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第1章 偽りの騎士
第2話 容赦はしない 5
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こんな状態の俺でも、ウロボロスは付いて来てくれるだろう。そんな確信がある。予感や願望といった次元を超越して、そうに違いないと強く信じられる。すると、どうしてか心が落ち着いていく気がする。恐怖が薄れ、ここまで足を運ばせた理由、つまり、怒りを覚えていたことを思い出してきた。
「そうか、そうだったな。ウロボロスがいてくれるんだった。それに、皆も」
そう、ウロボロスだけではなく皆もいてくれる。忘れるな、今の俺はユウだ。ドミニオンズ最強のプレイヤー、魔王と言われた男だ。だからこそ抱いたこの怒り、このまま見ない振りをするなんてできっこない。
誓いがある。皆との絆に直結している、俺自身が決めた誓いが。少しばかり足踏みしてしまったけど、選択肢なんて余計なものはあってはならない。やるべきことはひとつ。この村を救う、それだけだ。
「ウロボロス、あの村を助けに行くぞ。戦闘準備を」
「畏まりました。ところで、あの子は如何なさいますか?」
さっきの子は俺のただならぬ様子を見て必死に追いかけて来たのだろう。そしてあの村を見て絶望したと、そんなところか。まぁまぁ離れた所で放心した顔つきで座り込んでしまっている。
あの村に住んでいるのか、はたまた大切な人が暮らしているのか。いずれにしても、あんな一方的な暴力によって成す術もなく焼き尽くされる現場を見れば無理もないか。
「……魔法発動、アブソリュート・ウォール。それにイージス・スピリット」
指定範囲内に対する攻撃をかなり高いランクのものまで無効化する魔法を使用する。それから念のため、アデルの周囲に守護聖霊を付けておく。これで万が一あの守護領域から飛び出されたとしても、また、あれを貫通する攻撃が飛んできても、一発までなら確実に大丈夫だ。これで憂いは無い。
「行くぞ、ウロボロス」
「全ては御心のままに」
ウロボロスと共に、俺は今まさに焼き討ちにあっている村へと踏み込んだ。
ここは地獄だった。とても生身で行こうとは思えない絶望で溢れ返っている。焼け落ちた建物の残骸を灼熱色に染め上げながら、人だったものをいつまでも焼き続けている。そして逃げ惑う村人を切りつけている。あれはただの火ではない。召喚されたモンスターか、はたまた持続系の魔法だ。
「くそ……好き勝手やりがって」
モンスターだろうと魔法だろうと、ステータスを見れば脅威かどうかが判別できる。それに応じて対策も立てられる。すぐに飛び出したいのをグッと堪えて、辺りに一通りステータスチェックをかける。
そうして得られた数値を見て目を疑った。なんだ、この雑魚は。偽装の魔法やスキル、アイテムは使われていないようだから、この情報は信頼できるものなんだろう。でもにわかには信じがたい。まるで初心者用のクエストに紛れ込んだその辺のモンスター、もっと悪くいえば羽虫程度の脅威すら感じられない。
このステータスが本当ならばと、試しに手を振るって風を起こし、発生した衝撃波で火を攻撃する。これは通常攻撃だ。言っておくが俺は魔法使いである。大したダメージなんて出ないはずなのに、直撃すると爆発四散したように飛び散り霧散してしまう。
「お見事で御座います」
「いや……でも、いいのか、これで」
拍子抜けもいいところだ。予想の遥か斜め下をいく雑魚を蹴散らしたところで何になるというのか。なんて考えながら、どこかホッとする自分がいた。こんな雑魚が相手なら俺たちが殺される危険はない。
突然、目の前に一人の村人が倒れ込む。その女性は足から血を流していた。腰が抜けたのもあるのだろう。座り込んで一歩も動かなくなる。すすけた顔を涙と鼻水で更に汚し、それでも生存を望むのか両手を合わせて必死に祈りを捧げている。
「いい訳がなかったな」
余りの肩透かしで失念してしまったが、全く微塵も良くない。何をしに来たのか思い出せば、一瞬でもそんな温いことを考えた自分が恥ずかしい。俺はこの惨状をもたらした奴が憎いんだ。ただただ憎い、この人を見て、より一層その感情が高まったのを感じた。
「脆弱な……何と醜い。人間なぞ、勝手に野垂れ死ねば良いではありませんか」
「言うな、ウロボロス。ここは地獄だ。誰だってあぁなる」
ウロボロスはそういう風に考えるのか。少し悲しいけど、生い立ちを考えれば無理もない。この件については後々話し合っていくとして、目の前のこの人をどうするか。放っておくのはしのびないが、この惨状を打開する方が先決だろう。念のためさっきの子にかけた防御魔法と同じようにかけてから敵を探して歩き回る。
「カルマから報告がありました。この先の広場に術者がいるとのことです」
「そうか、何も足を使って見て回る必要は無かったな」
どこからか俺の行動を見守り、先回りして調査してくれていたのだろう。本当にできた配下たちだよ。それに比べて俺はなんだ、この体たらくは。皆の主として君臨するのなら、もっと気を引き締めなければならない。
