異世界ライフは前途洋々

くるくる

文字の大きさ
2 / 213

1.目覚めたら異世界

 ドッシャーン!!

 「ひゃっ!」

  いつの間に眠ってしまったのか、爆音に驚いて飛び起きた私は目の前の光景に更に驚いた。

 「森…?何が…(ドッシャーン!!)…わわッ!」

  ひとり呟くが再びの爆音に身を竦める。と、さらっと顔の横に降りてきた髪が目に入った。

 「えっ…」

  ぎ、銀髪!?コレ私の髪!?

  触って確かめようとすると、ポツリと雫が銀色のアームに当たった。

  ・・・ナニコレ!!

  ガバッと全身を見る。

  ナニこの格好!!い、いや、とにかくこのままじゃマズイ。どこかで雨宿りしなきゃ!

  私は慌てて立ち上がり、凌げる場所を探すべく歩き始めた。




  運良くすぐに見つかった小さな洞窟に入ると、それを待っていたかのようなタイミングでドシャ降りになった。まさにゲリラ豪雨並みの降り方で、ここから身動き出来なくなってしまった。

  洞窟内は高さ2m、幅と奥行きは4、5mといったところ。足元もゴツゴツした岩なので休むには適していなかったが仕方がない。諦めて現状把握に入る事にする。

  何と言ってもまずは体だ。自分を隅々までチェックする。

  随分体が柔らかくなったがそれは置いといて・・・身長はたぶん同じ165㎝くらい。サラサラした綺麗な銀髪はポニーテールになっていて下ろせば結構なロングだ。顔は分からないが視力は良いらしい。眼鏡が無くても視えるなんて何年振りだろう。肌が白く、胸は大きくなった。おそらく95㎝はある。ウエストはかなり懐かしい・・・いや、それ以上の細さ、お尻もキュッと上がっていて足も長い。それに・・・何というか、全体的にむっちりしていて妙にいやらしい感じがする。どこのエロゲ・・・いや、つまり、私ものではない。

  そしてこの格好・・・。

 「何でビキニアーマー・・・」

  思わず呟く。

  そう、今の私の装備はビキニアーマーなのだ。全て光沢を放つ銀色の金属で出来ていて、所々金色の縁取りや装飾がある。腕と脚はアームとグリーブに覆われ、左腕には手甲がはめられているがお腹は丸出し。武器はない。

 「どうなってんの…夢…じゃない、よね………私、どうしたんだっけ?」

  目に映るものの鮮明さ、雨の冷たさ、木や葉、岩の感触、どれを取ってもとても夢には思えない。記憶を手繰ってみても電車に乗った辺りまでしか思い出せない。・・・いや、体に何だか物凄い衝撃を受けたような気がしないでもない・・・もしかして私、死んだのかな?




  藤堂晶とうどうあきら、39才、女。

  女手一つで育ててくれた母が随分前に他界したのでもう家族は居ない。結婚寸前までいった彼と別れてから恋人も居ない。そう言うと寂しい人だと思われがちだが私は子供の頃からひとりが好きだった。大人になってもそれは変わらず、おひとり様で何処へだって行く。趣味は?と聞かれたら絵を描く事、と答えるだろうが他にもある。編み物や刺繍、アクセサリーの手作り、物作りの細かい作業が好き。でもインドア派という訳ではなく良い景色を探して歩くのも好き。そこで風景画を描くのだ。

  そして最もハマっているのがゲームとネット小説で、すでに生活の一部となっている。なにせゲームはファミコンの時代からやっているのだ。アクション、RPG、パズル、シュミレーション、アドベンチャー、恋愛、PCのエロゲーに至るまで幅広いジャンルを網羅した。ネット小説は恋愛ものも読むが一番好きなのは異世界転移もの。転生より転移が好き。日々好みの物語を読み漁っている。




  そんな私が今置かれている状況は、異世界転移や転生に近い気がしてならない。それもこのビキニアーマーから察するに剣と魔法のファンタジー。試しにステータスオープンを念じてみる。

  と

 パッと目の前に画面が現れた。それはゲームではよくある半透明の液晶画面で・・・思わず画面の裏や下を覗いてしまった。




 【名前】?
 【年令】20才
 【職業】なし

【レベル】1
【体力】35
【魔力】520
【攻撃力】8
【防御力】208
【素早さ】19

【スキル】剣術(S)・解析(S)

【固有スキル】複製(F)・3/3

【称号】転移人




  読めるけど日本語じゃない・・・それに転移人・・・これで私が異世界転移した事が確定した。事実は小説よりも奇なり、である。

  それにしても・・・名前の?マークはナニ?私は名無しなの?年令20才って半分なんですけど?レベル1なのに魔力だけ高すぎやしませんか?防御力208ってビキニアーマーの効果ですか?剣術と解析のSってもしかしてランクかなんかですか?何でS?固有スキルの複製って?

