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第二巻・・・一般向け作品を手掛けてみたけれど・・・

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愛華「青葉君はきっと私のデビュー前の様な作品を読みたがっていると思う!だから次回作は一般向け小説も書いてみようかな・・・一先ず秋月さんに連絡を・・・」


♪プルプルプルップルプルプルッ!!


愛華「あっ!電話を掛けようとしていたら秋月さんから来ちゃった!!・・・はい!香波です。」

秋月「あぁ、すみません、先生、急に・・・実は先生にお願いがあるのですが・・・」

愛華「お願いですか?何でしょうか?」

秋月「実は、今しがた、編集部の方で私の所に一人の男性が訪れて来たのですが・・・」





男性「えぇっと・・・八鬼人空 食多郎先生のご担当の方は?」

秋月「はい!私ですが・・・あなたは?」

男性「あっ、初めまして、私、丸川書店の株主の榊原と申します。本日はアポイントも無く大変失礼致しました。」

秋月「榊原様でしょうか?こちらこそ、いつも大変お世話になっております・・・ところで本日はどの様なご用向きで?」

榊原「えぇ、実はですね・・・私個人的な意見で大変恐縮なのは承知していたのですが・・・あなた様のご担当なさっておられる、八鬼人空 食多郎先生の事なのですが・・・」

秋月「はい!確かに八鬼人空 食多郎先生は私の担当ですが、何か御座いましたか?」

榊原「実は、私、先生の大ファンでして・・・先生がまだ商業デビューをされる以前から小説サイト等で投稿した作品等を拝見させて頂いておりました。」

秋月「これは、光栄です!私も実は最初に投稿された時に目にしてから個人的に大ファンなのです!立ち話は何でしょうから、どうぞ、こちらの方へ・・・」

榊原「いやぁ、急に押しかけてしまい申し訳ありません。それでは、失礼致します・・・」

秋月「今、お茶しか御座いませんが、宜しければ・・・」

榊原「おかまいなく・・・あっ、それでですね・・・私個人的に先生が最初に書かれていらした作品、恋愛小説や、ギャグが入った作品・・・」

秋月「えぇ!ありましたよね!私も多種多様でいつも更新されると同時に直ぐに読んでいましたわ♪」

榊原「いやぁ・・・流石は担当者様!本当にどの作品も読みふけってしまう程の魅力的な作品ばかりで又あの様な作品を読みたいなと思っていたのですが、どうも最近は官能系作品が多くて、それも、どれも面白くて良いのですが・・・やはり・・・」

秋月「やはり、当初からの先生のファンの方は皆その様に思われていらっしゃる様ですね・・・」

榊原「そこで・・・もしも先生が宜しいのでしたら、又、編集側の皆さまが宜しければ、次はその様な一般向けの作品等の展開をされてみてはと思いましてね?・・・如何でしょうか?」

秋月「そうですね・・・確かに私個人としては大賛成なのですが・・・今、ノリに乗って来ている大事な時期ですので、ジャンルを固定してしばらくやって行く事を編集部自体で決めておりますので・・・」

榊原「やはり、ご意志は固いでしょうか?・・・何か私共にもご協力出来る事がありましたら何でも仰って頂けたらと存じておりますが・・・」

秋月「いえ、本当にその様に仰って頂けるのが私としてはとても嬉しく、あり難いと考えていたのですが・・・」

榊原「何か良い案件は・・・」

秋月「実は、八鬼人空 食多郎先生本人も一般向け作品を出してみたいと時折私に相談をしていたものですから・・・ただ、今回の意向は編集長の固い判断ですので、かなりシビアなものかと・・・」

榊原「そうでしたか!編集長ですか・・・いやぁ、こうやって先生のファン同士で色々なお話が出来るのは非常に楽しく、有意義です!サイトで初投稿だった「私の恋は鯉のぼり」、最初タイトルが滑稽で、本当に恋愛小説なのか?と疑惑を持ちながら読ませて頂いて、かなりのギャップで感動して反対に泣いちゃったもので・・・」

秋月「先生はネーミングセンスが正直無くて、私も絶対にギャグものだろうと思って読んでいましたが、同じくタイトルとストーリー展開との大きな差を感じてしまい感動して泣いてしまいましたよ!」

