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東の崖
東の崖 1
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ギュンターはオーガスタスが、連なる丘に点在する、東領地ギルムダーゼンの領地に入った途端。
一番東寄りの道を駆け上がっていくのを見つめる。
道…と言っても、主要道では無く、獣道(本物の獣の通る道ではなく、盗賊などが通る、かろうじて馬で通れる道)の、かなり傾斜のきつい崖。
太陽が傾き始める中。
駆け上がるザハンベクタの後を、ノートスが続き、ギュンターの愛馬ロレンツォも、軽々と後に続いて行く。
蛇行した崖から丘に出て、またかなり傾斜の厳しい崖道を上る。
最短距離を走ってる。と気づく。
アースルーリンドは周囲を高い崖に囲まれ、その外側は、北西が深い樹海。
樹海は東にも広がり、東南の一部が樹海が途切れ、他国と隣接している。
南は、崖の向こうが海。
大陸エルデルシュベインでは、“秘境”、“幻の国”と呼ばれる地。
他国との交流は無く、交流があるのは空間を通じた
『光の国』と呼ばれる、異次元の国だけ。
『光の民』達は皆背が高く、美しく。
そして、神秘の能力を使う。
が、アースルーリンドに彼らの能力の源である、“光”は満ちて無いので、アースルーリンドの地に長く居ると、『光の民』らは能力を失う。
一時は『光の民』の流刑地としても使われていた。
流刑者達は力の源を、人を苦しめて得るエネルギーに変え、『影の民』へと変貌。
住民の存亡を懸けた『影の民』との戦いは、『光の民』と『光の国』に住む神、光竜の援護により勝利し、『影の民』を無事、結界の張られた異次元へと、封じ込めることに成功した。
現在アースルーリンドに住む『光の民』達は、光の結界内で生活しており、滅多に外界には出て来ない。
アースルーリンドの始祖は、この地に迷い込み、帰れなくなった者達。
女性が少なかったため、淘汰されて美形が残り、更に『光の民』との混血もいたので、住民は美形揃い。
『美形の宝庫』と呼ばれ、更にこの地では、金銀宝玉が豊富に取れたので、盗賊や他国の略奪が絶えない。
敵は高い崖を乗り越え、やって来ては。
宝玉や美形の女、子供をさらっていく。
かくしてアースルーリンドの民は、美形は多いが、たいそう勇猛な民族で。
日々他国や盗賊の略奪から、住民らを守っていた。
唯一崖のみが障害の隣国、セーネルデーダは、代替わりしてヨーデル二世になった途端。
幾度か兵を送り始め、迎撃されて敗退し、失敗後も暫くすると、また兵を送り。
しつっこく、侵略を試みていた。
今回は、たいそう大規模で本格的な様子。
ギュンターは夢中で崖を駆け上がっていく内に、目前に崖の頂上付近が広がるのを目にした。
東領地ギルムダーゼンは丘の連なる高台の領地で、他の領地に比べ高所にあり、崖に一番近い。
敵は、一番の障壁、高い崖を上がってしまえば、後は丘を伝って下り、その先には王都、中央領テールズキース。
侵略は可能。
崖の頂上付近は、左手は平らな場所が多く、右手は入り組んだ岩や絶壁。
オーガスタスが、比較的平らな場所の多い、左方向に進むのを、ギュンターは目にした。
途中、崖の細道を上り、下を見ると丘は遙か下。
落ちれば、大怪我を負う難所を過ぎ、平らな場所にたむろう兵らの元へと、駆けつける。
見ると、崖上から大勢の兵達が大岩を、次々敵側に落としている光景が見えた。
一人が駒音に振り向き、叫ぶ。
「左将軍補佐!!!」
オーガスタスは即座に馬から降りると、兵に尋ねる。
「どんな様子だ?!」
言いながら、案内する兵と共に、崖の端まで走り出す。
ディンダーデンはノートスに乗ったまま。
ギュンターは即座に降りて、オーガスタスの後を追った。
崖の端まで来ると、絶壁のそのかなり下。
崖の3/1程の高さまで、蛇行して道を作る、木槌の音が聞こえる。
今、まさに大岩が落とされ、轟音立てて絶壁を転がり始め。
暫く後、木槌の音は止んだ。
けれど右下の遙か下方。
そちらからも、道を作り始めているのが伺い見える。
「…近ければ、岩を落としても効果はあるのですが…」
兵の言葉に、オーガスタスは頷く。
比較的若年ばかりの左将軍隊の中でも、中年で実績あるローネグンド隊長が、一番右端で怒鳴る。
「こちらは古くからの細道が、通ってる!!!
