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第六章『光の里での休養』
神の涙
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花々の咲き乱れるその庭園があんまり美しくて、テテュスは心なごむように魅入られる。
ファントレイユがそっ…。とテテュスを覗い見る。
「アイリス…元気に成って、良かったね!」
レイファスもささやく。
「ギュンター、まだ護衛連隊長に成ってないけど…あれだけ重傷だからアイリスは当分、動けない。
きっと代わって誰かが、この後指揮を執るよ。きっと。
だから…テテュスはアイリスとゆっくり過ごせる筈だ」
テテュスはファントレイユとレイファスを、見た。
そして…やっぱり同様、大変な思いをした二人を見つめ、頷く。
「ここは、綺麗だね!」
だがレイファスが不満そうに口を、尖らせた。
「でも“里”の人って大人ばかりだ…!
子供は、居ないのかな?」
ファントレイユも周囲を見回す。
「…僕達の他は誰も居ないね」
テテュスはどうしても心が…想い煩いから離れて行って軽やかで、楽天的に成ってつい、はしゃいで言った。
「思い切り、鬼ごっこ出来る!」
言った途端、ファントレイユが叫ぶ。
「レイファスが鬼!」
レイファスはテテュスがファントレイユの手を握り、二人して自分から逃げて行くのを見、腹を立てて追いかける。
「そんなの、ずるい!」
花畑はずっと続き、三人は相手を掴み合って鬼を押し付け合い、思い切り笑いながらとうとう、芝生の上に団子に成って倒れ込んだ。
三人とも腹を上にし、息切れに笑い合うと、ファントレイユがささやく。
「昨日…。
そしてここからほんの、少ししか離れてない場所だったんだよね?」
レイファスが、その手を顔の横に置き、思い返す。
テテュスも思い出す。
皆が必死で…本当に必死で、あれだけの数の敵から、自分達を護ってくれた事。
レイファスは気づいたら頬が熱く…涙が伝うのが、解った。
シェイルのきつく握る手。
必死さが、その痛みから伝わって来る。
「みんな…普段は口が悪いのに………」
ファントレイユもテテュスも、真ん中のレイファスに体を起こして様子を伺う。
レイファスは横たわったまま静かに泣いていて、ファントレイユは言葉を、無くした。
テテュスがそっと言う。
「元気な、オーガスタスにやっと会えたね」
レイファスは、こくん。と頷く。
「ぼく………」
ファントレイユもテテュスも、その掠れた声音に顔を、揃って横たわるレイファスに寄せる。
「…凄く…『光の民』が好きだ………」
テテュスも、頷く。
「彼らが居なかったらオーガスタスも死んでた」
レイファスは涙をその指で拭いながら、頷く。
ファントレイユも言った。
「僕らもきっと今頃、あの大きな敵の騎士に掴まっていて…アイリスは殺されてた」
テテュスは項垂れた。
「アイリスだけじゃない…ギュンターも…僕も…ローフィスも」
そして二人は、頷くレイファスがその脳裏に、ウェラハスと神聖騎士達…そして“里”の、ミラーレスやサーチボルテス達の姿を、思い描く様子が解った。
「大好きだ………!」
テテュスには、レイファスが思い浮かべたウェラハスが、その言葉に気づいた様に振り向き、微笑む様子が感じられ、そっと小声でつぶやく。
「ここは“里”だから…ウェラハスに思いが、簡単に通じるのかな?人間の僕らでも」
ファントレイユもそれが見えるみたいに、つぶやく。
「きっとそうだ…。
幻みたいにぼやけた、微笑む金色のウェラハスが僕にも見えるもの」
けど突然。
その静かな言葉は降って来た。
「オーガスタスが怪我をしたのは『光の民』の末裔の『影の民』のせいで…オーガスタスが居れば皆はあの戦いで、苦戦等しなかった…。
敵はオーガスタスが、居ると思ってあれだけの数を用意したのだから…。
『影の民』がこの国で悪さをするのは、元はと言えば『光の国』の問題。
『光の民』達とその末裔、神聖騎士達が君達を護るのは、当然の義務。
むしろ…彼らのせいで、こんな目に合う。
と…アースルーリンドの人達に、責められて当然と思ってる。
だから…君達に怖い目に合わせて心から済まないと…ウェラハスもダンザインも謝ってる」
三人が振り向くと、そこには…金の透けた子供が、居た。
彼らよりほんの少し年上の。
「ワーキュラス!」
テテュスが叫んで身を起こす。
駆け寄り、そして透けた子供の前で足を止め、息を切らし見つめる。
「お礼を…!言いたかった!ずっと………!
