PREDATOR

ANDEAD

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#34 淡い記憶

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――鬼龍殿 椿の間
ケイパン「なん…だと…!?」
キノコ「異界に!?」
ルシファー「えぇ」
ポイズン「いきなり悪魔が現れて俺達の仲間を連れ去ろうってのか」
ギリッ
ルシファー「いえ…ですからこう説明をしに来たのですよ」
ポイズン「!」
ルシファー「仲間の皆様の前で連れ去るのは…私に敵意が生まれます」
スッ
ルシファー「とはいえ…まぁ」
ルシファー『神呉かんごう
ズズズズズズ
翡翠「何を…!?」
ルシファー「お前が説明をすれば私が出向く必要無かったんですが」
サタン「…仕方ないじゃん。この子が眠ると私出てこれないもん」
ボサァ
ルシファー「鍛錬が足りないんですよ」
サタン「なんだとー!!」
ポイズン「お前は…アンディが契約してる悪魔…?」
サタン「ん?」
鬼姫「そんなことはよい!!何が目的で来たのじゃ!!」
ルシファー「…では説明致しますね」
スッ
ルシファー「結論から言うと彼は能力の使い方を分かっていない。悪魔の中でも特別強力な私やサタンを従える素質はあるんですがね」
サタン「王都の時も私のこと呼ばなかったら負けてたもんこの子」
ケイパン「だから異界に…?」
ルシファー「異界で力をつけてもらいます。サタンの闇が彼の中で膨らんでいく状態のままこの世界にいれば内側から爆発してやがて死に至るでしょう」
玉津遊「そんな…黒さん…!!」
サタン「異界は悪魔の住処だからね。そこなら闇を抑える必要が無いからそんな心配要らないのよ~」
ルシファー「どうでしょうか…了承して頂けました?」
ポイズン「話はわかった…今のアンディを救えるのはお前達だけなんだな」
サタン「そうだね」
ルシファー「下手な扱いをするつもりはありません。我々としても彼が死んでしまうのはかなりの痛手ですから」
キノコ「ポイズン!ケイパン!」
ポイズン「あぁ」
ケイパン「だな!」
ザッザッザッ
変革者「リーダーを…宜しくお願いします!!」
ペコッ
サタン「!」
ルシファー「必ずご期待に添えます」
ザッザッザッ
ルシファー「ではサタン」
サタン「ほいほい~」
グイッ
ポイズン「ルシファー」
ルシファー「!」
ポイズン「俺達は…討つべき敵がいる!ソイツらにアンディ無しでは絶対に勝てねぇ…だから本気で頼んだ…!!」
ルシファー「承知しました」
バキッ
バキバキバキバキッ
ヒュッ
シーン…
パンパンッ
鬼姫「!」
涼亡「あんまりボーっとしてる時間もないね?さっ!とりあえず霞の所まで行こう」
翡翠「涼亡…」
涼亡「ルシファーは大丈夫だよ。信頼に足る男だから」
キノコ「知り合いなの!?」
涼亡「昔にね」
鬼姫「…」
ーーーーーー
ザッザッザッ
鬼姫「霞ー!」
霞「鬼姫さん!皆!」
タッタッタッ
ケイパン「うわっ!本当だ鬼王さんの言う通り!」
ポイズン「なんか言われてたのか?」
キノコ「うん!ここの人たちみーんな王都の人なの!」
ポイズン「!」
霞「彼女のおかげで」
陽夏「拙者は陽夏!霞殿のお仲間でござるな!よろしくでござる!」
ポイズン「あぁ…よろしくな」
ガシッ
鬼姫「霞、実はな」
霞「?」
――
霞「そうなんですか…アンデッドさんが」
鬼姫「うむ…妾も少し考えたことがあるがそれは後で」
翡翠「?」
鬼姫「ひとまず皆ついてきてくれるかの」
ケイパン「わかった」
ーーーーーー
――刀の墓場
玉津遊「刀いっぱい…」
翡翠「鬼姫さんここは?」
鬼姫「妾達鬼族にはな…秘伝斬術と言われる刀の業がある。それ故に掟として成人を迎えると自身の相棒となる刀を儀式にて授かるのじゃ」
スッ
キノコ「その刀…菊さんの?」
鬼姫「うむ」
ザッザッザッ
ザクッ
鬼姫「大和都では朽ちた刀はここに刺して供養するんじゃ」
スッ
鬼姫「皆も手を合わせてくれるか?」
全員「!」
パンパンッ
シーン…
鬼姫「菊よ…お主の魂は清く登るまで見届けよう」

ーーーーーー50年前
――大和都
コンコンッ
菊「椿?準備はできてるの?」
鬼姫「菊!!」
タッタッタッ
ズイッ
鬼姫「妾のこと椿って呼ぶの禁止!!」
菊「ふふっ幼馴染の特権じゃない」
鬼姫「むぅ」
菊「でも素敵ね?似合ってる」
鬼姫「ふふーん!妾王族じゃからな!!」
菊「私もそれ着るのが楽しみだわ」
鬼姫「菊の正装は妾がいーいの見繕ってあーげる!!」
菊「楽しみにしてるわ」
鬼姫「どうして妾と菊のは一緒じゃないんじゃ~?」
ブスーッ
菊「仕方ないでしょう?貴方は王族なんだから」
スッ
菊「とっても綺麗」
鬼姫「菊…」
菊「さぁ行きましょう。貴方が手にする刀はもう出来てるわ」
鬼姫「!!」
ダッダッダッ
ガシッ
菊「もう…私の服が汚れていたらどうするの?」
鬼姫「関係ないも~ん」
ザッザッザッ
刃鬼「ここにおられましたか姫様」
鬼姫「刃鬼!」
タッタッタッ
刃鬼「さぁ行きましょう」
鬼姫「うむ!じゃあ菊!!」
菊「なあに?」
鬼姫「妾の晴れ舞台!しーっかり見ててね!」
ニカーッ
菊「…当たり前じゃない」
ニコッ
ダッダッダッ
菊「さて、私も…ん?」
ズォォォォオオオオオオ
菊「かた…な…?」
ザッザッザッ
スッ

触れゆけ…其の鬼よ

菊「…!?」

その身体…この呪いと共に受け入れよう!!!

