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二人で目的の魔物に近づく
「この先に魔物がいるの?」
「ああ、大体百メートル位にいるはずだ
俺はあくまでも手伝いだからお前が倒せよ」
「…………」
「ん?」
返事がないことを不思議を思い御堂の方を見ると
「やっぱり……もう……ことちゃんって読んでくれないんだね」
寂しそうな、泣きそうな顔をして下を向いていた

「あのな、その呼び方をしてたのは小学校の時だぞ」
「そう……だよね。ごめんね。変なこと言っちゃって」
長い髪で分かりづらいが無理して笑顔を作っているのはすぐに分かった

思い出してきたな。確か、こいつとあったのは小学三年生の時だったな

同じクラスになってもほとんど喋ることはなかったが、体育祭の時だったな
選手決めをしてるときに立候補しなかったから余り物の二人三脚の選手に選ばれたんだったな
で、その時に組まされた相手が御堂だったんだよな
喋らないから回りとちょっと浮いてて接し方が難しかったっけ
昔の俺は浮かないようにしてたからやりにくかったけど練習し始めたら、言葉が少いだけで明るいやつだって気づいた
それからは普通に接してただけなんだよな、俺以外に話してるやつなんかほとんどいなかったけど

小学校は三年から六年まで同じクラスだけど中学が別になったせいで会うことも無くなったんだよな
無口は変わってないけど髪もあんなに長くなかったしかなり綺麗になってるから気づかなかったな

で、今の無理してる顔は最初に練習させられてるときに無理に俺に合わせてた時の顔だな。あの顔は好きじゃないんだよな
「おい、御堂」
「は、はい!!」
「前のお前だったらこんな試験淡々とクリアするはずだろ。ことちゃんだって言うならさっさと終わらせろ」
「うん!やっぱりけんちゃんはそっちの方がいいよ!昔と一緒の格好いいけんちゃん」
昔って何かあったか?全く覚えてないんだが
「見ててねすぐに終わらせるから」

タンドリープラント……解析で何処に居るかは分かるがどんな魔物なんだ?
タンドリーはタンドールからくるインドの釜で、プラントは植物だろうな
釜の植物ってなんだ?

目標の魔物が視認できる距離にまで近づくと全貌が明らかになった
地面から釜が出ておりその釜からたくさんの植物が伸びている
「あれって食虫植物だよね」
「そうだな」
解析してみるとタンドリープラントは素材は取れないが釜の中に溜まる蜜は非常に美味であり高級食材であることが分かった

「魔法で一気に倒しちゃうね」
「ああ、火は使うなよ」
「もちろん」
一気に魔物に近づくと沢山の植物が襲ってきた
「ウィンドカッター」
それらを風の刃によって切断しながら進む
しかし、再生速度が早くなかなか進めないでいる
「重力波」
重力魔法で真横に重力をかけると回りの気を薙ぎ倒した

凄い威力だな
ここで魔法というものを説明すると、この世界の魔法はイメージによって威力や効果が変わる
例えば火の魔法を使うときに火炎放射気のようにすることも出来れば、アニメや漫画のように炎を球体や矢のように形を与えることもできる
つまり、スキルさえあればあとはイメージでやれることが変わってくるらしい
すべて解析で分かったことだ

御堂の重力波によって辺りが酷いことになっているがタンドリープラントはまだそこまでダメージを負っているようには見えない
ゲームみたいにHPとかあれば楽なんだがな

振動損失ロストバイブレーション
ん?御堂はそんな魔法が使えるスキルを持ってたっけ?
改めて御堂を解析してみると

御堂琴音みどうことね
無口Lv9 火魔法Lv7 水魔法Lv7 風魔法Lv7 電気魔法Lv7 重力魔法Lv7 磁力魔法Lv7 振動魔法Lv7 摩擦魔法Lv7

スキルが増えていた
さらに解析を続けるとスキルの根元が見えた
科学魔法
これこそが御堂がこっちの世界にくるときに貰ったスキルと言うことだろう
なら他の三人もまだスキルを持ってるかも知れないな

タンドリープラントは何故かさっきよりも動きが遅くなっている様に見える
「アイスブロック、超重力」
タンドリープラントの真上に巨大な氷の塊を作ってそれに強い重力をかけ勢いよく落とす
するとタンドリープラントは釜ごと粉々になった

「ふー、終わったよ」
やりきった。みたいな感じで戻ってくる
「ああ、お疲れ。俺要らなかったな」
「何言ってるの!!絶対必要だよ!」
「お、おうそうか。まあ、終わったなら早く戻ろうぜ」
「うん!魔石取ってくるね。ちょっと待ってて」
魔石があるのか、でもあんなに潰しても魔石は無事なのか?
御堂は氷の塊を破壊して下から黒紫色の物体を持って戻ってきた
「はい。これが魔石。少し砕けちゃってたから、オーバーキルだったみたい」
やり過ぎか、倒せないよりはましだろ
「それで試験は終わりか?」
「うん。本当はもう一つあったんだけどこの魔物は倒すのが難しいってことで一つでクリアにして貰ったの
ねぇ、戻る前に他の人の様子も見てかない?隆二君と仁美ちゃんが来てる筈だから」
藤城と篠宮か、二人なら大丈夫だとは思うが

「ね?行ってみよ?」
本当にキャラ変わりすぎだろ。仕方ない行ってやるか
「分かった、様子を見るだけだぞ」
「うん!行こっ行こっ」グイグイ
「引っ張るな」
「レッツゴー」
「は~~」


藤城は森のかなり浅いところにいた
目的の魔物は薬土やくどミミズ
このミミズはその土地を良質な薬草が採れる土地にすることができるため益虫としてみられている
「魔物の中にも役に立つのがいるんだな」
「希少らしくてなかなか見つけられたいみたいですけどね」
「それが試験なのか」
「そうですよ、隆二君は生産系のスキルが多くて戦闘はあまり得意ではありませんから」
「そうか、よし。次行くぞ」
「はい!」


篠宮は藤城とは逆にかなり奥にいた
先にこっちに来ればよかったな
少しだけ後悔しながら篠宮を探す
「居ましたよ。仁美ちゃんです」
こちらは戦闘の様で得意の弓を使っている
相手は……植物か
「魔物の名前は……何でしたっけ?」
「知るか!」
と、言っているうちに篠宮が勝ったようだ
「やっぱり強いですね仁美ちゃんは」

篠宮も大丈夫そうなので二人で馬車乗り場に戻る
今気づいたが三人とも制服からこちらの服に変わっている
「今更何だが制服はどうしたんだ?」
「売りました。綺麗な作りなので高く売れましたよ」
「その金で装備を整えたってことか」
「そういうことです」

馬車乗り場に着くとまだつぎのが来るまでまだ二十分ほどある
特にやることもないので聞きたかったことを聞くことにする
「なあ、これは聞いて良いかどうか分からないんだが」
「ん?」
「こっちの世界に召喚されてすぐのことだろ。人を殺したの」
俺は違うが他のクラスメイトは盗賊に殺されているはずだ
「ああ、その事か、みんなそうなんだけど、こっちに来るときに少しだけ精神に干渉があったらしくて生き物を殺すことに関してそこまで深刻にならないの」
「それは、また、すごいな
で、四人以外は殺されたと」
「うん、みんな頑張ったんだけどね。殺した相手からスキルを奪える人がいたらしくて強力なスキルが欲しかったみたい」

強奪系のスキルかそんな相手に当たったら厄介だな
気づかれる前にぶっ潰しておくか
「さて、そろそろ時間だ。行くぞ」
「うん」

馬車に乗りマナプルに帰る
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