ギャペラ～獣の世界に落ちて～

未知

第六話

 ぐっすりと眠ってしまったケイ。
 時折尻尾の先ががパタパタとリズミカルに動いている姿をシルヴァはベッドの端に座りながら見ていた。

｢……無防備だな｣

 ケイの頬を手の甲でそっと撫でるが、耳がピクリと少し反応するだけで起きる気配はない。

 まぁ病み上がりだからしょうがないのだろうが、それにしても体力が無さすぎる。
 まさかこの程度で音を上げるとは思っておらず、本当はこの先の町へ向かう予定が急遽、この宿に泊まることにした。

 それにしても彼の容姿はまた珍しい。
 二種類のギャペラが混ざり合っている。
 しかも彼が使う言葉に服装はまたあの男が好きそうな研究対象だと、とある男の顔が思い浮かんだ。

 だが、

｢取られてなるものか。
折角俺が見つけたと言うのに……｣

 そう言ってケイの髪の毛に鼻先を付け、匂いをクンと嗅いだ。

｢お前は美しい……｣

 ケイを拾って初めて顔を見た瞬間、自分の好みだと一目惚れしてしまった。

 言葉は分からないが反抗的な癖に律儀な所もまた可愛い。

 言葉は理解出来ずとも彼の言っている事は何となく分かってしまう。

 たった2~3日前に知り合ったばかりなのにこんなにも手放したく無いと思ってしまった。

 シルヴァは暫くケイの寝顔を堪能したあと立ち上がり、部屋を出て鍵を閉めたあと町へ散策へ出掛けた。 

 外に出てみたものの人も少なく家が点々とあるだけで目新しいものは何もない。
 それに元々人も少ないからか、余所者のシルヴァは目立つらしく、チラチラと視線を感じる。
どうも居心地が悪く結局すぐに宿に戻った。

 幸いケイは眠りが深いようで起こす事はなかった。