魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第3話 復興します 2

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 復興の話に戻ろう。このやり取りからアデルは余り良い顔をしていない。このままではこちらの助力を受け入れてくれないだろうな。

「あのさ、流石に野宿はマズいだろう? せめて雨風を凌げる所だけでも作らせてくれないか? それを見て、以降も復興を任せてくれるかどうか判断してくれればいい」
「……そうですね。もう昼過ぎです。今からでは近くの村へ移動することも叶いませんし、お願いできないでしょうか」
「任せてください」

 良かった。これで何もさせて貰えず帰るしかない、なんて最悪の事態は免れた。後は立派な建物をこしらえるだけである。
 そうは言っても簡単な話ではない。実際にイチから建て直すとなると問題はたくさんあるだろう。プロならば、あれ、これと必要な物を挙げていけるのだろうが、残念ながら俺は素人だ。物を作るゲームを多少遊んだことがあるだけの、にわかとも自称できないレベルである。つまり必要物品からして揃えられない状況である。
 頼りはウロボロスたちを初めとする配下たちだけ。適当に思い付いたことを言いながら、祈る思いでチラリと目を向ける。

「資材はまぁ……そこら辺から調達するとして、労働力は……」

 労働力。わざわざこう言ったのは、我ながら悪い考えがあってのことだ。
まず、猿でもわかるだろうがこの状況で村人たちの力は借りられない。では俺が全て作業するかとなると、いや、待てと言ってくれる人たちがいる。そう、皆が率先して手伝いを買って出てくれないかな、と期待してのことだった。
 しかし、どういう訳か狙いは外れてしまった。皆、目をキラキラさせて俺の方を見ているだけで何も言ってこない。ウロボロスもまた、まるでおやつを前にした子犬のように、あるはずもない尻尾をブンブン振り回していそうな勢いで待機している。

「あー……その、アザレア、お前にお願いしたいことがある。できるか?」

 それならばと、一番物作りに精通していそうなアザレアに頼ってみる。こいつは錬金術師だ。素材の調達、調合は勿論、それを使った合成までお手のものである。建築に関しても俺よりはずっとどうにかしてくれそうである。背後が妙にむず痒くなる頼もしさだろうけど。

「わ、我が君! 私、私が先ではないのですか!?」

 そして案の定、ウロボロスが待ったをかけてきた。だが今回ばかりは名乗りを上げられても困る。ウロボロスは高いステータスが売りだ。それも飛び切りの、だ。建築には腕力が必要なのかもしれないが、そういうレベルでは済まず破壊されてしまいかねない。

「あー……うん、ほら、お前は取っておきだから」
「取っておき……我が君の……!」

 また良からぬ妄想を始めてしまっただろうが深く考えないことにして、アザレアを促す。このままでは何もしないまま夜になったら大変だ。それにほら、余り遊んでいるとアデル達の視線も冷たくなっていくし。

「おぉ……この僕にできることならば……いいえ、例え不可能であっても現実のものとしてみせましょう! この愛に誓って!」
「清く正しい期待をさせて貰うよ。まずは労働力が欲しい」
「畏まりました!」

 アザレアはオーケストラの指揮者のように両手を広げると、薬のようなカプセル状のアイテムをたくさん落とす。それらひとつひとつが地面に触れるや否や見る見る大きくなっていき、俺と同じくらいの大きさのゴーレムへと変身した。
 ウッドゴーレムと言えばわかりやすいだろうか。木の断面のような独特の文様が入った表面である。こいつの凄いところは倒されると種子をばらまいて増殖する能力だ。ただまぁ、それ以上でもそれ以下でもなく、本当にそれしか能の無いとても安価な下級モンスターである。それでもあのヴェルたちと比べると、この世界の成人男性より遥かに上のステータスを持っている。労働力としてはうってつけという訳だ。

「今、世界は僕の色に染め上がる。土は肉で、水は血。さぁ、無機物たちよ、我が手足となりて従事せよ。ゴーレム召喚!」

 更に、もの凄く痛々しい詠唱っぽい何かの後、地面から無数の腕が伸び、地中からソレは這い出した。土で作られた下級モンスター、サンドゴーレムだ。
 ウッドゴーレムと違い、それなりのフィジカルを持つ奴らである。増殖こそしないが、腕力という面では大変に活躍してくれるに違いない。資材調達をサンドゴーレムで行い、増やしたウッドゴーレムで建築を行えば、ひょっとするとあっという間に一軒建ってしまうかもしれない。
 大変に良いチョイスだ。それはいい。それはいいのだが、どうしても聞かずにはいられない。

「そ……そんな詠唱が必要なのか?」

 はっきり言おう。痛い。聞いていて胃の辺りがキュウってなる。何をしたのか把握するためにも魔法やスキルの名前は言わないと駄目だろうが、詠唱までは要らないだろう。百歩譲って唱えないと使えないのならわかるが、思い出して欲しい。エグゾダスを撃った時は何も口上なんて要らなかったじゃないか。ならば、この詠唱はアザレアがわざわざ考えて作ったということになる訳だ。そして、である。ここまでの思考を一気に無かったことにできるレベルの突っ込みもある。サンドゴーレムはアイテムだ。たぶんさっきバラまいたカプセルの中に紛れていたはずなのだ。だから魔法でもスキルでもない訳で、どう足掻いても詠唱なんて不要なはずである。

「いえ、これは僕オリジナルです。魔王様の気を引くため、先ほど考えた自信作で――」
「却下だ。0点だ。普通にやってくれ」
「流石は魔王様。この程度の完成度ではお気に召さないと、わかりました。次こそはご満足頂けるよう頑張る所存です!」
「できるだけ頑張らない方向で頼む」

 普通に魔法の名前を言うくらいで留めて欲しい。いやさ、それも本当は恥ずかしいところなんだけどね。だって、道端で急に「サンダー!」とか叫ぶ奴がいたらみんな逃げるでしょ。それと同じ。同じだけど、ここは我慢か。何を使ったのか情報共有する手段が他に見つかるまでは、声高らかに「サンダー!」と叫んで貰わなければ困る。
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