異世界で過ごす悪役ロールプレイ ~努力をしないチート能力者と転生者は無慈悲に駆逐する~【コミカライズ連載決定】

む~ん

文字の大きさ
146 / 156
第三章 復讐編

第146話 任侠道

しおりを挟む
「よう、リリカ!」

「お兄ちゃん! ヴィトちゃんも!」

「噂で聞いてるよ、無事でなによりさね」

「心配をかけたか? それより腹減ったから何か食わせてくれ」

「任せときな! このマキナさんが一週間分のご馳走を作ってあげるよ」

 マキナの料理を堪能し、一週間ぶりのバラバラ亭で一息ついていると、強面の男が二人入ってくる。

「クロの兄貴! お勤めご苦労様でした!」

「ご苦労様でした!」

 入ってきた二人は、クロがウーツに来た初日に傘下に収めた組織の者だった。
 黒蟻党というクソダサい組織名を名乗っていたので、懺蛇ウーツ支部という名前に変更した。

 支部には本部から呼び出した数人の陰を常駐させ、クロ不在の一週間の間で徹底的に教育を施すよう指示を出していた。

 そして、ボスと呼ばれると色々問題が生じるため、支部の人間には兄貴と呼ばせている。

「例の件はどうなってる?」

「へい! スラム街の他の組織は縄張りを侵さなければ黙認すると言ってます」

「黙認……」

「あ、兄貴?」

「舐められてるなあ」

「い、いや……そういう訳ではないと」

「ウーツの裏組織に顔役みたいな奴は居ないんだっけ?」

「へ、ヘイ!」

 ウーツはアースハイドとは異なり、複数の組織がどんぐりの背比べ状態で均衡を保っているらしく、組織の入れ替わりに関しては寛容だったりする。

「群雄割拠と言えば聞こえは良いが、何とも生産性のない街だな」

「昔ながらの組織もありますし、最近では任侠という言葉が流行ってます」

「任侠?」

「何やら仁義を重んじて、弱気を助け強気をくじくためには命を惜しまないとか」

(古き良き極道でも転生してきたのか?)

「俺らとしてはそんな考え方には反吐が出るんですが、古い人間にはこう……グッときたらしくて……」

「悪人が正義感を持ったところで、本質は変わらんのだがな」

「そうです! その通りです兄貴!」

「それを広めた馬鹿は誰だ?」

 クロとしては極道の異世界人であると予想する。

「ジロウという老人なんですがね? 組織には属しておらず、一匹狼を気取ってまして……」

「強いのか?」

「よく分からんのです。ボロボロになりながらも、最後には立ってるし……やられた相手も報復するわけでもなく、次の日には一緒に飯を食ってたりしてますしね」

(害がない? 珍しいタイプの異世界人だな。任侠か……会わない事にはわからないな)

 異世界人はこの世界に害を及ぼす存在が殆どであり、クロが険悪する理由はチート能力のバーゲンセール、現代日本の知識を使った末に起こる経済格差、のんきなスローライフとか言いながら商業形態の破壊を生む能力で好き勝手に満喫し世界を荒らすからだ。

 正義感を振りかざす勇者は嫌悪の対象だが、任侠の正義感との違いがクロにはわからないが故に会ってみたいと思った。

「ジロウさん?」

「なんだリリカは知ってんのか?」

「ジロウさんならうちに良く来るよ?」

「そうなのか?」

「うん! 見た目はちょっと怖いけど優しいおじいちゃんだよ!?」

「へぇ」(どうやって生計を立ててんだ? よくわからん)

「それと……これは別件ですが、クロの兄貴が探れと言っていた王族関係ですが」

「おっ! 何かわかったか?」

「秘密裏にですが、スラム街にある複数の組織にとあるペンダントを持つ者を探してくれと依頼しているようです」

「ペンダント?」

「うちの組織には話が来なかったので詳しくは……」

(ペンダントってあれの事だよな? 会う必要性は感じていなかったんだが……復讐の旅を完全に終わらせろって事か? まあ故郷の村の件もあるし会いに行くか)