榊原「いやぁ、かえってそう言うタイトルだったのが良かったのかもしれませんねぇ!」

編集長「失礼致します・・・榊原さん、いつもお世話になっております。」

榊原「いやぁ、久しぶりだね?狭山君!元気そうで何よりだよ!」

狭山「はい!あの頃は大変お世話になりました。お蔭さまで私も色々と経験を積ませて頂いて現在はここにおります。」

榊原「いやいや、私は何もしていないよ!君は努力家だったし、きっと上役に就けるだろうと踏んでいたよ!才能もあったしね!」

狭山「その様に仰って頂けるだけで光栄です。ところで本日は、どの様な?・・・うちの秋月がいると言う事は・・・」

榊原「あぁ、丁度今、秋月さんとお話していたのだが・・・秋月さんのご担当されておられる所の作家さんで八鬼人空 食多郎先生がいらっしゃると思うのだが・・・」

狭山「はい!官能小説の部で頑張って下さっている若手作家さんですね!それが何か?・・・」

榊原「あぁ・・・その官能小説なのだが、非常に斬新なストーリーと極めて稀を見る展開・・・非常に素晴らしいと思うのだよ!ただ・・・だね?」

狭山「はい・・・非常に私共も注目をしてお世話をさせて頂いておりますが・・・」

榊原「彼女が小説サイトにデビューする以前の小説などを君は読んだ事があるのかな?」

狭山「はい・・・所々にはなってしまいますが・・・」

榊原「そうか・・・「私の恋は鯉のぼり」と言う短編小説があってだね?もしまだ読んだ事が無いのであれば、読んでみてくれないか?このタブレットの・・・そう、ここのページだな!」

狭山「はい、そのタイトルは覚えがありませんね・・・では、失礼して・・・」



約20分後・・・・・


狭山「これは・・・!?」

榊原「どうだ?凄い展開だろう?タイトルに見合わず・・・泣いているじゃないか!?」

狭山「こっ・・・こんな素晴らしい作品を・・・先生がですか!?・・・」

榊原「この話は先生がまだデビューする半年程前に書かれた短編の話になる・・・今日私が秋月さんとお話をしていたのはだね・・・次の作品をこのような、官能小説以外で出さないか?と言うご提案に伺った次第なのだよ!」

狭山「はっ・・・はぁ・・・確かにこの様なストーリー構成、内容、展開、全てにおいて引けを取らない秀逸された作品は近年稀を見る内容だと思います。」

榊原「それでは・・・」

狭山「ですが申し訳ありませんが、次回は官能小説を題材とした作品で先生にはお願いさせて頂いているんです。」

榊原「やはり、意志は固いのだな?」

狭山「と・・・本来でしたらお返しすべき言葉として、大変お世話になっている榊原さんのご意向だったとしてもお伝えすべき状況なのですが・・・」

榊原「・・・・・・・」

狭山「確かに私も先生のデビューより以前の小説は全てではありませんでしたが、数作程読ませて頂いておりましたが、この作品は初めて拝見しました。シリーズ作品を重点的に読んでいた私にとっては盲点でした。これは素晴らしいですよ!一度先生に確認を取らせて頂いて、次作をその様な方向で話を進めて行ける様アポを取らせて頂く事にしたいと思います!」

榊原「狭山君!!!ありがとう!本当に・・・」

狭山「いえ、私もこんなに素敵な作品がある事を知る事が出来て、更に先生のファンになりましたよ!こちらの方こそ、感謝したい位です!」

榊原「実は、先週末、先生の初めてのサイン会・・・こっそり私も行っていたのだが・・・まさか現役女子高生だったとは!!嬉しい様な・・・反面衝撃と言う様な・・・」

狭山「そうですね!先生が女子高生だと言う事はこれ迄内密にして来ましたので、まさか名前が八鬼人空 食多郎って女性をイメージしないだろう?と誰しも思います。」

榊原「君も先生の小説はデビューより以前から読んだ事があると言っていたが、どうだった?」

狭山「えぇ、実は、この八鬼人空 食多郎と言う名前を出す前に彼女は普通にペンネームがあったのです!」

榊原「なっ!?何だと!?そんな事は一切知らなかったぞ!?」

狭山「えぇ、これは、恐らくごく一部のファンの方やここにいる秋月君と私くらいしか知らないでしょうね・・・」

榊原「どうしてペンネームを変えたのだろうか?」

狭山「はい・・・丁度デビューした頃に商業用のそれも官能小説を書く事になった為に当初は本来名前を使い分ける意味で二つの名前を持っていました。その官能小説用のペンネームが八鬼人空 食多郎だったのですが、それ以来彼女は官能小説家としての作品が主体となってしまった為、もう一つのペンネームは一時的に封印されてしまったと言う事になります。」

