セカンドライフを異世界で

くるくる

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20話 採掘

 翌日は予定通りに採掘することになった。昨日と同じく馬を置いて歩いて採掘場所まで向かう。途中休憩を挟んで2刻半ほどで目的地に着く。殺風景な岩場にぽっかりと開いた洞窟の入り口が見えた。ラウムリザードを討伐したからか、ここまではほとんど魔物に会わなかったが洞窟内は小さな赤マーカーや黄色マーカーが結構見える。

  薄暗い洞窟内を、ランプを手にしながら進む。赤マーカーのほとんどはラットで、黄色はコウモリらしい。

 「この辺で良いだろ」
 「そうだね」
  狭い通路から少し開けた場所で立ち止まった。
 「ナツメは見てても良いが、どうする?」
 「やる!」
  新しいスキルが手に入るかもしれないし。張り切って答えるとツルハシを渡される。
 「採掘は力が要るぞ、休み休みやれ」
 「うん、分かった」
 「じゃあナッちゃんはこの辺掘ってみて」
 「うん、ありがとう」

  採掘はシザーが言っていた通り力の要る作業だったが、思っていたより平気だった。レベルが上がったからか疲れにくくなった気がする。昨日も前のオーク討伐と同じくらい歩いたがあの時ほどの疲れはなかった。シザーとロイさんは慣れているのか早々と鉱石を見つけていた。私はなかなか見つけられなかったが、しばらく掘ってやっと最初の鉱石を見つけた時、電子音が響いた。獲得スキルは狙い通り採掘。時間がかかっただけに思わず小さくガッツポーズしてしまった。

 「やった!」
 「見つけたか?」
 「うん!採掘スキルも取れた!」
 「え!ナッちゃんのスキルって増えるの?」
 「うん、最初から持ってるのもあったけど、後から取ったのもあるよ」
 「そういや鞣し教えた時も、加工スキル取れたって言ってたな」
 「へえ~、じゃあこれから見つかりやすくなるかな」
 「だといいんだけど」
  答えるとシザーのお腹が鳴る。
 「腹減ったな…飯にしねえか?」
 「シザーって燃費悪いよね。朝からあんなにたくさん食べておいて、もうお腹減ったの?」
  ロイさんが呆れている。
 「うるせえ」
  いつもの一言を返してツルハシを置いた。

  採掘を再開していくつか見つけ、そろそろ終わろうとした時、今までと違う音がした。手ごたえも違う。シザーとロイさんも自分の採掘を止めて覗き込む。出てきたのは…

「オリハルコン…」
  ロイさんがと呟く。
 「え!」
  これがオリハルコン!?ホントにあるんだ!あ、解析!慌てて解析してみると本物のオリハルコンだ。…異世界バンザイ!
 「…まさかこれを掘り当てるなんてな」
 「やっぱり珍しいの?」
 「ああ、かなりな」
 「ここで出た事があるのは知ってたけど…いや~!ホントナッちゃんと居ると驚く事ばっかりだね!」
 「ここで出たってのは黙ってたほうが良いな」
 「だね。必要な時が来るまでボックスにしまっておくといいよ」
 「知れ渡るとマズイ?」
 「ああ、オリハルコンってのは、竜がいるような険しくて危ねえ場所にあるのがほとんどだ。だがここはちょっと腕に覚えのある奴ならすぐに来れる。…知れ渡ったらこの山は荒れてダメになる」
 「竜が倒せるくらい強くなったら堂々と使えるよ」
 「…もしかして2人なら使える?」
  私が聞くと顔を見合わせる。
 「…まあな。だがそれはナツメが掘ったんだから自分でしまっとけ」
 「そうだよ、僕たちにあげようなんて考えないで」
 「…うん、分かった」
  考えていた事がばれてしまった。彼らがそう言うならしまっておこう。いつか必要になる時が来るかもしれないし。











 翌朝野営地を発ち、バンテの森で少し採取をされてもらってから帰路についた。

  リグレスに着いたのは11の刻を過ぎたあたりだった。まずはギルドへ行って依頼達成の報告をする。カウンターに居たのはサラさんではなく、まだ慣れない感じの女の子で、さわやか笑顔のロイさんに赤くなっていた。

 「ではこちらが報酬になります。お疲れさまでした」
 「ありがとう」
  報酬を受け取る時手が触れ、女の子が分かりやすくビクッとした。その拍子に銀貨が転がって落ちる。
 「す、すみません!」
  慌ててカウンターから出てきて拾い、震える手でロイさんに渡す。
 「大丈夫だから気にしないで」
  優しく言ってニコッと微笑む。女の子はロイさんに見惚れている。絵に描くなら間違いなく瞳の中はハートだ。

