森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの幸福な始まり

会合お開き後の思惑

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 ラステルは秘境アースルーリンドから来た二人に告げる。
「貴方方も仲間待ち。
アッカマン侯爵が今後もお世話致しますので。
暫くは寛いで頂きたい。
その間に情報を集めますので」

アッカマン侯爵は立ち上がり、スフォルツァとラフォーレンを促し、エルデリオン王子とレジィリアンスに会釈した後、出て行く。

エルデリオンはラステルに顔を向けて問う。
「…結婚の儀って…いつの予定だ?」
ラステルはチラとデルデロッテに視線を送り、微笑む。
「首尾次第。
余裕があれば一週間後。
けれど猶予がなければ、二日後に」

ロットバルトは目を見開き、ラステルを見た。

レジィリアンスだけが
「…エウロペと僕が東に行く話、結局どうなったの?」
と聞き
「出来れば一刻も早く、エシェフガラン雪の勇者の国の王子を助け出してあげたい」
と俯いた。

エウロペもエリューンもテリュスもが。
そんな心優しいレジィを、少し悲しげに見つめる。

が、ラステルが明るい声で告げた。
「勿論、一刻も早く救い出す為、手を尽くしますので。
ただ、貴方が危険な場所に出向くと。
エウロペ殿の心臓が、心配で張り裂けてしまう。
なので先ほどの秘境の国、アースルーリンドの能力者がこちらに来次第、貴方とエウロペ殿に発って頂きます。
それまでは…」
と、デュバッセン大公に視線を向けるので、大公はため息交じりにしぶしぶ言った。
「私が全力を尽くし、可能な限りルートを探り出します」

レクトール男爵も立ち上がると
「さて。
あまり長居が出来ない。
西は平坦な地が多く、王国も多い。
あちこちから情報が送られてきますからね!」
と素敵な笑顔を向けるので、レジィは彼の事が大好きになって、頷いて見送った。

ラステルがデルデロッテを見ると、デルデは横のエルデリオンをエスコートするように立って手を差し伸べる。

が、エルデリオンは濃い栗色巻き毛を肩に纏わり付かせ、素晴らしい美丈夫のデルデを見上げ、呟く。

「…折角…レジィリアンス殿と久しぶりに会えたのに」

ラステルは顔を下げ、こちらの思惑がバレてるかな?
とチラリとデルデに視線を向ける。

デルデはレジィリアンスに視線を向け、笑顔で尋ねた。
「エルデリオンは君の事が心配すぎて。
それは大変だったから…。
良ければ主寝室で暫く二人きりで。
話って、出来る?」

レジィはエルデリオンを見る。
エルデリオンは…誘拐から保護され、やっと姿を見ることが出来たと喜んで部屋に入るなり、激しい拒絶にあった事を思い返し、ヘイゼルの瞳を潤ませた。

レジィはちょっと上目使いでエルデリオンの、再び拒絶されるのだろうか。
と泣きそうな表情を伺い、ため息を吐いた。

「僕、強くなったから」
と言うと、座っているエルデリオンの後ろに立つ。
エルデリオンが振り向くと、レジィに手を取られ…立ち上がると、手を繋いだまま寝室に導かれ、ほっとした笑顔を浮かべる。

寝室に消えて行くエルデリオンは、振り向きラステルとデルデに笑顔を向け、ロットバルトに頷いた。

パタン…。
扉が閉まると、ラステルがデルデロッテの前に立つ。
デルデは直ぐ手を振り上げ、言った。
「だって暫くは仕方無いだろう?!
ちゃんとここに居て、適当な時に城に引き上げるから」

ラステルは腕組みし、その模範解答に頷く。
そして顔を上げて、言った。
「朝、首尾を知らせてくれ。
エルデリオンが東行きを断念したら、式は一週間後。
東に行くと言い張ったら、式は二日後。
君の回答次第で、城内は式の準備にごった返す」

