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第二章 立志編
第38話 男って
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建物を出ると一台の煌びやかな馬車が入り口付近に停まっていた。
「懺蛇のクロか?」
「そうだが、あんたは?」
「マザーの使いだ。迎えに来た乗れ」
「クロ!」
カインが乗ろうとするクロに声をかける。
「心配するな、ただ会いに行くだけだ。そうだろ? お使いの人」
クロの言葉にマザーの使いと名乗る男の顔に青筋が立つ。
「小僧……言葉には気をつけろ」
殺気は抑えてはいるが、末端の者にはこの会談の意味を理解できないのだろう。弱小組織が四天王である女帝に会う事は珍しい事ではない。上納金を納める代わりに下部組織に入れてもらうつもりだろうと思っていたのに、直接迎えに行かされた事を良く思っていない。
「クロ様、お手をお願いします」
「せ、聖女! なんでここに!?」
エリーナが居たことに驚き、さっきまで侮っていたクロを見てさらに驚く。
「こうした方が早いな」
「きゃっ」
クロはエリーナをお姫様抱っこすると、そのまま馬車の中へ入っていった。
「お、おい! 聖女も一緒に行くのか!?」
「そうだけど、何か問題があるのか?」
「ご、護衛は来ないのか!?」
「話しをするだけだ、必要ないだろ? それとも……あんたらは俺に危害を加えるつもりでもあるのか?」
弱小とはいえ組織のトップが出向くのに護衛が着いてこないのは通常ではあり得ない。危害を加える、加えないの話しではなく、護衛の実力を示す事も組織としての強さの指標になり抑止にも繋がるというのが一般的な考えなのだ。
「な、ない……ないがいいのか?」
「問題ない」
馬車のドアが閉まると二人を乗せて歓楽区画へ動き出した。
使いの男はクロに対して大物なのか、それとも大うつけなのか計りかねていた。マザーウルティマから道中でクロがどんな人物なのか見ておくようにと指示されている。場合によっては殺しても良いとも言われていた。聖女が同伴し護衛も付けないという想定外に想定外が重なり混乱していた。
「クロ様、私馬車に乗るのは初めてです! 早いのですね! あと揺れます!」
エリーナは初めて馬車体験で興奮し、楽しそうだ。
「エリーナ暴れていると舌を噛むぞ?」
「クロ様は落ち着いていらっしゃいますね?」
「まぁ、俺にとってはむしろ乗り心地の悪い移動手段でしかないしな」
「あら、それはあちらのせ……いえ何でもありません」
使いの男は馬車を引きながら二人の会話に聞き耳を立てる。馬車に乗りはしゃぐ聖女と、同じくらいの年齢なのに落ち着いている懺蛇のボスという変な組合せ。何をどうマザーウルティマへ報告したら良いのかと頭を悩ませる。
それともう一つ頭を悩ませるのが神罰の聖女と呼ばれるエリーナの存在だった。
彼女が住む教会の周囲での揉め事は御法度。教会に対して敬意を払っているわけではなく、ちょっとした犯罪行為にも簡単に神罰が下るため恐ろしくて近寄れないだけだった。そんな神罰製造機が馬車に乗り、自分たちの拠点へやってくるのは事件でしかない。
居住区画を抜け暫く走ると建物の雰囲気が変わり独特な匂いが漂う区画へ入った。
「甘い匂いがしますね」
「夜の蝶が雄を誘惑するために放っているんだろう」
「クロ様は惑わされるのですか?」
「ぶっ! 俺は女を買う趣味はない……」
「へぇ~そうなんですねぇ~? じぃぃぃぃぃぃ」
女の勘とは鋭いものだ。この帝都に来てからスラム街にある娼館への出入はしていない。
「どうやら着いたようだな……」
「クロ様? この続きはまたゆっくりとしましょうね?」
