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泥棒猫参上 ③
しおりを挟む慣れない乗馬でぐったりしているアルテミールを、後ろで支えながら、頑張れ頑張れと励ます。行き先が分かれば開放してあげるから。それまでの我慢だぞ。
あんまり遠いと、また馬に載せる羽目になるから、せめてグラデウスが領地から出ていないことを祈りたい。
フラフラとしたアルが言うには、丘を降りたところにある町の教会にいるんじゃないのということだった。
はて、何故教会に?お祈りか、懺悔か、もしくは寄付を渡しに行ったとか、考えられることは沢山あるし、この国では教会の設立と神父の派遣は王宮が行っているから、まぁ、元々王宮勤めの彼が赴くのはおかしくないけれど、それなら昼に行っても良くないかな?
それに領主の妻予定の僕にも、神父様に会う権利あるはずなのだけど。
未だに不信感は消えないまま、夕暮れ時の町に辿り着く、馬のまま街中を駆け抜ける訳には行かないので、馬から降りて少し離れた木陰に馬を括りつけ、僕は黒いフードを深く被った。
領主の婚約者だとはまだ公表されてないけれど、一応用心するに越したことは無いからね。顔バレは防いでおかないと、今後正式に結婚するってなった時に、領民からの反発は絶対に受けたくない。
ワルツ家は元々公平性を持った良識ある立派な人たちが多く、王族からの信頼も厚い、国の要職必ずワルツ家の人間が居るくらいに、なのでもちろん現領主のグラデウスも領民からとても慕われている。
領主の怪我を心配した人々が、門の前にお花や野菜を置いていったりするくらいに。
そんなわけで、領民から大人気の領主様の嫁がじゃじゃ馬お転婆だとは知られてはいけないのだ。きっとみんな美しく聡明な女性がグラデウス様にふさわしい!と思って居るだろうから。
でもね、同じ顔の僕が言うのも何だけど、シャシュカだって黙っていれば美少女って言われているんだよ。動いたら残念が過ぎるけどね。そもそも黙って3分大人しくしているのが無理な子だけどね。
まぁ、一応教育が厳しい騎士学校に行くんだし、少しは協調性を学んで帰ってきてくれるはず、お兄ちゃんは信じてる。
黒いフードを被った見るからに怪しい僕をアルテミールはこの人知り合いじゃないから、偶々道を教えているだけだから見たいな態度で、前を歩きグラデウスが居るであろう教会まで連れて言ってくれた。
町の外れにある教会は、赤い煉瓦で出来たこじんまりとした建物だった。ドアは正面に木でできた物が一つだけ、小さい窓から中を覗いてみれば、礼拝室と、その奥にある懺悔室の扉が目に入る。
うん、内部的にはうちの領地の教会とも特に変わらない、国が領地の運営を監視させるために、たしか必ず王宮から任命された神父様が最低一人はいる筈なんだけど。
もう少し良く見る為に木に登り、ステンドグラスの隙間から中を除くことにする。ここなら外からも中からも見つけられまい名案だ。アルテミール人が近くに来たら教えてね、絶対だぞ。
外が闇の気配を纏い始めると、礼拝堂の中にも明かりが灯り始める。目を凝らして中を窺うと、祭壇の前で、グラデウスが膝を折り祈っている姿を見つけた。
目を閉じて腕を組み、熱心に祈る姿はその容姿も相まってとても美しい、ブロンドの髪が仄かな明かりに照らされて、キラキラ輝いて見える。あれが、言い伝えに聞く大天使様かな?と一瞬僕も見惚れてしまった。
それにしても水臭いな、家では神に祈る姿を見たことが無かったからてっきり信仰心は無いかと思っていたのに、言ってくれたら僕だって怪我が治る為の祈りを捧げましたよ。
暫く祈っている姿を見つめていたが、不意にグラデウスが祈るために下げていた頭を上げて立ち上がった。奥の扉から出てきたのは、白いローブを纏った、グラデウスと同じくらいの身長を持った男。
しかし、男にしては珍しい淡い桃色のウエーブした髪を、足元まで伸ばしている。神父にしては珍しい格好だ。普通神父は短髪の者が多い。まぁ、特にこれと言った決まりはないらしいけど。
あそこまで髪が長いと後ろ姿は一見女性と見間違いそうだ、そう思いながら見つめていたが、白いローブに王家の紋章と王宮魔術師である証、椿の花を模した飾りを襟元に付けている。
しかも、『白椿』ということは、あの男は王宮の医療術師で間違いないということだ。
僕が男の正体に確信を持って、彼らを見つめていると二人は向かい合い、二言三言話した後に、桃色の長い髪を持った男が不意にグラデウスに顔を近づけ、彼の顎を右手で少し上に傾けて、そのまま二人の距離はゼロになった。
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