セカンドライフを異世界で

くるくる

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3話 冒険者ギルド

 つけてきていたのはシザーさんだった。

 「お前こそ、1人でこんなとこきて何するんだ?」
  悪びれもせずに言う。
 「質問に質問で返さないで下さいよ。あなたに関係ないです」
 「見られたら困るのか?」
  …はぁ、この人は何で私に文句つけたがるんだろう。
 「困りませんけど、見たくない人に見られたら申し訳ないので」
  ため息を吐きながら言って、構わずに始める。

  ボックスから出したのはマルコを襲ったウェアウルフと囮にしたウサギだ。
 解体なんてどこでしたらいいか分からなかったし、女性や子供はみたくないだろう。だからここに来たのだ、お金に変えるにしても解体しなきゃはじまらない。シザーさんは考え込みながらこちらを見ていた。

  始める前に縄を出して木と木を結び、干せるようにしておく。ウェアウルフの皮を剥ぎにかかると近くに来て見始める。

 「ウェアウルフ…やっぱりか。マルコはこれに襲われてたのか?」
 「そうです」
 「…どうやって仕留めた」
  また質問攻めか。
 「背後から、そのウサギを囮にして気を逸らせて弓で仕留めました」
 「一撃か…」
  頭部の矢の後を見ながら呟く。
 「狙ったのか?」
 「狙いましたよ、一撃で仕留めないとマルコが危なかったので」
 「…それにしても手際が良いな…」

  話しながらも解体は進み、皮を剥ぎ終わる。そこでふと思いついて聞いてみる。

 「ウェアウルフの討伐部位ってどこですか?後、コカトリスとウルフの」
 「ウェアウルフとウルフはここの牙、コカトリスは尾羽だ」

  お礼を言って牙を折ろうとすると止められる。

 「待て、ダガーじゃ刃こぼれするかもしれねえ、変われ」
  そう言うと自分の黒い短剣を出してキレイに折ってくれた。それを袖で拭って私の手に乗せる。
 「ありがとうございます…」
 「ウェアウルフの牙は防御の効果があるアクセサリの素材になる。持ってねえなら加工した方が売るより得だ」
  ご丁寧に解説まで…ちょっと呆けていると、皮を剥いだウェアウルフを割き魔石を取り出し、残った体を勢いをつけて遠~~くへ投げてしまった。そして魔石を洗って手渡してくれる。
 「…ありがとうございます」

  呆けていられない、洗わなきゃ。川で洗い始めるとまたもや声がかかる。

 「洗うならこれで洗え」
  渡されたのは楕円形で抹茶色をした実。大きいアーモンドみたいな手触りだ。私の手のひらには収まらないくらい大きい。解析してみると

<解析>  チコの実 洗剤

  これが洗剤…大きいのでどうやって洗おうか迷っていると
「ククッ…小さい手だな…ほら」
  短剣で割って持ちやすくしてくれる。
 「…ありがとう、ございます」
  ついタメ口になりかけ、変なとこで区切ってしまった。

  用意しておいた縄に干して、ウサギに取り掛かると、今度は干したウェアウルフの皮に向かって風を送っている。魔法だろうか。…この世界で初めて見る魔法が皮を乾かす光景とはね…。

  その後シザーさんはウサギの皮も乾かし、川で魚を捕り(素手で)、火をおこし(魔法で)、枝を折って作った串で塩焼きにしてごちそうしてくれた。…おいしい、おいしいが、今、私の頭の中はクエスチョンマークだらけ。だが聞くにも聞けず謎は深まるばかりだった。

  街に帰ってきた時ちょうど17の刻の鐘が鳴った。シザーさんと並んで歩いている。リーチの差がありすぎて大変だと思うのだが、彼が私に合わせてゆっくり歩いてくれている。…いい人なのかな、ホントは。長い足を見ていたら話しかけられる。

 「売る素材はあるのか?」
 「はい」
 「ならギルドで売った方が良い。この街の店は素材持ち込みで作るのが基本だからな」
 「冒険者じゃなくても買い取ってくれるんですか?」
 「ああ、大丈夫だ。ただギルドに討伐依頼が出ていた魔物だった場合はかなり違う、報酬は冒険者じゃないと貰えないからな」