榊原「だが、私もあのサイトで彼女が最初に投稿した時から読んでいるが名前は既に八鬼人空 食多郎と言うペンネームになっていたのだが・・・」

秋月「彼女は、あちらのサイトへ投稿する少し前に他のサイトで投稿していたのです。その時に使っていたペンネームが今のお話の通りだったのです!」

榊原「いやぁ・・・まさかあのサイトより前にも投稿していたサイトがあったとは!私もまだまだだな・・・はっはっは!」

狭山「では、早速善は急げだ!秋月君?悪いが先生に連絡をして先生のご意向を確認してくれないだろうか?OKなら早速次の作品は彼女が書いてみたいと思う一般的な内容の作品でお願いさせてもらう流れでお願いだ!」

秋月「はい、編集長!早速連絡を・・・」





秋月「と言う訳なの・・・もし、迷惑で無ければ、一度一般的な作品を出してみる気は・・・って前々から言っていたものね?もう考えはまとまっているかしら?」

愛華「はっ・・・はい!!私もその事でお電話をしようと思っていたんです♪ありがとうございます!本当に・・・」

秋月「それから、この話にはもう一つ裏があってね?」

愛華「何でしょうか?まさか、官能小説と同時リリースとか言いませんよね?・・・」

秋月「流石に2冊同時発行は難しいでしょう?・・・あの榊原さん、実は・・・弊社丸川書店の会長だったの!会長の名前は伏せられていたから私も後から知ってビックリしたの!」

愛華「えぇぇぇぇぇぇ~!!!!!!?冗談?・・・ですよね?・・・」

秋月「いいえ、紛れも無く事実よ?良かったわね♪会長がデビュー前からあなたの大ファンだったなんて!しかもサイン会に来ていたらしいけれど、全然気づかなかったし・・・」

愛華「すっ・・・凄いです!・・・しかも、会長が私の初期の頃の作品が好きなんですよね・・・それで編集部へ来て、私の次回作を一般作品にして欲しいって・・・」

秋月「念願の夢が叶う時が来ましたね!一応この間迄企画していたものは次の次でも構わないと言う確認は取っておりますので、先生は、書きたい通りに、書いて下さい!宜しくお願いしますね!」

愛華「はい!!頑張ります♪あの・・・それから・・・お知らせとして軽くサイト内に載せておく事は可能でしょうか?」

秋月「まあ、これは本来企画段階で出版迄の話も出ていない段階だから禁止なのだけれど・・・一応私も先生の以前から仰っていた事を伝えたら大々的じゃなければ良いだろうと言ってくれたわ?会長もご存じだから安心してね!」

愛華「はい!ありがとうございます!!」



あぁ・・・夢の様だ・・・これで・・・次回作は・・・青葉君♪喜んでくれるかな?待っててね!私、必ず期待してくれていた通りの作品を書くからね♪



智也「何だ?通知?・・・あっ!先生久しぶりに一般向けを書くのか!ちょっとサイトを見てみるとしようか・・・って、自己紹介が更新されているな?何だろう?・・・えっ!?これってマジか!?」





最近の出来事
八鬼人空 食多郎です。いつも私の作品に応援を頂きまして誠にありがとう御座います。
又、兼ねてから私の作品のファンでいて下さった方々にこの度お知らせがあります。
実は、官能小説家として手掛けて参りましたこの私、八鬼人空 食多郎ですが、この度、一般作品を手掛ける事になりました。次回出版される私の作品は今の所一般作品となる予定ですので、もしご期待頂いている方がいらっしゃると嬉しいです♪
ペンネームは、以前私が使っていた、ほんの少しの間だけでしたが・・・知っていてくれる方なら直ぐに分かってくれるだろうなと思います。又、詳しい情報が分かったらお知らせしますね!宜しくお願いします。
そして、久しぶりに一般作品を書く事になるので、又当面は以前の様に官能小説以外のお話を投稿して行きたいと思います。その第一弾をこの後短編作品として投稿させて頂きますので、読んで頂けたら嬉しいです♪





