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18.簡素な結婚式
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翌週、公爵令嬢としてはかなり質素で小規模な結婚式が王都の大聖堂で行われた。白い石灰岩でできた荘厳な大聖堂は、別名白亜の宮殿とも呼ばれ、内部は美しいステンドグラスや壁画、彫刻で彩られていた。そんな大聖堂で洗礼、結婚式や葬式を行うことができるのは、中位以上の貴族と平民でも富裕層だけだった。だから小規模な結婚式といっても大聖堂で行われたとなれば、それなりのものと誰にでも分かるものだった。
ステファニーはコルセットを締められないので、今や流行遅れとなっているエンパイアスタイルのウェディングドレスを着ていたが、後ろの裾を長く引き、ベールも同じように長くして身体の線を隠していたので、お腹がまだそれほど大きくないこともあり、妊婦だということは一見するだけではわからなそうだった。
列席者は家族だけに絞られたが、ステファニーの家族側では参加している両親と兄はステファニーの妊娠を知っていたものの、エイダンの両親、愛人エスターと息子ブライアンは知らなかった。本来はエスターは招待されていなかったが、ブライアンに付いてきて大聖堂まで無理矢理押しかけて来たのだった。
祭壇の前での誓いの言葉の後、エイダンはステファニーのベールをめくった。ここで誓いのキスとなるところだったが、ステファニーはまだ事件のトラウマがあるので、キスは省略となった。ベールの遮りがなくなってステファニーは刺すような視線に気付いた。その時、ステファニーは知らなかったのだが、彼女を睨んでいた女性はエスターだった。息子ブライアンが寄宿学校に入った後、エスターはエイダンと2人で領地の本邸に住んでいたのだが、ステファニーの輿入れでエイダンの両親が住んでいた別邸に追いやられ、ステファニーを恨んでいた。エイダンの両親は本邸に帰ってきたので、エスターは1人で別邸に住むことになったのだ。だがステファニーはその事情を結婚式の時には知らなかった。
結婚式の後、祝いの宴など何もなしで、すぐにアンヌス子爵家-陞爵後の今はアンヌス伯爵家-の領地の本邸へステファニー達は馬車で向かった。ステファニーはエイダンと2人きりで馬車に乗ったが、エスターはブライアンとエイダンの両親とともに別の馬車に乗車していた。エイダンの両親は、元娼婦のエスターのせいで息子が結婚しないと苦々しく思っていたが、後継ぎを産んでくれたことだけには感謝していてエスターに対して複雑な感情を持っており、馬車の中には居心地の悪い沈黙が支配していた。
通常、王都からアンヌス家の本邸までは馬車で3日で着くのだが、ステファニーのためにゆっくり4日かける行程にした。ただ、ステファニーの妊娠のことをエイダンの両親もエスター母子も知らなかったので、ステファニーにとってアンヌス家の馬車の乗り心地が悪いからということにされ、ステファニーがお高く留まっているとエイダンの両親達の不興を買った。
ステファニーとエイダンは、馬車が走り出してしばらくは何もしゃべらなかったが、その沈黙をエイダンが破った。
「せっかく2人きりでたっぷり話せる時間がありますから、この結婚の取り決めについて話しましょう。義父上にも聞いてはいるといますが、念のために直接話しておいたほうがいいと思いますので」
「ええ、そうですね」
「貴女を娶りましたが、エスターとは別れません。でも、貴女を本妻として尊重します。エスターは別邸に移りますので、安心して下さい」
「でもそれでは彼女は私を恨むのではないですか?私は構いませんから、彼女を本邸に住まわせてあげて下さい」
「陛下と公爵閣下の手前、そういうわけにはいきません。それに・・・こう言ってはなんですが、エスターは少々苛烈な女性でして、一緒に住むと貴女にも私にもストレスがかかるかと・・・」
「もう覆せないのですね」
「そういうことです。それから、私には既に後継ぎがいますし、エスターとも別れませんから、私達の結婚は白い結婚となります。ただ、お腹の中の子供は私の実子ということにしますから、2ヶ月ぐらいはほぼ毎晩夫婦の寝室で寝ることになります。私はソファで寝ますので、ご心配なく」
