「パパ、ごめんなさい」息子の瞳が涙で滲むとき。

ポケットの物語

文字の大きさ
1 / 1

「パパ、ごめんなさい」息子の瞳が涙で滲むとき。

しおりを挟む
60歳、全身タトゥーまみれの大男・マックス。彼の命そのものである一人息子・レオは、7歳にしてプラチナブロンドとスチールブルーの瞳を持つ、亡き妻生き写しの「天使」だ。しかし中身は、父親譲りの超がつくやんちゃ坊主。 これは、雪山で起きたあるアクシデントと、不器用な父親の、痛いほどの愛の物語。

雪煙を巻き上げて滑降していく小さな背中。俺の視線の先にあるのは、ただの子供じゃない。俺の命そのものだ。

真っ白なゲレンデに、レオのプラチナブロンドが陽光を反射して煌めいている。あいつが身に着けている真っ赤なウェアは、まるで雪原に落ちた鮮烈な血の雫のようだ。

「レオ! 調子に乗るな! スピードを落とせ!」📢💢

俺の怒鳴り声は、冷たい風にかき消されていく。

あいつは最近、どうしようもなくやんちゃだ。7歳という年齢のせいか、それとも俺に似てきたのか。

ヘルメットの隙間から覗くあの髪、そして透き通るような肌は、間違いなく死んだ妻・リサの北欧の血を受け継いでいる。だがあの向こう見ずな性格だけは、どう見ても俺だ。

レオは俺の警告なんて聞こえていないかのように、さらに加速した。カービングの切れ味が鋭すぎる。あいつの運動神経は素晴らしいが、今はそれが命取りになりかねない。

前方には、ネオンカラーのジャケットを着たスキーヤーがゆっくりと滑っている。レオのラインと交錯する。

「レオ!! 前だ!!」😱⚠️

俺の心臓が早鐘を打つ。

レオが気づいた時には遅かった。あいつは慌ててエッジを立てようとしたが、スピードが出すぎている。

「うわあああ!」😲💦

レオの小さな体が、スキーヤーの腕をかすめた。鈍い音が響く。相手はバランスを崩したが転倒は免れた。だが、その反動でレオの制御が完全に失われる。

独楽のように回転しながら、コース脇のロープをくぐり抜け――。

そこは、切り立った崖だった。

「レオーーーッ!!!」😫💫

俺の絶叫がこだまする。

視界から、愛しい赤と白金の色が消えた。

世界が灰色に染まるような感覚。60年生きてきて、タトゥーだらけの厳つい体を張っていろんな修羅場をくぐってきたが、こんな恐怖は味わったことがない。リサを失ったあの日以来の、底なしの恐怖だ。

俺は斜面を直滑降で滑り降り、崖の淵で急ブレーキをかけた。雪を巻き上げながら板を外し、這いつくばって下を覗き込む。

「レオ! 返事をしろ! レオ!」😭🙏

崖下は3メートルほどの窪地になっていて、ふかふかの新雪が溜まっている。そこに、小さな塊が埋もれていた。

動かない。

一瞬、呼吸が止まる。リサ、頼む、連れて行かないでくれ。俺からこれ以上、何も奪わないでくれ。

すると、雪の塊がモゾモゾと動き出した。

「う……うわぁぁぁぁん!! パパー!!」😭🌊

泣き声だ。元気な、あいつの泣き声だ。

俺の全身から力が抜けると同時に、猛烈なアドレナリンが駆け巡る。生きてる。

俺は崖の横にある緩やかな斜面を選び、巨体を揺らして転がるように駆け下りた。雪に足を取られながらも、レオの元へ走る。

あいつは雪に半身を埋めたまま、空を見上げて泣きじゃくっていた。

俺はレオの体を乱暴に、しかし慎重に掘り起こす。

「どこだ! どこが痛い! 足は動くか!?」😠💦

レオの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。ゴーグルがずれて、あのリサ譲りの美しい瞳が露わになっている。スチールブルーの、不思議な引力を持つ瞳。今は恐怖で潤んで、さらに神秘的な輝きを放っている。

「パパ……ごめんなさい……足、痛くない……ううう……」😢❄️

俺は手早くあいつの体を触診する。腕、肋骨、脚。骨折はないようだ。分厚いウェアと新雪がクッションになった奇跡だ。

安堵した瞬間、抑え込んでいた感情が爆発した。俺はレオの両肩をガシリと掴んだ。

「いいか! 俺がなんと言った!? スピードを出しすぎるなと言っただろう! 人にぶつかりそうになって、死ぬところだったんだぞ!!」😡🔥

俺の腕にある無数のタトゥーが、怒りで脈打つ血管とともに波打つ。普段は優しいパパでいたい。でも、今日ばかりは鬼にならなきゃいけない。

レオは俺の剣幕に怯え、小さな体を縮こまらせた。

「ごめんなさい……パパ、ごめんなさい……怖かったよぉ……」😭💔

その美しい顔が恐怖に歪むのを見て、俺の怒りは瞬時にかき消え、代わりに熱いものが込み上げてきた。俺は震える手で、レオの小さな頭を胸板に押し付けた。

俺の大きな体で、あいつのすべてを包み込むように。

「……馬鹿野郎。本当に、馬鹿野郎だお前は……」😰🫂

「パパ、苦しいよぉ……」😢

「うるさい。少しこのままでいろ。……お前がいなくなったら、パパはどうすればいいんだ」😔💧

レオの体温が、ウェア越しに伝わってくる。生きている温かさだ。

リサ、見てるか。お前の残したこの小さな宝物は、俺に似てとんでもないやんちゃ坊主だ。でも、俺が必ず守る。何度崖から落ちようが、俺が必ず拾いに行く。

俺はレオのプラチナブロンドの髪についた雪を、ゴツゴツした指で優しく払った。

レオが見上げる。スチールブルーの瞳が、俺の強張った顔を映している。

「パパ、もう飛ばさない。約束する」🥺🤝

「ああ。次はもっとゆっくりだ。……さあ、立てるか? 帰ってホットチョコでも飲むぞ」🙂☕

「うん! マシュマロ入れてね!」😋✨

さっきまで泣いていたくせに、もう甘える顔を見せる。この切り替えの早さも、愛くるしい笑顔も、やっぱりリサそっくりだ。でも、そのふてぶてしいほどの生命力は、間違いなく俺の息子だ。

俺はレオを抱きかかえようとして、腰にピキリと痛みが走るのを感じた。

「……いたた。パパはもう若くないんだぞ、レオ」😫💥

「パパ、大丈夫? 僕がおんぶしてあげようか?」😁

「10年早い。……よし、行くぞ」😎🏂

俺たちは雪まみれのまま、二人で笑い合った。

冷たい風が吹いているが、俺の心の中は、あいつの瞳の色と同じくらい澄み切って、そして温かかった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

お兄ちゃん大好きな弟の日常

ミクリ21
BL
僕の朝は早い。 お兄ちゃんを愛するために、早起きは絶対だ。 睡眠時間?ナニソレ美味しいの?

処理中です...