ロットバルトが寄って来て、ぼやく。
「…つまりデルデが説得出来なかったら…」
ラステルは頷く。
「気が狂うほど忙しい」

ラステルはデルデロッテの肩を、ぽん。と叩いた。
ロットバルトも反対側の肩をぽん。と叩き、二人揃ってため息交じりに首を横に振り、玄関に向かう。

一人残ってたデュバッセン大公は、チラとエウロペを見た。
「他にも寝室、ありますよね?
私も直ぐ、東に戻らねばなりませんけど。
数刻猶予があります」
と口説き始める。

エウロペはまじまじとデュバッセン大公を見た。
「そういう短期のお楽しみは、彼向きだ」
とデルデを指さす。
けれどデュバッセン大公が尚も見るので
「年若い彼らの手本となる身なので。
相手が女性ならともかく、お遊びで男性のお相手は出来ません」
と告げた途端、デルデが振り向く。

「…服を着たまま。
挿入だけでどうです?」

デュバッセン大公が頷き、デルデはエウロペに振り向くと
「開いてる寝室って?」
と聞き
「南」
と答えると、デュバッセン大公と腕組んで歩き出す。

長身のデルデは、小柄に大公に視線下げ、歩きながら尋ねる。
「…もう私を、憎みませんね?」
けれどデュバッセンは、眉寄せて言った。
「摘まみ食い程度で、フルコースじゃないのに?」

エウロペがテリュスとエリューンを見ると、夕飯の仕度に来ていた女将さんと、厨房に向かっていた。

厨房を覗くと、二人は芋の皮むきだとか、食器を出す手伝いを始めてた。
それでエウロペも仲間に入ると、パンをこねるのを手伝い始めた。


レジィは寝室に入ると、寝台に寝転がるから。
エルデリオンも遠慮がちに、レジィの横に転がった。

レジィは少し悪戯っぽい表情で、エルデリオンを見て呟く。
「さっき…嬉しかったです」
エルデリオンは呆ける。
「さっき?」
「私が東に行くっ…て言ったら。
貴方も私を守るためにいらっしゃるって…おっしゃったの」

エルデリオンは躊躇いながら、レジィに告げた。
「敬語は…止めませんか?」
「じゃあ私に対しても。
止めてくれます?」

エルデリオンは微笑んだ。

けれどその時。
“僕の話、してた”
と声が聞こえ、エルデリオンはじっ…とレジィを見る。

けれどレジィも自分を見るので、エルデリオンは首捻った。

「今の…」
レジィも呟く。
「貴方の声じゃない?」
「君も聞こえた?!」

エルデリオンはがば!と身を起こす。
そして室内を見回した。

不思議な事に、寝台横に金の光が浮かび上がり、光の中にぼやけた少年の姿が見えて、レジィもエルデリオンも目を見開いた。

“僕…の話…してた…よね?”

レジィが口開く。
「もしかして君って…アースルーリンドの人?」

光の中の少年は頷く。
よく見ると、ぼやけてるけど金髪で青い瞳。
レジィにどこか似ていた。

“どうして僕…ここにいるの?
…でもここに居ない”

レジィは首捻る。
「意味が全然、分かんない」

少年はエルデリオンを見つめる。
“貴方の肖像画、見た”
エルデリオンは尋ねる。
「どこで?!」

“…分からな…い………。
僕…凄く心細い。
ここ…知らないところ。
僕…ここから動けない”

レジィがびっくりする。
「じゃ今話してる君は?
だってここに居る」

“…君たちが来てくれれば…。
寂しくない”

それでエルデリオンは言った。
「もう数日後になるだろうけど。
必ず行くから」

けれど金の光の中の、少年が頷いたかと思うと。
いきなりエルデリオンは自分の周囲が金に光り始め、眩しくて…目を閉じた。

レジィも周囲が光り始め
「???」
とキョロキョロ周囲を見回す。

そうこうしてる内に。
二人はなんだか眠くなって意識を無くし、深い眠りに入った。
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