森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
398 / 418
決戦

階下での攻防

しおりを挟む
 ノルデュラス公爵とオーガスタスが、階段降りて直ぐ左へと、曲がり込んだ途端。
廊下ではロットバルトが多数の敵に囲まれ、それもたった一人で剣を振り、鬼の形相で周囲の敵を退しりぞけけていた。

直ぐ、ノルデュラス公爵がロットバルトの背後を狙う敵の背を斬りつけ、オーガスタスも駆けつけると、たった一つの扉から尚も賊が侵入していくのを見、ロットバルトに斬りかかる敵の背を通り過ぎ様、容赦無く剣を振り切った。

がっっっ!!!
「がぁっ!!!」

ロットバルトは崩れ落ちる、敵の背後にオーガスタスの姿が見えた後。
正面の敵に剣を振り、弾かれて次に剣の軌道変え、斜め横から振り切ってやっと仕留め、屈む身を起こした時。

六人近くに囲まれてたはずなのに、もう…取り囲む敵はすっかり消えていて。
オーガスタスが剣を六人目に振り切り、振り向き、頷くのを目にした途端。
室内へと雪崩れ込む敵の群れへと突進し、剣を振り回して必死に侵入を阻止した。

直ぐオーガスタスが横に駆けつけ、部屋へ入ろうとする敵へ、軽く剣を振り、振り向かせて一気に剣振り上げ、肩から胸を一瞬で斬りつける。

「ぐ…がっ!!!」

ロットバルトは部屋へ飛び込もうとする敵の背の衣服を握ろうとし、振り向かれて剣振られ、慌てて左手を引っ込めた。

続けざまに剣振られ、ロットバルトは左右に首を傾け避けながら、背後に下がり始める。
が、次に足を引くと踵が突っかかり、ノルデュラス公爵のつま先がそこにあると知った。
咄嗟、ロットバルトは思いっきり身を横に避ける。
ノルデュラス公爵が一気に背後から迫り出すと、上から思いっきり、剣を振り切った。

ずばっ!!!
「いっ…てててて…」

敵は声無く倒れ伏すのに、ノルデュラス公爵が左腕押さえ、身を屈め呻くのを見。
ロットバルトはその隙に襲いかかって来る敵に、剣を振り、公爵を庇いながら怒鳴った。

「怪我してるのに、フルスィングしちゃったんですか?!
そういう時は…」
公爵は言われ、左腕下げながら呻き返す。
「…分かってる。
傷を庇いながら最小の動きで剣を振る。
…だろ?」

がちっ!!!

ロットバルトはまた敵の剣を、剣で受け止めながら、ぼやく。
「分かってたら、実践しないと!」

公爵は暫く痛みで身を屈め、沈黙してたけど。
痛みが引いて顔を上げ
「庇ったんだけど」
と言い返す。

ロットバルトはやっと真横に剣振りきって敵を倒し様、怒鳴った。
「それは、どうもありがとう!!!」

ノルデュラス公爵は怒鳴られ、項垂れて小声で呻いた。
「…助けたのに…」


室内ではラステルが必死に短剣投げ、素早く首振ってかわす、黒装束の一人を仕留め損ね。
正面から斬りかかって来る敵の剣を、剣で受け止め、防ぐしか無かった。

今やデルデは寝台の上でエルデリオンを背に庇い、長い栗毛を肩と胸に流し、左膝寝台に付け、右膝は立て剣を後ろに下げ、襲いかかって来る敵を濃紺の瞳で睨めつけ、剣を振り斬ろうとしていた。

背後のエルデリオンは深手負ったデルデに庇われ、胸が張り裂けそうで、じりじりしてる。
ミラーレスが脳裏に叫ぶ。
エルデリオンは咄嗟、頷いた。

デルデが剣を振り上げようとした瞬間、剣はデルデの手から消え。
エルデリオンが咄嗟デルデの背を押して屈ませ、手に現れた剣の柄を握り込み、敵の剣に剣を合わせ、弾く。

がちっ!!!

デルデは手から消えた剣をエルデリオンが握るのをチラ見し、脳裏に怒鳴った。
“ミラーレス!!!
相手は紅蜥蜴ラ・ベッタの隠密部隊で腕利きだ!!!
エルデリオンが、逆に危ない!
剣を俺に戻せ!!!”

