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第2章 暁の竜神
第10話 ユウとナディアの会談 6
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ふと、ウロボロスたちの顔がチラ付く。違う。アデルやルーチェの件は延長線上の話に過ぎない。一番大切なことはたったひとつ。それすらも悪と言われているのが恐いんだ。
「さて、現状についての説明はここまでです。ここからが最も重要な質問です。貴方は……世界の敵ですか?」
敵。そうか世界の敵か、俺は。そうだったな。俺は魔王だ。魔王と自称しているのは皮肉であり、覚悟でもある。俺の成したことが積み重なっていって、周りからそう呼ばれるようになった。それでも立ち向かおうと思って、開き直っただけだったな。でも、それはゲームの中での話。こうして面と向かって言われるのは初めてだ。こんなにも魔王であることの重みを感じさせられたのは、初めてなんだよ。
「我が君、お気を確かに!」
「ウロボロス……でも俺は……」
ウロボロスに手を取られて気が付いた。震えている。ガタガタと、指先が。いや、手だけではなく全身が。恐いんだ。この世全ての人々から忌み嫌われることが。その先に待つ孤独の未来が。どうやら、俺が魔王でいられたのはゲームの世界だったからのようだ。顔を見られない。リアルに影響がない。そんな安心感があったから世界にノーと言い続けられた。
でも今は違う。こうして面と向かって言われて、どうしようもなく恐ろしい。俺は一体何なんだろう。魔王ユウとして皆と一緒にいながら、魔王になりきれない弱者じゃないか。強大な力に酔いしれ謳歌することも、拒絶して死ぬことも拒み、どっちつかずで迷惑をかけ続ける愚か者。
「我が君、失礼致します」
温かった。くすぐったくて、甘い香りがして、そして心が穏やかになっていく。見ると、ウロボロスが強く、でも優しく抱き締めてくれていた。
「御安心ください。我が君の行く末が如何様になろうとも、例え世界から孤立し非難されようとも、私たちは永遠に一緒です」
あぁ、そうか。そうだった。また俺は大切なことを忘れそうになっていた。逃げも隠れもする必要なんてなかった。ウロボロスたちと出会えて、守れて、一緒にいられる。それだけで何も恐れる必要なんてないんだよな。ゲームも現実も関係ない。俺は魔王として生きなくちゃ、自分自身を許せない。
「そうだったな……悪かったよ、ウロボロス。ありがとう」
さて、本当ならこのまま甘いシーンにでもなるんだろうが、生憎と客人の前だ。決意も新たにしたことだし、答えなくてはならない。魔王ユウとしての、俺の道を。この答えで公表する。
「俺は魔王だよ。邪魔立てする者は容赦なくねじ伏せる……そんな男だ。世界が俺を悪としてウロボロスたちを攻撃するのなら、この世界の敵になろう」
「そうですか……それが貴方様の選ばれた道、ということですね」
ナディアは少しだけためらったような仕草を見せるが、しっかりと俺の目を見据えてくる。なんだ、まだ何か言いたいことでもあるのか。
「それでは足りませんよ、魔王様」
「足りない……とは、どういうことだ?」
「貴方様は強者です。世界中のどこを探しても、貴方様に敵う者はそうそういないでしょう。これから先、貴方の一挙一動が人の、いえ、国の、世界の行く末すら左右していくことでしょう。その結果、悲劇や惨劇、新たな争いが起こることもありましょう」
そうだろうな。俺は魔王。何もかもを思い通りにする力を持つ。発言ひとつ、指先のひと振りですら全てが変わることもあるだろう。そんなのは覚悟の上だ。ドミニオンズでもそうやったように、ウロボロスたちを守るために全力を尽くすつもりだ。
「しかし……そうして世界全てを破壊し尽くしたその先に、一体何があるというのでしょう?」
「何が……とは?」
「塵ひとつ残さず……それこそ、文字通り一切合切が消失するでしょう。衣食住や娯楽は勿論、大地も、空も、朝も夜も無く、永遠の闇の中を彷徨い続ける。ウロボロス様はそれでも構わないと仰るでしょう。しかし、それは貴方様の真に望まれる未来ですか?」
「それは……」
考えたこともなかったな。全てが消えてしまったとは言うが、それはつまり、俺が何もかもを破壊し尽くした後の世界なのだろう。嫌だな、それは。そんなことをしたら後悔してもし切れないだろう。でもこのままいけば、間違いなくナディアの言うような未来が必ずやって来る。そんな確信が持てていた。
「願わくば……皆の希望になって欲しい」