智也「や・・・や・・・やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!遂に夢が叶う!!サイン会でも言ったけど、俺が夢見ていた一般作を復活させてくれるんだ!やったぞ!これはテンション上がるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

智也の父親「おい!智也!五月蠅いぞ!もう少し静かにしろ!夜なのに・・・」

智也「あぁ!わりぃ!かなり嬉しい事があってさ!」

智也の父親「お前はな・・・まあ良い・・・若気の至りだと思って今のは無かった事にする!」



愛華「これでよしっと・・・短編だからあまり書けなかったけど、青葉君喜んでくれると良いな♪」



翌日の朝・・・



愛華「スマホから通知が入っている♪昨日の短編のお話の件かな?・・・えっ!?・・・」



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愛華「あぁ・・・ダメかな・・・まあ、ジャンルを戻したからそうなるのも頷けるかも・・・あっ!コメント欄にコメントが・・・2件か・・・何だろう?青葉君も書いてくれたのかな?」



コメント
急にジャンルを変えるとか無謀過ぎる気がするんですけど?
私は八鬼人空 食多郎としての官能小説が読みたかったのに、こんな乙女チックな内容、他の人の作品の方がまだマシ!



コメント
久しぶりに以前の様な作品が復活してくれたと物凄く喜んでいたのに、何か違う気がした・・・俺も凄く喜んでいたけど・・・恋愛ストーリーは俺も先生の過去の作品を読んでから凄く感動して好きだった。でも今回の作品はどうも別の次元の様な気がしてならない・・・
何と言うか・・・官能小説の控えめの様な感じに捉えられてしまって・・・
自分でも何をコメントしているのか分からないけど、前の様な作品と何か違う気がしました・・・気を悪くしてしまったらごめんなさい・・・PN/TA八鬼人空大ファン



愛華「あ・・・あは・・・あははははは・・・そうだよね・・・だって私って官能小説家だもん・・・官能小説染みた内容になるのは当然だよ・・・そうだよ・・・何調子に乗ってたんだろう?私・・・少し官能小説で売れたからって良い気になってた・・・やっぱり私には才能無いんだ・・・うん・・・このお話もお断りしよう・・・あっ・・・自己紹介の所の文章消さなきゃ・・・」



こうして私は自己紹介欄の情報を消した・・・



そして学校にて・・・



智也「おい!香波?教えたサイト見てくれたか?・・・っておい、大丈夫か?顔色悪いが・・・ゲームか?っていつもとは違う・・・本当にどうした?何かあったら俺に言ってくれよな!心配だからさ・・・」

愛華「ううん、大丈夫・・・ありがとう・・・」

智也「俺さ、昨日、八鬼人空 食多郎先生が一般作を書かれるって自己紹介欄読んで舞い上がっちゃって、大声で喜んでしまったらそれで親父に叱られてさ・・・その後、先生の新作の短編を読もうとしたんだけど、何か知らないけど停電してしまって、携帯を丁度充電し始めた段階だったから全く読めずに・・・結局停電が今も続いていて・・・家も古いのかな?最悪だったよ!」

愛華「えっ!?それって・・・」

智也「お前に紹介しておきながら丁度先生が新作書いてくれたのに本当タイミングが悪過ぎだよな!一般作だからお前もきっと読んでくれているだろうと思っていたのに・・・悪い!」

愛華「コメント・・・」

智也「えっ!?コメントって作品の所に感想書くやつか?そう言えば俺先生の作品はほとんど全部に感想コメント入れてあるけど、流石に昨日の新作は読めなかったし、繋がら無いし、今携帯も家に置いて来ているからな・・・充電出来なかったから・・・」

