異世界で過ごす悪役ロールプレイ ~努力をしないチート能力者と転生者は無慈悲に駆逐する~【コミカライズ連載決定】

む~ん

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第三章 復讐編

第120話 終幕

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(この状況は一体……いや、嫌いじゃないよ? 生きる事に全振りした手のひら返しっていう浅ましい心はね? ただなあ……)

 最愛の人を殺した男が目の前にいて、手元のには剣がある。「◯◯の仇!」と剣を握り締め立ち向かうヒロイン! そして、儚く散る命。
 何と美しいシチュエーションなのだろうと感動を呼ぶストーリー展開。
 もしくは、後を追い自害し「私もいくね……」などというお涙頂戴の展開は悪役にとってご褒美になるのだ。

 なるのだ?

 なるはずなのだ

「お願いします! お願いします! 本当に何でもアリなので! 命だけは! 脱ぎますか? 脱げと言うなら今ここで脱ぎます! どうかどうか……」

 ケンタ・イイヅカ劇団のヒロインの行動は、モブ中のモブの行動原理を忠実に再現してくれている。
 その姿はある意味清々しくもあり、なにより面白い。

「緑川桜子って言うのかい? 贅沢な名だねえ! あんたは今日から子だ! 子だよわかったかい!? わかったら返事しなっ!」

「はいっ!」

「って言うかボケェ!!」

 クロはサクラコを思い切り蹴飛ばす。

「ハァ! ハァ! ハァ! くそっ! 危うく雇い入れそうになったわ!」

 蹴飛ばされてもなおサクラコは土下座を続ける。

「あのさ? 恋人が殺されてんだよ?」

「はい、とても悲しいです」

「仇を討とうとか、恨みとかないの?」

「それで健ちゃんは帰ってくるんですか? 私は今生きてるんです! こんなに……こんなにもすごい力を貰って、こんなにも沢山の人から感謝される人生を捨てろって言うんですか!? 私は嫌……」

(ますます面白い)

 偶然にしろ手に入れたチート能力で人生が変わり、生きやすくなったのだろう。

 どのような経緯で異世界へやって来たのかは知らない。どうせ不慮の事故か、突然魔法陣が現れ転移したとかそんな感じだろうとクロは予想する。

 自分の意思とは関係なくこの世界に送られた?

(俺は地獄のような日々を生きた)

 代わりにチート能力を貰った?

(強くてニューゲームかよ!)

 この世界の常識から逸脱している?

(考えろよ! 元の世界でも非常識だわ!)

 これは正しい事?

(誰が決めた! 非常識なその頭でか!)

 リバーシー、ポテトチップス?

(ポテトチップスはグッジョブ!)

「これだから異世界からやってくる奴は嫌いだ」

「へ?」

「お前、面白いな?」

 サクラコは気に入られたと歓喜に震えた。

 この男はサイコパスに違いない、サイコパスの心理はわからないけれど人とは違う行動、思考を見せればワンチャン気に入られるかもしれないと思い、プライドや倫理観を捨て演じた。

(よく見れば健ちゃんなんかより全然格好良い! 影のある感じもアニメに出てくるダークヒーローみたいで素敵じゃない! 健ちゃんは優しくて温かくて、そしていつも一緒にいてくれたけど、顔はタイプじゃなかったのよね)

「何も自分で決めれない、相手に依存して安全なところで傍観し、自分のやりたい事だけをして、プライドより実を取る」

「ほえ?」

「実に面白い」

「じゃ、じゃあ!?」

「こんなにも醜く、人間の負を凝縮した人材は中々出会うことができない」

「あはっ! あははは!」

「本当に神は残酷だ、こんなにも愉快な人間と出会えたのに残念でしかない」

「残……念??」

(まさに理想の屑、自分の事しか考えていない売女は中々お目にかかれない。悪役としての才能を遺憾なく発揮してくれるだろう相手を)

「殺さないといけないなんて……」

「ちょ、ちょっと待って! え? 何で!? 私は……ぶぺっ!」

 クロは顔面を容赦なく踏み潰す。

「それ以上、囀るな! 俺は今、悲しみで気が狂いそうなんだ」

「いびがばがらだい! ばだじばあなだゔぉ」

 サクッ!

