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そんなことより美少女だね

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「何者、何者かと言われると観測者…と言うべきなんだろうね。」

「観測者?」

「あ、さっきの攻撃して来た奴も観測者の攻撃だね。」

「何で僕が攻撃されたの?僕がその観測者?に何かした心当たりとか何も無いけれど」

「そう、お兄ちゃんは偶然私の所為で本当は関わら無くてもいい生死を賭けた戦いに身を投じなくてはならない状態って感じかな。」

「ちょっと何言ってるか分からない」

会計を終えてセラちゃんの手を握った。
握った手は紛れも無く可愛らしい少女の手。人間の手だった。

「分からないよね。」
「観測者っていうのは役割でね私は観測者になって良かったなあって思った事は1度、いや今も合わせると2度かな。2度しかないかな。」

コンビニの自動ドアを開くと蒸し暑い空間に僕達は放り出された。
セラちゃんの話を聞きながら僕は暑さと戦って歩くがセラちゃんを見ると僕が汗をかいているのに対して汗1つ出ていない。

「観測者は汗をかかないの?」

つい気になって僕は聞いてしまった。
聞いてはいけない話だったのか僕には正しい判断が主に暑さの所為でいつもの倍出来なかった。
僕が聞くとセラちゃんは鼻で笑って

「汗をかいた方が人間に見えるなら出すよ。」
「出して、お兄ちゃんがお兄ちゃんの大好きな美少女ロリが汗ばんでハアハアしているのを見て勃起させる姿も見たいから出してもいいのだけれど、汗で服が濡れたらぬるぬるして気持ち悪いから今日は止めようと思うよ」と言った。

セラちゃんは汗を出したり出さなかったり自分で決めることが出来るらしい。
何それ僕もその機能が有れば蒸し暑いこの場で涼しい顔が出来るのに。

「そもそも観測者って何って思ってる?今は思って無さそうだけど、後々説明するのも面倒だから今するね。」

「うん」

「観測者の役割は地球のあらゆる事象、人間や他生物の生命記録を観測する役割だよ。」
「だからこの身体も元から私の物って訳では無くて生命活動が停止した個体を再起動させて使ってるだけ。」

「……」

「だから…犬から人間になった訳じゃなくて、」

言い終えずにセラちゃんは肩を落として落ち込む。
僕を前にして言いたくないのだ。

僕はここで考えてしまえばセラちゃんに気付かれて結局セラちゃんを傷付けてしまうので、考えるべきではないことは頭の悪い僕にでも簡単に分かることだ。
あくまで彼女の口から聞かなくてはいけない。
でないと僕はセラちゃんを傷付けてしまうだろうし、セラちゃんは自分で言いたくない事を決心して話してくれているのだから僕は話を最後まで聞く役目がある。

話の続きをする前にセラちゃんは僕の手を強く握った。

答えを言われる前に話すのは相手が言えない状況でなら可能だが、今は決意をした女の子が喋っている途中。

「私は、私は生物の体を転々としているから。」
「生きてられなかった生物の体を使わせて貰っているから、今もこうして緑お兄ちゃんの好きな少女の体を使って話してるの。」
「ごめんね」

セラちゃんの言う「ごめんね」は僕に対して「嘘をついて」という言葉が先に来る話し方だった。

本当は僕の好きなロリでは無いけどロリに合わせるために少女を誘拐したのか植物状態か何かになった少女に乗り移ったのか僕の知ったことでは無い。
別に死体が喋っていても僕としては現実世界にファンタジー要素が入って来たぐらいにしか感じない。
嘘をつかれたとは思わなかった。

だって彼女は僕の好きなタイプになって僕の目の前まで来たんだから。不細工を気にする女性が化粧を勉強して美人になるのとなんら変わらない。
人の体を使っていることに関しても僕は気にならない。
僕の為に、僕の為だけに何の関係も無い少女を攫って拷問でもして昏睡させ操り人形如く精神か体内を乗っ取って今が有るとしても、そんなことをしてまで僕と逢いたかったのかと思う。

なんて可愛いのだろう。

僕の気にしていない様子を脳味噌から受信したのか、表情を捉えたのかセラちゃんは僕の顔をさっきより幾らか元気な声で

「緑お兄ちゃんが緑お兄ちゃんで良かった。」と言った。

言葉の中に「頭がおかしい」という言葉は入っていなかったが普通にdisられたと思う。

「まぁ、僕は寛容な気持ちの持ち主だから?君に何言われても全然痛くない、寧ろご褒美と捉えることも出来る」
「いや、気になるとこソコじゃないんだよね。大前提でこの地球には僕の知らない観測者ってのがいるのは今知ったけど、問題は何故僕が攻撃を受けたかでさ。」
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