愛華「じゃあ、あのコメントは・・・」

智也「えっ!?何だ?何かあったのか?」

愛華「えぇっと・・・このページ・・・ここ?これ見てくれるかな?」

智也「あぁ・・・確かにこれ俺のペンネームだな・・・って俺書いてねぇぞ?今話した通りだ!」

愛華「じゃあ、これって一体誰が?・・・」

智也「何だ!?勝手に俺のペンネーム使いやがって・・・っておい、俺お前にペンネーム言ったっけ?」

愛華「へっ!?いっ、いっ・・・うん、言ってたよ!だって、ペンネームのイニシャルが青葉君の名前だもんね♪」

智也「あっ・・・そうだよ・・・なら良いんだ!・・・」



(おかしい・・・俺は確かに自分のペンネームの事香波には言った記憶が無いのだが・・・)


夏葉「あらどうかしたの?」

智也「あぁ、少し・・・な・・・」

夏葉「なになに?あなたたち、こんな小説サイト見てるの?」

愛華「私は青葉君に教えてもらって昨日から読み始めたんだけど・・・」

夏葉「何て言うか、こう言うサイトって私興味なくてね・・・これなら本買ってゆっくり読んだ方が楽って言うか・・・」

智也「何だ、お前嘘はいけないぞ?このサイト最初に俺に教えてくれたのってお前じゃなかったっけか?」

夏葉「そっ・・・そうだったかしら?・・・よく覚えてないわ?・・・」

智也「確かお前も八鬼人空 食多郎先生の大ファンだったよな?」

夏葉「・・・そっ、そんな頃もあったわね?・・・」

智也「これ書いたのお前だろ?」

夏葉「えっ!?何で私が!?」

智也「お前昔から大好きな人にはいたずらしたくなる性質持ってたよな?」

夏葉「でも、こんな失礼な文章私は書かないわよ!!」

智也「あれぇ~?どうして読んでもいないのに悪口が書かれてあるって知ってるんだよ?」

夏葉「悪口じゃないわよ!感想よ!」

智也「ほら、正体現したな!」

夏葉「はっ!!!私・・・」

智也「俺の推測からして、この2つは別端末から打っているよな?お前って色々持ってるもんな?」

夏葉「・・・・・・ごっ・・・ごめんなさい・・・私・・・」

智也「おっ!珍しく認めるんだな?」

夏葉「香波さん・・・本当にごめんなさい・・・私・・・八鬼人空 食多郎先生の大ファンなんです・・・サイン会の日もこっそり智也に見付からずに行ってたの・・・」

智也「おっ、お前!そうだったのか!?」

夏葉「私・・・昔から悪い癖があったの・・・智也が言っていた通り、大好きな人にはいたずらしたくなってしまうの・・・多分気を引きたくなっちゃうからだと思うの・・・でも悪気がある訳じゃないから・・・本当に・・・本当に・・・ごめんなさい・・・」

智也「まあ、認めてくれたのは良いのだが、どうして香波に謝ってんだ?」

夏葉「あっ・・・それは・・・何となく・・・」

智也「何パニくってんだよ?落ち着けよ!」

夏葉「あ・・・あはははは・・・」

愛華「うん、大丈夫だと思います。きっとこの作者さんも分かってくれている気がするの・・・」

夏葉「・・・・・・・・・」



(あぁ・・・・・八鬼人空 食多郎先生💛本当にお優しいお方・・・こんな智也なんて勿体無いくらい・・・私と・・・この私、涼原 夏葉とお付き合いしてくれませんか?)





放課後・・・何故か私は屋上にいた・・・



愛華「あぁ・・・今日は色々と疲れちゃったなぁ・・・でもあの書き込みが涼原さんだったんだな・・・結構ショックだったけど、でも好きの裏返しだって言うのを聴いて少し安心したかな・・・あっ、もう一度サイトチェックしてみようかな・・・って何!?凄い事になってる・・・何で!?いつの間に・・・!!」



確認してみると、ブックマーク230件、いいねが500件、コメントも沢山・・・悪い評価もほとんど見当たらない・・・朝迄あんなに低かったのに・・・本当に皆さん、ありがとう♪