  一拍置いて続ける。

 「…お前は冒険者登録した方が良いかもな」
 「何でです?」
 「カードが身分証明書になる。ギルドのあるところで、だけどな。それに、カードの裏に任意で自分のステータスや持ってる魔法、スキルを呼び出せる」

  こういう風にな、と言ってカードを出して見せてくれる。裏には火魔法だけがかかれていた。

 「俺は他の魔法も使えるが、これ1つだけを見せることもできる」

  なるほど、これは便利かも。でも…

「…何か制約はあるんですか?」
  魔法が使えないのだ、弓はあるが戦闘は避けたい。自分のペースで出来る依頼だけ、とかならいいんだけど、流石にね…
「依頼失敗が何度もあるとか、目に余るような悪さすればカードは失効だし罰則もあるけどな、後は別にねえよ。ま、ガラの悪い奴もいるが心配すんな」

  ユルッ!…神様があんな感じだからかな…影響されるのかな?っていうか、ガラの悪い奴って…いや、やめとこう。良い人みたいだし。

 「自分のペースでできるなら入りたいです」
  収入がないと不安だし、と思ってそう答えると
「そうか、じゃ行くぞ」
  とさっさと歩き出す。…はやっ!さっきの気遣いはどこに?走って追いつこうとするが差が縮まない。
 「シザーさん!」
  思わず大声で呼ぶとピタッと止まって戻って来た。いや、別に戻ってこなくても…しまった、場所も分かってるんだし大声で呼ばなくても良かったのに!

 「悪い、ついいつもの速さになっちまった」
  …いつもあんなに速いの?私の走る速度と同じ…
「いえ、こちらこそすみません、場所も分かってるのに大声で呼んでしまって…」
 「いや、分かってりゃいいってもんじゃねえ。行こうぜ」
  今度はゆっくり歩いてくれる。…こっちは速足だけど。

 「セクロさんはどうですか?お食事とかはまだ無理ですか?」
 「俺も長くはいなかったからな…でも掠れた声で腹が減った!って騒いでたから明日には元通りだろ」

  凄い生命力。でもこれが前の世界との大きな違いだよね。ポーションや魔法であっという間に回復できる。いや、それでも体力は同じなのでは…










 2人でギルドに入ると酒場で飲んでいた冒険者たちがざわつく。やっぱり子供が何の用だ!って感じかな?でもシザーさんも目立つよね。一緒に歩いていると私1人ではなく、2人が見られている気がした。

  ギルドの中はあまり広くはないが、造りや雰囲気は想像通り、というか望み通りだ。入って正面にカウンターがあり3つの窓口、右奥に酒場、カウンター右に掲示板、左は階段と奥に続く廊下。ちょっとワクワクする。

 「おい、登録頼む」
  シザーは1番左の窓口に声をかける。そこに居たのは耳に特徴のあるサラッサラの銀髪の美女だった。身長も170cmはあるだろう。…エルフさんだ。

  エルフさんキタ!宿屋に白猫ちゃん、ギルドにエルフさん。素晴らしい!
ほわ~っとしているとシザーさんに覗き込まれる。

 「おい、大丈夫か?ぼやっとして」
  ハッ!いけない、また浸ってしまった。慌てて返事する。
 「だ、大丈夫です。お願いします」
 「うふふ、エルフは初めてですか?」
  お姉さんが言う。声までキレイだ。
 「すみません、綺麗だったのでつい」
  正直に言うとお姉さんは驚いていた。
 「ありがとうございます、私はサラといいます。よろしくお願いしますね」
 「ナツメです、こちらこそよろしくお願いします」
  ペコリと頭を下げる。
 「じゃあこれに記入をお願いします」
  と紙を渡される。

  ちょっとカウンターが高いが書けないこともない。”秘儀つま先立ち”で書いていると酒場の方からたくさんの視線を感じる。…見られてる。笑われてはいないが、ひそひそと話し声がする。嫌だな…と思っていたらピタッと声が止んで静かになる。

