【R18】紅薔薇の棘に口づけ

環名

文字の大きさ
上 下
28 / 44
紅薔薇の棘

一束と六輪*

しおりを挟む
 そんなことを思いながら、アンネローゼは近衛騎士団の制服を脱いでいくロワきゅんの後ろ姿を盗み見る。
 やはり、ロワきゅんはがっしりしっかり【青年】の身体という感じではなく、未発達で不完全な感じがする。 けれど、アンネローゼからすれば、それがロワきゅんの魅力で、ロワきゅんをアンネローゼにっての不可侵の領域に置く理由となったものなのだと思う。

 ナイトガウンを身に着け、腰のところで紐を結びながらロワきゅんは近づいてくる。
 ベッドに上がり、アンネローゼの脚を跨ぐようにしてアンネローゼに迫った。

「アンネローゼ様、キスを、しても?」
 そのように問われたので、アンネローゼは微笑んで、ロワきゅんに自分からキスをした。
 ロワきゅんは、キスにはある程度耐性があるのか、アンネローゼの唇をはむはむと食むようにしてきた。 唇の内側の粘膜が触れるのが気持ちよくて、アンネローゼも同じように返せば、今度は舌と舌が触れ合う。 舌先と舌先を擦り合わせているだけなのに、生ぬるくて、とろとろ、ぬるぬるで、妙な感覚が胸の奥とお腹の奥に芽生える。

 その間、ロワきゅんの手は、薄い寝衣の上から、背中を撫でたり太腿を撫でたりしているのだ。
 どこに触れようかと、悩んでいるのか、戸惑っているのか…。
 ぼんやりとしながらそんなことを考えていると、いつの間にかキスが終わっていたらしい。

 目と鼻の先にいるロワきゅんは、いつもの清冽さや静謐さが想像できないような、生身の人間の表情をしていた。 余裕がなく、熱ばんでいる。
「あの、脱がせても、いい、ですか?」

 自分で脱いでもいいのだが、恐らく、ロワきゅんはそれをしたいがために訊いてきたのだろう。
 だからアンネローゼは、「自分で脱ぎます」とは言わなかった。
 だからといって、「どうぞ」、と言葉にするのもなんとなく恥ずかしくて、アンネローゼは俯きながら頷く。

 どうせ脱ぐのですから、とは言われなかったが、下着は用意されていなかった。
 アンネローゼは、眠るときに基本下着は身に着けないので、それは構わない。
 だが、ロワきゅんに寝衣を脱がされながら、下着を身に着けておいた方が裸を見られるまでに猶予があるのだな、と考えた。 もう、今更だが。
 脱がせた寝衣を手にしたまま、ロワきゅんが固まっているので、アンネローゼは思わず胸元と股間を手で隠した。

「あ、の?」
 アンネローゼが控えめに問えば、ロワきゅんはハッと我に返ったようだった。
 そして、頬を染めながらばつが悪そうにそっと視線を外し、アンネローゼの寝衣を枕元に寄せる。

「…綺麗で、見惚れて」
 これには、つられてアンネローゼも真っ赤になった。

 顔については、【気の強そうな】という前置きがあるが、美人だと老若男女問わず言われてきた。
 だが、裸については、異性に見せたこともなければ、見せていないのだから綺麗だなんて言われたことなどなかったのである。
 世辞など慣れているはずなのに、それが、こんなに、恥ずかしいことだなんて誤算だ。

 ロワきゅんから目を逸らし続けているアンネローゼの頬に、そっと唇が触れる。
「触れ、ますよ」
 静かな声が落ちたかと思えば、そっと肩から二の腕までを撫でられて、驚いた。
 もっと、最初から、直接的なところに触れるかと思っていたからだ。

「ん」
 首筋や、鎖骨にやわらかく口づけられるたびに、肌がざわざわする。
 そのざわざわに胸が落ち着かなくて、口から心臓が飛び出しそうな錯覚に陥って、アンネローゼはロワきゅんに手を伸ばす。
「キス、したい、です」
 ロワきゅんは、ぐっと唇を引き結んだかと思えば、わずかに唇を開いてアンネローゼにキスをくれる。
 ロワきゅんに触れられるのも好きだが、ロワきゅんとキスをするのも好きだ。
 優しくて、気持ちが良くて、難しい色々を考えられなくなる。

 舌が融けるかもしれない、と思っていると、胸の裾から掬うように触れられて、思わずびくりとする。
 その拍子に、唇は離れたのだが、ロワきゅんの手が控えめにだが興味が尽きない様子でアンネローゼの胸をやわやわと揉んでいるのだ。
「すごい…こんなに、柔らかいのですね。 でも、頂は、凝ってきた」

 ロワきゅんは、裸体の女性に触れるのは本当に初めてなのだろう。
 うっとりとした表情なのに、瞳はアンネローゼの胸に釘付けになっている。

「薔薇の蕾のようですね…。 可愛い」
「っ…」
 可愛い、のところで、ロワきゅんは【薔薇の蕾】と評した尖りを、人差し指の腹で払うような動きをした。 思わず息を呑むと、ロワきゅんは心配そうにアンネローゼに確認する。
「痛い、ですか?」

 上目遣いが可愛すぎる。 鼻血が出そうだ、と鼻を摘まむようにしながら右手で鼻と口元を覆う。
 左手は、ともすると後ろに倒れそうになる身体を支えるために、ベッドに置いた。

「いえ…、変な、感じで、ん」
 ロワきゅんが、その尖りを撫でたり摘まんだりするので、声が漏れる。
「…本当に、可愛い…」
「ぅひゃ」
 鎖骨を辿っていたロワきゅんの唇が、いつの間にかアンネローゼの胸の尖りを唇で食んでいて、変な声が出てしまった。
 ロワきゅんも、その声に驚いて、一度顔を上げたようだ。
「いやですか?」
「…いやでは、ありません。 …その、続けて、くださる…?」

 真っすぐに見上げて問うロワきゅんに、胸の奥がきゅうっとなる。
 アンネローゼの願いに、ロワきゅんはひとつきれいな笑みを見せて、返事の代わりに舌先を差し出した。

 紅い、舌が、アンネローゼの胸の尖りに向かって伸ばされるのを、どきどきしながら見下ろす。
 ぬるり、としたのはその中心ではなく尖りを囲むように同じ色で色づいている部分で、ロワきゅんの舌がそこを辿っている。
 胸の尖りが、むずむずして、じれったいような気分になってくる。

 自分から、身体を動かしてしまおうか、そんな思いが頭の隅を掠めたとき、決定的な刺激がもたらされた。 ロワきゅんの舌が、アンネローゼの胸の尖りを押し潰すようにして舌先で刺激したのだ。

「っ…!」
 そのまま、アンネローゼの尖りはロワきゅんの口に含まれて、吸い上げるようにされたり、甘噛みされたりしている。 不思議なことだが、繰り返される刺激を、どこからか気持ちいいと感じるようになって、刺激されるたびに声が漏れる。

 それから、月が廻ったわけでもないのに、自分の中を何かが伝う感覚、脚の間から漏れる感覚があって、アンネローゼはぎくりとする。 自分のそこがどうなっているかわからずに、もじもじと太腿を擦り合わせていたのだが、ロワきゅんはそれに気づいたのだろう。
 ロワきゅんはアンネローゼの足元の方へと移動する。 だから、何となく予感もあって、アンネローゼは膝を曲げたのだ。 その膝に、そっとロワきゅんの手が置かれる。
「見ます、よ…?」


しおりを挟む

処理中です...