 クロはサクラコの心臓を一突きする。

(な、なん…で……)

「こんなにも面白いのにお前……めちゃくちゃブスなんだもん」

「……はひ?」

「生理的に無理! なんか体積俺より大きいし! 何なのお前? 何なら少し汗くせえし」

 緑川桜子は、悪役の相棒としてバッターボックスに立つにはまだ早い五軍の選手だったようだ。

 衝撃の告白を受け死んでいったサクラコの顔は、鳩が豆鉄砲をくらったようにムカつく顔をしていた。

 ドボンっ!

 サクラコの遺体を川に捨て、浮かんでくる様を眺める。

「女って本当に仰向けで浮かんでくるんだな」

 などと、どうでも良い事を考えていると

 ドォォォォォォォンッ!!

 ゲイルが向かった屋敷のある方向から轟音が響き渡る。

「おうおう、派手にやってんなあ!」

 暫くすると、衛兵や近衛兵が忙しく街中を駆け回り、大捜索網が敷かれた。

 そんな慌ただしい状況をクロは高台から見物する事にした。

「ボン爺、ゲイルはちゃんと任務を遂行したのか?」

 闇夜からスーッとボン爺が現れる。

「陰からの報告によれば、三人を見事討ち取ったと」

「ほうほう、それは重畳! で? その主役はどこに?」

「どうやら捕まったようじゃのう」

「それは困ったな」

「如何する?」

「予定通り絶望の中で殺すのは難しそうだからなあ……コレを使ってみるか」

「これまた派手に踊ってくれそうじゃのう! ほっほっほっ」


 ~~~~~~

「捕らえましたか」

「被害は甚大ではありますが、野放しになるよりはマシかと……」

「彼には聞かなければならない事が沢山あります」

「……はい、それと殿下、サクラコさんの遺体が……」

「え!? まさか……」

「おそらく、襲撃前に殺されたのかと……心臓を一突きで殺し、川へ投げ捨てたと見られます」

「非道な! ニーナ! ニーナは!?」

「遺体は見つかりませんが、激しい戦闘の跡があったのでおそらくは……」

 テレサはワナワナと震える手をグッと握り締め、下唇を噛んだ拍子に流れた血を拭う。

「すぐにでも尋問したいところですが、街の混乱と被害状況の確認、そして彼女達の遺体を丁寧に搬送します。大罪人ゲイルは厳重なる警備の上、地下牢の最下層に収監して下さい」

「はっ!」

「生きて捕まった事を後悔させてあげますわ」

 やり場のない怒りを内に秘めテレサは城へと引き返した。

 ~~~~~~~

「ちくしょう! 何でだ! 何であそこに皇女がタイミング良くっ! はっ! まさか! 謀られたのかっ!?」

 ガンっ!