夏葉「あの・・・香波さん?」

愛華「ひゃっ!!・・・って涼原さん?どうして?・・・」

夏葉「智也がいない様だから確認したい事があるのだけれど、良いかしら?」

愛華「えっ!?私に?なっ、何かな?」

夏葉「率直に言いますが、あなた!八鬼人空 食多郎先生よね!?」

愛華「えっ!?・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ!?」

夏葉「知ってるのよ?女の勘と言うか、あなたの雰囲気をずっと確かめていたの!あのサイン会で握手してもらった時から!」

愛華「えっ!?何の事ですか?・・・私、活字が苦手で・・・」

夏葉「そんなに緊張しないで?私は何もしないから?ね?」
愛華「いえ、緊張と言うか・・・私あまり人と話すのが苦手で・・・」

夏葉「そこのベンチに座りましょう?」

愛華「えっ?あっ・・・はい・・・」



夏葉「色々とあなたにも迷惑を掛けているけれど、本当にごめんなさい・・・私、本当に性格が悪いってよく思われているから・・・でも悪気は一切無いの・・・いつも余計な事を言って・・・この間も智也を本気で怒らせてしまって・・・」

愛華「うっ・・・うん、でも涼原さんって良い人だとは思っていたよ?」

夏葉「お世辞は良いわ?本心で話をする為に誰もいない所を見ていてここへ来たの!」

愛華「そう・・・だったのね・・・」

夏葉「実は私、智也が好きなサイト、そう、あの小説のサイトの事・・・」

愛華「うん・・・」

夏葉「あれを教えてあげたのは確かに私・・・それで、そのサイトより前から八鬼人空 食多郎先生を私は知っていた・・・」

愛華「そうなの?あのサイトで投稿する前からどこかで?」

夏葉「えぇ、私が最初に先生の作品を知った時に、全身何かで殴られた様な衝撃が走ったの!」

愛華「そんなに衝撃を受けたの!?」

夏葉「本当に凄かったわ!!感動するし、笑える作品も書かれるし!一体この人って何なの!?神様?って私個人的に思う様になったの!」

愛華「凄いんだね!そんなに人に影響を受けさせる作品を手掛けるなんて・・・」

夏葉「えぇ!あのペンネームや「私の恋は鯉のぼり」とかネーミングセンスに欠けるのだけれど・・・とにかく作品自体は凄まじかったの!私は一番最初に投稿した「あの雲の流れの様に」を読んで一気に先生の虜になったの!一体こんな素敵な小説を書く人ってどんな人なんだろう?ってそれでずっと憧れながら毎回先生の新作は要チェックしていたの・・・そして・・・」

愛華「念願だったその先生のサイン会へ行った・・・」

夏葉「そう!もう、感動し過ぎて気絶しちゃうかと思ったんだけれどね!それは耐えて我慢したわ!」

愛華「そっ・・・そんなに!?」

夏葉「そしたら先生が出て来てビックリと言うか先生の一番最初の作品を読んだあの衝撃が又襲ったのよ!何と先生は・・・美少女現役女子高生だった!」

愛華「美少女だったんだ?・・・あはは・・・」

夏葉「もう、モデルでも良いんじゃないのか?ってくらいスタイルも良くて頭も良さそうで可愛くて、先生と握手した時、天にも昇る様な気持ちになっちゃっておもらし、いえ、気絶しそうになったのよ!」

愛華 (あ・・・あはははは・・・お漏らしを気絶に置き換えてるんだ?・・・だとすればきっと最初の私の作品を読んだ時に・・・いや、考えない様にしよう・・・)

夏葉「最高だったわ!本当に・・・智也も分かってくれたみたいで、一気に先生の大ファンになっちゃったわ♪本当に人の心を動かしたり、感動させたり、笑わせたり・・・今の官能小説も凄く面白いなって思うわ!」

愛華「本当に小説が好きなんだね?」

夏葉「いいえ!小説なんてどうでも良いのよ!私は、八鬼人空 食多郎先生の作品しか読んでいないし!!」

愛華「えぇっ!?それじゃあ・・・」

夏葉「でもね?そんな私でも先生を知る前は色々な人の小説も読んでいたわ?でも先生の作品に出会える迄は普通に色々と読んでいて、面白いな・・・とか悲しいな・・・とかその程度だった!そして、先生の作品に出会えてから、私の人生も凄く変わったの!」