僕が馬鹿で無茶をして、君もディアヴォロス左将軍も…そしてアイリス迄、迷惑かけて泣かせたから!」
ファントレイユも身を起こしそっ…とテテュスの後ろに立つ。
「どうして…?
いいの?
左将軍から抜け出して」
テテュスもそれを聞いて詰め寄る。
「左将軍は大丈夫?!」
レイファスは片肘付いて身を起こし、その子供を見つめる。
人間の子供で言えば、十才くらい。
けど金の光が周囲を取り巻き、髪は透けた金色。
青の瞳は人外のもののように、強い青で光ってた。
そっ…と立ち上がると、ファントレイユとテテュスの後ろからささやく。
「君が…ワーキュラス?」
少年は頷く。
「ここは結界内だから、ディアスに負担を掛けず自由に僕は能力が使える。
僕にも癒しの能力はあるけれど…人間の体は小さ過ぎて…僕が能力を放射すると、体が消えてしまう」
「?どうして消えるの?」
ファントレイユの問いに、少年は寂しそうに微笑む。
「体は細かい粒が繋がって出来ている。
その繋がりが全部、離れてしまう。
一つの粒はそれは…目に見えない程小さいから、全部離れると消えた様に見えるんだ」
けど少年は、レイファスの疑問を感じ取ったようにささやく。
「粒が繋がってる間は人間だけど、粒が離れてしまうともう…その人じゃなくなる。
勿論、拡散する前にもう一度つなぎ合わせれば元に戻るけれど…それだけの粒を元通り、全部つなぎ合わせるのは、大変な作業で…とても、難しい」
テテュスがそっ、と言った。
「心は、どうなるの?」
「魂と成って空間を漂う。
入れ物の体を無くして」
レイファスが、不思議な少年を見上げ、ささやく。
「天国に…逝くの?」
少年は微笑む。
「『光の国』には、大勢のアースルーリンドの民の魂が今だ、居るよ。
昔はアースルーリンドの民を招待した。
けど……みんな、『光の国』の光が気持ち良すぎて…体を必要と、しなくなるんだ」
テテュスはびっくりした。
「どうして?!」
少年は微笑む。
「幸せな夢を見たら、ずっと夢の中に居たい。と、君は思わない?
夢の中にずっと居たら…体は要らないだろう?」
レイファスが、呆けたように言った。
「そんなに…幸せな気分に成るの?」
少年は悲しげに俯く。
「辛い体験をした人程、そうだ。
だから体は要らず、ずっと幸せな夢の中で、生き続けたい。
そう思ってどんどん、透けて行き終いに…体が無くなる。
みんな『光の国』の、風や空気や水…花や木に溶けて、ずっと幸せな夢を見続けている。
だから…『光の国』の民はもう、アースルーリンドの民を招待しない。
余程、望まれなければ」
ファントレイユが無邪気にささやく。
「でも、招待されたら行ける?」
「規則が出来たから…。
『光の国』の民がここで結界が必要なように、人間も『光の国』だと、結界が必要なんだ。
“光”をたくさん浴びないような結界が」
テテュスは“里”のその、素晴らしく美しい花々が咲き乱れる庭園を見回した。
「ここよりも、もっと光が濃いの?」
少年は、頷いた。
レイファスが尋ねる。
「ワーキュラスはその姿よりももっとずっと、大きいの?」
ファントレイユも目を輝かせる。
「何歳?」
テテュスも無邪気に言った。
「僕、竜って見た事無い!」
途端三人の頭の中に、山々の間から巨大な光の柱が真っ直ぐ天に伸び、その周囲を姿の美しい流線型をした金色の竜達が飛び交う、姿が見えた。
暮れゆくオレンジの空を背景に、その金の鱗を輝かせながら。
あんまり綺麗で、ファントレイユが溜息を付く。
頭の中で、声がする。
“竜達はとても長生きで……。
昔は『光の国』の民との交流も無かったけれど、大昔一人の竜が民に鱗を与えて以来…お気に入りの人間と言葉を交わすのが、竜達の楽しみの一つと成った…”
三人の頭の中に、崖に立つ人間の、その遙か上空に飛翔する黄金の竜の姿が小さく、見えた。
さっ!と旋回して、崖下から姿を見せるその竜の頭は…崖上に立つ人間よりもずっともっと大きくて…。
頭ですら、あんなに大きいのだから、全身は山のように大きいに違いない。