菊「!」
ドクンッ
ガクッ

さぁ…欲の赴くままに我を使え

血を欲することこそ

菊「汝の…私の快楽ゆえ」
チャキッ
ーーーーーー
柊「椿よ!此処に」
鬼姫「…」
ザッザッザッ
柊「これより渡すはお前と共に生きていく刀…しかと受け取れ」
鬼姫「はい!」
柊「刃鬼」
刃鬼「…はっ」
ザッザッザッ
スッ
刃鬼「刀身は紅く光りその斬れ味は私が打った中で過去最高の出来」
鬼姫「…」
ガシッ
刃鬼「大切にされた刀には持ち主の魂が宿ると言われています」
チャキッ
刃鬼「今この時より姫様のものとなるその刀…名前を紅桜」
鬼姫「紅桜…」
柊「皆の者!!今この時より王位継承の儀式を終え―」
ズバッ
ズバァァァァァァッ
男鬼「ぐわあああああっ!!!」
女鬼「きゃあああ!!!」
鬼姫「!?」
柊「何事だ…!?」
刃鬼「姫様!!」
ダダッ
鬼姫「へ…?」
ガキィィィィィン
ギギギ
菊「…」
鬼姫「き…く…!?」
柊「菊!!どういうことだ!」
刃鬼「なぜこの刀を君が…!!」
ガキィィィィィン
菊「血が…血が足りぬゆえ」
ドンッ
刃鬼「…ッ!」
ガキィィィィィン
鬼姫「菊…なぜじゃ…どうして」
ギリッ
鬼姫「妾…妾の……晴れ舞台見てくれるって約束したのに…ッ!!」
グスッ
刃鬼「姫様!!お下がりください!!!」
ドンッ
菊「鬼族秘伝斬術…壱の太刀」
菊『鬼斬おにぎり』
ズバァァァァァァァァァァッ
刃鬼「ぐっ…!!」
鬼姫「嫌…嫌じゃ…」
刃鬼「その刀を用いて…鬼族に伝わる斬術を扱うな!!!」
ドンッ
カクッ
刃鬼「峰!!!」
ドクンッ
菊「…ッ!!」
ドサッ
刃鬼「はぁ…はぁ…!!」
柊「一体何がどうなっている…」
ザッザッザッ
ガクッ
鬼姫「菊…菊……」
ユサユサ
鬼姫「嫌…嫌じゃ……」
ググッ
鬼姫「うわぁぁぁああああぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ーーー

鬼姫「…そして菊は反逆罪として里を追われたんじゃ」
霞「…!!」
鬼姫「あの時、妾に救う術があればきっとどうにかなったものを…あの日ほど泣き叫んだ夜も嘆き悔み溺れた夜もなかった」
ポロッ
鬼姫「…っはは!涙はもう流し尽くしたと思うたにのう!」
スッ
鬼姫「なぁ菊…寂しいよ…!!」
霞「…」

折れた刀を土に突き刺し
鬼姫さんは昔の思い出をずっと話していた
きっとここにいる誰に伝えるわけでもなく
天にいる菊さんに向けて
それにこたえるように空は青く笑っていたのに
鬼姫さんは顔をあげることが無かった
溢れ出る涙を抑えて笑いながら話す彼女を
私達は近くでその気持ちを汲むことしか出来なかった

スクッ
鬼姫「…ふぅ!」
クルッ
鬼姫「皆すまぬ!時間をかけてしまって」
ポイズン「全然気にすんなよ」
キノコ「うん!」
鬼姫「もう暗くなってきたのう…今日は鬼龍殿で豪華な晩酌じゃ!」
ケイパン「おーー!!飯だぁ!腹減ってきたぜ~!!」
キノコ「お腹ぺっこぺこのぺこりーぬ!」
涼亡「お風呂はあるの?鬼姫さん」
鬼姫「もちろん!」
ポイズン「ささっと浴びて来ようぜケイパン」
ケイパン「あぁ!」
翡翠「玉津遊も一緒に入ろうな~」
玉津遊「うん」
陽菜「夕食はなんでござるかな!霞殿!」
霞「ほんとにご飯のことになると陽菜さんは…」
クスッ
鬼姫「…」
ザッザッザッ

――椿

鬼姫「!?」
クルッ
菊「…」
ニコッ
鬼姫「菊…!!」

ーーー
刃鬼「大切にされた刀には持ち主の魂が宿ると言われています」
ーーー

菊「椿…ありがとう」
鬼姫「そんな…妾は何も」
菊「貴方が私を想い続けてくれた事ずっと感謝しているわ」
鬼姫「…!!」
菊「心に決めたことを絶対に曲げないでね」
パァァァァァ

――あの日の貴方は…何よりも綺麗だった

鬼姫「…」
グッ
鬼姫「天から見守っていてくれ菊」
ザッザッザッ
鬼姫「妾達は必ず…成し遂げる!!!」

淡い記憶 ~完~
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