 「?」

  不思議に思って見るとシザーさんが物凄い眼力で睨んでいた…怖いです。でも、いい気分ではなかったので素直にありがたかった。

 「書きました」
  言って渡すと年齢を見たのだろう、確認していたサラさんが目を見開いて紙と私を交互に見る。でもさすがは受付嬢、すぐに平静に戻る。今度は水晶玉が出てきた。魔石を加工してあるようだ。
 「ではこれに手を乗せてください」
 「はい」
  10秒ほど乗せていると光って消えた。
 「もういいですよ」
  手をどけるとサラさんが水晶玉にカードをかざす。両方が一瞬光ってから消えた。
 「登録はこれで完了です。続けて説明に入ってもよろしいですか?」
 「はい、お願いします」
  カードを受け取って説明を聞く。

  カードのサイズは車の免許証より一回り大きくて、厚さも3ミリほどある。厚い紙に見えるが全体が透明な何かでコーティングされている。四隅に小さな魔石が埋め込まれていた。

 「ランクはF~A、S,SSの8段階に分かれています。依頼を達成した数や内容などに応じてランクアップします。依頼を受けるときは掲示板から剥がして中央の窓口へ持ってきてください、窓口を通さなければ依頼達成は認められません。自分のランクよりも1段階上の依頼までは受けられますが、明らかに達成が難しいと思われる場合は受けられません。ここまではよろしいですか?」

  サラさんに聞かれ、
 「大丈夫です」
  と答えると、続けて口を開いたのはシザーさんだった。
 「後は俺が大体話したからいい、ナツメ、ちょっと来い」
  と言って掲示板の方へ行く。

  今、初めて名前呼ばれた…ずっとお前、とかこいつ、だったのに。ちょっと嬉しい。おい!ともう一度声をかけられてついて行くと、1枚の依頼書を剥がして渡される。
 「とりあえずこれだ」
  それはEランクの依頼で、内容はウルフ討伐、1体に付き500G、2体~10体。
 「FからEはすぐ上がれる、ウルフのだけで大丈夫かもしれねえが後1つ2つやっといたら確実だ。で、Eにあげてからこれだ」

  シザーさんが指さしたのはDランクのウェアウルフ討伐依頼だ。バンテの森のウェアウルフに限定されていて、緊急の赤い文字が目立っている。

 「バンテの森…」
 「マルコが襲われたのがバンテの森だ」

  …もしかして考えてくれたのかな。損しないように、スキルやステータスをもう疑われないように。つい数時間前だ、ウルフの討伐部位を聞いたのは。やっぱりこの人って、口は悪いけど超良い人だ…

「どうだ?なんかあったか?」
  聞かれて思考を戻す。
 「はい、Fランクの薬草採取と、Eランクのコカトリスの肉調達ならすぐ達成できます」
  薬草は5本。コカトリスは肉の状態によって報酬が変わるらしい。
 「これだな、…よし、戻るぞ」
  依頼書を剥がして渡してくれた。

  中央の受付にサラさんがいた。カウンターにFランクとEランクの3枚の依頼書を出す。シザーは横に付いていてくれる。

 「これお願いします」
 「はい、カードもお借りできますか?」
  カードを出すと、依頼書に目を通す。
 「すぐに達成するものはありますか?」
 「全部すぐに達成できます。…どこに出したらいいですか?」
 「ではこちらにお願いします」

  案内されたのは、掲示板の近くからカウンターの中に入ってすぐのスペースだった。壁際にいくつかイスが並んでいて、中央に大きめのテーブルがある。
  そこに薬草、コカトリスの肉、ウルフの牙4本を出す。肉をまるまるドン、と出した時、サラさんも覗いていた冒険者も、シザーさんまで驚いている。…確かまるまる綺麗に皮を剥くのは難しいんだっけ。
  我に返ったサラさんが確認していく。1度離れてすぐに戻って来た。

 「薬草採取は200G、ウルフの牙は4体分で2,000G、…コカトリスの肉は一番良い状態ですので3,000G、全部で5,200Gです。これでランクアップしてEランクです。」
  報酬とカードを受け取り、今度はDランクのウェアウルフの討伐依頼とカード、討伐部位である牙を出す。サラさんが何か言おうとした瞬間、シザーさんが先手を取った。
 「これはナツメ1人で倒した。俺もモノは確認した。頭を弓で一発だ。まだ信じられなかったらマルコに聞いてみるといい。現場に居たんだからな。…ナツメ、買い取って欲しい物があるんだろ?それも出せ」
 「…」
  サラさんはもう何も言わなかった。納得してくれたのだろうか。

