森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの幸福な始まり

最初の特別な相手についての議論で怒りをエルデリオンに向けるデルデロッテ

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 エウロペは後ろ腰に抱きつくレジィに、振り向く。
そして、回した腕を解くレジィの肩に手を乗せ、室内へと導く。

それに習って、皆ぞろぞろと室内へと歩き始めた。

レジィはエウロペを見上げ、尋ねる。
「エウロペ、もしかしてエルデリオン様のお尻に…挿入れたの?」

その無邪気な問いに、テリュスとエリューンはエウロペが顔下げるのを見たし。
デルデロッテとロットバルトは、エルデリオンが頬染めて俯くのを見た。

唯一室内にいたラステルが、笑顔で皆をテーブルに招きながら、呟く。
「私が無理を言ったので」

レジィはきょん!と青い瞳を見開き、ラステルを見上げる。
「ラステル様が?」

ラステルはにこやかに笑う。
「…様は、要りません」

そう告げながら、テーブルの一番奥の椅子にレジィを通しながら告げる。
エルデリオンも、デルデロッテの横で顔を上げてラステルの返答を聞いた。

「…エウロペ殿は気が進まなかったんです。
本心は。
けど、もしエウロペ殿に断られたりしたら、エルデリオンはどんな変態男にお仕置きを頼むか。
私は凄く心配で、断らないよう頼んだんです」

レジィの横にエウロペが腰掛け、その横にエリューンが詰めた。

デルデロッテに勧められ、エルデリオンはレジィの向かいに。
デルデはその横。
ロットバルトはデルデの横の、一番端に腰下ろす。

テリュスは角を挟んだロットバルトの横に。
ラステルは立ったまま、グラスに次々、果実酒を注ぎ、ロットバルトとエリューンがそれを横に回す。

デルデロッテはロットバルトから受け取ったグラスをエルデリオンに手渡した後。
顔を上げてラステルに尋ねた。

「…つまり私が、ぶった斬っちまうような変態男らに?」

ラステルが思い切り、顔を下げる。

エルデリオンは横のデルデロッテが、真剣怒ってる。
と感じ、顔を下げた。

ロットバルトはエルデリオンが気の毒になって、デルデに囁いた。
「席…入れ替わらないか?」

けれどデルデロッテは即座に歯を剥く。
「必要無いでしょう?!!!!」

言い切られ、ロットバルトは項垂れた。
角横のテリュスが、こそっとロットバルトに尋ねる。
「…あんたぐらい立派な人でも。
怒ったデルデロッテは、手に負えない?」
ロットバルトはその問いに、無言で頷いた。

エリューンはテリュスとロットバルトの会話を聞いた後、デルデロッテに尋ねる。
「…つまり斬っちゃマズいような身分高い男を…。
嫉妬で斬っちゃうって事ですか?」

デルデロッテは即座にエリューンに喰ってかかった。
「君だってレジィをさらったレガートに、会ったりしたら問答無用で即、ぶった斬るだろう?!」

エリューンは横のエウロペを見つめ、問う。
「レガートって言うんですか?誘拐犯」
エウロペは俯いたまま、頷いた。

レジィが、果実酒を喉に流し込んだ後、椅子に腰掛けようとしたラステルに尋ねる。
「…エウロペじゃなきゃ、デルデロッテが斬り殺しちゃうから…。
エウロペに断らないでって…頼んだの?」

ラステルは爽やかに笑って
「そう」
と言った。

レジィは、顔を背けるエルデリオンを睨んでる、デルデロッテに視線を向けて問う。
「僕…分からないんだけど、何も知らない相手ににあれやこれやって…美味しい役目なの?」

