森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

援軍駆けつけるシャスレ城

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 ギュンターとエリューンはまた飛び込んで来る敵を、鮮やかに斬り殺す。
エリューンはチラ…!とギュンターの剣技を見たが、彼も一撃で敵を倒し、直ぐ次の敵に剣を構えてた。

金の髪を散らすギュンターの、長身から繰り出される激しい剣捌き。
さらにしなやかな身のこなしで、相手の剣は掠りもしない。

エリューンはまた、剣突き立てて突っ込んで来る敵から一瞬で身を横にズラして敵の剣を避け、相手の腹に剣をずしん!と突き刺し、賊の丸まった背を掴んで剣から引き剥がして放り投げ、剣を構えつつ、わくわくしてる自分に気づいた。

横にこれほど頼りになる剣豪がいれば、かなりの余裕。

いつも剣を真っ向から振るのは自分一人。
捌ききれないと、必ずテリュスが弓で助けてくれていたから、隣で豪快に剣で薙ぎ払ってくれる男が居るのは、本当に頼もしかった。

ローフィスはテリュスが、弓をつがえるのを控えてるのを見、囁く。
「そっちも、矢を温存か?」

テリュスは頷く。
「尽きてはいざと言う時、救えない」
ローフィスも頷く。
「こっちも…残り……」

テリュスが見ると、開いた革表紙の中に、残り2本の短剣が。
けどローフィスが腿のポケットや懐から、まだ小さな革表紙を少し出して確認してるのを見、目を見開いた。
「(…どんだけ隠し持ってるんだ…)」

けどローフィスは、テリュスの小さく細い矢を見
「そっちのが、たくさん持てそうだ」
と呻く。
テリュスは頷いた。
「本数は多く持てる。
が、長さがあるからな」
ローフィスはそれを聞いて頷く。

ざしっ!
ざっっ!

また、ギュンターとエリューンが飛び込んで来る賊の二人を切り捨てたところで、廊下を駆ける音と共にラステル配下の一人が顔を出し、叫ぶ。
「この階はその二人で最後…。
あ、もう斬り殺しちゃったんですか?
じゃ、これで大丈夫です。
後は上がってこないよう、階段を死守します!」

エウロペが力強い声で
「頼む!」
と叫び、ラステル配下は頷いて駆けて行く。
間もなく
「援軍到着!」
「到着したぞ!!!
下の階の掃除を始めてる!!!」

と廊下で叫ぶ男らの声がした。

エウロペはほっとして、目を閉じたままのレジィリアンスを、奥の寝台に寝かせる。
ラフィーレが直ぐ横に立つと
“続き…します。
ダンザイン様、聞こえますか?”
と、アースルーリンドの西の聖地の神聖騎士と連絡を取り始めるのが、室内の全員の脳裏に響いた。

間もなく、黒装束の賊らがもの凄い数で、馬で草原を駆ける姿が皆の脳裏に浮かび上がった。

賊は更に合流し、どんどんその数を増やして行く。
味方は…かなり後ろの森の中を必死で駆けていたが、その姿は遠く、距離はめちゃくちゃ開いてる。

飛行船のデュバッセン大公が、脳裏に響く声で怒鳴る。
“エルデリオン王子の居る、ノルデュラス公爵の城に敵が向かってるから、今から駆けつける!!!”

ローフィスとギュンターは、直ぐ顔を見合わせた。
“待て!!!俺達も行く!!!”
ギュンターの叫びと同時、ローフィスも駆け出そうとするその背を衣服を、エウロペが握り引いて告げる。
「私が行く。
王子とラフィーレを頼めるか?!」