「だまれ! 大罪人ゲイル! お前は数日の内にでも死刑になるだろうが、その前に洗いざらい吐いてもらうから覚悟しておけ!」

 檻に入れられたゲイルは移動中も叫び続け、その度に衛兵に隙間から棒で突かれる。

「出せ! ここから出してくれ! 俺は、俺は嵌められたんだ!」

 地下牢に入れた後も叫び、訴えるが虚しく声が響くだけだった。

 コツ コツ コツ コツ コツ

 ゆっくりと歩く足音が誰も居なくなった地下牢に響き、足音はゲイルが収監された牢の前で止まった。

「……誰だ」

「剣聖がなんて顔してんだよ」

「あ、あんた! ここにどうやって!?」

 ゲイルの前に現れたのはクロだった。

「頑張って?」

「頑張って……いや、そんな事よりここから出してくれ!」

「まあまあ慌てるなよ、その怪我でここから簡単に抜け出せると思ってんのか?」

 ゲイルは激しい戦闘の後、多数の近衛兵と衛兵に追われ傷だらけになっていた。泥に塗れ必死に逃げたのであろう跡が見て取れる。

「くっ! だが、しかし!」

「俺としても、お前をこのままにしておくのは都合が悪いしな? それに約束しただろ?」

「約束! そうだ! まさか、俺を助けに?」

「当たり前じゃないかゲイル君! 俺は約束を守る男だよ?」

 クロは丸薬をゲイルに渡す。

「これは?」

「エルフの里に伝わる妙薬だ、滋養強壮に良いらしい」

「じ、滋養強壮?」

「あ~回復薬みたいなもんだ」

「そ、そうか! 助かる」

 ゲイルは丸薬を飲み込み息を整える。

「なんか、体力が爆発的に向上して、筋肉量が増え……自我を無くして暴れるバーサーカーになるって副作用があるらしいけどな?」

「なっ!? ガッ! アァァァ!! オオオオオオオ!!!」

 ガシャンッ!

「フー!! フー!! フー!!」

 ドォォォォォォォンッ!

「おっと危ねぇ!」

「!! クロ様……そろそろよろしいですか?」

「おーファルマル! 危ねぇぞ?」

「ガァァァ!!」

「うわぁぁっ!」

 ドンッ! ガシャン!

「グルルルルル!!」

 ファルマルに襲いかかろうと手を伸ばしたゲイルを、クロが背後から側頭部を蹴り飛ばし吹き飛ばす。

「た、助かりました!」

「お前に死なれては困るからな」

 ここまで手引きをしたのはファルマルだった。

 地下牢への入り口は狭く、周囲を厳戒態勢で守備されてたのでは流石のクロでも潜入はできない。そこでファルマルを使った。
 接見を理由とした皇族の命令は断れず、クロは護衛役としてファルマルと共に潜入した。

「行くぞ」

「あ、あれは一体何なのですか!?」

「俺が支配する前にスラム街で売られてた死兵丸というやばい薬だ」

「死兵丸……」

「飲んだら死ぬまで戦う兵士となる、故に死兵。あいつに生きていてもらっては困るからな、殺すのは容易だが牢に入れられてしまってはなあ……殺してしまうと俺やお前が疑われるだろ?」

「私の事まで考えてくださるのですね!」

「当たり前だろ? お前はもう俺の家族なんだから」

「おおおお! この懺蛇の印に誓い永遠の忠誠を」

 自我を無くしたゲイルは二人を追うように駆け上がってくる。

 ひと足先に地上へと逃れたファルマルは警備の兵士に命令をくだす。

「大罪人ゲイルは危険な丸薬を所持しており、その丸薬を飲み人外へと変貌し我に襲いかかって来た! 躊躇してはならぬ! 奴はもう魔物だと思え!」

「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 ゲイルは筋肉が膨張し、もはや人間には見えない容姿と成り果てた。
 警備兵達は驚きと混乱で次々に薙ぎ倒されていく。

「怯むな! 我も戦おう! 生き残るのだ! そして勝利の美酒を一緒に飲もうぞ!」

「「「「オォォォォォ!!!」」」」

 ファルマルの煽りに兵士たちの指揮は上がり、異変に気付いたテレサがやって来た時には全てが終わっていた。

「ファルマル兄様! これは一体……」

多数の怪我人、破壊された建物、ファルマル自身も怪我を負った。

「テレサか、失態だな! 大罪人は魔物へと変貌する丸薬を使いこの様だ」

「魔物へ!? どこにそんなものを……」

「やむを得ず息の根を止める事になったが、被害は甚大だ! この責はアレを捕まえて来たお前にある! 沙汰があるまで部屋で大人しくしている事だ」

「ファルマル兄様……」

「大人しく言うことを聞け……こうなってしまっては言い逃れはできん……だが、可愛い妹のためだ、悪いようにはせん」

「……ありがとう存じます、ファルマル兄様」

 こうして、ケンタ・イイヅカ失踪事件は、剣聖ゲイルの死により真相がわからぬまま幕を下ろした。
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