異世界で過ごす悪役ロールプレイ ~努力をしないチート能力者と転生者は無慈悲に駆逐する~【コミカライズ連載決定】

む~ん

文字の大きさ
106 / 156
第三章 復讐編

第106話 支援魔法の無能ムーブは無理がある

しおりを挟む
「こちらが今回叡智のカケラのお二人と行動するパーティーのフレイムファングの方々です」

 次の日、予定通りに昼過ぎに冒険者ギルドへ赴くと調査依頼を共同で行うパーティーを紹介された。
 フレイムファングのパーティーはタンク、剣士、斥候役のムンク、攻撃魔法使い、そして支援魔法使いのバランスの良い五人で構成されていた。

「あんたが叡智のカケラのリーダーか? 俺はフレイムファングのリーダーで剣士のゲスカフだ!」

「おいおい、たった二人かよ! 俺たちの邪魔だけはすんじゃねえぞ?」

 ドンっ!

「おいだけよ! ウヒョー!! かわい子ちゃんがいるじゃーん! いいね、いいねぇ!」

 大楯を持ったタンク役であろう男がクロに対して凄むと、エリーナを見た軽装の男がクロを押しのけだらしない顔で全身を舐め回すように視姦する。

「ふんっ! Bランクへの昇級の条件とはいえこんなお守りをさせられるとは……くれぐれも我々の昇級の妨げになる行動は謹んでくれたまえよ?」

 インテリを気取った見た目のメガネ男はおそらく攻撃魔法の使い手だろう。その中で一番気になったのは最後尾に申し訳なさそうな顔をしている気の優しそうな男だった。
 紹介された瞬間からマウントを取られ続けているクロとエリーナに冒険者ギルドの受付の女性が小声で話しかけてくる。

「あ、あの! 性格には少し難がありますが、実績は申し分無い方達なので……」

「はあ、まあ冒険者なんて教養の無いバカの集まりですから気にはしませんよ」

 冒険者は実力至上主義だ。実力がランク直接影響する世界に於いてクロのように意図的に低ランクに留まっている冒険者は居ないので侮られるのは当然だった。

「あの、一番後ろに居る支援魔法を得意としているメルトさんはこのパーティーの良心なのでコミュニケーションはメルトさんと取る事をお勧めします!」

 受付の女性が実力ではなく実績と表現したのが気になるところではあるが、極力関わらないように共同依頼の経験の為に利用させてもらう。

「それで? あんたは剣士だよな! そこのお嬢ちゃんは何ができるんだ? まさか雑魚の支援魔法使いじゃねえだろうなあ!?」

 雑魚の支援魔法使いという発言でこのパーティーの要はメルトであると確信した。ゲーム内で支援魔法の重要性を理解していない者はいない。だがしかし、異世界系の物語で追放される支援魔法使いが多いのは謎だ。

「私はヒーラーですよ? クロ様……ごほんっ! クロ君は優秀な剣士で怪我を殆どしないので出番は少ないですが」

「ウヒョー!! かわい子ちゃんのヒーラーかよ! こんなダサガキと組まないでこの仕事が終わったら俺達のパーティーに入りなよ!」

「うちのメルトの回復魔法は効果が小さくてな! ただでさえ支援魔法でしかパーティーに貢献出来てないのに回復すらまともに出来ないクズだし、お嬢ちゃんが加入してくれるのはありがたいぜ!」

「優秀な方なのですね」

「クックック! お嬢さん中々に皮肉がお上手だ。我々としても今後BランクそしてAランクに到達する為には優秀なヒーラーが必須になりますからね? たかが支援魔法使い如きがヒーラーをやっていたら恥ずかしいですからね」

 エリーナは決して皮肉など言っておらず、支援魔法を使えてヒーラーも兼任する稀有な存在を無能などとは思えない。メンバーにバフを掛け、相手にデバフを掛ける。後方支援は戦闘に於いて戦局を大きく左右する重要な役割であり、その上で回復役までこなせる者なんて喉から手が出るほど欲しい。