三人はそう思った。
“大きくないと、光の柱にその身を飲み込まれてしまう……。
だから…子供の竜が産まれると、皆が交代で、光の柱から光を子竜へと運ぶんだ”
ファントレイユが聞いた。
「子供が柱に近寄ると、危険?」
ワーキュラスは頷いた。
“あんまり気持ちよくって、飛んでいられなく成る。
高い所から落ちたら、大怪我をするか…死ぬ。
それに光の柱の光はとても…濃いから、意識がしっかりしていない子竜が強い光を浴びると、人間のように体を、保てなくて拡散してしまう………”
テテュスは拡散する程気持ちが良い。って、どんなんだろう…。と思った。
アリルサーシャもそうだったら良かったのに……。
あんなに苦しんで最期を迎えるんじゃなく…。
気持ち良すぎて逝ってしまったんなら………。
そう、考えると涙が頬を、伝った。
でもそれでもやっぱり、悲しかった。
僕とアイリスを置いて…逝ってしまうだなんて………。
ずっと…ずっと描いてた夢がある。
少し元気になったアリルサーシャの手を引いて…アイリスと三人で、ピクニックに行く。
美味しいお弁当をいっぱい持って…それはアイリスの仕事。
重いご馳走のいっぱい詰まったバスケットを両手に持つのが。
僕はアリルサーシャの手を引いて…草原の風を感じる。
晴れ渡った青空で、草原の木々も草もが、陽に照らされてきらきら光り、風に優しくその葉はさざめき…。
草原の草も、一斉にたなびいて…。
僕はアイリスに振り向く。
アイリスは微笑む。
アリルサーシャは林檎色のほっぺをして………。
ファントレイユもレイファスも、テテュスの頬から次々に涙が、伝うのを見た。
もしそんな夢の中にずっと、居られるとしたら…。
アリルサーシャが元気で、僕とアイリスと一緒に過ごす夢の中に。ずっと………。
ずっと居られたら………。
そしたら、体は要らなくなる。
きっと。
僕は幸せすぎて。
テテュスの頬からあんまり…涙が次々伝い、ファントレイユは切なくなった。
ワーキュラスが、優しく言った。
“でもテテュス。それは夢だ”
途端、金色の少年の横にやっぱり…金の光に包まれた…透けた女の人が、姿を現した。
ファントレイユもレイファスもびっくりしたけれど…テテュスはあんまりびっくりし過ぎて、涙が止まった程だった。
「…………アリルサーシャ………!」
テテュスの顔が、くしゃっ!と歪み、透けた金の彼女の元に、拳を握って駆け寄る。
けど、透けた女の人をテテュスは通り越してしまって……。
レイファスはそれを見た途端、涙が溢れた。
あんまり…テテュスが可哀相で。
テテュスは振り向く。
金に透けたアリルサーシャもテテュスに振り向き…そして微笑む。
テテュスはそれを見て…また溢れる涙を必死で…堪えてた。
「居るの?本物の、アリルサーシャ?」
彼女はこくん…!と頷く。
『ごめんなさい。テテュス。
私は最低の母親だわ…!』
テテュスは必死で、首を横に振る。
『いいえ…!そうなの……。
貴方がどれだけ大切か…。私ちっとも…教えられなかった………』
「そんな事無い!」
『私が必要としてる貴方しか…私は貴方から引き出せなかった…。
だから私が逝った後、貴方は誰にも必要とされないと…思い込んでしまってる。
アイリスが毎晩泣くの……。
夢の中で、テテュス。貴方を捕まえられなくて。
私が近寄ると、悲しげに見つめるわ。
“テテュスを君は連れて行ったりしない。
そうだろう?”
そう言って。
私はもう…起きていても苦しくないから…泣く、アイリスを一生懸命抱きしめるの。
私を亡くして…そして貴方まで無くすと…アイリスは怯えきってる……。
あんなに強くて……頼もしい人だったのに…………』
テテュスはアイリスの大きな背が………ノルンディルの剣が自分の頭上から処刑する刃物のように振り下ろされようとしていても、どかなかった事を、思い浮かべた。
アイリスはその背でこう言っていた。
『嫌だ!』と。
僕がアイリスを失いたく無い事よりも、もっと…!
例え自分の命を無くしても僕を、無くしたく無い!
