傀儡妃は幼馴染の王太子をひたすら愛する

田鶴

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第3章 激動の王国

54.元宰相の最期

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 元宰相派の当主の処刑は、1日数人ずつに分けて非公開で行ったが、最後のベネディクトの処刑のみ公開で行われると決まった。

 処刑の日、ベネディクトは粗末な囚人服を着て裸足のまま、後ろ手に縛られて処刑台に連行された。その姿からはかつて権勢を誇った宰相を想像できない。だが、もうすぐ殺されると分かっているのに、爛々と光る瞳は鬼気迫っていた。

 処刑場に集まった民衆は、口々にベネディクトを罵り、石を投げた。そのいくつかはベネディクトに当たり、血を流させた。ベネディクトを引っ立ててきた死刑執行人達は、自分達に石が当たらないように慌てて彼から離れたが、彼の手首に繋がるロープは掴んだままで投石を制止しなかった。

 ベネディクトは、流れる血を拭いもせず、ルイトポルトをギロリと睨んで大声で観衆に向かって叫んだ。

「皆の者、聞くがいい! ルイトポルトは、実の父を殺しただけでなく、妻の父まで殺そうとしている! パトリツィア妃に顔向けできるのか! さあ、この罰当たりな王位簒奪者を……うぐっ!」
「黙れ! この大罪人!」

 ベネディクトは全部言い終わる前に若い方の死刑執行人に棒で殴られた。ベテランの死刑執行人は、普段ならその様な素行を許さないのだが、今回は弟子を咎めなかった。

 ルイトポルトはパトリツィアを引き合いに出したベネディクトに再び怒りを感じ、スッパリと死なせてやるよりも嬲り殺したくなったが、すんでの所でその衝動を抑えた。

 それよりも処刑場に集まる民衆に伝えるメッセージが重要だとルイトポルトは思い直し、観衆の前で声を張り上げた。

「元宰相は、本来国のために使われる金を横領し、都合の悪い者を抹殺してきた。先代国王も彼が殺した! 彼の死と共に我が国の腐敗の歴史が終わり、新しい時代が切り開かれる! 貴族も平民も同じ国民だ、一丸となって我が国をよくしていこう!」

 観衆はそれを聞いてワーッと大歓声を上げた。そのせいでベネディクトが『こんな事はスケープゴートに過ぎない!』と叫んだのを聞けたのは、すぐ側にいた死刑執行人達だけだった。

 観衆の興奮と期待が最高潮に達する中、ベネディクトは13段の階段を上らされ、ギロチンが設置されている台の上に立たされた。その間、彼はしきりに『父殺しめ!』とか、『間違っている!』、『スケープゴートだ!』とブツブツ呟いていた。だがギロチンの背後の板にうつ伏せになるように引っ張られると、涙と鼻水を垂らしながら『助けてくれ!』と連呼して抵抗した。

 それも空しく首を木枠に、身体を板に固定されてしまっても、ベネディクトは言葉にならない涙声を張り上げて何とかじたばたしようとした。だが身体と首ががっしりと固定されていて動きようがなく、死刑執行を遅らせる事はできなかった。ベテランの死刑執行人がギロチンの刃の固定装置に繋がる紐を手に取ると、その気配をベネディクトも感じ取り、むせび泣きながらひたすら救いを乞い、囚人服の股間がじわじわと濡れていった。

「ヒィーッ、ヒィーッ、た、助けてくれっ、助け……」

 死刑執行人が紐を引っ張ると、4メートルもの高さから重たいギロチンの刃がベネディクトの首にズドンと落ち、頭と胴体がスッパリと分離され、頭部が転がり落ちた。死刑執行人はすぐに髪の毛を掴んでベネディクトの頭部を拾い上げ、切断面から血が滴るまま、観衆に向かって高々と掲げた。すると観衆の歓声は一層大きくなった。

 徐々に興奮が冷めて観衆が散り散りになっていった後、ベネディクトの遺体は王都近郊の森の中に運ばれ、動物の餌になるがまま放置された。頭部は串刺しにされて朽ちるまで処刑場で晒され続けた。

 全ての処刑と移送が終わった後、ルイトポルトは即位したが、混乱の最中で即位式典を催す余裕は残っていなかった。
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