『運だけで生きていけるって言ったの誰だよ! 〜豪運スキルで贈り物とご縁が世界を変える〜』

きっこ

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第3話『運命はコンビニに落ちている』



 昼下がりの大学構内。少し遅めの昼休み、朝比奈悠人は空き教室で買ってきたコンビニおにぎりを食べていた。

 「……うめぇ……」

 具は焼きたらこ。特別なわけでもない。けれど、今日はやけに味が染みた。
 理由はひとつ。朝からやたら“ツイていた”のだ。

 たとえば——

 ・朝、コンビニのくじ引きでA賞のカフェチケットが当たる
 ・席に着いた瞬間、講義の点呼が終わるギリギリでセーフ
 ・道端でスマホを拾ったら持ち主が偶然通りかかり、お礼にスイーツ券をもらう

 ……などなど。
 「いや、もうこれは偶然じゃないでしょ」と言いたくなるレベルの豪運の連続。本人も内心ちょっと笑ってしまっていた。

 (うん、うん。俺……完全に“来てる”な)

 そのとき、机の下に置いたリュックから小さな封筒が滑り出てきた。
 あの日、母に贈り物をしたときに受け取った「ありがとうカード」。母の手書きでこう書かれていた。

 「私も、誰かに優しくしたくなったよ。ありがとう、悠人」

 読み返すたび、心がぽっと温かくなる。
 もしかしてこのスキルって、「優しさの循環装置」みたいなものなのかもしれない。悠人は、そう思うようになっていた。



 午後の講義を終え、帰宅の途中。
 駅のすぐ近くにあるコンビニにふと足を止めた。別に用があったわけではない。でも、なんとなく「寄ったほうがいい気がした」のだ。

 (……まあ、アイスコーヒーでも買ってくか)

 レジに並ぼうとしたとき、不意に背後から「……っ!」という声が聞こえた。
 振り向くと、小柄な女の子がドリンク棚の前でしゃがみ込んでいた。明らかに体調が悪そうだ。

 「大丈夫ですか……?」

 声をかけると、女の子は顔をあげた。
 大きな瞳、色素の薄い茶髪、制服姿——どこかで見たことがあるような……。

 「あ、あの……大丈夫です……ちょっと、立ちくらみしただけで……」

 「いやいや、真っ青だよ。ほら、これ。冷たいの飲んだほうがいい」

 悠人は、自分が買おうとしていたアイスカフェラテを差し出した。
 「えっ……い、いいんですか?」

 「どうせまた当たるし、たぶん」

 冗談混じりにそう言うと、彼女は小さく笑ってペコリと頭を下げた。
 「……すみません、ありがとうございます。あの、先輩……ですよね?同じ学部で、講義いっしょのとき、あります」

 「マジか。名前、なんていうの?」

 「白石……白石澪です。2年です」

 「朝比奈悠人。3年。あー……そういえば、名前見た気がするかも」



 それから数分後。

 コンビニ横のベンチで、澪と並んで座りながら、紙パックのカフェラテを飲んでいた。
 澪の顔色はだいぶ戻っていて、彼女の表情にも少し余裕が見えていた。

 「最近、ちょっと睡眠不足で……バイト、入れすぎちゃって」

 「無理するなよ。倒れたら元も子もないし。てか、甘いのとか食べてないんじゃない?」

 「バレました……節約しすぎてて」

 悠人は少し考えた後、ふっと立ち上がった。

 「待ってろ」



 3分後、彼はコンビニから戻ってきた。
 手には、スイーツ棚にあったプリンとチョコブラウニーが一つずつ。

 「ほら。糖分補給。俺からのおごりな」

 「え、でも……そんな、申し訳ないです」

 「気にすんな。ちょうどポイント貯まってたし、今日の豪運に任せて選んだら、なんかコレだった」

 「……豪運?」

 「そう。最近、妙に運がいいんだよ。だからさ、“選んだもの”にはたぶん意味があるんじゃないかって思ってて」

 澪は不思議そうに彼を見たあと、目を伏せて微笑んだ。

 「……私、今日ひとつ、すごくいい運をもらいました」

 「ん?」

 「だって、偶然倒れたコンビニで、偶然助けてくれた人が、こんなに優しい先輩だったなんて」

 言葉に詰まり、悠人はうまく返せなかった。
 だけど、胸の奥がほんのり熱くなるのを感じた。



 その日。

 家に帰った悠人は、洗面所で顔を洗った後、スマホを確認した。
 そこには、大学のメールボックスに届いていた通知が表示されていた。

 『交換留学プログラム・語学特別推薦枠への仮内定について』

 (……え?)

 数ヶ月前、ダメ元で申し込んでいた語学の特別枠。成績や志望理由でかなり厳しいと聞いていた。それが、まさかの仮内定。

 (これって……“豪運”か?)

 いや、それだけじゃない。
 ちょうど最近、偶然読み始めた英語のエッセイがやけに頭に入ってきていて、自分でも驚くほど語彙が増えていた。

 そして昨日、遼に頼まれて調べていたネット回線のブログで、偶然見かけた“語学脳を活性化させる睡眠法”の記事を試したばかりだった。

 あれも、これも、“たまたま”じゃない。
 そう思ったとき、悠人は確信した。

 ——豪運スキルは、きっと“自分が動いた先”に、道をつくってくれるものだ。



 彼はベッドに寝転び、今日撮った澪との自撮り写真を見つめた。
 ふと、自然に笑みがこぼれた。

 (……一途に、向き合いたいな)

 そう、まだ“好き”とは言えないけど。
 彼女との出会いが、ただの偶然じゃないなら——この先も、大事にしていきたいと思った。
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