敵兵が既に大勢、上がってきてるぞ!」
オーガスタスが振り向くと、熟練の勇猛な栗毛の髭の隊長、ローネグンドは尋ねる。
「下って迎え撃つが、文句はあるか?!」
オーガスタスは崖の端に寄って、様子を伺う。
横幅三人は通れる崖道を、敵兵が頂上付近まで、上がって来ていた。
オーガスタスは返答せず、兵に尋ねる。
「地理に詳しい、東領地ギルムダーゼンの者はいるか?!
あの道を、塞ぐ目算を付けたい」
古参のローネグンドよりは年下。
が、オーガスタスよりはうんと年上の、レレッタ隊長が怒鳴る。
「ちょい下に、僅かだが平らな場所がある!」
その声が飛んだ時。
ギュンターはオーガスタスの横に来て、その僅かな平らな場所を見た。
両側に、かなり大きな岩が連なっている。
敵兵らはその地点を通り過ぎ、もっと近くまで迫って来ていた。
オーガスタスが、口を開こうとした時。
ローネグンドが怒鳴る。
「あの平らな場所まで、敵兵を押し戻し、横の岩を次々落とし、道を塞ぐ!」
オーガスタスは頷く。
「任せる。やってくれ!」
ローネグンド隊は直ぐ様、隊長を先頭に、細い崖道を下り始める。
が突然、横の岩場を、飛び降りて下る、一人の男の姿。
崖上で控えていたローネグンド隊の者達は、気づいてその男を見習い、後に続き始めた。
「…………………………」
「…………………………」
ギュンターも沈黙した。
が、オーガスタスも黙った。
長い、濃い栗毛を靡かせ、先頭切って下る、その男はディンダーデン…。
もう剣を抜き、ローネグンド隊長より先に、敵の先頭騎士へ、どんどん迫っていく。
「…あいつ…足場の悪いところでも、結構身軽なんだな…」
オーガスタスの感想に、ギュンターは頷く。
「思いっきり暴れられる。
と思ってるあいつの前に、障害は存在しない」
オーガスタスは、呆れて頷いた。
「そうみたいだな…」
その後、ディンダーデンが敵の先頭に襲いかかり、僅差でローネグンドも敵を斬り。
二人の猛者は争うようにして、上がって来る敵に、豪剣を浴びせた。
一番東寄りの道を駆け上がっていくのを見つめる。
道…と言っても、主要道では無く、獣道(本物の獣の通る道ではなく、盗賊などが通る、かろうじて馬で通れる道)の、かなり傾斜のきつい崖。
太陽が傾き始める中。
駆け上がるザハンベクタの後を、ノートスが続き、ギュンターの愛馬ロレンツォも、軽々と後に続いて行く。
蛇行した崖から丘に出て、またかなり傾斜の厳しい崖道を上る。
最短距離を走ってる。と気づく。
アースルーリンドは周囲を高い崖に囲まれ、その外側は、北西が深い樹海。
樹海は東にも広がり、東南の一部が樹海が途切れ、他国と隣接している。
南は、崖の向こうが海。
大陸エルデルシュベインでは、“秘境”、“幻の国”と呼ばれる地。
他国との交流は無く、交流があるのは空間を通じた
『光の国』と呼ばれる、異次元の国だけ。
『光の民』達は皆背が高く、美しく。
そして、神秘の能力を使う。
が、アースルーリンドに彼らの能力の源である、“光”は満ちて無いので、アースルーリンドの地に長く居ると、『光の民』らは能力を失う。
一時は『光の民』の流刑地としても使われていた。
流刑者達は力の源を、人を苦しめて得るエネルギーに変え、『影の民』へと変貌。
住民の存亡を懸けた『影の民』との戦いは、『光の民』と『光の国』に住む神、光竜の援護により勝利し、『影の民』を無事、結界の張られた異次元へと、封じ込めることに成功した。
現在アースルーリンドに住む『光の民』達は、光の結界内で生活しており、滅多に外界には出て来ない。
アースルーリンドの始祖は、この地に迷い込み、帰れなくなった者達。
女性が少なかったため、淘汰されて美形が残り、更に『光の民』との混血もいたので、住民は美形揃い。
『美形の宝庫』と呼ばれ、更にこの地では、金銀宝玉が豊富に取れたので、盗賊や他国の略奪が絶えない。
敵は高い崖を乗り越え、やって来ては。
宝玉や美形の女、子供をさらっていく。
かくしてアースルーリンドの民は、美形は多いが、たいそう勇猛な民族で。
日々他国や盗賊の略奪から、住民らを守っていた。
