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25.平民落ちの国王側近
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クーデター後、アントンのマンダーシャイド伯爵家は元宰相派の貴族家として取り潰しとなった。当主であった彼の父親パトリックは死罪になり、母親アウグスタは修道院へ移送された。アントンは、他の元宰相派の貴族同様、平民落ちの上、公式には去勢される。王都のタウンハウスは、反宰相派の貴族に明け渡される予定だ。
新国王ルイトポルトは、アントンが伯爵位を継げば伯爵家を取り潰さないし、タウンハウスも明け渡す必要はないと何度も言ったが、それでは示しがつかないとアントンは恩赦を辞退した。その代わり、引き続きルイトポルトに仕えられ、一生秘密にしなくてはならないものの、去勢を逃れられる。それだけでアントンには最高の恩赦だった。
元宰相派の当主の処刑と家族の移送が全て終わった日の夜、アントンは妻リーゼロッテに離縁を言い渡した。
「な、なぜですか?!」
「君も知っての通り、父は逆賊として処刑され、母は修道院に移送された。我が家は取り潰しとなって私は平民になる。それにもうすぐ去勢されるから、子供も望めない。生殖機能のない配偶者との離婚は、教会も認めている。それに君が私と離縁しなければ、君は修道院へ送られてしまう。だが私と離縁すれば、他の行き先も見込める」
「きょ、去勢?! 嘘ですよね?!」
「いや、本当だ。元宰相派の家の当主は死罪、それ以外の男性は去勢の上、神職に就く。そう決定された。だが、私は去勢さえ受ければ、殿下の側近でい続けられる。それだけでも逆賊の息子としては多大なる恩赦だ」
「そんな……去勢手術の予後が悪くて亡くなる方もいるんですよね?! 殿下に恩赦をお願いできないのでしょうか? アントン様は殿下の理想の実現にとても貢献されたではないですか!」
「私からお願いしたんだ、他の元宰相派の罪人と同じ処遇にしてくれと。殿下の側近を務め続けられるのだけでも僥倖だよ」
「今からでも考え直しませんか? 殿下ならお許し下さるはずです」
「いや、いい。他の者達となるべく同じ処遇でなければ、不満が高まる。平民になった私が殿下の側近でい続けるだけでも不満が出てくるはずだ。これ以上の恩赦は望めない。それより離縁後の君の処遇だ。このタウンハウスは、売却ではなく明け渡しだから、あまり財産は残らないのだが、残った財産は君に半分渡す。解雇する使用人達に退職金を出したいから、半分だけしか渡せなくてすまない」
「……見損なわないで下さい!!」
「え?!」
「私達は神の下で誓い合った夫婦ではないですか。私は貴方が去勢されて平民になっても貴方の妻でい続けます!」
そこには、いつもおどおどしていたリーゼロッテはいなかった。彼女の決意に満ちた瞳には力強い光が灯っており、アントンはその瞳に気後れを持ちつつも魅入られた。
「だから私を今すぐ貴方の本当の妻にして下さい」
「君はもうとっくに私の妻じゃないか」
「私、知ってるんです。アントン様は私に睡眠薬と媚薬を盛って最後まで抱いたように見せかけてますよね。その後、部下の人達と私の……す、すぐ横で……関係を……」
リーゼロッテは、泣き始めてしまって最後は言葉にならなかった。行為の時は妻が睡眠薬で意識を失っているとばかり思っていたので、アントンは絶句した。
「気がついていたのか……すまない……」
「すまないと思うなら、罪滅ぼしをして下さい!」
「罪滅ぼし?」
「そうです! 愛妻家になって下さい!」
「愛妻家か……私にこれほど似合わない言葉はないな……なれるだろうか?」
「なれるんじゃなくて、なるんです!」
「なれるんじゃなくて、なる、か……」
アントンは泣きそうになるのを何とか堪えながら、リーゼロッテに手を伸ばし、腕の中に抱き寄せた。
「すまない……君とは離縁しなければいけないと思っていたから……」
「それが……わ、私のすぐ横で……他の人と、せ、性交する、理由にっ……な、なるんですか?!」
リーゼロッテは、泣きながらアントンの腕の中でせいいっぱい腕を伸ばして彼の胸板を叩こうとした。
「私はひどい夫だった、すまない……実は、数年前から時々、香の副作用で発情発作が出てしまって性欲が抑えられなくなるんだ。だからこんな男とは別れた方がいい」
「でも去勢されれば、性欲はなくなるんでしょう?」
「た、確かに……徐々になくなるだろうな」
「発作がある間は、私で発散して下さい。私は妻なんですから。だから他の人ともう2度と性交しないで下さい!」
実際にはアントンは去勢されずに済むから、性欲が抑えられなくなる発作はおそらく年々酷くなるだろう。そのためにもリーゼロッテとはもう離縁しかないとアントンは考えていた。
