43 / 50
騎士は色男 ②
しおりを挟むジューシーな肉が串にささったラム肉の串焼きを頬張りながら、露店巡りをする、普段の貴族令嬢の恰好では下品だと感じてしまい出来なかった事も、教会を手伝っている町娘だと思うとすんなりと出来てしまうのが不思議だ。横にいるグラデウスも紙に包まれただけの蒸しパンをモグモグと食べている。いつもは小食なのに今日は調子がいいみたい。彼は領主としての責任感が強いからいつも気を張って居なければいけなくて大変なのだ。
こうして唯の騎士としてなら、何の疲れも無く過ごせるんじゃないだろうか、またハンスにお願いして。身分の入れ替わりして貰おうかな。こういう気楽な立場で遊ぶのも気分転換になっていいし。
串焼きを食べ終わると、グラデウスが僕の顔を覗き込みフフッと楽し気に笑う。頬についてるぞと言われハンカチで拭われて大変恥ずかしい思いをした。
もう!子供じゃないっていうのに。でもそのあとに優しく口づけをしてくれたから許してあげよう。
バザーの露店では食べ物や衣料品、小物のほかに、人形劇などもやっている。
張りぼての舞台の上で真っ黒な布を被った人々が、手にそれぞれ操り人形を持って劇を披露していた。
勇敢な勇者と、気高い姫君のお話。
たしか、この話は初代国王とその王妃をモデルにしたお話なはず。多少誇張して作られているらしいが、筋書きは歴史書道理なのだとか。
初代国王と王妃は仲睦まじく、崩壊した国を立て直していきましたと。お話は終わる。
今この国は、そのお話の続きであるのだ。
初代から国王と王妃は仲睦まじくていらっしゃるが、今の代は少しややこしいことになっている。第一王子と第二王子、同じ王妃から生まれているのにかかわらず。二人の見目は正反対と言うように違うのだとか。第一王子は今の国王生き写しの美丈夫で、片や第二王子は初代国王に瓜二つの先祖返りの容姿を持っているのだという。
それにより、初代の頃から国を支えてきた重鎮たちが、先祖がえりである第二王子の方が次代を継ぐのにふさわしいなどと言い出して、王子たちの意志など関係なく、口を出してくるのだとか。
いや、口だけでならまだましで、強硬派の連中は黒魔術師を雇い入れ第一王子の暗殺までもくろんでいる。
そして被害にあったのが、王宮騎士だったグラデウスだ。
今は受けていた傷と呪いも落ち着いてきて、たまにしか発症しなくなったけれど、時折一人で頭を抱えていることがあって、心配になってしまう。
まだまだ幼い仮の婚約者である僕では、彼の役に立てないのは分かってるけれど、もう少しは頼れる存在になりたいな。その為にももっと魔術について学ばないといけないんだけどね。
劇を見終わり、舞台に小銭を投げた後、僕たちは教会に戻ることにした。中にはハンスが居て場所を取ってくれているらしいし、師匠の晴れ姿もこの目に焼き付けておかないとね。
0
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる