森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

非常事態発動

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 ラステルが突然
“聞こえてます?”
と聞く。

全員それぞれが
“聞こえた”
“全然聞こえてる”
“聞こえるぞ…”
と呻く。

“変ですね…。
さっき召使いにデザートを持って行かせて…シュアンに一服、盛ったんで。
そろそろ効いてきて、シュアンは眠り、この呪縛から解放されるはずなのに…”

オーガスタスが、ローフィスを見る。
ローフィスは、顔を下げきって言った。
“人外の血の混じる、ル・シャレファ金の蝶なんだぞ?
逆にもっと強烈に能力発動するようになったら、どうする?”

オーガスタスも呻く。
“なんかエドウィンとラフィーレの声も聞こえて来ないけど、もしかして…。
頼りの奴らまで、眠らせた?”

皆、沈黙してラステルの“不手際か?”と覗う中。
ラステルはぼやく。
“確か…プリンだった?薬入れたの”
デュバッセン大公が質問に答えた。
“ええ。
熊でも眠る、超強力で体に害のほぼ無い、ノートルを使いました。
…でも、シュアンのだけのはず”
“大至急、その召使い呼んできて”

皆、その間余分な事を思うまい。
と自制してる中、レジィが囁いた。
“…エルデリオン…エウロペにされて、あんなに良かったんだ…。
どうしてボクにはしてくれないの?”
と素朴な疑問を投げかける。

直ぐ、エウロペに代わってテリュスが
“だってお前、エルデリオンと違ってただでさえ王子の自覚、薄いのに。
デルデにされまくってる筈のエルデリオン、ほんの数回シただけのエウロペが、忘れられないんだぜ?
お前なんてされたら、四六時中エウロペとする事ばっか考えちゃって、それじゃエウロペも困るだろう?”

エリューンも無言で頷く中、レジィがもっと興味を引かれて尋ねる。
“…四六時中考えちゃうほど、凄いの?!
…僕、掴まって大勢に、えっちで臭くて汚くて嫌で酷いことされて、怖かったけど…。
エウロペにされたら、一発で怖いこと忘れちゃいそう…”

その時、ミラーシェンの声が響く。
“…ホントにそうだと思う?”
レジィが首捻る。
“えっと…シてみてないから、分かんない。
エウロペ、シてって言っても、ダメ?”

その時、エウロペ、テリュス、エリューンのため息が聞こえた。

レジィはまだ言った。
“だってもの凄く素敵なデルデといっぱいエッチしてるエルデリオンが、エウロペの事、忘れられないんだよ?!
ボク、デルデとシた事あるけど、ホント最高で蕩けちゃうの。
でも…エウロペはそれより凄いって事だよね?”

とうとうエルデリオンが、焦りきって叫ぶ。
“レジィ!
それとは違うから!
あのね…ほら、お化けが出るとか言う化け物屋敷に行って。
そこで…なんか理解出来ないような事が起こったら…。
凄く印象に残ってて、あれはなんだったんだろう?
って…考え続けてるのに、似てる”

皆がエルデリオンのその説得に
“凄く微妙…”
“どういう例えだ”
“語彙力以前の問題じゃ無いか?”
と小声で呟きまくる中。
レジィが答えた。

“ごめんエルデリオン。
多分ボクが六歳児くらいだったら、それで納得出来たかも”

とうとう全員が、ぷっ…ぷぷっ…と吹き出し始める。

テリュスが、焦りきってレジィを説得にかかった。
“レジィ、この際ロットバルトにしたら?”

ロットバルトは即、言った。
“私は男のコとは、全然経験が無いので…”
“じゃあオ…”
“俺は経験あるが、身長のサイズ問題で、相手が低すぎると無理”
と、オーガスタスはテリュスが全部言う前に、即否定した。

“ええ…っと…”

テリュスが策が尽きて呻く。

“エウロペ、なんでダメ?”
尚も尋ねるレジィに、結局エリューンがきっぱり言った。
“ならレジィ。
エウロペと結婚するぐらいの覚悟があるんなら、エウロペも受けてくれるかも”

テリュスも言う。
“それかエウロペに失恋しても、まだエウロペが好きでい続けられるなら”

皆、レジィが黙るので、ちょっと安心した。

ラステルの暗澹たる声が響く。
“…なんか…シュアンに出したプリンだけが食べられ、エドウィンもラフィーレも…シュアンですら、寝ちゃってるそうです…”

ローフィスが、ため息吐いた。
“一つのプリンを三人で分けたんですね…”
ラステルが答える。
“多分…。
それと外で動きが出始めました。
あちこちから敵が湧いて出て、闇に紛れ、移動し始めてるそうです。
とっくに一番最初に駆けつけ、シャスレ城を手伝ってる騎士らに、こちらに向かうよう連絡を入れてるんですが…”

オーガスタスが、ため息を吐いた。
“まだ、着かないのか…”
ギュンターが呟く。
“こちらに来る途中で敵に襲われ、抗戦してないか?”
デュバッセン大公も呻く。
“あり得ますね…”

けど突然、オーガスタスが呻く。
“なん…か、体が動かない…”
ほぼ同時に、テリュスも呻く。
“エウロペ、なんで突然、部屋出てく?!”

