが初めてでは無かったのか!?
 
 僕の思考速度は急速に遅くなりドロドロとした黒い血が、自身の血管に流れる不気味な感覚に襲われたのだった。

「こんなところへどなたでしょうか?」

 母が玄関の内側から警戒して戸を開けずに尋ねた。
 中之島さんが特に表情を変えずに答える。

「羽柴署所属警官の中之島と云います。実はある事件捜査のためにこの近辺を訪問していまして...よろしければご協力をお願いしたいのですが?」

「...............」

 相手が警察官を名乗っているとはいえ、母は直ぐには戸を開けず考えているようだ。

 それにしても、当時この地域で事件があったなんて聞いた事も見た事も記憶がない。そりゃ世の中には新聞記事に出来なかったり、掲載するほどでも無いような事件は多数存在するだろうけど...

「...分かりました。いま戸を開けますので」

 母は中之島さんの言葉を信じ、玄関の戸を開けてしまったのだった...



夢中の少女 第一章 完
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