「アースハイドに戻る前にやる事が出来たな。とりあえず、そのジロウって老人の居場所を割り出しておけ。そして、王族関係の情報は常に最新のモノにしておくように」

「兄貴はこれからどうなさるおつもりで?」

「俺か? 俺は……」

 マリエラから意味ありげに渡されたペンダントを、第三王子ヘクターに返す事が復讐の最終章になる予感がしてきたクロのとる行動は……

「ちょっとムカつく事を思い出したから野暮用を済ませてくる」

 厳戒態勢状態である王城へのミッションインポッシブルだった。

「お兄ちゃん! ……またどこかに行くの?」

「朝には帰ってくる」

「絶対だよ?」

 クロは心配そうな顔をするリリカの頭をクシャクシャと撫でる。

「じゃあ行ってくる」

(【主ぃ~また遊び?】)

(お前は残ってていいぞ?)

(【え~! 一緒に行く~】)

(今回は潜入だから暴れないぞ?)

(【じゃあいいや、いってらっしゃ~い】)

 ヴィトはバラバラ亭で留守番するらしい。

「ヴィト! リリカとマキナを頼んだぞ」

「やったぁ! ヴィトちゃん! 一緒に寝よ!」

 クロはバラバラ亭を後にし、王城へと向かう。

「一発くらい殴っても良いよな? なあ? マリエラ、マクベスト」

 気持ちを入れ替え、潜入する為に心を落ち着かせる。

「カチコミにでも出かけそうな雰囲気をしているな、坊主よ」

 可能な限り気配を消して歩いていたはずのクロに声をかけてくる者がいた。
 振り向くと、老人とは思えない覇気を纏った男が立っていた。

「何者だ爺さん……ん? あ~いや、そうか……あんたがジロウか?」

「だったらどうした? 坊主」

 痩せているが引き締まった筋肉、鋭い眼光、そして貫禄。強さはわからないが、有無を言わさない雰囲気は強者のそれだった。

「あんた、何人殺してきた?」

「変な事を聞く坊主だな? 殺した人数がそんなに重要か?」

「こっちの世界じゃねえよ、あっちでだよ」

 この世界での人の命は軽く、転生前の世界とは倫理観そのものが違う。
 ジロウの持つ雰囲気はこっちの世界で培ったものではない。

「坊主! 今何て言った!」

 驚いた表情でクロへ近づき両肩をがっちりとホールドする。

「何をそんなに驚いてんだよ」

「ここはあの世なのか!? 俺は……俺は死んだはずなんだよ! 死んだと思ったのに知らねぇ場所で目が覚めたんだ! 日本人も居ねえ、ここは外国かとも思ったが、色々と腑に落ちねぇんだよ! なあ、教えてくれ! 俺はどうなったんだ!」

(あ~そうか、爺さんじゃ異世界転生なんて概念ないよなあ……。何だよ、ただの可哀想な老人じゃねえかよ!)

「ちょ、ちょっと落ち着けよ!」

「落ち着いてなんて居られるかってんだ! やっと……やっと……」

 ジロウの目から涙が溢れる。

 極道とは言え、右も左もわからない見知らぬ世界へ飛ばされ、一人で生きてきたのだから、ジロウにとってクロは希望でしかない。

「泣くなよ爺さん! 情けねえなあ!」

「バカヤロウ! これは涙じゃねえ! 汗だ!」

 んなわけない。

「とにかくだ! 俺は今からやる事があるからさ、バラバラ亭にでも行ってろ」

「あん? それで坊主が死んだら俺はどうすんだバカヤロウ! どこ行くんだ? よーし! ついて行ってやる」

「爺いのくせに寂しがりかよ!」

「うるせぇ! 俺の勘が行けって言ってんだよ! それは譲れねぇなあ!」

「面倒くさっ! どうなっても知らねえぞ?」

「望むところだバカヤロウ!」

 ひょんな事からジロウを伴い、王城へ向かう羽目になってしまった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...