エウロペからの声も響いた。
“…なんか…体が勝手に動くんですけど”
エリューンが脳裏で叫ぶ。
“自分の意思じゃ無くて…部屋を出たんですか?!”
レジィの声もする。
“ボク…なんかエウロペの後ついて行っちゃう…。
なんで?”

“レジィも部屋を出た!”
テリュスの言葉の後、少し間が開いて。
バタン!と扉の開く音と共に、ロットバルトらが居る従者用の部屋に、エウロペが入って来る。

「…エウロペ殿?」
ロットバルトが、目を見開いて尋ねた。
けれど彼は脳裏で
“なんで私はこの部屋に連れて来られたのかな?”
と言うので、ラウールもエディエルゼも首捻った。

「…でもご自身でいらっしゃってる」
エディエルゼが言うと
“私も体が勝手に…”
と言う言葉の直ぐ後、開いた扉からエルデリオンが入って来て、デルデが慌てて後からやって来ると、エルデリオンの腕を引く。
「エルデリオン!」

けれどエルデリオンはデルデの手を、振り払った。
その後、先に室内に入り、突然壁に背を付き、座り込むエウロペへと進み、突然屈んでベルトを外し始める。

エウロペは抵抗せず、目を見開いてる。
室内の全員が、エルデリオンのする事にぎょっ!として目を見開く中。
エルデリオンが叫んだ。
「…これ、私の意思じゃ無い!」

“デュバッセン大公!
危機が増してるのにどこ行くんです!”
ラステルの声が響いた後、扉からレジィがやって来ると
“僕、どうしてここに来たの?”
と、誰も答えられない質問をした。

次にエルデリオンの横に屈むと、エルデリオンがエウロペのズボンを下ろすのを手伝い始める。

“これ…ボクがしてるけどボクの意思じゃ無い!”

脳裏にエウロペの声が響いた。
“見てないで、誰か助けて貰えませんか?!”
オーガスタスも叫ぶ。
“体が自分では動かせないんだ!
助けてやれ!!!”

が、ロットバルトもラウールもエディエルゼもが、何が起こってるのか理解出来ず、呆然と見つめる中。
デルデはエルデリオンの背後から羽交い締めし、引き剥がそうと後ろに引き始め、テリュスとエリューンは室内に飛び込み、二人してエウロペのズボンを引きずり下ろそうとしてる、レジィの腕を両側から掴む。

デルデが、どれだけ後ろに引いても動かせないエルデリオンを、それでも引きながら怒鳴る。
「…どうなってる?!」

ローフィスが、部屋をすっ飛んで出て行く。
“多分眠ってるシュアンが暴走して!
妄想を実現させようとか、してないか?!”

入れ替わりにデュバッセン大公が室内に入って来ると
“…なんで私はここに来てるんですかね?!”
とレジィ同様、誰も答えられない質問をした。

そしてソファに座ってるオーガスタスを見ると、突然寄って行って、股間に屈み込んだ。

ロットバルトはばっ!とソファから立ち上がり
“今の内にうんと遠くに逃げたら!
助かりますかね?!”
とローフィスの後を追い始める。

オーガスタスは部屋から逃げ出そうとする、ロットバルトの背を睨む。
“俺を人身御供にして、自分は助かる腹か?!”

ラステルがとうとう大声で叫んだ。

“だから危機が迫ってるんです!!!”

“ギュンター!!!”

ミラーシェンの声が響いた後、開いた扉からギュンターが姿を現す。
そしてデュバッセン大公が、オーガスタスの股間に張り付くのを見て、ちょっとほっとした。

“勝手に動いてた、体が止まった…”

そして口に出して言った。

「廊下でローフィスが、こっちに向かってるのを。
ロットバルト…だよな、確か。
…が、必死に腕を引いて止めてる!
誰か助けてやれないか?!」

デルデは必死にエウロペを襲おうとするエルデリオンを、背後から羽交い締めしたまま止めながら
「今…取り込み中…!」
と叫び、テリュスもが
「なんでこんなに軽い、レジィが引っ張れないんだ?!」
と必死にレジィの腕を引きながら叫ぶ。

エリューンもが
「ごめんエウロペ!
ズボン下ろさせないだけで、精一杯!
二人で引いてるのに…」
その後をデルデが引き継いだ。
「重い岩だって、エルデリオンより軽い!」

その後、ノルデュラス公爵までが室内に入って来て、エルデリオンに突然抱きつく。
デルデは目を見開き、怒鳴った。
「退け!!!」
けれど公爵は呻く。
「私の意思じゃ無い!
けど正直嬉しい!」

ギュンターはまた勝手に体が動き、オーガスタスの股間に張り付くデュバッセン大公を押し退ける。

小柄なデュバッセン大公は、ギュンターの腕で思いっきり振り払われ、床に吹っ飛び呻く。
「…酷い…!」
「悪い。
俺の意思じゃ無い!」

今度、自分がデュバッセン大公に代わり、開けられたオーガスタスの股間に手を伸ばそうとし始めるのに気づき、ギュンターは焦りまくって怒鳴る。
「誰か止めてくれ!」

ミラーシェンが入って来ると、後ろからギュンターの腰に抱きつき、引く。
それを見てエディエルゼは、ギュンターのオーガスタスの股間に伸ばそうとする、腕を掴んで怒鳴った。

「誰かシュアンを止めてくれ!
長く保たないぞ!!!」
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