「駄目だよ。私は男ではなくなる。君の夫に相応しくない」
「いえ、私は貴方の妻でいます!」
リーゼロッテはアントンの説得に全く引かなかった。その繰り返しでとうとう翌日がタウンハウス明け渡しの日になってしまった。
新国王ルイトポルトは、アントンが伯爵位を継げば伯爵家を取り潰さないし、タウンハウスも明け渡す必要はないと何度も言ったが、それでは示しがつかないとアントンは恩赦を辞退した。その代わり、引き続きルイトポルトに仕えられ、一生秘密にしなくてはならないものの、去勢を逃れられる。それだけでアントンには最高の恩赦だった。
元宰相派の当主の処刑と家族の移送が全て終わった日の夜、アントンは妻リーゼロッテに離縁を言い渡した。
「な、なぜですか?!」
「君も知っての通り、父は逆賊として処刑され、母は修道院に移送された。我が家は取り潰しとなって私は平民になる。それにもうすぐ去勢されるから、子供も望めない。生殖機能のない配偶者との離婚は、教会も認めている。それに君が私と離縁しなければ、君は修道院へ送られてしまう。だが私と離縁すれば、他の行き先も見込める」
「きょ、去勢?! 嘘ですよね?!」
「いや、本当だ。元宰相派の家の当主は死罪、それ以外の男性は去勢の上、神職に就く。そう決定された。だが、私は去勢さえ受ければ、殿下の側近でい続けられる。それだけでも逆賊の息子としては多大なる恩赦だ」
「そんな……去勢手術の予後が悪くて亡くなる方もいるんですよね?! 殿下に恩赦をお願いできないのでしょうか? アントン様は殿下の理想の実現にとても貢献されたではないですか!」
「私からお願いしたんだ、他の元宰相派の罪人と同じ処遇にしてくれと。殿下の側近を務め続けられるのだけでも僥倖だよ」
「今からでも考え直しませんか? 殿下ならお許し下さるはずです」
「いや、いい。他の者達となるべく同じ処遇でなければ、不満が高まる。平民になった私が殿下の側近でい続けるだけでも不満が出てくるはずだ。これ以上の恩赦は望めない。それより離縁後の君の処遇だ。このタウンハウスは、売却ではなく明け渡しだから、あまり財産は残らないのだが、残った財産は君に半分渡す。解雇する使用人達に退職金を出したいから、半分だけしか渡せなくてすまない」
「……見損なわないで下さい!!」
「え?!」
「私達は神の下で誓い合った夫婦ではないですか。私は貴方が去勢されて平民になっても貴方の妻でい続けます!」
そこには、いつもおどおどしていたリーゼロッテはいなかった。彼女の決意に満ちた瞳には力強い光が灯っており、アントンはその瞳に気後れを持ちつつも魅入られた。
「だから私を今すぐ貴方の本当の妻にして下さい」
「君はもうとっくに私の妻じゃないか」
「私、知ってるんです。アントン様は私に睡眠薬と媚薬を盛って最後まで抱いたように見せかけてますよね。その後、部下の人達と私の……す、すぐ横で……関係を……」
リーゼロッテは、泣き始めてしまって最後は言葉にならなかった。行為の時は妻が睡眠薬で意識を失っているとばかり思っていたので、アントンは絶句した。
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「罪滅ぼし?」
「そうです! 愛妻家になって下さい!」
「愛妻家か……私にこれほど似合わない言葉はないな……なれるだろうか?」
「なれるんじゃなくて、なるんです!」
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アントンは泣きそうになるのを何とか堪えながら、リーゼロッテに手を伸ばし、腕の中に抱き寄せた。
「すまない……君とは離縁しなければいけないと思っていたから……」
「それが……わ、私のすぐ横で……他の人と、せ、性交する、理由にっ……な、なるんですか?!」
リーゼロッテは、泣きながらアントンの腕の中でせいいっぱい腕を伸ばして彼の胸板を叩こうとした。
「私はひどい夫だった、すまない……実は、数年前から時々、香の副作用で発情発作が出てしまって性欲が抑えられなくなるんだ。だからこんな男とは別れた方がいい」
「でも去勢されれば、性欲はなくなるんでしょう?」
「た、確かに……徐々になくなるだろうな」
「発作がある間は、私で発散して下さい。私は妻なんですから。だから他の人ともう2度と性交しないで下さい!」
実際にはアントンは去勢されずに済むから、性欲が抑えられなくなる発作はおそらく年々酷くなるだろう。そのためにもリーゼロッテとはもう離縁しかないとアントンは考えていた。
「駄目だよ。私は男ではなくなる。君の夫に相応しくない」
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