「さあ! さっさと終わらせて美味い酒でも飲みに行こうぜ!」

 紹介もそこそに調査依頼を遂行するために出発した。
 低ランク冒険者への指導など全くなく、山奥へゴリ押しで魔獣を倒しながら進む。ゴリ押しが通用しているのは想像通りメルトによる支援魔法の桁違いの効果によるところが大きく。無詠唱でパーティー全体にバフを掛け、襲いくる魔獣に対して即座にデバフを施す手腕はクロをして意識しないとかけられた事を認識できないほどの手際だった。

「クロ様、メルトさんはとてと優秀な方ですね?」

「クロ様はよせ、ここではクロもしくはクロ君と呼べ」

「うふふっ、ごめんなさいつい」

「優秀どころかチートだ」

「なぜあんな優秀な方が粗雑な扱いを?」

 ここに来るまで支援魔法による恩恵で怪我も少なく、大きな回復魔法を使う必要も無いため、メルトは回復速度は遅いが自然回復を優先したリジェネを使用していた。フレイムファングの面々が効果の小さい回復と称した魔法は魔力の消費を抑え継続戦闘を考慮した行動であった。

「本人が説明しないからだろうな」

「メルトさん気が弱そうですもんね」

「支援魔法を掛けられた事にも気づくこともなく何もしていないと罵倒し、大した怪我もしていないのに無駄に回復をさせ効果が小さいとまた罵倒する。無駄の多いパーティーだな」

「お嫌いですか?」

「自分たちの実力を過大評価しているバカも嫌いだが、自己肯定感の低いチート能力者は……不快だな」

 この共同依頼は経験以外は何一つ得る物が今のところない。エリーナとしては優秀な支援魔法使いと出会えた幸運に感謝し、引き抜きもありなのでは無いかとすら思ったがクロの考えは違っていた。
 自分の能力をパーティーメンバーに対して正確に伝える事の重要性を放棄し、罵倒される原因を自ら作っている人間に対して同情心は湧かないようだ。

「全然居ねえなあ! ルッツ! 先行して犬っころの形跡を探してこい」

「了解」

 ここまで斥候としての役割すら理解していない自称斥候のルッツは、ゲスカフの指示でやっとその斥候として役割をするようだ。

「ルッツが戻るまでここで休憩だ! おいメルト! 回復魔法かけろ! あ~いや、お嬢ちゃんにかけてもらおうか? ここまで出番がなくて暇だったろ?」

「回復ですか? どこかお怪我をされたのですか?」

「はんっ!? 回復魔法で疲れをとれって言ってんだよ! さっさと掛けろよ! そんくらいこのカスのメルトですらできる事なんだからヒーラー特化のお嬢ちゃんなら効果も絶大だろうが!」

「あ、あの……ゲスカフ。それは彼女じゃなくて僕がするから……その、何というか」

「うるせぇぞカスは黙ってろ! 俺は可愛い女の子から回復魔法を掛けて欲しいんだよ! 空気読めよ!? そんなことすらわかんねーから無能なんだよお前は!」

 回復魔法にそんな効果はない。おそらくメルトが掛けて居たのは身体能力の強化がある支援魔法であろう。その事を一番理解しているメルトがエリーナに代わり支援魔法をゲスカフに掛けようとしたが一蹴された。

「なあ? あんたらいい加減に……」

 ギャァァァァァァァ!!

 極力関わらないように対応していたクロだったが、エリーナに矛先が向いてしまっては出ないわけにもいかなくなり、ひと思いに殺してしまおうかと思った時だった。先行して斥候していたルッツの悲鳴が響き、緊張が走った。

「な、何だ!? 今のはルッツだよな?」

「ゲ、ゲスカフ! あ、あれ!!」

「はん?」

「あわわわわわっ!」

「ま、まさかあれは! ゲスカフ! 我々はとんでもない魔獣の領域に足を踏み入れていたみたいですね」

 見上げた岩肌の先に居たのは絶命したルッツを咥えた大きな狼の姿だった。

「ク、クロ様!? あれってもしかして……」

「あまり考えたくはないが、纏っている雰囲気から察すると……」

【我の縄張りに無断で侵入した下等生物よ、生きて帰れると思うな】

「フェ! フェ! フェンリルだぁぁぁ!!」

 尻餅をつきながらゲスカフが叫ぶ。

「最悪だ」

 現れたのは神獣フェンリルだった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

処理中です...