「ファントム・シーカーは基本中の基本。それを忘れてしまったなんてな。これじゃあ、魔王失格だな」
気持ちを入れ替えて自分の力をきちんと思い出しておこう。
「そうか、そうだったな。ウロボロスがいてくれるんだった。それに、皆も」
そう、ウロボロスだけではなく皆もいてくれる。忘れるな、今の俺はユウだ。ドミニオンズ最強のプレイヤー、魔王と言われた男だ。だからこそ抱いたこの怒り、このまま見ない振りをするなんてできっこない。
誓いがある。皆との絆に直結している、俺自身が決めた誓いが。少しばかり足踏みしてしまったけど、選択肢なんて余計なものはあってはならない。やるべきことはひとつ。この村を救う、それだけだ。
「ウロボロス、あの村を助けに行くぞ。戦闘準備を」
「畏まりました。ところで、あの子は如何なさいますか?」
さっきの子は俺のただならぬ様子を見て必死に追いかけて来たのだろう。そしてあの村を見て絶望したと、そんなところか。まぁまぁ離れた所で放心した顔つきで座り込んでしまっている。
あの村に住んでいるのか、はたまた大切な人が暮らしているのか。いずれにしても、あんな一方的な暴力によって成す術もなく焼き尽くされる現場を見れば無理もないか。
「……魔法発動、アブソリュート・ウォール。それにイージス・スピリット」
指定範囲内に対する攻撃をかなり高いランクのものまで無効化する魔法を使用する。それから念のため、アデルの周囲に守護聖霊を付けておく。これで万が一あの守護領域から飛び出されたとしても、また、あれを貫通する攻撃が飛んできても、一発までなら確実に大丈夫だ。これで憂いは無い。
「行くぞ、ウロボロス」
「全ては御心のままに」
ウロボロスと共に、俺は今まさに焼き討ちにあっている村へと踏み込んだ。
ここは地獄だった。とても生身で行こうとは思えない絶望で溢れ返っている。焼け落ちた建物の残骸を灼熱色に染め上げながら、人だったものをいつまでも焼き続けている。そして逃げ惑う村人を切りつけている。あれはただの火ではない。召喚されたモンスターか、はたまた持続系の魔法だ。
「くそ……好き勝手やりがって」
モンスターだろうと魔法だろうと、ステータスを見れば脅威かどうかが判別できる。それに応じて対策も立てられる。すぐに飛び出したいのをグッと堪えて、辺りに一通りステータスチェックをかける。
そうして得られた数値を見て目を疑った。なんだ、この雑魚は。偽装の魔法やスキル、アイテムは使われていないようだから、この情報は信頼できるものなんだろう。でもにわかには信じがたい。まるで初心者用のクエストに紛れ込んだその辺のモンスター、もっと悪くいえば羽虫程度の脅威すら感じられない。
このステータスが本当ならばと、試しに手を振るって風を起こし、発生した衝撃波で火を攻撃する。これは通常攻撃だ。言っておくが俺は魔法使いである。大したダメージなんて出ないはずなのに、直撃すると爆発四散したように飛び散り霧散してしまう。
「お見事で御座います」
「いや……でも、いいのか、これで」
拍子抜けもいいところだ。予想の遥か斜め下をいく雑魚を蹴散らしたところで何になるというのか。なんて考えながら、どこかホッとする自分がいた。こんな雑魚が相手なら俺たちが殺される危険はない。
突然、目の前に一人の村人が倒れ込む。その女性は足から血を流していた。腰が抜けたのもあるのだろう。座り込んで一歩も動かなくなる。すすけた顔を涙と鼻水で更に汚し、それでも生存を望むのか両手を合わせて必死に祈りを捧げている。
「いい訳がなかったな」
余りの肩透かしで失念してしまったが、全く微塵も良くない。何をしに来たのか思い出せば、一瞬でもそんな温いことを考えた自分が恥ずかしい。俺はこの惨状をもたらした奴が憎いんだ。ただただ憎い、この人を見て、より一層その感情が高まったのを感じた。
「脆弱な……何と醜い。人間なぞ、勝手に野垂れ死ねば良いではありませんか」
「言うな、ウロボロス。ここは地獄だ。誰だってあぁなる」
ウロボロスはそういう風に考えるのか。少し悲しいけど、生い立ちを考えれば無理もない。この件については後々話し合っていくとして、目の前のこの人をどうするか。放っておくのはしのびないが、この惨状を打開する方が先決だろう。念のためさっきの子にかけた防御魔法と同じようにかけてから敵を探して歩き回る。
「カルマから報告がありました。この先の広場に術者がいるとのことです」
「そうか、何も足を使って見て回る必要は無かったな」
どこからか俺の行動を見守り、先回りして調査してくれていたのだろう。本当にできた配下たちだよ。それに比べて俺はなんだ、この体たらくは。皆の主として君臨するのなら、もっと気を引き締めなければならない。
「ファントム・シーカーは基本中の基本。それを忘れてしまったなんてな。これじゃあ、魔王失格だな」
気持ちを入れ替えて自分の力をきちんと思い出しておこう。
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