そのどかない背中は無言でそう……僕に告げていた。
テテュスがあんまり…激しく身を震わせて嗚咽を上げながら顔を下げ…その涙が頬をひっきりなしに伝うから、ファントレイユは必死にテテュスの肩を抱いた。
“君の幸せな夢の中のアイリスは、君の作り上げた幻覚で本物じゃないからきっと…。
本物のアイリスは消えた君の体を探して、毎晩彷徨う。
それは…悲しげな悲鳴を上げて。
君の幸せな夢が覚める迄、アイリスはきっとそれを続けるだろう。
本物の自分はここだ。と………”
ワーキュラスの言葉にレイファス迄もが、顔を下げしゃくり上げて、涙を頬に、伝わせた。
ファントレイユは泣くレイファスに振り向いて駆け寄ろうかと戸惑い…だがテテュスに向き直ると必死できつく、その肩を抱きしめる。
『テテュス……。
小さな貴方には、死ぬと言う事は耐えられない程辛い事だと、思うわ……。
とても残酷だけど、それは誰にでも訪れる最期の時なの。
でもテテュス。私は後悔が一つも無い……。
だって貴方を、産めたんですもの。
無理だって…言われた。
体がとても弱いから。
貴方が産まれて代わりに私は息を、引き取るだろう…と。
だから…苦しくなったら、いつも貴方を産んだ時の事を、思い出すの。
産まれたばかりの産声を上げた貴方の横で私は……死にかけていた。
けど嫌だった!
絶対嫌だったの!
貴方ともっと、居たかった…!
どうしても!
だから……必死で生きる事に縋り付いた…。
……起き上がる事が出来ない程弱ってしまったけれど、でも嬉しかった。
貴方の姿を、見てるだけでどれだけ私が幸せだったか……。
貴方に苦しむ姿ばかり見せてしまった。
伝えられなかった。
どれだけ苦しくても。
貴方を見ていられる幸せに比べたら…あんな苦しみは何でも無かったの!
貴方の林檎色のほっぺ。
ぷっくりと愛らしくて…とても、利発で…。
私に本を、読んでくれる時の貴方が私はとても…誇らしかった。
お願いテテュス。
貴方はとてもとても大切な存在なの。
私の体は透けて、普段貴方には見えない。
けど居るの。貴方とアイリスの側に。
だからお願い。私の姿が見えないからといって、貴方の姿をこの世から、消さないで…!
大人に成った貴方。
愛する人と共に歩く貴方を、私にどうか…見せて頂戴。
そして…精一杯生きて、もう思い残す事が無くなった時、私を呼んで。
そしたら貴方を迎えに来るから…!
きっと来るから!
だからどうか…その時迄はどんな事があっても…歯を喰い縛って戦って!
生きる為に!
貴方は知らない。
アイリスは一生懸命…貴方の前では立派で居ようとしてる。
けれど…!
全てから解放された夢の中で、アイリスがどれ程…悲しげに泣くのか…。
どれ程……。
悲しげな声を上げるのか………』
テテュスは抱きつきたかった。
アリルサーシャにもう一度。
けど出来ないと知って、その場で叫んだ。
「解った…!
解ったから……!
アイリスをもう、泣かせたりはしないから…!」
ファントレイユにもレイファスにも、解った。
アイリスは…テテュスがアリルサーシャの為なら、生きる事を蹴ってでも死の世界迄、簡単に飛び込んで行けるけど…自分の為には必死で…生きる事を選ぶ為にそれこそ必死で、歯を喰い縛って頑張ってくれはしないのだと…。
解ってしまっているから、泣いている。
テテュスはアリルサーシャに縋り付く事が出来ず、代わりに…肩を抱く、ファントレイユの腕を掴み…きつく掴んで言った。
「絶対そうする!
幻の夢の世界を選んだりしない!
そう約束する!
アリルサーシャ!絶対誓うから!!!」
テテュスは涙でくしゃくしゃで、でも自分の腕を痛い程きつく掴み…必死で叫んでいた。
ファントレイユはその時のテテュスは、どんな時でも断固として自分を貫く、アイリスそっくりだ。と思った。
顔はとても綺麗だけれど、意志が凄く強くて…。
そしてどんな相手でも、決して諦めずに戦い抜く、アイリスそっくりだ。と。
レイファスはそう叫んだテテュスが、あんまり男の子らしくって…アイリスと、大人に成った立派な騎士のテテュスが、だぶって見えた。
アリルサーシャは儚げで…けれどとても美しい微笑みを、テテュスに見せた。
ファントレイユとレイファスでさえ、思った。
透けて…薄い色の姿だったけれど…その微笑みはきっと一生忘れない………。
そんな…永遠に心に残る、微笑みだった。
アリルサーシャの姿がワーキュラスの横から薄く成って消えて行くと、テテュスはがっくり膝を付いて、壊れたみたいに泣き続け…両側に、ファントレイユもレイファスも付いて必死でテテュスを、無言で慰めた。
ワーキュラスがもう一度、とても悲しげに微笑むと、彼から金色の光が小さな渦のように放たれて…それが三人の周囲を包むと、途端に三人の、意識が薄らいだ。
泣き疲れたようなテテュスの肩を抱いて…ファントレイユも…そしてレイファスも、崩れ落ちるように眠りに付いた。
薄目明け、最後迄抗うように…レイファスは重い瞼を持ち上げていたけど…ワーキュラスの金の姿を目に焼き付け…そしてとうとう、テテュスの温かい体の上に、顔を倒し深い眠りについた。
ワーキュラスは目前に折り重なるように眠る三人の子供と…そして消え行くアリルサーシャの
『ありがとう…』
とささやく、優しい声を聞いた。
ワーキュラスが顔を上げて空を見る。
まるで本来の自分の大きさを、越える程のテテュスの悲しみに、胸打たれたように顔を上げたまま、暫くそうする。
やがて…晴天は雲に覆われる。
サーチボルテスもアッカマンも、窓辺を見つめた。
ぽつり…ぽつりと雨粒が、落ちて来る。
“里”中の住民がその雨に、音の無い声でささやき合う。
『神の涙だ…』
天からの雫を皆がそう、呼んだ。
『神の涙が降って来た』
ファントレイユがそっ…。とテテュスを覗い見る。
「アイリス…元気に成って、良かったね!」
レイファスもささやく。
「ギュンター、まだ護衛連隊長に成ってないけど…あれだけ重傷だからアイリスは当分、動けない。
きっと代わって誰かが、この後指揮を執るよ。きっと。
だから…テテュスはアイリスとゆっくり過ごせる筈だ」
テテュスはファントレイユとレイファスを、見た。
そして…やっぱり同様、大変な思いをした二人を見つめ、頷く。
「ここは、綺麗だね!」
だがレイファスが不満そうに口を、尖らせた。
「でも“里”の人って大人ばかりだ…!
子供は、居ないのかな?」
ファントレイユも周囲を見回す。
「…僕達の他は誰も居ないね」
テテュスはどうしても心が…想い煩いから離れて行って軽やかで、楽天的に成ってつい、はしゃいで言った。
「思い切り、鬼ごっこ出来る!」
言った途端、ファントレイユが叫ぶ。
「レイファスが鬼!」
レイファスはテテュスがファントレイユの手を握り、二人して自分から逃げて行くのを見、腹を立てて追いかける。
「そんなの、ずるい!」
花畑はずっと続き、三人は相手を掴み合って鬼を押し付け合い、思い切り笑いながらとうとう、芝生の上に団子に成って倒れ込んだ。
三人とも腹を上にし、息切れに笑い合うと、ファントレイユがささやく。
「昨日…。
そしてここからほんの、少ししか離れてない場所だったんだよね?」
レイファスが、その手を顔の横に置き、思い返す。
テテュスも思い出す。
皆が必死で…本当に必死で、あれだけの数の敵から、自分達を護ってくれた事。
レイファスは気づいたら頬が熱く…涙が伝うのが、解った。
シェイルのきつく握る手。
必死さが、その痛みから伝わって来る。
「みんな…普段は口が悪いのに………」
ファントレイユもテテュスも、真ん中のレイファスに体を起こして様子を伺う。
レイファスは横たわったまま静かに泣いていて、ファントレイユは言葉を、無くした。
テテュスがそっと言う。
「元気な、オーガスタスにやっと会えたね」
レイファスは、こくん。と頷く。
「ぼく………」
ファントレイユもテテュスも、その掠れた声音に顔を、揃って横たわるレイファスに寄せる。
「…凄く…『光の民』が好きだ………」
テテュスも、頷く。
「彼らが居なかったらオーガスタスも死んでた」
レイファスは涙をその指で拭いながら、頷く。
ファントレイユも言った。
「僕らもきっと今頃、あの大きな敵の騎士に掴まっていて…アイリスは殺されてた」
テテュスは項垂れた。
「アイリスだけじゃない…ギュンターも…僕も…ローフィスも」
そして二人は、頷くレイファスがその脳裏に、ウェラハスと神聖騎士達…そして“里”の、ミラーレスやサーチボルテス達の姿を、思い描く様子が解った。
「大好きだ………!」
テテュスには、レイファスが思い浮かべたウェラハスが、その言葉に気づいた様に振り向き、微笑む様子が感じられ、そっと小声でつぶやく。
「ここは“里”だから…ウェラハスに思いが、簡単に通じるのかな?人間の僕らでも」
ファントレイユもそれが見えるみたいに、つぶやく。
「きっとそうだ…。
幻みたいにぼやけた、微笑む金色のウェラハスが僕にも見えるもの」
けど突然。
その静かな言葉は降って来た。
「オーガスタスが怪我をしたのは『光の民』の末裔の『影の民』のせいで…オーガスタスが居れば皆はあの戦いで、苦戦等しなかった…。
敵はオーガスタスが、居ると思ってあれだけの数を用意したのだから…。
『影の民』がこの国で悪さをするのは、元はと言えば『光の国』の問題。
『光の民』達とその末裔、神聖騎士達が君達を護るのは、当然の義務。
むしろ…彼らのせいで、こんな目に合う。
と…アースルーリンドの人達に、責められて当然と思ってる。
だから…君達に怖い目に合わせて心から済まないと…ウェラハスもダンザインも謝ってる」
三人が振り向くと、そこには…金の透けた子供が、居た。
彼らよりほんの少し年上の。
「ワーキュラス!」
テテュスが叫んで身を起こす。
駆け寄り、そして透けた子供の前で足を止め、息を切らし見つめる。
「お礼を…!言いたかった!ずっと………!
僕が馬鹿で無茶をして、君もディアヴォロス左将軍も…そしてアイリス迄、迷惑かけて泣かせたから!」
ファントレイユも身を起こしそっ…とテテュスの後ろに立つ。
「どうして…?
いいの?
左将軍から抜け出して」
テテュスもそれを聞いて詰め寄る。
「左将軍は大丈夫?!」
レイファスは片肘付いて身を起こし、その子供を見つめる。
人間の子供で言えば、十才くらい。
けど金の光が周囲を取り巻き、髪は透けた金色。
青の瞳は人外のもののように、強い青で光ってた。
そっ…と立ち上がると、ファントレイユとテテュスの後ろからささやく。
「君が…ワーキュラス?」
少年は頷く。
「ここは結界内だから、ディアスに負担を掛けず自由に僕は能力が使える。
僕にも癒しの能力はあるけれど…人間の体は小さ過ぎて…僕が能力を放射すると、体が消えてしまう」
「?どうして消えるの?」
ファントレイユの問いに、少年は寂しそうに微笑む。
「体は細かい粒が繋がって出来ている。
その繋がりが全部、離れてしまう。
一つの粒はそれは…目に見えない程小さいから、全部離れると消えた様に見えるんだ」
けど少年は、レイファスの疑問を感じ取ったようにささやく。
「粒が繋がってる間は人間だけど、粒が離れてしまうともう…その人じゃなくなる。
勿論、拡散する前にもう一度つなぎ合わせれば元に戻るけれど…それだけの粒を元通り、全部つなぎ合わせるのは、大変な作業で…とても、難しい」
テテュスがそっ、と言った。
「心は、どうなるの?」
「魂と成って空間を漂う。
入れ物の体を無くして」
レイファスが、不思議な少年を見上げ、ささやく。
「天国に…逝くの?」
少年は微笑む。
「『光の国』には、大勢のアースルーリンドの民の魂が今だ、居るよ。
昔はアースルーリンドの民を招待した。
けど……みんな、『光の国』の光が気持ち良すぎて…体を必要と、しなくなるんだ」
テテュスはびっくりした。
「どうして?!」
少年は微笑む。
「幸せな夢を見たら、ずっと夢の中に居たい。と、君は思わない?
夢の中にずっと居たら…体は要らないだろう?」
レイファスが、呆けたように言った。
「そんなに…幸せな気分に成るの?」
少年は悲しげに俯く。
「辛い体験をした人程、そうだ。
だから体は要らず、ずっと幸せな夢の中で、生き続けたい。
そう思ってどんどん、透けて行き終いに…体が無くなる。
みんな『光の国』の、風や空気や水…花や木に溶けて、ずっと幸せな夢を見続けている。
だから…『光の国』の民はもう、アースルーリンドの民を招待しない。
余程、望まれなければ」
ファントレイユが無邪気にささやく。
「でも、招待されたら行ける?」
「規則が出来たから…。
『光の国』の民がここで結界が必要なように、人間も『光の国』だと、結界が必要なんだ。
“光”をたくさん浴びないような結界が」
テテュスは“里”のその、素晴らしく美しい花々が咲き乱れる庭園を見回した。
「ここよりも、もっと光が濃いの?」
少年は、頷いた。
レイファスが尋ねる。
「ワーキュラスはその姿よりももっとずっと、大きいの?」
ファントレイユも目を輝かせる。
「何歳?」
テテュスも無邪気に言った。
「僕、竜って見た事無い!」
途端三人の頭の中に、山々の間から巨大な光の柱が真っ直ぐ天に伸び、その周囲を姿の美しい流線型をした金色の竜達が飛び交う、姿が見えた。
暮れゆくオレンジの空を背景に、その金の鱗を輝かせながら。
あんまり綺麗で、ファントレイユが溜息を付く。
頭の中で、声がする。
“竜達はとても長生きで……。
昔は『光の国』の民との交流も無かったけれど、大昔一人の竜が民に鱗を与えて以来…お気に入りの人間と言葉を交わすのが、竜達の楽しみの一つと成った…”
三人の頭の中に、崖に立つ人間の、その遙か上空に飛翔する黄金の竜の姿が小さく、見えた。
さっ!と旋回して、崖下から姿を見せるその竜の頭は…崖上に立つ人間よりもずっともっと大きくて…。
