吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

文字の大きさ
12 / 72

事務所の危機(財政的な意味で)

しおりを挟む

「覚悟しなさい吸血鬼! 今日という今日は完膚無きまでに叩きのめしてやるんだからっ!!」

雪女の手のひらが青白く光り、直径一メートル程の氷塊が正面の吸血鬼目掛けて撃ちだされる。

「開幕飛び道具は牽制としては有効ですが、それ故に読みやすい。同じことの繰り返しで私に勝てるとは思わない事です」

ハードル飛びの様に氷塊をジャンプで乗り越えた吸血鬼はその勢いのまま雪女の懐へ潜り込む。

「そして、飛び道具を得意とする者は、得てして接近戦に弱いと相場は決まっています!」

ドガガガガガッ! と、豪雨のように撃ち込まれる吸血鬼の拳に防戦一方となる雪女。

「くっ! こ、の――――いい加減にしろォ!!」

吸血鬼の一瞬の隙を突き前方の地面から突き上げる様な形で鋭い氷槍が現れる。――――が、吸血鬼は身を捻り紙一重の所でこれを回避する。

「そんな!? 今のタイミングで避けられるなんて!?」

大きな攻撃には大きな隙が生まれる。そしてその隙を見逃す程、吸血鬼というキャラクターは甘くない。

「これで――――終わりです!!」

止めの一撃が、放たれた。



「くっそー、また負けたぁ! 璃亜もう一回、もう一回よ!!」

手にしたゲーム機をぶんぶん振りながら再戦を所望するのは雪女、白山氷柱である。来客用のソファに寝転び足をバタつかせているせいで、短いスカートから伸びる、透き通るような白い足が惜しげも無く晒されている。

「ふふ、いいでしょう。何度でも相手になりますよ」

勝者の余裕を浮かべながら、チャレンジャーの挑戦を受けるのは吸血鬼の兎楽璃亜。天柳探偵事務所の秘書である彼女は、白山の対面に位置するソファに腰掛け、できるだけわざとらしく、優雅な素振りで脚を組む。

「……お前ら、朝っぱらから元気だな」

ふわぁあ、と欠伸を連発しながら寝室から顔を出したのはこの事務所の所長を務める人間、天柳相一だ。

現在の時間は午前九時。普通の学生サラリーマンなら各々学校や職場にいるはずの時間だが、探偵という職業の性質上こんな時間まで惰眠を貪る事が可能なのだ。

「おはようございます所長、今コーヒー淹れますね」

「あっ、あたしもー」

「はいはい、千里さんはミルクティーで良かったですか?」

「あ、……はい。……お願いします」

パソコンのモニターに隠れてしまっているのは千里眼を持つ、三千千里。その体格には不釣り合いなゴツイヘッドホンがトレードマークの小柄な少女だ璃亜がそれぞれの飲み物を用意しに、キッチンに向かう。

「よしあんた、ちょっと特訓に付き合いなさい」

そういう氷柱の両手には彼女と、そして相一自身の携帯ゲーム機が握られている。

「いいけど自分より弱い相手とやっても特訓になんのか?」

「AI相手にいくらトレーニングしても上達しない、ってのがあたしの持論よ」

「さいですか」

ちなみに今事務所のメンバーの間で流行っているこのゲームは『妖怪大戦争NEXT』という妖怪を題材にした対戦格闘ゲームで、前作『妖怪大戦争Ⅱ』より使用可能な妖怪が20種類以上増えており、マニアも大満足の出来となっている。ちなみに事務所内でのランキングは兎楽璃亜>三千千里>白山氷柱>天柳相一と、なっている。


「……ちくせう」
結局、璃亜が皆の飲み物を運んでくるまで彼が勝利することは一度も無かった。

「よーし! 肩慣らしも済んだし早速リベンジよ! 今度こそ覚悟しなさい吸血鬼!!」

「いいですよ、この短い期間で何が変わったか確かめてあげましょう」

「ってか、氷柱はともかく珍しいよな、璃亜まで仕事放ってゲームだなんて」

天柳の言葉に璃亜が短くため息をつく。

「それがですね…………」

彼女の口から衝撃的な言葉が飛び出てくるまであと3秒。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

はい!喜んで!

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のシリルは、婚約者から婚約破棄を告げられる。  時を同じくして、侯爵令嬢のリエルも、婚約者から婚約破棄を告げられる。  彼女たちはにっこりと微笑んで答えた。 「はい。喜んで」

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

処理中です...