その突然の大音量に、ミラーレスだけで無くオーレからシュテフまでもが蹌踉よろめき。
シュアンとエドウィンに至っては、顔をしかめて必死に遮断しようとしたけど、遅過ぎで。
必死に首振って、脳の痺れを追い払ってた。

がエルデリオンは素早く身を起こし、屈むデルデを跨ぎ超し、合わせた剣を下げ、外し、一瞬で真横に気合い込めて振り切る。

ざっしゅっ!
「…!!!」

背後に背を反らし避けた敵は、胸を浅く斬られ、背を戻し様エルデリオン同様、真横に振り切る。

しゅっ!!!

エルデリオンは思い切り身を屈め避け、背後に居たデルデもが目を見開き、同様素早く首下げて避けた。

エルデリオンは剣引き、一気に突き出す。
が、相手は血相変え、右横に避ける。
避けた方向に、エルデリオンは再び剣を突き出す。
それも間一髪、避ける敵。

デルデはジリジリし、また脳裏に怒鳴った。
“手練れの奴らを、一撃でれるのは!!!
オーガスタスとエディエルゼ、それにテリュスぐらいだ!”

再びの大音量に、神聖神殿隊騎士らが盛大に眉ひそめる中。
ラステルが怒鳴り返す。
“私だってローフィスだって!
短剣でなら、殺れますよ!”

が、デルデは気合い込めて怒鳴り返す。
“ふいをついてだろう?!
警戒されたら、避けられる!
さっさと剣を、俺の手に戻せ!!!”

エルデリオンはデルデのその叫びに、避け続ける敵を睨めつけた。
今度敵は横から剣を振ったかと思うと、一気に上に剣の軌道変え、振り下ろして来る。

しゅっ!!!
「がっ!」

ラステルが咄嗟敵の肩に短剣当て、振り下ろされた剣が軌道変え、反れた隙を狙いエルデリオンが一気に上から剣を、振り下ろす。

ざしゅっ!!!
「がぁぁっ!!!」

手負いの敵をやっと仕留め、剣を振り切り、下げたエルデリオンはラステルに感謝の視線を投げることも出来ず、息切れに激しく肩を上下させ、俯く。
が、顔を上げ、背後のデルデに振り向く。

厳しい表情でエルデリオンを叱咤しようとしたデルデが、口を開くその前に。
声を上げ、泣き叫んだ。
「剣を振ったりしたら、傷が開く!
君は瀕死だったんだ!!!
どれだけ心配したと思うんだ?!!!!」

怒鳴りつけようとしたデルデは拍子抜けし、抱きつき胸に泣き伏すエルデリオンの背を、結果抱き止めた。


廊下では。
ロットバルトとノルデュラス公爵が、顔を上げた時。
オーガスタスは部屋の扉の真ん前で、目前の敵の腹に剣を突き刺す。
激しい痛みと衝撃に身を屈め、思わず手から剣を取り落とした敵の剣の柄を、オーガスタスは身を屈め、咄嗟受け止め握り込み。
誰よりも高い背で二刀流でぶん回し、後から駆けつけてくる黒装束らを、ビビらせまくってた。

ロットバルトが、ノルデュラス公爵に呟く。
「最初の剣だって。
あの人、敵からブン取ってましたよね?」

ノルデュラス公爵が頷く間もなく、オーガスタスは左の剣を上にくるりと回し上げ、その隙に身を屈めすりぬけようとした敵の背に、右の剣を容赦無く浴びせる。

ずばっ!!!

味方が斬られてる隙突いて、室内に飛び込もうとした敵の足元へと。
素早く右足を差し出し、ひっかけてすっ転ばせ、倒れ込んだ背に、左の剣を叩き込む。

ざしっ!!!

残り三人の黒装束は。
攻めあぐね、歩を止める。

オーガスタスは尚も二本の剣を、くるくるとぶん回しながら挑発する。
「遠慮無く、かかって来い」

が、促されようと。
誰一人歩を、踏み出さない。

オーガスタスが自分から突進しようと、駆け出す。
が、通り過ぎざま室内の様子に一瞬視線送り、目を見開き。
咄嗟歩を止め、敵へではなくそのまま室内へと、かっ飛んで行った。

黒装束三人とロットバルト、ノルデュラス公爵は。
咄嗟のオーガスタスの、その突飛な行動に。
暫く首捻り、対峙しながらその場に立ち尽くす。

が、両者突然、ほぼ同時、はっ!と我に返ると前進する。
黒装束らは室内へ。
ロットバルトとノルデュラス公爵はさせまいと剣を振り、寸での所で、敵の歩を止めさせた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...