FUCK LIFE !!

週刊 なかのや

文字の大きさ
上 下
36 / 37

29話 バリストーカー

しおりを挟む

…………………

エースから渡された日記帳は古い物で裏表紙に日記帳自体が生産された時期が記されている。
今から10年も前の物だ、先程見付けた新聞の記事もだが過去の事件について考えさせられる内容となっているらしい。
巴月は日記帳を開く。筆跡は男の物で筆圧が強く、字は綺麗。1行ずつ丁寧に並んだ文字が気持ちの悪い内容を一層不気味にさせている。
内容は以下である。
 
〇月×日 
アルバイト先に新しい子が入ってきた。名前は育橋さん。
大人っぽい口調と大人じみた外見なのに僕と同い年らしい。
人生初の一目惚れをした。
 
〇月×日
今日は彼女と話す機会があった。
育橋さんはどうやら名前で呼ばれる方が良いそうで真知子さん…と今日から呼ぶこととなった。元々名前で呼ぶつもりだったから大丈夫。
 
.....次の月までの間は延々と著者から育橋真知子へ恋慕の想いが綴られていた。
 
◇月×日
真知子さんが店長に何か話しているのを目撃する。
かすかにしか聞こえなかったが誰かに監視されている気がすると言った気がした。
ストーカー?
 
◇月×日
真知子さんにストーカーが居ると知って3日目、今日も真知子さんの後ろから観察していたがストーカーは見付からなかった。
彼女がアルバイトに初めて来たあの日から僕が毎日送り迎えをしているのに見付からないということはきっと遠くから望遠鏡かなんかで見ているに違いない。
 
.....
 
△月×日
今日アルバイトに真知子さんは来なかった。
風邪だろうか、昨日は体調が悪そうに思えなかったけど。
前々日に真知子さんの履いていたスニーカーに通販サイトで買った小型のGPS機器を埋め込んだけど、今日は朝から晩まで動いていなかった。
 
△月×日
今日もアルバイトに真知子さんは来なかった。
大丈夫だろうかと思い勝手にだが店長の部屋から真知子さんの履歴書を見つけ住所を知った。
心配したこの気持ちに嘘はないから罰せられる事ではない筈。
明日もバイトに来なかったら家に行こう。
 
△月×日
今日もアルバイトに真知子さんは来なかった為、真知子さんの住むアパートの前に見知らぬ人影がおり、真知子さんの部屋をノックした。
出てきた真知子さんは不快な表情をして封筒を渡していた。
彼女の気持ちを考えると腸が煮えくり返る。僕の真知子さんの身体を舐めるように見ている、僕の物だ僕しか見てはいけないんだ嗚呼そうだきっとアイツは彼女を脅しているんだ。
でも残念、お前に真知子さんの裸は見せてやらない。僕だけが見ることの出来るお前の物になんかするものか。
 
△月×日
今日はシフトが無いため休日。勿論彼女も休み。
昨日男が帰ったあと、風邪防止対策と言う名目で渡した加湿器につけた小型カメラで僕は彼女の体調がすぐれないことを把握している。
彼女に友人は僕だけらしい。家の中で過ごす彼女はとても可愛らしい。ストーカに関して僕以外に相談できる相手が居ないのに僕にしてこないのは僕を気にしているのかな?
 
△月×日
カメラに映る彼女が泣いている。画面越しの僕は君を慰める事は出来ないし、今メールで君を優しく慰める言葉を送ればまるで僕がストーカーみたいだと思われそう。
今日のバイトお疲れ様、久しぶりに入った君の居ない君の部屋は女の子特有の匂いがして心地良かったよ。microSDを回収しに来たんだ。
先程データはバックアップを取って他に保存したから安心してね。
脱衣室に加湿器を置いた君の裸を録画したから結婚した後に2人で見たいね。ゴミ箱に捨ててあったティッシュや髪の毛は押し花みたいに僕の本に挟むことにしたよ。

△月×日
今日、君の家の前に居た男はこの前真知子さんが封筒を渡していた男だよね。
男が君と話してる間に道路脇に駐車していた車の中を覗いたら、真知子さんより歳の行った女性がパソコンを開いていたよ。
秘書かな、それとも恋人?恋人がいるのに僕の女に会いに来るのはおかしいよね。
僕の真知子、僕だけの真知子。
今日も君の喘ぐ姿を見て僕は絶頂を迎えた。愛し合うには画面の向こうにいる君とじゃ壁が多すぎるから、今日は君の捨てた下着と愛し合うよ。

△月×日
今日もカメラに映る彼女が泣いている。きっと不安なこと辛いこと全部僕に助けを求めたいんだろうけど、僕に嫌われるのが怖くて相談出来ないんだね。
このまま毎日この調子じゃ僕の心も持たないよ、早く元気になって真知子さんの自慰行為を動画に保存させて欲しい。僕の部屋の秘蔵コレクション枠はまだ空きがあるからお互い指輪をするまで思い出を残そうね。
大丈夫だよ、明日相談に乗って君を救いだして《彼女》にしてみせるよ。話はきっとそれからだよね。
 
.....
 
▼月●日
彼女から《お願い》をされた。”これ”をしたら僕は真知子の彼氏になれる。
手の震えが止まらないのは僕が彼女を正式に手に入れることの出来るチャンスが回ってきたからだ、決して犯罪者になるのが怖いって訳じゃない。僕は彼女の騎士、英雄、彼女を愛する夫。大丈夫、大丈夫だ僕は大丈夫。
けれどもし捕まったら彼女は僕を置いていかないだろうか...僕の両親は悲しまないだろうか、いや僕は君に全てを捧げる決心をして明日に備えたいんだ。
 
 待ち合わせ 14:30 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
ページが破かれている。続きは破れた所から書かれていない。

(ま、まま、真知子ぉぉぉぉ)
「世のストーカーって己の書いた文章を読み返してこの気持ち悪い内容に気が付かないのか?己に酔って、いや恋は盲目か。」
「育橋真知子という女と著者が新聞記事の事件に関与しているようだ」

日記の著者は育橋真知子という女性に恋焦がれ悪質なストーカー紛いの行動をしており被害者の生活を監視や盗聴を日常的にしている。
しおりを挟む

処理中です...