  シザーさんの言葉に従って、魔石とコカトリスのトサカ、羽根、尾羽。ウルフの毛皮を出す。
 「これ、お願いします。あの、ウェアウルフの牙は返してもらえますか?」
 「かしこまりました、他はどうしますか?」
 「他はお願いします」
 「はい。では少々お待ちください」









 ギルドを出たのはもうすぐ19の刻になる頃だった。

  行くぞ、と言われてついてきたのだが、どうやら宿屋に向かっているようだ。外はもう暗かった。ぽつぽつと街灯がある。裸電球の代わりに魔石がぶら下がっているだけの物だが。

  無言で歩き、宿屋の前に着く。今日のお礼を言わなくては、と思い話そうとしたら先を越された。

 「今日は悪かった」
  と謝るシザーさん。
 「…いえ、もういいんです。疑う気持ちも分かりますし。それより私の方が色々助けてもらいました。ギルドの事も、ウェアウルフの事も、何も知らなかったので本当に助かりました。ありがとうございます」
  と頭を下げると、いや、そんな別に、これ位…と口ごもっている。戸惑いと照れが伝わってきてこっちまで急に照れくさくなる。

  じゃあまた、と別れようとすると、暗がりから急に手が伸びてきてシザーさんの肩をガッ!とつかむ。
 「ひゃあ!」
  びっくりして声をあげると手の主が
「なぁ~にを2人でいちゃいちゃしてるのかな~?」
  と言って顔を出した。シザーさんは分かっていたのか全く驚かずに言い返す。
 「ロイ、その登場やめろ、ナツメがビビってんじゃねえか」
  …ホントだよ、ロイさん。
 「…今日会ってから、真っ先にビビらせたの自分だって忘れてない?」
  …そういえばそうでした。

 「ナツメちゃん、僕も疑う様な事言ってゴメンネ?それに本当にありがとう。父を助けてくれて。マルコを助けてくれて」
  ロイさんはそう言って深々と頭を下げる。
 「とんでもない、頭を上げてください。お2人とも助かって良かったです。お役に立ててホッとしました」
  正直に言うと、なんて謙虚なんだ!と目を輝かせている。そしておもむろに私の右手を取ると両手で包み込み、何だかキラッキラした目で言う。

 「ぜひ今度夕食をご馳走させてもらえませんか?」
 「あ、あの…」
  ど、どうしよう~、断ったら失礼かな。お礼って事なのかな。なら良いのかな。急な展開に焦っていると助け船が。
 「…離せ。戸惑ってんだろうが。飯なら今食おうぜ、ここで」
  ロイさんを引きはがして宿を指す。何故か今度はシザーさんに手を取られたままなのが気になる。
 「何でシザーが決めるのさ、それに…」
  と言い募るのを手で制し、
 「食わねえのか?じゃ、2人で食おうぜ」
  と手を引いて歩き出す。それを見たロイさんが騒ぐ。
 「僕に手を離させて自分が繋ぐってどういう事!?ちょっとシザー!」
  シザーさんはそれを無視して宿に入った。

  中に入ってカウンターの白猫ちゃんにこのまま食事すると伝え、食堂に行き席に着く。ちなみに白猫ちゃんはフィフィちゃんというらしい。可愛い名前!
  すると厨房から誰が出てきた。

 「!!」
  驚きで一瞬固まる。

  白猫だ、デカイ白猫が立って歩いてる…。もしかして獣人族?こんなに獣側に近い人もいるんだ…。さすがファンタジー異世界、アニメみたいだ。白猫さんの背は私より少し大きいだけだが、幅は2人分ありそうだった。ちょっと待って、フィフィちゃんも白猫だったよね?もしかして、親子?ホントに?確かに、目も毛の色も同じだけど…納得いかない…きっとお母さんが人に近い獣人族なんだ。それかハーフとか。
  ごちゃごちゃと考えていると白猫さんが喋った。

 「騒がしいと思ったらやっぱりお前らかにゃ~!」
  やっぱり語尾ににゃが付くんだ…
「邪魔してるぜ、いつもの頼む」
 「ライトさん、お邪魔してます、僕も同じの」
  ライトさん…ヘビーさんの方が…いえ、何でもありません。

