森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
228 / 418
エルデリオンの辛い毎日

滅多に慌てないラステルが慌てた時

しおりを挟む
 ラステルがエルデリオンの部屋へ、こっそり入る。
が、どこにも姿が見えなくて探し回った末、調教部屋を覗いた時、エルデリオンが壁の張り型に…蕾を沈め込ませてるのを目にし、物陰に隠れ、盗み見た。

二度射精し、とうとう膝を折って荒い息を吐いてるエルデリオンを、目を見開いて見つめる。
その後テーブルの上の薬草を、エルデリオンがみずかららの蕾に押し込むのも、物陰から伺った。
間もなくエルデリオンがぐったりソファに倒れ込んで、そのまま寝息を立てるのを聞いた後、音を殺して部屋を出た。

共同の居間を抜け、表階段ではなく隠し階段を、瞬速で駆け下り、外へ続く扉を蹴立て、一気に駆け出す。

行き交う貴族らが談笑しながら散歩してる間を、一歩も止まらずすり抜け、トラーテルへと更に速度を上げて駆け出す。

警備を厳重にしたため、城とトラーテルの間の柵の、門は閉じられ、うんと手前から門番に叫んだ。

「開けろ!」

門番はうんと前に迫り出し、かなり遠目の叫ぶ人物を伺い
「ラステル様?!」
と尋ねる。

ラステルは門番に見えるよう、思いっきり頷く。

門番はラステルが駆け込む直前に、門を開けるのに間に合い、ラステルは僅かな隙間を、横向きですり抜けると
「閉じていい!」
と叫び、なだらかな草茂る坂を、駆け下りて行った。

坂を下りきると目前に広がる池で、四人の青年らが裸でばしゃばしゃ互いに水を掛け合ってるのを目にする。
トラーテルの外のテーブルに、エウロペの姿を見つけ、一気に駆け寄った。

ラステルはエウロペの横で速度を急激に落とし、足を止めると。
息切れで崩れ落ちかけ、エウロペに水の入ったグラスを差し出され、会釈して受け取り、一気に飲み干した。

ラステルは屈み、両手を膝について息切れを整え、池を見つめる。

レジィはテリュスに水を派手にかけられ、笑顔で逃げ回ってた。

「…レジィ殿は、たいへんお元気そうだ」
エウロペは頷く。
「大変お急ぎのご様子」

ラステルはその言葉に、エウロペに振り向き囁く。
「…エルデリオンは一番大きな張り型に身を沈めてた。
何としても貴方を呼ぶ気だ」

ガタガタガタッ!

エウロペは聞くなりテーブルに乗せてた腕を滑らせて椅子から、転げそうになって堪える。

「……………………………」
「レジィ殿に今、会わせたらマズイですか?!」

いつも滅多に慌てないラステルに、勢いこんで問われ、エウロペはラステルを見、その後池ではしゃぐレジィを見た。

ラステルはがっくり、肩落とす。
「…ですよね…。
レジィ殿もやっと、笑顔と元気、取り戻した矢先ですものね…。
それにまだ、記憶が不安定なんですよね?」

言いたい言葉を全部取られ、エウロペは頷くしか無い。

その後、ラステルに腕の袖を握られ、言われた。
「それにエルデリオンは、夕食も朝食も取ってない。
直ぐ、来て、なんとかして欲しいんですけど」

「…もう昼食だろう?
それも?食べてない?」
「貴方が用意した座薬を入れた途端、ソファに倒れ込んで寝息立ててました」

エウロペは、頷いた。
「鎮静作用のある傷薬で、効いてくると眠くなるんだ。
が、あまり空腹だと、じき目覚めて…猛烈に食べると思うんだが…」

ラステルは睨んだ。
「あの様子だと、部屋に用意してる果物で済ませ、また!
張り型に挑戦しそうなんですけど!」

エウロペはこれ程真剣なラステルの空色の瞳を、見た事無いと感じ、上ずった声でなんとか返答した。
「…分かった。
何とかしよう」
ラステルは無言で、しっか!と頷く。

その時、昼食の鐘が鳴り響き、皆裸でずぶ濡れで、池から駆けて来るから、ラステルはど・迫力で怒鳴った。

「全員、そこで止まれ!!!」

一番最初に駆け込んで来たデルデロッテが、ピタリ!と止まると。
その背にエリューンが突っ込み、レジィはエリューンの後ろでぶつかりかけて、テリュスに腕を引かれ、ぎりぎりで止まった。

ラステルは直ぐ室内に入ると。
大量の布を両手で持ち
「拭いてから!」
と叫ぶ。

デルデロッテはラステルの腕の上から布を取ると、体や髪を拭き出し。
エリューンは鼻をさすりながら布を取り、テリュスは二人分取って、レジィに手渡していた。

腕がからっぽになると、ラステルはまたエウロペの服の袖を掴む。
引っ張るから、エウロペは仕方なしに立ち上がった。

そしてラステルに袖掴まれたまま、閉まった丘の上の門まで連行され
「開けろ!」
と叫ぶラステルを呆けて見た。

門番は
「もうお帰りで?」
と尋ね、慌てて門を開け、ラステルがエウロペの、腕の袖を引いて門を潜った後。
再び門を閉めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...