  疑問は尽きませんが、それよりも重大な事実が判明しましたよ。現在ワタクシ、所持金ゼロです。画面右上に、所持金0ギル、とハッキリ記載が・・・あぁ、その横に時間表示がありました。只今の時刻、13時20分です。これはどうしたもんか・・・バッグも身に付けていないので持ち物もない。お金も武器もない状態でどうしろと?うーむ。

  唸りながら画面を睨んでいると下の方にインベントリの文字を発見!これはもしかしてアイテムボックスの類いでは!?と若干の期待を胸にタッチしてみる。すると中身一覧のリストに切り替わった。カテゴリ別に分かれている。

  あったのは大剣1本、短剣1本、マント、それに・・・最新版異世界案内ソフト(地球人向け)。

  まあ・・・どこも世の中甘くない、って事だね。剣らしきものの経験なんて学生の時の剣道部くらいだが、武器があっただけマシでしょう。

  まずは短剣を出すため文字をタッチしてみようとすると手の中にフッと短剣が出現した。

  おお、便利。

  ベルト付きだったので腰に装着し、抜いてみる。刃物なんて包丁位しか持った事がないのに何故かしっくり手に馴染む。剣スキルの効果だろうか。大剣も出して構えてみるとやはり違和感はないし重くもない。岩壁に気をつけながら少々振る。・・・使えそうだ。

  大剣はしまっておいて、最新版異世界案内ソフト(地球人向け)を取り出・・・せない。首を傾げていると画面にメッセージが。

  《インストールしますか?》《YES・NO》

  もちろんYES。

  《インストール中……………正常に終了しました。これより案内を開始します》

  ヴンッ、と起動音が鳴ってまたメッセージが。

  《これは転移地球人向けの異世界案内ソフトです。質問は音声と思考、両方で受け付け可能。常時起動可能》

  つまり頭の中で質問しても返してくれるって事?声に出さなくていいのは周囲にバレないので助かる。早速使おう。

  とりあえずこの世界の基本的な事を聞く。すると頭の中に情報がしみ込む不思議な感覚がした後、私の知識として認識出来るようになった。




  この世界は4つの大陸と無数の島々から成っていて大陸にはそれぞれ国がある。1年は12ヶ月、ひと月30日、1日24時間、曜日はなく、休みなどはキリの良い5日おきで分かりやすい。四季はあるが、季節は大陸によって長さや厳しさが違う。魔物も出るし魔法も存在、冒険者ギルド、商業ギルドなどもあるが種族はヒューマンのみ。

  貴族制度は廃止されたものの貧富の差は激しい。また犯罪者は奴隷落ち、というのがここでの定石なので奴隷も当たり前のように存在している。

  戦争は昔召喚された勇者により終結し、現在は平和協定が結ばれて国同士で輸出入も行われている。魔法がある為文明は発達途中だが家電的魔道具は一応ある。但し少々お高め。食については調味料の点でいえば米、醤油、味噌なども揃っている。




  雨は止まない。することもないので次はステータスについて。




・ステータスは生あるもの全てに存在する。
・魔力がゼロになると気を失い、体力がゼロになると・・・死んでしまう。
・インベントリも皆持っているが、容量や時間経過は魔力が反映されるので人様々。
・レベルは日常生活でも上がるが魔物を倒した方がはるかに効率が良い。
・スキルは先天性と後天性があり、ランクが存在する。
・ランクはF~A、Sの7段階あり、FとEは下級、DとCは中級、BとAは上級、Sは最上級となる。
・後天性は素質があれば訓練する事で得られる。
・スキルランクは一定の条件クリアで大概アップする。
・スキル所有数は普通で4、5個、多くて7、8個、稀に10個。
・固有スキルの所持率は100人に1人位。
・スキル行使には魔力を消費するものとしないものがある。
・全ての経験値には個人差があり、限界も人によって違う。




  まとめるとおおよそこんな感じ。情報を一度に詰め込み過ぎかもしれないが後ひとつ、私の固有スキルである複製について聞いた。

  これは簡単に言えば命あるもの以外を複製出来るスキル。食材や道具などの形ある物はもちろん、他人のスキルも複製出来る。だがランク毎に使用回数制限があり、使い切ると翌日まで回復しない。他人のスキルは複製スキルと同ランクにしか使えないし、物も最低ランクでは簡単な物のみ。

  ステータスにあった3/3は使用回数だったんだ。まだイマイチピンとこないが、回数制限があるならある程度慎重にならなければいけない。優先順位は、水、食べ物、回復系スキル、魔法スキル、といったところだろう。解析があるんだから食べられる物の見分けはつく。晴れたら早速行動開始だ。

  私は雨が止むのを待った。

感想 172

あなたにおすすめの小説

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。