 「分かったにゃ、そこのお嬢さんはどうするにゃ?こいつらと同じのは止めた方がいいにゃ」
 「おすすめはありますか?」
 「今日はいい魚が入ったから魚のソテーにすると良いにゃ」
 「じゃあそれでお願いします」
 「分かったにゃ」
  ライトさんは厨房に戻ろうとして振り向く。
 「…ロイ、親父さんもマルコも良かったにゃ」
 「ありがとうございます」

 「ねえ、今まで2人で何してたの?シザーも親父の顔見たらすぐどっか行ったし。ずっと一緒だったの?」
 「え」「あ?」
  同時に反応してしまって目が合う。サッと視線を逸らしたのはシザーさんで何故か耳が赤い。
 「…ギルドに行ってた」
  シザーが言う。
 「はい、あの、色々と教えてもらいまして…ギルドに登録したんです」
  私も付け足す。
 「…ふ~ん、色々ねえ?もしかして緊急の討伐依頼のやつ?でもあれDランクだったろ、どうやって?」
  聞かれてどう答えようか迷う。別に悪いことした訳じゃないんだけど。
 「…うるせえ」
 「シザーって分かりやすいよね、まあいいよ。後で聞くから」

  料理が運ばれてきた。…何そのでかい肉。ステーキだろうが、何グラムあるんだろう。見てるだけで胸やけしそう。いや、自分の魚に集中しよう。切り身になっていた魚はうっすらと黄色だった。黄色か…まあ、青とかよりはいいよね。思い切って一口食べると

 この味は…鮭だ!私の大好きな!色は違うが味はそっくりで皮の感じも似ていた。塩とハーブで味付けされている。おいしい!これが手に入れば色々料理が出来る!考えを巡らせながら黙々と食べているとシザーさんに覗き込まれる。

 「どうだ?うまいか?」
 「はい、とってもおいしいです。これなんていう魚ですか?」
 「それはサブルってやつだ、今日行った川の上流で獲れる」
 「竿で釣れます?」
 「でかいからな、折れないような竿なら…でも重いぞ、欲しいなら今度獲ってきてやる」
 「ホントですか?!じゃ、連れてってください!」
 「ああ、分かった、今度な」
 「はい!」
  やった!

 「…今日川に行ったんだ。2人で。へえ~?」
  ロイさんが左手でテーブルに頬杖をつき、右手の人差し指でトントンと音を立ててこちらを見ていた。

 「「あ」」
  今度は見事にハモった。

 「いや、俺はこいつに話があったから探してたんだ。そしたらこそっと街を出て行くのが見えたから…」
 「む!私はコソコソしてないです。足音も立てずに付いてきたのはシザーさんじゃないですか」
 「わざと足音を立てなかった訳じゃなくてだな…」
  言い合っているとロイさんが割って入る。
 「はいはい、仲良くなったのは分かったから。今日は帰ろう。ナツメちゃん、明日11の刻に家に来てくれる?親父が礼を言いたいって」
 「11の刻ですね、分かりました」









 2人を見送って部屋へ行く。私の部屋は2階の端だった。カギは金属のプレートで、小さな魔石が埋め込まれている。ドアノブに付いているのと対になっている様だ。

  部屋は6畳ほど、ベッドにサイドテーブル、タンス。簡素だが掃除の行き届いた部屋だった。

  さて、いよいよお風呂だ。お風呂は1階の奥にある。もう20の刻を半分回っているせいか、人はまばらだった。あまりゆっくりはできないが元々長風呂ではないので大丈夫だろう。

  脱衣所には木製のロッカーがあり、魔石を使ったカギが付いている。桶や石鹸、手拭いを持って入る。大きな湯船にたくさんの洗い場、日本の銭湯を思わせる雰囲気で何だかホッとする。髪や体を洗って湯船に入る。少し熱めのお湯が気持ちいい。ステータス画面で時間を確かめ、21の刻に間に合うように出る。

  部屋に戻ると急に眠気が襲ってくる。髪を乾かしてから寝たいがドライヤーもないし…仕方がない。長い髪をおさげにして紐で結んでベッドに倒れ込む。とにかく目まぐるしい1日だったが状況は好転している。そんな風に考えながら眠りに落ちた。
感想 12

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