唯一崖のみが障害の隣国、セーネルデーダは、代替わりしてヨーデル二世になった途端。
幾度か兵を送り始め、迎撃されて敗退し、失敗後も暫くすると、また兵を送り。
しつっこく、侵略を試みていた。
今回は、たいそう大規模で本格的な様子。
ギュンターは夢中で崖を駆け上がっていく内に、目前に崖の頂上付近が広がるのを目にした。
東領地ギルムダーゼンは丘の連なる高台の領地で、他の領地に比べ高所にあり、崖に一番近い。
敵は、一番の障壁、高い崖を上がってしまえば、後は丘を伝って下り、その先には王都、中央領テールズキース。
侵略は可能。
崖の頂上付近は、左手は平らな場所が多く、右手は入り組んだ岩や絶壁。
オーガスタスが、比較的平らな場所の多い、左方向に進むのを、ギュンターは目にした。
途中、崖の細道を上り、下を見ると丘は遙か下。
落ちれば、大怪我を負う難所を過ぎ、平らな場所にたむろう兵らの元へと、駆けつける。
見ると、崖上から大勢の兵達が大岩を、次々敵側に落としている光景が見えた。
一人が駒音に振り向き、叫ぶ。
「左将軍補佐!!!」
オーガスタスは即座に馬から降りると、兵に尋ねる。
「どんな様子だ?!」
言いながら、案内する兵と共に、崖の端まで走り出す。
ディンダーデンはノートスに乗ったまま。
ギュンターは即座に降りて、オーガスタスの後を追った。
崖の端まで来ると、絶壁のそのかなり下。
崖の3/1程の高さまで、蛇行して道を作る、木槌の音が聞こえる。
今、まさに大岩が落とされ、轟音立てて絶壁を転がり始め。
暫く後、木槌の音は止んだ。
けれど右下の遙か下方。
そちらからも、道を作り始めているのが伺い見える。
「…近ければ、岩を落としても効果はあるのですが…」
兵の言葉に、オーガスタスは頷く。
比較的若年ばかりの左将軍隊の中でも、中年で実績あるローネグンド隊長が、一番右端で怒鳴る。
「こちらは古くからの細道が、通ってる!!!
敵兵が既に大勢、上がってきてるぞ!」
オーガスタスが振り向くと、熟練の勇猛な栗毛の髭の隊長、ローネグンドは尋ねる。
「下って迎え撃つが、文句はあるか?!」
オーガスタスは崖の端に寄って、様子を伺う。
横幅三人は通れる崖道を、敵兵が頂上付近まで、上がって来ていた。
オーガスタスは返答せず、兵に尋ねる。
「地理に詳しい、東領地ギルムダーゼンの者はいるか?!
あの道を、塞ぐ目算を付けたい」
古参のローネグンドよりは年下。
が、オーガスタスよりはうんと年上の、レレッタ隊長が怒鳴る。
「ちょい下に、僅かだが平らな場所がある!」
その声が飛んだ時。
ギュンターはオーガスタスの横に来て、その僅かな平らな場所を見た。
両側に、かなり大きな岩が連なっている。
敵兵らはその地点を通り過ぎ、もっと近くまで迫って来ていた。
オーガスタスが、口を開こうとした時。
ローネグンドが怒鳴る。
「あの平らな場所まで、敵兵を押し戻し、横の岩を次々落とし、道を塞ぐ!」
オーガスタスは頷く。
「任せる。やってくれ!」
ローネグンド隊は直ぐ様、隊長を先頭に、細い崖道を下り始める。
が突然、横の岩場を、飛び降りて下る、一人の男の姿。
崖上で控えていたローネグンド隊の者達は、気づいてその男を見習い、後に続き始めた。
「…………………………」
「…………………………」
ギュンターも沈黙した。
が、オーガスタスも黙った。
長い、濃い栗毛を靡かせ、先頭切って下る、その男はディンダーデン…。
もう剣を抜き、ローネグンド隊長より先に、敵の先頭騎士へ、どんどん迫っていく。
「…あいつ…足場の悪いところでも、結構身軽なんだな…」
オーガスタスの感想に、ギュンターは頷く。
「思いっきり暴れられる。
と思ってるあいつの前に、障害は存在しない」
オーガスタスは、呆れて頷いた。
「そうみたいだな…」
その後、ディンダーデンが敵の先頭に襲いかかり、僅差でローネグンドも敵を斬り。
二人の猛者は争うようにして、上がって来る敵に、豪剣を浴びせた。
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