「白い結婚ということをエスター様はご存知なのですか?」
「いいえ、彼女は知っていたら隠せない性質なので」
これではいくら別居でも大変なことになりそうだなとステファニーは憂鬱になった。そしてその悪い予感は残念なことに当たってしまうのだった。
ステファニーはコルセットを締められないので、今や流行遅れとなっているエンパイアスタイルのウェディングドレスを着ていたが、後ろの裾を長く引き、ベールも同じように長くして身体の線を隠していたので、お腹がまだそれほど大きくないこともあり、妊婦だということは一見するだけではわからなそうだった。
列席者は家族だけに絞られたが、ステファニーの家族側では参加している両親と兄はステファニーの妊娠を知っていたものの、エイダンの両親、愛人エスターと息子ブライアンは知らなかった。本来はエスターは招待されていなかったが、ブライアンに付いてきて大聖堂まで無理矢理押しかけて来たのだった。
祭壇の前での誓いの言葉の後、エイダンはステファニーのベールをめくった。ここで誓いのキスとなるところだったが、ステファニーはまだ事件のトラウマがあるので、キスは省略となった。ベールの遮りがなくなってステファニーは刺すような視線に気付いた。その時、ステファニーは知らなかったのだが、彼女を睨んでいた女性はエスターだった。息子ブライアンが寄宿学校に入った後、エスターはエイダンと2人で領地の本邸に住んでいたのだが、ステファニーの輿入れでエイダンの両親が住んでいた別邸に追いやられ、ステファニーを恨んでいた。エイダンの両親は本邸に帰ってきたので、エスターは1人で別邸に住むことになったのだ。だがステファニーはその事情を結婚式の時には知らなかった。
結婚式の後、祝いの宴など何もなしで、すぐにアンヌス子爵家-陞爵後の今はアンヌス伯爵家-の領地の本邸へステファニー達は馬車で向かった。ステファニーはエイダンと2人きりで馬車に乗ったが、エスターはブライアンとエイダンの両親とともに別の馬車に乗車していた。エイダンの両親は、元娼婦のエスターのせいで息子が結婚しないと苦々しく思っていたが、後継ぎを産んでくれたことだけには感謝していてエスターに対して複雑な感情を持っており、馬車の中には居心地の悪い沈黙が支配していた。
通常、王都からアンヌス家の本邸までは馬車で3日で着くのだが、ステファニーのためにゆっくり4日かける行程にした。ただ、ステファニーの妊娠のことをエイダンの両親もエスター母子も知らなかったので、ステファニーにとってアンヌス家の馬車の乗り心地が悪いからということにされ、ステファニーがお高く留まっているとエイダンの両親達の不興を買った。
ステファニーとエイダンは、馬車が走り出してしばらくは何もしゃべらなかったが、その沈黙をエイダンが破った。
「せっかく2人きりでたっぷり話せる時間がありますから、この結婚の取り決めについて話しましょう。義父上にも聞いてはいるといますが、念のために直接話しておいたほうがいいと思いますので」
「ええ、そうですね」
「貴女を娶りましたが、エスターとは別れません。でも、貴女を本妻として尊重します。エスターは別邸に移りますので、安心して下さい」
「でもそれでは彼女は私を恨むのではないですか?私は構いませんから、彼女を本邸に住まわせてあげて下さい」
「陛下と公爵閣下の手前、そういうわけにはいきません。それに・・・こう言ってはなんですが、エスターは少々苛烈な女性でして、一緒に住むと貴女にも私にもストレスがかかるかと・・・」
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「そういうことです。それから、私には既に後継ぎがいますし、エスターとも別れませんから、私達の結婚は白い結婚となります。ただ、お腹の中の子供は私の実子ということにしますから、2ヶ月ぐらいはほぼ毎晩夫婦の寝室で寝ることになります。私はソファで寝ますので、ご心配なく」
「白い結婚ということをエスター様はご存知なのですか?」
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