愛華「それってどう言う?」

夏葉「うん♪もう、毎日が楽しくなって♪恋心も持てたし、少し性格は直さないといけないって言われるけれど、見えて来るものが全く変わったの!生きる事の楽しさ、素晴らしさ、先生の作品を読んで行く事が楽しくて楽しくて、毎日楽しみに新作を待っている・・・そんな毎日、これ迄無かったの・・・ただ普通に一日過ごして終わっていた私の毎日に大きな変化をもたらしてくれたの!だから私は八鬼人空 食多郎先生の作品だけじゃなくて先生自体も大好きなの!初めて握手してサインを頂いた時、本当にこの世の幸せだとは思えない程感動して、喜んで・・・いえ、悦んで・・・気絶を・・・」

愛華 (あぁ・・・きっと、感無量で・・・お気の毒なのか良かったねって言うべきなのか?・・・)

夏葉「とにかく、私の人生の恩人なの!本当は先生の作品に出会えなかったら私、自殺しちゃってたかもしれないの・・・」

愛華「えっ!?どうして!?」

夏葉「これは二人だけの秘密にして欲しいの・・・あなたを信じて話をするわ?」

愛華「えっ・・・うん、誰にも言わないよ!」

夏葉「先生の作品に出会う少し前になるんだけどね・・・私、ある人に告白したの・・・その人は幼馴染で凄く優しくて、格好良くて・・・でもその人は私を女の子としては見られないからって・・・幼馴染だから恋心を持てないって振られたの・・・」

愛華「そうだったの・・・」

夏葉「それと同時期になるけれど、私の父親も病気でこの世を去ったの・・・」

愛華「そんな・・・」

夏葉「悲しんでくれるの?ありがとう。やっぱり私、あなたに話が出来て良かった・・・それでね?自暴自棄になり掛けていて・・・自殺しようって思いながら色々とサイト巡りをしていたの・・・方法を探すはずだったのだけれど、偶然小説サイトに出くわしちゃって・・・そこにあなたの小説があったから最期にこの作品だけ読んでみようと思ったの・・・それが1作目♪」

愛華「うっ・・・うぅ・・・・」

夏葉「あら?本当に香波さんて感性が豊ね?優しくて惚れちゃうわ?・・・本当に素晴らしかったの!丁度その作品にも主人公の女の子が振られて自殺しようとするシーンがあったわよね?それを主人公の彼氏が食い止める・・・そう言う話だったかしら?」

愛華「えぇ・・・そうだよ・・・」

夏葉「それを読んで、私ももう一度考え直そうって思えて来たの・・・前向きに、あの主人公の女の子・・・そう、少しひねくれていて、好きな人にはいたずらをする、でも本当は純情可憐な心優しい誰もが愛する様なものを秘めた女の子の様に・・・ねぇ、愛瀬 瑠奈(あいせ るな)さん?どうして愛瀬と言う名前を使わなかったの?私あの名前凄く好きだな?・・・可愛いし、洒落た名前だったし・・・」

愛華「官能小説を出版しようって話が出て来たから、名前を変えた方が良いだろうってなってね・・・私も最初の方に書いていた様なお話を書きたかったの・・・でも思いもよらない感じで伸びちゃってね?・・・だから次に出す一般作品の名前を又その名前を使いたいなって考えてたんだ!」

夏葉「色々とごめんね?それから、まだきちんと言っていなかった・・・本当に素敵な作品をあの時に書いてくれてありがとう御座いました。私の命の恩人、愛瀬 瑠奈さん♪」

愛華「いいえ、自殺を思い留めてくれたのは涼原さん自身・・・私は何もしてないよ?」

夏葉「私・・・本当は・・・あなたの事、ずっと知っていたの・・・いつか・・・いつか・・・この事を話せる日が来るかもって思いながら・・・うっ・・・えっぐ・・・私の大好きな・・・」

