【R18】お猫様のお気に召すまま

環名

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【2】猫ではないキアラの新生活

閑話.震天動地

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「マタタビ、抜けた?」
 キアラを抱えて、一緒に湯に浸かりながら、ヒヴェルディアは尋ねた。

「はい…」
 そう返事はしてくれるものの、キアラはヒヴェルディアを見ないし、多少ご機嫌斜めだ。
 ヒヴェルディアに恥ずかしいことを強要されたのが、相当に恥ずかしかったらしい。
 ここで重要なのは、恥ずかしがっているし、恥ずかしかったが、本当の意味で嫌がってはいない、ということだと、ヒヴェルディアは思っている。
 そして、それでも大人しく一緒にお風呂に入ってくれるのが可愛いのだが、複雑だ。


 ヒヴェルディアは、キアラの素股で無事達することができたのだが、キアラの腹や胸のあたりまで欲望を飛び散らせることとなった。
 キアラの身体はヒヴェルディアの欲望と、キアラ自身の雫でべとべとだし、ヒヴェルディアの身体も衣服も、ベッドも然り。

 魔法でシーツを乾かしはしたものの、キアラが嫌がるものだから、シーツを換えることとなったし、お互いにべとべとの身体を清めるために入浴することになった。
 可愛かったのだから、そんなに拗ねなくてもいいのに。


「キーアラ、機嫌直して?」
 後ろから覗き込みながら言っても、キアラは無反応だ。


 何と言ったら、キアラの気が引けるだろう。
 そんな考えと、キアラと対等な関係になりたい、ずっと思っていた願いが、一緒になったのだと思う。
 気づけば、唇から言葉が、零れていた。



「ねぇ、キアラ。 結婚、しようか」



 自分の声が紡いだ言葉が耳に届いて、ヒヴェルディアも驚いた。
 もっと、色んな手順を踏むとか、もっと、適した場面や雰囲気の中で言うとか、すればよかったのだが、言葉となって口から出たものを、今更取り消すことはできない。
 どく、どく、と大きく脈打ち始めた鼓動を感じながら、ヒヴェルディアはジッと、キアラの返事を待つ。


 しばしのち、キアラの横顔、グリーンガーネットの瞳を縁取る長い睫毛がばさばさと羽ばたくように瞬いた。
 そして、ゆっくりと、ヒヴェルディアに向く、キアラの顔。
 だが、その顔は、ぽかんとしている。
 まるで、何を言われているのか、わからない、とでも言うかのような、表情だった。


「…何、その反応は」
 その顔を見たら、駆け出した鼓動が、速度を落とす。
 そんな顔をされる理由が全くわからなくて、ヒヴェルディアは思わず、口にした。
 だが、キアラの答えは、ヒヴェルディアの予想の、遥か斜め上を行くものだった。


「キアラは人猫族ですから、人間のご主人様とは結婚しませんよ?」


 ご主人様、そんなこともご存じないのですか? あるいは、ご主人様何を仰っているのですか? と、キアラの顔が言っていた。


 は? とは口に出さなかったが、ヒヴェルディアはまさしくそんな顔をしていたことだろう。
 全く意味が解らない。


 誰がそんな返答を予測しただろう。
 少なくとも、ヒヴェルディアは全く予測しなかった。
 これだけは、確かだ。

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