頭ですら、あんなに大きいのだから、全身は山のように大きいに違いない。
三人はそう思った。
“大きくないと、光の柱にその身を飲み込まれてしまう……。
だから…子供の竜が産まれると、皆が交代で、光の柱から光を子竜へと運ぶんだ”
ファントレイユが聞いた。
「子供が柱に近寄ると、危険?」
ワーキュラスは頷いた。
“あんまり気持ちよくって、飛んでいられなく成る。
高い所から落ちたら、大怪我をするか…死ぬ。
それに光の柱の光はとても…濃いから、意識がしっかりしていない子竜が強い光を浴びると、人間のように体を、保てなくて拡散してしまう………”
テテュスは拡散する程気持ちが良い。って、どんなんだろう…。と思った。
アリルサーシャもそうだったら良かったのに……。
あんなに苦しんで最期を迎えるんじゃなく…。
気持ち良すぎて逝ってしまったんなら………。
そう、考えると涙が頬を、伝った。
でもそれでもやっぱり、悲しかった。
僕とアイリスを置いて…逝ってしまうだなんて………。
ずっと…ずっと描いてた夢がある。
少し元気になったアリルサーシャの手を引いて…アイリスと三人で、ピクニックに行く。
美味しいお弁当をいっぱい持って…それはアイリスの仕事。
重いご馳走のいっぱい詰まったバスケットを両手に持つのが。
僕はアリルサーシャの手を引いて…草原の風を感じる。
晴れ渡った青空で、草原の木々も草もが、陽に照らされてきらきら光り、風に優しくその葉はさざめき…。
草原の草も、一斉にたなびいて…。
僕はアイリスに振り向く。
アイリスは微笑む。
アリルサーシャは林檎色のほっぺをして………。
ファントレイユもレイファスも、テテュスの頬から次々に涙が、伝うのを見た。
もしそんな夢の中にずっと、居られるとしたら…。
アリルサーシャが元気で、僕とアイリスと一緒に過ごす夢の中に。ずっと………。
ずっと居られたら………。
そしたら、体は要らなくなる。
きっと。
僕は幸せすぎて。
テテュスの頬からあんまり…涙が次々伝い、ファントレイユは切なくなった。
ワーキュラスが、優しく言った。
“でもテテュス。それは夢だ”
途端、金色の少年の横にやっぱり…金の光に包まれた…透けた女の人が、姿を現した。
ファントレイユもレイファスもびっくりしたけれど…テテュスはあんまりびっくりし過ぎて、涙が止まった程だった。
「…………アリルサーシャ………!」
テテュスの顔が、くしゃっ!と歪み、透けた金の彼女の元に、拳を握って駆け寄る。
けど、透けた女の人をテテュスは通り越してしまって……。
レイファスはそれを見た途端、涙が溢れた。
あんまり…テテュスが可哀相で。
テテュスは振り向く。
金に透けたアリルサーシャもテテュスに振り向き…そして微笑む。
テテュスはそれを見て…また溢れる涙を必死で…堪えてた。
「居るの?本物の、アリルサーシャ?」
彼女はこくん…!と頷く。
『ごめんなさい。テテュス。
私は最低の母親だわ…!』
テテュスは必死で、首を横に振る。
『いいえ…!そうなの……。
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夢の中で、テテュス。貴方を捕まえられなくて。
私が近寄ると、悲しげに見つめるわ。
“テテュスを君は連れて行ったりしない。
そうだろう?”
そう言って。
私はもう…起きていても苦しくないから…泣く、アイリスを一生懸命抱きしめるの。
私を亡くして…そして貴方まで無くすと…アイリスは怯えきってる……。
あんなに強くて……頼もしい人だったのに…………』
テテュスはアイリスの大きな背が………ノルンディルの剣が自分の頭上から処刑する刃物のように振り下ろされようとしていても、どかなかった事を、思い浮かべた。
アイリスはその背でこう言っていた。
『嫌だ!』と。
僕がアイリスを失いたく無い事よりも、もっと…!
例え自分の命を無くしても僕を、無くしたく無い!
