森と花の国の王子

あーす。

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誘拐されたレジィリアンス

さらわれたレジィ

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 レジィリアンスはぼんやり霞んだ頭を、軽く振る。
エドアルドと話してる時…背後から突然口を塞がれ…当てられた布の香りを吸った途端、頭がくらくらして…。

それから…。
水の中を流されてる感じがした…。
冷たくて、目を覚ましたかったけど、体が動かず目も、開けられなかった。

いつの間にか水は消え、少し温かくなったと思ったけど、なんか、揺れていて…。
見知らぬ男の腕が胴に喰い込んでて、目を開けると馬上にいた。

男の腕を押し退けようともがいたら、お腹に拳を当てられ…。
そしてまた、意識が薄れて…。

ここは、どこだろう?
薄暗い…室内?

顔を上げると、まだくらくらと頭が揺れてる気がしたけど、必死に正気を取り戻そうとする。
倒れているのは、ふかふかのクッションの敷かれた長椅子の上。
ランプが一つ灯ってるだけの…明るくない室内。

「お目覚めか…」

レジィは向かいの一人掛け用椅子に浮かび上がる、足を組んで手にしたグラスを揺らしてる男を見た。
見目の良い…真っ直ぐの長い黒髪。

周囲はどこかばたつく気配がして、幾人かが走り回ってる。
“城の中の…どこか?”

レジィは手を付き、身を起こそうとした。
その時、突然扉がバタン!と開くと、下品な…盗賊のような顔と服装の、男が怒鳴る。
「地下道の出入り口全てが、封鎖され始めてる!
入り口全てから、ヤツの仲間が一斉に降りて来たら!
ここにも直ぐ、やって来るぞ!!!」

黒髪の男は、ギリ…と唇を噛んだ。
「…あの忌々しい、ラステルめ!
が、元はと言えば。
あれだけ囮を張り巡らしたのに、それでもこの地下道を突き止めた、エウロペか…」

レジィは“エウロペ”の名を聞き、希望の明かりが灯ったように感じ、思わず微笑を漏らす。
が、黒髪の男は立ち上がる。
黒マントに黒のベスト。
黒ズボンに黒ブーツの、黒ずくめ。
が、ベストの横は銀の刺繍が入り、そこそこ品があるように見えた。

「さて、王子様。
場所を変えて頂きましょうか?
貴方を欲しがってる男は大金を払う。
が、その前に。
その男に引き渡せるよう、調教が必要だ」

レジィは寄って来る男から、思わず身を引いた。
が、さっ!と手首を掴まれてしまう。

男は整った顔を寄せて囁く。
冷酷な、ブルーグレーの瞳だった。

「エルデリオンと、大してシてないそうだな?
ヤツのモノを、咥えた事は?」

レジィリアンスは、目を見開いた。

男はふん!と鼻を鳴らす。
「…何のことか、分からないか?」

その時、レジィは突然思い当たった。
エルデリオンが男はみな、大抵されると気持ちいいと言って…自分の男の印を口に…!

「…される、一方か。
なら相手がいいように教えるのは、ちょっと大変だな」

言って男は、ぐい!とレジィリアンスを長椅子から立ち上がらせる。

レジィは足元がヨロめいて、転びそうになった。
が、男の腕に抱き寄せられる。

その腕は、エウロペとは正反対。
相手への思いやりなど微塵も感じられず、物のように扱う冷酷な腕。

レジィはぞっ…と、身が震った。

「…なに…その美貌だ。
せいぜい丁寧に舐め上げて、可愛く尻を振って誘ってりゃ、相手もうんと、可愛がってくれるさ!」
「いや!
離して!!!
嫌っ!!!」

が、男は軽々レジィを腕の中に抱き上げる。
レジィは必死に手と足をバタつかせたけど。
扉を潜る時、扉を開けて横に避けていた賊が、突然口元に布を当てた。

レジィは吸い込むまいと、首を振ったけど。

強引に押しつけられて吸い込み、再び意識を、失った。
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