使いの男は「クックック」と声を殺して笑った。思わず人間らしさ、男の弱点をさらけだしてしまった懺蛇のボスが身近に感じた瞬間だった。
「懺蛇のクロか?」
「そうだが、あんたは?」
「マザーの使いだ。迎えに来た乗れ」
「クロ!」
カインが乗ろうとするクロに声をかける。
「心配するな、ただ会いに行くだけだ。そうだろ? お使いの人」
クロの言葉にマザーの使いと名乗る男の顔に青筋が立つ。
「小僧……言葉には気をつけろ」
殺気は抑えてはいるが、末端の者にはこの会談の意味を理解できないのだろう。弱小組織が四天王である女帝に会う事は珍しい事ではない。上納金を納める代わりに下部組織に入れてもらうつもりだろうと思っていたのに、直接迎えに行かされた事を良く思っていない。
「クロ様、お手をお願いします」
「せ、聖女! なんでここに!?」
エリーナが居たことに驚き、さっきまで侮っていたクロを見てさらに驚く。
「こうした方が早いな」
「きゃっ」
クロはエリーナをお姫様抱っこすると、そのまま馬車の中へ入っていった。
「お、おい! 聖女も一緒に行くのか!?」
「そうだけど、何か問題があるのか?」
「ご、護衛は来ないのか!?」
「話しをするだけだ、必要ないだろ? それとも……あんたらは俺に危害を加えるつもりでもあるのか?」
弱小とはいえ組織のトップが出向くのに護衛が着いてこないのは通常ではあり得ない。危害を加える、加えないの話しではなく、護衛の実力を示す事も組織としての強さの指標になり抑止にも繋がるというのが一般的な考えなのだ。
「な、ない……ないがいいのか?」
「問題ない」
馬車のドアが閉まると二人を乗せて歓楽区画へ動き出した。
使いの男はクロに対して大物なのか、それとも大うつけなのか計りかねていた。マザーウルティマから道中でクロがどんな人物なのか見ておくようにと指示されている。場合によっては殺しても良いとも言われていた。聖女が同伴し護衛も付けないという想定外に想定外が重なり混乱していた。
「クロ様、私馬車に乗るのは初めてです! 早いのですね! あと揺れます!」
エリーナは初めて馬車体験で興奮し、楽しそうだ。
「エリーナ暴れていると舌を噛むぞ?」
「クロ様は落ち着いていらっしゃいますね?」
「まぁ、俺にとってはむしろ乗り心地の悪い移動手段でしかないしな」
「あら、それはあちらのせ……いえ何でもありません」
使いの男は馬車を引きながら二人の会話に聞き耳を立てる。馬車に乗りはしゃぐ聖女と、同じくらいの年齢なのに落ち着いている懺蛇のボスという変な組合せ。何をどうマザーウルティマへ報告したら良いのかと頭を悩ませる。
それともう一つ頭を悩ませるのが神罰の聖女と呼ばれるエリーナの存在だった。
彼女が住む教会の周囲での揉め事は御法度。教会に対して敬意を払っているわけではなく、ちょっとした犯罪行為にも簡単に神罰が下るため恐ろしくて近寄れないだけだった。そんな神罰製造機が馬車に乗り、自分たちの拠点へやってくるのは事件でしかない。
居住区画を抜け暫く走ると建物の雰囲気が変わり独特な匂いが漂う区画へ入った。
「甘い匂いがしますね」
「夜の蝶が雄を誘惑するために放っているんだろう」
「クロ様は惑わされるのですか?」
「ぶっ! 俺は女を買う趣味はない……」
「へぇ~そうなんですねぇ~? じぃぃぃぃぃぃ」
女の勘とは鋭いものだ。この帝都に来てからスラム街にある娼館への出入はしていない。
「どうやら着いたようだな……」
「クロ様? この続きはまたゆっくりとしましょうね?」
使いの男は「クックック」と声を殺して笑った。思わず人間らしさ、男の弱点をさらけだしてしまった懺蛇のボスが身近に感じた瞬間だった。
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