愛華「ありがとう・・・こちらの方こそ、これからも続けて行こうと言う意欲が凄く出て来ました。だからこれからも宜しくお願いします。私の、私の本当のファン1号さん?」

夏葉「あぁぁぁぁぁぁぁ♪先生♪」

愛華「でもね?お願いがあります!」

夏葉「あぁ・・・先生の正体の事ですね?」

愛華「うん♪私は学校では地味な女の子で通っているのでそこだけはお願いします!」

夏葉「はい♪お任せ下さい!誰にも言いませんから♪」

愛華「良かった♪私も色々と今日は嬉しい日になったな♪」



こうして、無事に一日を終える事が出来た・・・青葉君にはいつ言い出そうか色々と悩んでいるけど、まあ・・・その内・・・八鬼人空 食多郎と言うペンネームは次回作を盾にして封印すると言うのもアリかもしれないな・・・うん!そうしよう♪



自宅にて・・・



愛華「お姉ちゃん、又腕を上げたね!?この炒飯凄く美味しいよ!これならお店に出しても受けるよ!きっと・・・」

茜「あらあら、そんな風に褒めてくれるって事は今日何か良い事があったのかしら?」

愛華「うん♪色々と嬉しい事が沢山あったんだよ!」

茜「ねぇねぇ?どんなお話?お姉ちゃんにも教えて欲しいな?」

愛華「ごめんね?いくらお姉ちゃんでも教えられないよ・・・」

茜「えぇぇぇ!?どうしてぇぇぇ!?お姉ちゃんショックだなぁ・・・」

愛華「ごめんね?これはその人との約束だから・・・」



そう・・・こう言う事は人に教える事じゃないもんね・・・
でも、青葉君が私のファン1号だとばかり思っていたんだけど、まさかの涼原さんがそうだったなんて!!これはこれで嬉しいけど・・・だって涼原さんが私の作品の事を青葉君に教えてくれなければ青葉君が私の作品を読んでくれる事なんて無かっただろうし・・・それを考えると涼原さんがいてくれたから今の状況がある事だし・・・
ってさっき涼原さんが告白したのって、もしかして・・・



翌日、学校にて・・・



夏葉「香波さん?今日は良い天気ね?」

愛華「えっ!?あっ、そうだねぇ・・・結構晴れてるね!・・・」

夏葉「今週ってずっとこんな天気みたいよ?お出掛け日和って言うのかしら?」

愛華「うん♪そうだよね、何処かにお出掛けしたいよね?」

夏葉「あっ、そうだぁ・・・実は昨日ね?映画のチケット貰っちゃったの!だ・か・らね?香波さんが良ければだよ?週末とかどうかなって?」

愛華「えっ!?私?誰かと行かないの?」

夏葉「うん♪私は香波さんと行きたいから?ダメ・・・かな?」

愛華「へっ!?週末?・・・えぇっと・・・週末は・・・うん、大丈夫みたい!空いてるから良いよ?私でも大丈夫なのかな?」

夏葉「やったぁ♪じゃあ、週末に宜しくね♪又詳細メールするわね?」

愛華「うっ、うん♪待ってるよ?」



智也「おぃおぃ何だよ!?夏葉があんなにベッタリ香波に・・・あんな夏葉見たのかなり久しぶりだな・・・」

愛華「えっ!?そうなの?・・・うん、ちょっと映画に誘われて・・・」

智也「何だあいつ!?あっち系に転身か?」

愛華「とっ、特にそう言う意味じゃないとは思うけど・・・」

智也「まあ、あいつも昔みたいにおしとやかだったら良いんだけどな?・・・」

愛華「そうだったの?」

智也「あぁ・・・お前は知らないか!あいつも八鬼人空 食多郎先生の一番最初の作品を読んでからああなったって言ってたからな、間違いなくその影響だろうな!俺もあいつから教えてもらってから読んだけど本当に演技してんのか?ってくらいソックリだったし・・・」

愛華「へぇぇぇぇぇ・・・そうなんだぁ・・・!」





そうして、仲良く接して来るようになった涼原さんと週末映画館へ足を運ぶ事になったのでした・・・



夏葉 (遂にあの憧れの愛華さんと・・・映画館へ・・・これってデートですわね?嬉しいですわ♪こんな幸せな気持ち久しぶりの様な気がするわ?・・・憧れの愛瀬先生と・・・それに次回作は又過去の様な恋愛ものや一般作って聞いているから更に私・・・あっ・・・あぁ・・・おもらし・・・いえ、気絶しちゃいそう・・・)











第二巻 終
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