ローフィスは振り向くと、目を見開き頷いた。
エウロペはエリューンに
「レジィを頼む!」
と叫び、ギュンターの後を追う。

テリュスも素早くエウロペの背に続きながら
「何があってもレジィを守ってくれ!」
とローフィスに依頼し、走り去る。

エリューンはもう敵が室内に入って来ないのを確認し、室内に転がった賊の死体の多さに、ため息吐いた。

ローフィスはそれを見ると
「廊下にいる連中、呼び込んで運んで貰え」
と言い、エリューンは明るい真っ直ぐの栗毛で青い瞳の、爽やかなアースルーリンドの美男の言葉に、目を見開いて頷いた。

「(…言わなくても気持ちを察するなんて…ローフィス…って言ったっけ?
…エウロペみたいだな…)」



ギュンターとエウロペが廊下の角を曲がり、屋上へ続く階段へとひた走る。

途中の廊下の横、階段上の踊り場でロットバルトが
どかっ!
とハデな音で靴底を、階段駆け上がって来る敵に喰らわせ、階下に吹っ飛ばしてた。

だだだだだんっ!

下へ転がり落ちる派手な音を聞き、テリュスも追いついてそれを見た。
ロットバルトの周囲は賊の死体だらけ。
また、階段上がって来る賊に向かって、ロットバルトは剣を思いっきり突き刺し
「う゛わ゛っ!!!」
と叫ぶ声と共に、どんどんどんっ!!!
と賊が階下に落ちて行く音がした。

エウロペは廊下にまで倒れてる賊の死体を見
「まだ来てるのか?!」
と尋ねる。
ロットバルトは
「かなり減った」
と階下をチラ見しながら、言葉を返した。

テリュスは横を通り過ぎかけて目を見開くと
「一人で戦ってた?!」
と聞く。
ロットバルトは肩すくめてぼやいた。
「屋上に降り立つのが遅くなって、階段降りたら囲まれたんで、仕方無く」

間もなくラステル配下が二名やって来ると
「ありがとうございます!
後は我々が!」
と、ススを被って真っ黒な姿で言うので、ロットバルトは眉下げ、二人の気の毒なラステル配下に呻いた。
「大丈夫だ、手伝える」

けど顔を上げると、ギュンター、エウロペ、テリュスの三人は屋上に続く階段を登り姿を消しかけるので、つい怒鳴った。
「どこ行くんだ?!」

けれど返事は無く、屋上に続く扉が風で
バタン!!!
と派手な音立てて閉じ、ロットバルトはまた、肩をすくめた。

屋上に上がると、飛行船は僅かに進みながらも高度を下げるから、ロープが屋上に垂れる。
ギュンターはその一つを掴むと、直ぐ登って行った。
エウロペもほんの数秒遅れでロープを掴み、登り始め、テリュスはロープに飛びついて掴み、するするとよじ登って、二人を抜き去った。

ギュンターはテリュスの素早さに目を見開き
「あいつ、もしかして人間の姿した猿なのか?!」
と叫びながら登り、エウロペは返事せず、船の縁に手を乗せ、身を乗り上げてから言い返す。
「猿呼ばわりすると、後でテリュスに叱られるぞ!
君は早いな!!!」
ギュンターもエウロペと同時にヘリを掴み、船に乗り上がると怒鳴り返した。
「そっちもな!!!」

船はいきなり速度を上げる。
まだ船のへりにへばりついてたギュンターとエウロペは
がっくん!!!
と大きく揺れて走り出す船の底に、ほぼ同時に吹っ飛んで転がり落ちた。

だんっ!!!
どんっ!!!

エドウィンは眉間を寄せて光の通路を護り、シュアンは
“急がないと間に合わないから!!!”
と脳裏で船に乗り込む三人に告げた。

二人の神聖神殿隊騎士は厳しい顔で船の左右のヘリの上に立ち、進路を睨んでる。

先に乗り込み、船のへりに掴まって転ぶのを防いだテリュスは、凄い速度で走り出す船の中で蹌踉めきながらも、船底に転がるエウロペの腕を掴んで助け起こす。

ギュンターは船の縁に掴まって立ち上がるものの、あまりの速さに船の縁を掴んだまま、椅子代わりの横板の上に、すとん!と腰を下ろした。
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