【R18】呪われた(元)王子の最低な求愛

環名

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恋は所詮下心 (上)

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 昨日と同じベッドに連れて行かれて、キスをしながらパンプスを脱がされた。

 オリヴィエ様は、今日は革靴を履いていらっしゃったようで、やはりキスをしながら靴を脱がれたようだ。
 オリヴィエ様が男性でも、キスは嫌ではないし、気持ちいい。

 ちゅうっとシェイラの舌先を吸って離れていくオリヴィエ様をぼんやりと見ながら、そんなことを考える。
 すり、と頬を撫でられて、心地よさとくすぐったさにシェイラが目を細めると、オリヴィエ様はふっと笑われた。

「気持ちよさそうな顔。 やっぱり、キスは好きだね、シェイラ」
 左の頬をオリヴィエ様の手で包まれていて、右の目尻に唇を押し当てられる。

 キスは好き。
 でも、それだけでなく、例え男性でもオリヴィエ様自身が好きなのだ。
 けれど、それを伝えるわけにはいかない。

 オリヴィエ様はきっと、互いに都合のいい関係だと思っているから、シェイラに触れてくれるのだ。
 だから、シェイラはオリヴィエ様の言葉を肯定するにとどめる。

「ん…。 すき…。 すき、です」
 シェイラは、指先でオリヴィエ様の唇にそっと触れる。
 嫌がられるかと思ったけれど、オリヴィエ様はシェイラのすることに抵抗せずに、微笑んでくれた。

「何?」
 その微笑みが優しくて、胸の奥がじわとあたたかくなる。
 きっと、同時にシェイラの気も緩んでしまったのだろう。
 シェイラは自分からオリヴィエ様の唇に唇を押し当てていた。

 オリヴィエ様はふと微笑んで、シェイラの唇をそっと吸い、舌先でつんつんと唇の隙間をつついてくる。
 散々オリヴィエ様のキスに慣らされたシェイラは、誘われるままにちゅうとオリヴィエ様の舌を吸って離れた。

「…唇も、舌も、柔らかいです。 柔らかいところなんて、なくなってしまったのかと思っていたのに」
 わかっているつもりではあったが、女性の身体と男性の身体は全く造りが違っているらしい。
 女性のオリヴィエ様はしなやかで柔らかな身体をしていたが、今は、弾力のある筋肉でしっかりとした身体をなさっている。
 羽毛のクッションと綿の詰まったクッションくらいには触れた感じが違うと思う。

 それを告げれば、オリヴィエ様はシェイラの耳にそっと口づけ、そこで囁く。
「…シェイラは変わらず、可愛くて気持ちいいね」

 シェイラがびく、と反応したことに、きっとオリヴィエ様は気づいたのだろう。
 大好きな中低音の甘い声には、笑みが含まれているように感じた。

 オリヴィエ様の唇は、シェイラの耳を挟み舐めしゃぶるようにする。
 ぬるぬる、むずむず、ぞわぞわとしたその感覚だけでも落ち着かないのに、脳内に水音が響くのも落ち着かない。
 ぎゅっと目を瞑ってベッドの敷布に爪を立てて口を引き結んでいたが、ついに我慢が出来なくなって、シェイラは声を上げた。


「ン、あの」
「ん? 何?」
 もう一度、耳元で囁かれて、耳を舐められる。

 ぐっと声は呑み込んだけれど、このままではいつ声が漏れるかわからない。
 このひとは、わかってやっているのではないだろうか、と疑わしくなるほどだ。
 しかも、むずむずざわざわする感じが、お腹の方へと移ってきてしまった。

「あの、へん、なかんじ、なので、もう」
「ん? 気持ちいいから、もっと?」
 シェイラは必死で耳はやめてほしいと告げようとしたのだが、まるで違う言葉が耳元で聞こえる。

 シェイラの発した言葉がオリヴィエ様の中で変換されたのだと思うのだが、如何せん確信が持てない。
 もしかすると、シェイラの言いたかったことと口から零れた言葉が違ったのかもしれない。

 だから、シェイラは否定しようとしたのだが、ぢゅっと耳朶を強く吸われて、喘ぎのような声が漏れてしまった。
「言ってな、ァあ、ん」
 慌てて口を噤んだが、満足そうに笑んだオリヴィエ様は、頬にキスをくれた。
「うん、可愛い声、出たね」
 変な声が出た、とシェイラは思ったのだが、オリヴィエ様にとってはあの変な声は【可愛い声】になるらしい。

 オリヴィエ様はシェイラの首筋に口づけながら、シェイラの身に着けているエプロンを解く。
 それと同時に、ぱさりと音がして、頭が軽くなるような錯覚を覚える。
 すぐに、頭が軽くなったのではなく、髪が解かれたのだということには気づいた。

 オリヴィエ様は、シェイラのブラウスの釦を片手で器用に外しながら、もう片方の手でシェイラの髪に指を絡める。
「柔らかくて、しっとりしているね。 いい匂い。 …まあ、シェイラは全身いい匂いだけど」

 髪を撫でながら、ブラウスを脱がせたオリヴィエ様は、シェイラの肌に顔を埋めながらスカートのホックを外してスカートも脱がせる。
 あっという間にシェイラは、ビスチェとショーツ、ガーターベルトとストッキングという破廉恥な姿にされてしまった。

 オリヴィエ様は、一度シェイラから離れて、じっとシェイラの全身を見つめる。
 その黒曜石の瞳は、熱で潤んだようになっていて、シェイラはどきりとした。


「…すごく綺麗だ。 このまま、私の部屋に飾っておきたいくらい」
 オリヴィエ様が言い終わる頃には、シェイラの【どきり】が【ぞわり】に変わっていたのは言うまでもない。


「あの…、冗談、ですよね?」
 シェイラが恐る恐る問えば、オリヴィエ様は瞳に熱を宿したままで微笑む。

「では、冗談にしてあげる」

 オリヴィエ様はシェイラを安心させようとしてくれたのかもしれないが、逆効果だ。
 シェイラがもう一度【ぞわり】としたのは言うまでもないだろう。
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