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第1章 光るバッハ
第7話 光るバッハ
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学校の七不思議。
実際のところは別として、
どんな学校にだってひとつ、ふたつくらいはあっただろう。
この学校にもあった。
「ふーん、ベタなやつねぇ」
死神が調べて来たのは、以下の通り。
トイレの花子さん
動く人体模型
光るバッハ
図書室で調べたのだ。
むしろよく3つも見付かったと言える。
「それで、今度は何をしようと言うんですか?」
「決まっているじゃない。先輩に挨拶するのよ」
ユーコがまず向かったのは音楽室だった。
ひとりでに鳴るピアノ、
なんていう怪談もありそうなところだが、
なぜか死神からの説明であったのはあれだけだ。
ピアノの向こう側。
手を伸ばしてもギリギリ届かないくらい高い位置。
そこに飾られているのは、
歴史的偉人の絵画たちだった。
ベートーベン、モーツァルト、ショパン等々。
その中に1枚、
ひときわ異様な存在感を放つ絵画がある。
名はバッハ。
かの偉大な音楽家の1人である。
「あんたがバッハ?」
ユーコは全く臆することなく、
その絵画に話しかける。
感じていたのだ。
幽霊的なカンで。
そこに確かに、そいつはいる、と。
「……ふ」
バッハの目が光る。
あれこそ学校の七不思議のひとつ。
目の光るバッハの所以。
「Hahaha! よく来たね、3-Aのじゃじゃ馬さん?」
バッハの表情は豊かだった。
ニコリと微笑むと、
垣間見えた白い歯がキラリと光る。
「初めまして。私の通り名は光るバッハだ。よろしく頼むよ」
「へぇ、案外フレンドリーなのね」
「そりゃそうだ。こんな狭い世界だ。同業者とは仲良くやっていかないと」
「あっ、そう。それよりも、話が通じるなら早いわ。あんたのその力、私に寄越しなさい」
「ほぉ、何のために?」
「決まっているじゃない」
ユーコは両手を広げて、
まるで性的欲求に身もだえるようにして、
その頬を真っ赤に染めた。
「この私が! 最っ高の快楽を貪るためよ!」
死神は頭を抱えた。
これでは転生など夢のまた夢だから。
長い付き合いになる。
何年、いや、何十年とかかるのだろう。
そんな恐怖すら覚えていた。
「Hahaha! それは傑作だ! 君は幽霊になって後悔したり、恐ろしくなったりしないみたいだね!」
「当り前じゃないの! こんなに素敵な時間を享受できるのよ?!」
「素敵とまで言うか! ますます気に入った!」
ポロン、とピアノの音がする。
そしてバッハの目が、歯がキラリと光った。
「私の能力はこの2つしかない。とても大切な力だ。簡単には譲らないよ?」
「私を冷血な女って勘違いしていない? 別に奪いに来たつもりはないわ」
「うん? ではどうするって言うんだい?」
「決まっているでしょ? 私の言うことを聞きなさいってこと」
その言葉に死神は耳を疑った。
バッハは有名人だ。
ここにいる幽霊は本人ではないものの、
これだけ有名な絵画を独占するような存在だ。
幽霊同士が争えたなら、
その強大な力にユーコなど一瞬で潰されてしまっただろう。
「本当に面白いねぇ。いいよ、僕を納得させてくれたなら、君の言うことを聞こうじゃないか!」
「良い度胸ね。方法は?」
「君は人を驚かすことを至高の悦びとしているんだろう? だったら、それで勝負だ」
「いいわ。やってあげるけど……後悔しないことね?」
「君こそ」
こうして、ユーコは競うことになった。
バッハという絵画を独占する強力な怪談と。
実際のところは別として、
どんな学校にだってひとつ、ふたつくらいはあっただろう。
この学校にもあった。
「ふーん、ベタなやつねぇ」
死神が調べて来たのは、以下の通り。
トイレの花子さん
動く人体模型
光るバッハ
図書室で調べたのだ。
むしろよく3つも見付かったと言える。
「それで、今度は何をしようと言うんですか?」
「決まっているじゃない。先輩に挨拶するのよ」
ユーコがまず向かったのは音楽室だった。
ひとりでに鳴るピアノ、
なんていう怪談もありそうなところだが、
なぜか死神からの説明であったのはあれだけだ。
ピアノの向こう側。
手を伸ばしてもギリギリ届かないくらい高い位置。
そこに飾られているのは、
歴史的偉人の絵画たちだった。
ベートーベン、モーツァルト、ショパン等々。
その中に1枚、
ひときわ異様な存在感を放つ絵画がある。
名はバッハ。
かの偉大な音楽家の1人である。
「あんたがバッハ?」
ユーコは全く臆することなく、
その絵画に話しかける。
感じていたのだ。
幽霊的なカンで。
そこに確かに、そいつはいる、と。
「……ふ」
バッハの目が光る。
あれこそ学校の七不思議のひとつ。
目の光るバッハの所以。
「Hahaha! よく来たね、3-Aのじゃじゃ馬さん?」
バッハの表情は豊かだった。
ニコリと微笑むと、
垣間見えた白い歯がキラリと光る。
「初めまして。私の通り名は光るバッハだ。よろしく頼むよ」
「へぇ、案外フレンドリーなのね」
「そりゃそうだ。こんな狭い世界だ。同業者とは仲良くやっていかないと」
「あっ、そう。それよりも、話が通じるなら早いわ。あんたのその力、私に寄越しなさい」
「ほぉ、何のために?」
「決まっているじゃない」
ユーコは両手を広げて、
まるで性的欲求に身もだえるようにして、
その頬を真っ赤に染めた。
「この私が! 最っ高の快楽を貪るためよ!」
死神は頭を抱えた。
これでは転生など夢のまた夢だから。
長い付き合いになる。
何年、いや、何十年とかかるのだろう。
そんな恐怖すら覚えていた。
「Hahaha! それは傑作だ! 君は幽霊になって後悔したり、恐ろしくなったりしないみたいだね!」
「当り前じゃないの! こんなに素敵な時間を享受できるのよ?!」
「素敵とまで言うか! ますます気に入った!」
ポロン、とピアノの音がする。
そしてバッハの目が、歯がキラリと光った。
「私の能力はこの2つしかない。とても大切な力だ。簡単には譲らないよ?」
「私を冷血な女って勘違いしていない? 別に奪いに来たつもりはないわ」
「うん? ではどうするって言うんだい?」
「決まっているでしょ? 私の言うことを聞きなさいってこと」
その言葉に死神は耳を疑った。
バッハは有名人だ。
ここにいる幽霊は本人ではないものの、
これだけ有名な絵画を独占するような存在だ。
幽霊同士が争えたなら、
その強大な力にユーコなど一瞬で潰されてしまっただろう。
「本当に面白いねぇ。いいよ、僕を納得させてくれたなら、君の言うことを聞こうじゃないか!」
「良い度胸ね。方法は?」
「君は人を驚かすことを至高の悦びとしているんだろう? だったら、それで勝負だ」
「いいわ。やってあげるけど……後悔しないことね?」
「君こそ」
こうして、ユーコは競うことになった。
バッハという絵画を独占する強力な怪談と。
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