森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

ファントール大公の城へ一斉突撃

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 船に乗った後、公爵は木で出来た巨船が宙に浮いてるのに、目を見開く。
更に両縁に立つ、銀の髪と赤い髪の、オーガスタスよりも長身の男達。
「…もしかして…伝説のアースルーリンドの…魔法使い?」

二人の神聖神殿隊騎士は、振り向いてため息吐いた。
“なんで魔法使いだ…”
“魔法じゃ無いって…”

隣でラステルが公爵に尋ねる。
「それより城に残してきた貴方の部下達は、大丈夫です?」
公爵ははっ!と気づくと
「それ…!
それ、出来るか?
脳で喋るヤツ!」

銀髪の神聖神殿隊騎士は、振り向くと頷く。
「伝えてく…」
“もう頭の中で喋ってもいい”
“どうや…あ、思えば良いのか。
全員、非常事態体勢で身を隠して城から退避!!!
聞こえたか?
非常事態体勢で一斉退避だ!!!
急げ!!!”

その後、公爵の脳裏に女中から下働きの子供、老人の庭師までもが、配下の白服の若者達に連れられ、非常用通路から逃げ出し始める様子が見えた。

デュバッセン大公は
「地下通路で崖下に逃げるのか?
なら…」
と、崖下に大勢待機してる、部下らの待機場所を示す。
公爵は直ぐ様
“エリサ通路を伝い、出た先の大木の陰に救い手が居る!!!
彼らに合流しろ!!!”
と叫んだ。

また。
皆の脳裏に、蟻の巣のような崖下の地下通路を、皆一斉に一つの通路を目指し、走り出す様が映し出される。

ラステルがため息交じりに呟いた。
「…こんな地下通路を、この地の反乱者達が皆、持ってたら。
そりゃ簡単には攻略できなくても、無理無いですね?」

デュバッセン大公も頷きながら、部下に指示を出す。
“ノルデュラス公爵の使用人らが、サテラスに現れるから。
即時保護しろ!”

ラステルが直ぐ、デュバッセン大公に心話で告げる。
“ファントール大公の城へ、今直ぐ突入!”

デュバッセン大公は、脳裏で部下らに告げる。
“掃除は済んでるな?
では一斉突入!
城を制圧しろ!!!”

皆の脳裏に、今度はファントール大公の城の地下、かなりな上で待機してた者らが、騎士らを次々、先へと送り込み始めた。

騎士らは広い廊下に出ると、目前を阻む賊を切って捨て、即座に上の階目指し、城の中へと駆け上がる。
庭からも。
幾つもの通路から、今度はデュバッセン大公配下が一気にファントール大公の城を埋め尽くし始めた。

デュバッセン大公の指示は続く。
“捕虜を確保しろ!!!
一人でも多く助け出せ!!!”

ノルデュラス公爵の城に蠢く、大勢の賊らは。
崖を挟んだ向こう、拠点であるファントール大公の城に、敵が押し寄せて来る様子に気づき、浮き足立つ。

誰かの指示で一斉に…ある者は馬で遠回り。
ある者は険しい尾根に駆け込んで、ファントール大公の城に駆けつけようとし始めた。

テリュスは脳裏の映像を見
「最初っから、ファントール大公の城を先に攻めてたら。
敵は撤退し、公爵の使用人は逃げ出さずにすんだのにな」
とぼやき、オーガスタスが笑い、エウロペも笑って、デルデロッテは
「違いない」
とため息交じりに呟いた。

公爵だけはムキになると
「どのっくらいで突入できるか、分からなかったのに!!!
私の大事な使用人達に、危険を冒させるわけにいかない!
皆、貴重な人材ばかりなんだぞ?!」
と怒鳴りつけ、デュバッセン大公は腕組みし、顔を下げて言った。
「…それもこれも私を牽制し、対抗して。
王位を転覆させ、エルデリオンを手に入れるためでしょ?」

皆が揃って顔を上げ、ノルデュラス公爵を呆れた眼差しで見る。
けど優雅な公爵は肩すくめ
「これも一途に思い続けた、恋のなせる技。
…と、ロマンチックに解釈出来ないのかな?」
そう、平然と言って退けるので。
エルデリオン始め、皆は呆れきって顔を下げ、首を横に振りまくった。

デルデだけが
「良くそんなに自分の恋を美化できるな?!
それで一物と乳首に、リング?!
情けなさ過ぎるぞ!!!」
と怒鳴りつけ、公爵に
「そういう君は?!
側で思いを隠し、耐え偲んでたってのに!
エウロペとかって言うシュテフザイン森と花の王国の男に、エルデリオンの処女をまんまと奪われた、大間抜けだろう?!」
と怒鳴り返された。

途端、エウロペが顔を下げるのを、デュバッセン大公もギュンターも、見た。

「…結構やるな」
ギュンターが感想を述べると、デュバッセン大公も頷く。
「私は振っといて。
王子なら相手する?!
正直、思い切り腹立ちますね!」

ラステルが顔を下げ
「ああ、めんどくさい…。
戦闘の方が、よっぽど楽ですよね?」
と、オーガスタスに同意を求めた。

言われたオーガスタスは、今度は自分が全員の視線を集めてる事に気づき、喉がひりついた。
「…縄ばしごを、飛んで掴む方が楽だな」

それだけやっと言うと、皆が一斉に口開く。
「あれは、凄かった!」(テリュス)
「神業でしたね」(デルデロッテ)
「あの状況じゃ、曲芸師でもたじろくんじゃ?」(エウロペ)
「人間技とは思えませんでしたよ」(公爵)

けれどデュバッセン大公だけが、静に言い放つ。
「彼はアースルーリンドの左将軍の、大切な人なんですよ?
魔法使いが、助けないはず無いじゃ無いですか」

ギュンターも、首垂れて頷く。
「光竜ワーキュラスが知らせ、左将軍ディアヴォロスがタイミングを指示してたし、かなり分厚い光で包まれ、守られてたから。
万が一、はしごを掴み損ねて落ちたとしても。
俺がまた、掴んで止めてた」

皆に目を見開いて見つめられ、オーガスタスは肩すくめた。
「種明かしすると、奇跡も興ざめだな」

が、公爵は叫ぶ。
「アースルーリンドの左将軍って、女ですか?!」
デルデロッテも呻く。
「…男ですよね…。
左将軍を垂らし込むなんて……体格だけで無く情事の方でも流石さすがだ」

テリュスが目を見開き、二人に叫ぶ。
「そこ?!
驚くとこって、そこ?!」

シュアンが、可愛らしく笑って言った。
“なんでそんなふうに思うの?”

赤毛の神聖神殿隊騎士は、顔を下げて呻く。
“ディアヴォロスが聞いたら、笑い転げるな…”
直ぐ様オーガスタスが
“絶対言うな!
今後ずっと、からかわれ続ける!!!”
と怒鳴り、ラステルは
「貴方みたいな方を部下に出来るなんて!
…その左将軍に、一度お会いしてみたいです!」
と勢い込んで叫ぶので、皆呆れた。

デュバッセン大公だけは、ぷんぷん怒って
「私程度しか部下に出来ないなんて、大変お気の毒です!
役不足で、すみませんね!」
とふてくされ怒鳴り、ラステルは
「そーゆー意味じゃないから…」
と愛想笑して、必死で取りなしていた。
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