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白い砂が舞う国 ②
しおりを挟む「あらー。爺様最近ますます子豚ちゃんになったわねー。お鍋に入って居ると食料感マシマシよ!」
「うっさいわ、このビッチの男狂いが!」
「なにいってんのーぉ。あたしは心はビッチでも体は一筋なんですぅ。弟子がいるのに風評被害やめて欲しいわぁ。」
ジャノメがそう言ってニヤニヤ笑いながら僕の方を見ると、鍋に乗っていた老人は驚いたように目を開き、わたわたと鍋を地上に降ろし僕の目の前まで小走りでやって来た。
恰幅はいいけれど、背は小さいその老人は長い白髭を撫でて僕をまじまじと見つめた。
「おまえさん、本当にこれの弟子なんじゃな?」
疑い深そうに言ってくるので、僕はなるべく正式な弟子であることをアピールしようと笑顔で「そうですわ。」とにこやかに告げた。
「こいつの妄想癖が悪化したかと思えばほんとじゃったとは…明日は雪でも降るんかのう。」
「灰以外に雪まで降ったらここの魔術師全員過労死しちゃうじゃない。ほんと嫌みな老害って悪だわー。」
「うっさいわ!お前の存在自体が悪じゃ!」
言い争いをする元上司と部下、あらら、凄く仲が悪そうに見えるけれど大丈夫なのかな?師匠の口の悪さのせいでバザーが中止になりませんように。
そうハラハラしながら二人のやり取りを見ていたが、二人とも言い争って落ち着いたのか、再び老人は僕を見て。
「あんたは覚醒型の魔術師じゃな。」と神妙な面持ちで僕を見つめた
覚醒型とは、成長するにつれて魔術師の能力が開花するモノの事らしい。
「ええ、そうですわ、お師匠様がわたくしを魔術師にしてくれましたの。」
「でも、あんたグラデウスの婚約者じゃったろう。あいつは反対せんかったのか?」
ありゃ、やっぱりばれていたみたいだ。ジャノメは弟子とだけ伝えていたらしいけれど、やはり元部下の弟子の詳細は気に成るところだったのだろう。余計なことまで探られていないと良いんだけど。
「グラデウス様はわたくしが魔術師として強くなることに賛成してくださいましたわ。ですのでお気になさらないでくださいませ。」
にこりと笑えば、老人は少し困りながらも「まぁ、グラデウスが良いと言っとるのならワシが口を出すことでもないか。」と渋々ながらも納得してくれたようだ。
「んで、爺様。あたしたちはナニをすればいいのよ。会場の準備かしら?」
「準備はもうできておる。おまえは讃美歌の衣装合わせ。こっちの弟子は、バザーの商品の値段付けや雑用をして貰いたいんじゃが。お嬢さんは貴族じゃろう?慣れないことをさせるもんじゃないかの。」
「あら、大丈夫よ。この子貴族の出だけれど、なんでか家事が万能なのよね。今日もあたしの朝ごはん作って掃除までしてくれたわ。」
どや!と胸を張るジャノメの頭を持っていたステッキで叩いて。
「何、弟子に面倒見て貰ってるんじゃこのあほ魔法使いが!」
老人はこの領地の火山の如き怒りを落した。
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