テーブルの一同…デルデロッテとエリューン、質問したレジィリアンスを除く皆は、その質問に顔を下げきった。

デルデロッテは真顔で頷く。
「もう少し大人になれば分かると思いますけど。
相手の、最初にするのが自分だと。
男はとっても嬉しいものなんです」

レジィは“もう少し大人になれば…”と注釈付けられたので、顔下げて頷く。
「そう…なんだ」

そしてエウロペとエリューンを見て、問う。
「二人とも、そう?」

問われてエウロペも、爽やかな笑顔を浮かべる。
「…確かに初めての時は、相手にとっても自分にとっても、特別ですから。
けれど私ぐらい大人になると、恋愛する相手もある程度年が行ってるので。
初めてって人は、ほぼいないから。
関係無くなりますけどね」

レジィは頷いて
「じゃ、エリューンは?!」
と笑顔で尋ねる。

エリューンは暫く俯いたまま、沈黙。
やっと顔上げると、言った。

「私の今までの相手…って、ほぼ年上なんで。
エウロペ殿と同様かな?」

レジィはがっかりし、テリュスを見る。
テリュスは顔を背けてたけど、ぎくっ!とし、レジィの
「テリュスは?」
の言葉で、思いっきり顔を下げた。

ロットバルトが気の毒そうにテリュスを見つめる中、テリュスは顔下げたまま、ぼそり…と呟く。

「…惚れた相手とは、お互い初めてで。
そりゃ…最高だったけど…。
結局、その場所も出なきゃならなくって…次に出会った時、もう恋人がいて。
はっきり言って、もの凄いショックで。
暫くは恋愛恐怖症になった」

言った後、テリュスは顔を上げる。
「だがお前の初めてを奪ったエルデリオンを見ろ。
確かに初めてって、特別だ。
が、上手く行かないと心を抉る傷になる。
お前も、相手が初めての時なんて、ヘタすると心を根こそぎ持って行かれるぐらいの、感激な出来事だから!
上手く行かないと半端無く辛いと、思い知っといた方がいい!」

テリュスが言い切るので、レジィは思いっきり、こっくん!と頷いた。

エウロペが
「…テリュス。
一応エルデリオンは大国の王子だから、呼び捨ては…」
と忠告し、ロットバルトは
「辛かったんですね」
と茶の瞳を潤ませていて。

エルデリオンは
「この場では、構わないですから」
とエウロペに告げ、エリューンはロットバルトに
「けどその落ち込み方が。
私に八つ当たりしまくりで。
しかもヤケ酒飲んで幾度もぶっ倒れ、エウロペに担がせて…。
傷付くのは良いけど、周囲に迷惑、かけて欲しく無い…」
と言って、ロットバルトの顔を下げさせた。

が、デルデロッテが直ぐ顔を上げて、エリューンに言い諭す。
「その程度なら、許容範囲内。
エルデリオンより、うんとマシ」
と言って退け、エルデリオンは再びデルデロッテより、顔を背けた。

とうとうエルデリオンは、デルデロッテに振り向いて告げる。
「君がすっごく怒ってるのは分かってる。
けど今、この場くらいは、大人になって…」
「君だったらこういう場合、大人になれる?」
エルデリオンは即、反撃され、暫く沈黙した後、首を横に振る。
デルデは間髪入れず言い返す。
「…自分は出来ないのに、人に要求する?」

エルデリオンはそれを聞くと、思いっきり顔を下げた。

レジィがそんなデルデロッテを見つめ、尋ねる。
「デルデは自分が…その最初の、エルデリオンの特別な人に成れなくて、怒ってるの?」

デルデは思いっきり、頷く。
レジィはこそっ…と横のエウロペを見
「…じゃ、エウロペと喧嘩する?」
と尋ねた。

デルデは大きなため息を吐く。
「…エウロペ殿が、エルデリオンの最初を奪ってたら。
容赦しないんですけど。
押しつけられて困ってたんで…。
流石に彼には、怒れない」

ロットバルトが顔を下げたまま、こそっ…と呟く。
「…その分の怒り全部、言い出した王子に向けてないか?」

デルデはジロ。
と隣のロットバルトを睨み
「…なら君に向けても、いい?」
と聞かれ、ロットバルトはデルデを見ないまま、首を横に振った。
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