  …王子だ、王子様がいる。シザーと私は少し下がって一部始終を見ていた。小声で話す。

 「ロイさんって、いつもあんな感じなの?」
 「…ああ、前に言ったろ?澄ましてやがるって」
 「別人みたい…そういえば、ポピーたちとご飯食べた時もあれに近かったね」
 「まあな。女はああいうのに弱いよな」
 「そういう人は多いだろうね」
 「…ナツメは?」
 「嫌いじゃないよ」
 「…」
  自分で聞いておいてちょっと不機嫌になる。
 「嫌いじゃないっていうだけ。…私は…」
  言いながら隣に立っているシザーの手を取って見上げる。
 「シザーが好き」
  耳の良いシザーにしか聞こえないくらい小さな声で囁く。ギルドで何言ってんだと心の片隅で思うが、シザーが微笑むのを見てどうでもよくなる。バカップル全開。
 「人に行かせておいていちゃつくなんてひどくない?」
  いつの間にかロイさんが目の前に立っている。
 「…もとはといえばお前の所為だ」
 「何でさ」
 「相変わらず澄ましてるからだ」
 「まだ仕事に慣れてないから優しく接しただけじゃないか」
 「ロイさん…もしかして自覚ない?」
 「いや、こいつは確信犯だ。ナツメと違ってな」
 「何でそこで私が出てくるの?私ロイさんみたいにモテないよ」
  そう言うと2人が顔を見合わせてから笑う。…またこれだ。
 「やっぱりナッちゃんが一番だね」
 「そうだな」
 「何が??」
 「何でもねえよ、親父さんは?」
 「ギルドの部屋に居るって、モーブさんも一緒だってさ」
 「丁度いいな。ほら、行くぞ」
  繋いだままだった手をシザーに引かれてマスターの部屋へ向かった…。











 マスターの部屋のドアをノックする。

 「…どなたです?今会議中なのですが」
  帰ってきたのはモーブさんの声だった。
 「ロイです。他の2人もいます。今回の討伐の件で話しておきたいことがあるのですが」
 「…どうぞ」
  一瞬間を置いて許可が出た。

 「オルト山で何かありましたか?」
  セクロさんの隣に移動し、席を空けてくれたモーブさんが聞く。
 「今回討伐したラウムリザードは3体、その内1体は他から来たやつだ」
 「確かですか?」
  モーブさんは冷静だ。
 「2つの群れが争っているのを見つけた。後から援軍が来たからな、そっちがオルト山にいた群れだろう」
 「…問題はどこから来たのか、そしてそこで何があったかですね」
 「まずはどこから来たか、だな?モーブ」
  セクロさんが目配せする。
 「はい、早急に調べますよ。近隣のギルドにも連絡します」
 「頼むぞ」
 「何か分かったら知らせます」
  シザーに言ってから私を見る。
 「話は変わりますが、ナツメさん。あなたの薬はとても評判が良くて、売り切れてしまったんですよ。材料は確保してありますので、早めに納品してもらえると助かります」
  笑顔のモーブさん。
 「分かりました。帰りに材料を貰いに行きます」
 「よろしくお願いします」

  モーブさんが出た後、一瞬静まり返る室内。破ったのはロイさん。

 「…へえ~!噂はホントだったんだね!モーブさんがねえ」
 「長い事一緒に居るがめったに見ねえ顔だったな」
 「あれを見りゃ周りが騒ぐのも分かるな」
  皆感心したように話す。前に言ってたモーブさんは笑わないって話かな?
 「初めて会った時から笑顔だったよ?優しいよね、モーブさん」
  片付けを手伝った時も、私の手や服が汚れないかとか、重たい物は自分が、とか休憩を取ってお茶を淹れてくれたりとか気を使ってくれた。自分も忙しいのに人を気遣える優しい人だと思ったのだ。だが私の言葉に誰も同意しなかった…。

  ギルドを後にした私たちは宿屋で昼食を取ってから鍛冶屋へ行った。食パン、パウンドケーキ、パイなどの型と泡だて器、一斗缶型燻製器を頼む。燻製器とパイの型、泡だて器は存在しないので伝えるのに苦労したが何とか頼むことに成功した。予想よりも多く鉱石が掘れたので欲張ってしまった。この鍛冶屋の主人、バースさんはドワーフと言う事もありかなり頑固で気難しいらしいが、私の顔を見ると文句を言わず引き受けてくれた。

 「バースさんがこんなにすんなりと引き受けてくれるなんて珍しいね~。しかもナッちゃんここ初めてじゃなかったんだね。びっくりしたよ」
  鍛冶屋を出るとロイさんが言った。
 「いつ来た?俺らが調査に行ってた時か?」
 「うん、クワが壊れてて直してもらいに来たの。それもセリさんの物だったから、引き受けてくれたのはセリさんのおかげ」
 「そんな事ないと思うけどな~。ねえ?シザー」
 「ああ、お前だからだ」
 「…そうかな?」
  首を傾げるとまた2人に笑われた。

  そのまま広場でロイさんと別れて我が家へ帰った。
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