「希望に……?」
唐突にそんな言葉を投げかけられた時だった。突然、ドアが乱暴に開け放たれる。そこにいたのは血相を変えたアザレアだった。肩で息をし、衣服が乱れている。余程に急いで来たのだろう。そしてその理由は決して良くないのだろうと、瞬時に理解した。
「さて、現状についての説明はここまでです。ここからが最も重要な質問です。貴方は……世界の敵ですか?」
敵。そうか世界の敵か、俺は。そうだったな。俺は魔王だ。魔王と自称しているのは皮肉であり、覚悟でもある。俺の成したことが積み重なっていって、周りからそう呼ばれるようになった。それでも立ち向かおうと思って、開き直っただけだったな。でも、それはゲームの中での話。こうして面と向かって言われるのは初めてだ。こんなにも魔王であることの重みを感じさせられたのは、初めてなんだよ。
「我が君、お気を確かに!」
「ウロボロス……でも俺は……」
ウロボロスに手を取られて気が付いた。震えている。ガタガタと、指先が。いや、手だけではなく全身が。恐いんだ。この世全ての人々から忌み嫌われることが。その先に待つ孤独の未来が。どうやら、俺が魔王でいられたのはゲームの世界だったからのようだ。顔を見られない。リアルに影響がない。そんな安心感があったから世界にノーと言い続けられた。
でも今は違う。こうして面と向かって言われて、どうしようもなく恐ろしい。俺は一体何なんだろう。魔王ユウとして皆と一緒にいながら、魔王になりきれない弱者じゃないか。強大な力に酔いしれ謳歌することも、拒絶して死ぬことも拒み、どっちつかずで迷惑をかけ続ける愚か者。
「我が君、失礼致します」
温かった。くすぐったくて、甘い香りがして、そして心が穏やかになっていく。見ると、ウロボロスが強く、でも優しく抱き締めてくれていた。
「御安心ください。我が君の行く末が如何様になろうとも、例え世界から孤立し非難されようとも、私たちは永遠に一緒です」
あぁ、そうか。そうだった。また俺は大切なことを忘れそうになっていた。逃げも隠れもする必要なんてなかった。ウロボロスたちと出会えて、守れて、一緒にいられる。それだけで何も恐れる必要なんてないんだよな。ゲームも現実も関係ない。俺は魔王として生きなくちゃ、自分自身を許せない。
「そうだったな……悪かったよ、ウロボロス。ありがとう」
さて、本当ならこのまま甘いシーンにでもなるんだろうが、生憎と客人の前だ。決意も新たにしたことだし、答えなくてはならない。魔王ユウとしての、俺の道を。この答えで公表する。
「俺は魔王だよ。邪魔立てする者は容赦なくねじ伏せる……そんな男だ。世界が俺を悪としてウロボロスたちを攻撃するのなら、この世界の敵になろう」
「そうですか……それが貴方様の選ばれた道、ということですね」
ナディアは少しだけためらったような仕草を見せるが、しっかりと俺の目を見据えてくる。なんだ、まだ何か言いたいことでもあるのか。
「それでは足りませんよ、魔王様」
「足りない……とは、どういうことだ?」
「貴方様は強者です。世界中のどこを探しても、貴方様に敵う者はそうそういないでしょう。これから先、貴方の一挙一動が人の、いえ、国の、世界の行く末すら左右していくことでしょう。その結果、悲劇や惨劇、新たな争いが起こることもありましょう」
そうだろうな。俺は魔王。何もかもを思い通りにする力を持つ。発言ひとつ、指先のひと振りですら全てが変わることもあるだろう。そんなのは覚悟の上だ。ドミニオンズでもそうやったように、ウロボロスたちを守るために全力を尽くすつもりだ。
「しかし……そうして世界全てを破壊し尽くしたその先に、一体何があるというのでしょう?」
「何が……とは?」
「塵ひとつ残さず……それこそ、文字通り一切合切が消失するでしょう。衣食住や娯楽は勿論、大地も、空も、朝も夜も無く、永遠の闇の中を彷徨い続ける。ウロボロス様はそれでも構わないと仰るでしょう。しかし、それは貴方様の真に望まれる未来ですか?」
「それは……」
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「希望に……?」
唐突にそんな言葉を投げかけられた時だった。突然、ドアが乱暴に開け放たれる。そこにいたのは血相を変えたアザレアだった。肩で息をし、衣服が乱れている。余程に急いで来たのだろう。そしてその理由は決して良くないのだろうと、瞬時に理解した。
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