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(番外編④)にぶんのに
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リュシアンは、震える指で最後の行をなぞった。
「……フィアナ……」
胸にそっと手紙を抱きしめたまま、しばらくその場から動けなかった。
「ありがとう……ごめん……」
涙が、ぽとりと落ちる。
「……君が、背中を押してくれてる。
だったら、僕は行こう――君が願った未来へ。
君が笑ってくれるような、生き方を、僕は……」
ふと気配に気づき、顔を上げると、
双子が、小さな体を震わせながらベッドの下を必死に探していた。
アレクシスが、床に這いつくばってベッドの下を探していた。
小さな手が、埃をかぶった床をかき分けている。
「ない……ないよ……っ!」
リュミエールも、ぬいぐるみを抱きしめたまま、何度も穴をのぞき込む。
「手紙……ほんとにないの……? 母上からの……!」
アレクシスの声が、裏返った。
「なんで……!? なんで、僕たちのがないの!?」
目にいっぱい涙をためて、震える声で叫んだ。
「おじさまのもあったのに……
おじいさまのも、おばあさまのも……
レティシア様のも、あったのに……っ!」
リュミエールが、ぶんぶんと首を振る。
「やっぱり……私たちが悪い子だったから……っ」
「……母上、怒ってるんだ……!
私たちのこと、もう、嫌いになったんだ……!!」
ぶわっ、と涙があふれた。
「ちがうのに……!ちがうのに……!!」
「大好きだったのに……っ!
ずっと、母上が好きだったのに……っ!!」
ふたりは、声をあげて泣いた。
小さな身体を震わせて、ぬいぐるみを抱きしめて、
それを見ていたリュシアンは、ふ、と笑った。
そして。
「……ふたりとも」
リュシアンが、そっと膝をついた。
「そのぬいぐるみを……もう一度、よく見てごらん」
「……え?」
「それは、フィアナが、二人のために作ったものだろう?」
涙でぼやけた視界の中、
アレクシスがゆっくりとぬいぐるみを見つめる。
リュミエールが、手に持ったそれを抱き直す。
「……なんか……音がする」
「服の……中?」
「私のは、うしろの……しっぽのとこ、なにかある……」
カサッ。
小さな音が、ふたりの胸に届いた。
「これ……!」
「……あった……!!」
「“リュミエールへ”って……!」
「こっち……!“アレクシスへ”って書いてある!!」
「……母上……!!」
ふたりの叫びが重なった瞬間、
リュシアンは、そっと目を伏せた。
胸に抱いたフィアナの手紙が、温かく彼の心を包んでいた。
「……フィアナ……君は、やっぱり……」
その声は、微笑みとも、嗚咽ともつかぬ――
けれど確かに、「愛」だった。
やがて、リュミエールが自分の手紙をじっと見つめて、ぽつりと呟いた。
「……これ……ちょっと、変じゃない?」
「えっ?」
アレクシスも覗き込む。
「なんか……私の手紙、途中から始まってるみたい」
「僕のも……最後、文の途中で切れてる気がする……」
ふたりは顔を見合わせ、手紙を並べてみた。
その瞬間、息をのむ。
ふたつの手紙が、ぴたりとつながった。
「……これ……!」
「一つの手紙を、半分こにしたんだ……!」
アレクシスの声が震える。
「僕たち、ふたりで、読むための……手紙……」
「……母上……」
リュミエールは手紙を抱きしめ、そっと目を閉じた。
「……ありがとう……ありがとう、母上……」
「……フィアナ……」
胸にそっと手紙を抱きしめたまま、しばらくその場から動けなかった。
「ありがとう……ごめん……」
涙が、ぽとりと落ちる。
「……君が、背中を押してくれてる。
だったら、僕は行こう――君が願った未来へ。
君が笑ってくれるような、生き方を、僕は……」
ふと気配に気づき、顔を上げると、
双子が、小さな体を震わせながらベッドの下を必死に探していた。
アレクシスが、床に這いつくばってベッドの下を探していた。
小さな手が、埃をかぶった床をかき分けている。
「ない……ないよ……っ!」
リュミエールも、ぬいぐるみを抱きしめたまま、何度も穴をのぞき込む。
「手紙……ほんとにないの……? 母上からの……!」
アレクシスの声が、裏返った。
「なんで……!? なんで、僕たちのがないの!?」
目にいっぱい涙をためて、震える声で叫んだ。
「おじさまのもあったのに……
おじいさまのも、おばあさまのも……
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リュミエールが、ぶんぶんと首を振る。
「やっぱり……私たちが悪い子だったから……っ」
「……母上、怒ってるんだ……!
私たちのこと、もう、嫌いになったんだ……!!」
ぶわっ、と涙があふれた。
「ちがうのに……!ちがうのに……!!」
「大好きだったのに……っ!
ずっと、母上が好きだったのに……っ!!」
ふたりは、声をあげて泣いた。
小さな身体を震わせて、ぬいぐるみを抱きしめて、
それを見ていたリュシアンは、ふ、と笑った。
そして。
「……ふたりとも」
リュシアンが、そっと膝をついた。
「そのぬいぐるみを……もう一度、よく見てごらん」
「……え?」
「それは、フィアナが、二人のために作ったものだろう?」
涙でぼやけた視界の中、
アレクシスがゆっくりとぬいぐるみを見つめる。
リュミエールが、手に持ったそれを抱き直す。
「……なんか……音がする」
「服の……中?」
「私のは、うしろの……しっぽのとこ、なにかある……」
カサッ。
小さな音が、ふたりの胸に届いた。
「これ……!」
「……あった……!!」
「“リュミエールへ”って……!」
「こっち……!“アレクシスへ”って書いてある!!」
「……母上……!!」
ふたりの叫びが重なった瞬間、
リュシアンは、そっと目を伏せた。
胸に抱いたフィアナの手紙が、温かく彼の心を包んでいた。
「……フィアナ……君は、やっぱり……」
その声は、微笑みとも、嗚咽ともつかぬ――
けれど確かに、「愛」だった。
やがて、リュミエールが自分の手紙をじっと見つめて、ぽつりと呟いた。
「……これ……ちょっと、変じゃない?」
「えっ?」
アレクシスも覗き込む。
「なんか……私の手紙、途中から始まってるみたい」
「僕のも……最後、文の途中で切れてる気がする……」
ふたりは顔を見合わせ、手紙を並べてみた。
その瞬間、息をのむ。
ふたつの手紙が、ぴたりとつながった。
「……これ……!」
「一つの手紙を、半分こにしたんだ……!」
アレクシスの声が震える。
「僕たち、ふたりで、読むための……手紙……」
「……母上……」
リュミエールは手紙を抱きしめ、そっと目を閉じた。
「……ありがとう……ありがとう、母上……」
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