そのどかない背中は無言でそう……僕に告げていた。
テテュスがあんまり…激しく身を震わせて嗚咽を上げながら顔を下げ…その涙が頬をひっきりなしに伝うから、ファントレイユは必死にテテュスの肩を抱いた。
“君の幸せな夢の中のアイリスは、君の作り上げた幻覚で本物じゃないからきっと…。
本物のアイリスは消えた君の体を探して、毎晩彷徨う。
それは…悲しげな悲鳴を上げて。
君の幸せな夢が覚める迄、アイリスはきっとそれを続けるだろう。
本物の自分はここだ。と………”
ワーキュラスの言葉にレイファス迄もが、顔を下げしゃくり上げて、涙を頬に、伝わせた。
ファントレイユは泣くレイファスに振り向いて駆け寄ろうかと戸惑い…だがテテュスに向き直ると必死できつく、その肩を抱きしめる。
『テテュス……。
小さな貴方には、死ぬと言う事は耐えられない程辛い事だと、思うわ……。
とても残酷だけど、それは誰にでも訪れる最期の時なの。
でもテテュス。私は後悔が一つも無い……。
だって貴方を、産めたんですもの。
無理だって…言われた。
体がとても弱いから。
貴方が産まれて代わりに私は息を、引き取るだろう…と。
だから…苦しくなったら、いつも貴方を産んだ時の事を、思い出すの。
産まれたばかりの産声を上げた貴方の横で私は……死にかけていた。
けど嫌だった!
絶対嫌だったの!
貴方ともっと、居たかった…!
どうしても!
だから……必死で生きる事に縋り付いた…。
……起き上がる事が出来ない程弱ってしまったけれど、でも嬉しかった。
貴方の姿を、見てるだけでどれだけ私が幸せだったか……。
貴方に苦しむ姿ばかり見せてしまった。
伝えられなかった。
どれだけ苦しくても。
貴方を見ていられる幸せに比べたら…あんな苦しみは何でも無かったの!
貴方の林檎色のほっぺ。
ぷっくりと愛らしくて…とても、利発で…。
私に本を、読んでくれる時の貴方が私はとても…誇らしかった。
お願いテテュス。
貴方はとてもとても大切な存在なの。
私の体は透けて、普段貴方には見えない。
けど居るの。貴方とアイリスの側に。
だからお願い。私の姿が見えないからといって、貴方の姿をこの世から、消さないで…!
大人に成った貴方。
愛する人と共に歩く貴方を、私にどうか…見せて頂戴。
そして…精一杯生きて、もう思い残す事が無くなった時、私を呼んで。
そしたら貴方を迎えに来るから…!
きっと来るから!
だからどうか…その時迄はどんな事があっても…歯を喰い縛って戦って!
生きる為に!
貴方は知らない。
アイリスは一生懸命…貴方の前では立派で居ようとしてる。
けれど…!
全てから解放された夢の中で、アイリスがどれ程…悲しげに泣くのか…。
どれ程……。
悲しげな声を上げるのか………』
テテュスは抱きつきたかった。
アリルサーシャにもう一度。
けど出来ないと知って、その場で叫んだ。
「解った…!
解ったから……!
アイリスをもう、泣かせたりはしないから…!」
ファントレイユにもレイファスにも、解った。
アイリスは…テテュスがアリルサーシャの為なら、生きる事を蹴ってでも死の世界迄、簡単に飛び込んで行けるけど…自分の為には必死で…生きる事を選ぶ為にそれこそ必死で、歯を喰い縛って頑張ってくれはしないのだと…。
解ってしまっているから、泣いている。
テテュスはアリルサーシャに縋り付く事が出来ず、代わりに…肩を抱く、ファントレイユの腕を掴み…きつく掴んで言った。
「絶対そうする!
幻の夢の世界を選んだりしない!
そう約束する!
アリルサーシャ!絶対誓うから!!!」
テテュスは涙でくしゃくしゃで、でも自分の腕を痛い程きつく掴み…必死で叫んでいた。
ファントレイユはその時のテテュスは、どんな時でも断固として自分を貫く、アイリスそっくりだ。と思った。
顔はとても綺麗だけれど、意志が凄く強くて…。
そしてどんな相手でも、決して諦めずに戦い抜く、アイリスそっくりだ。と。
レイファスはそう叫んだテテュスが、あんまり男の子らしくって…アイリスと、大人に成った立派な騎士のテテュスが、だぶって見えた。
アリルサーシャは儚げで…けれどとても美しい微笑みを、テテュスに見せた。
ファントレイユとレイファスでさえ、思った。
透けて…薄い色の姿だったけれど…その微笑みはきっと一生忘れない………。
そんな…永遠に心に残る、微笑みだった。
アリルサーシャの姿がワーキュラスの横から薄く成って消えて行くと、テテュスはがっくり膝を付いて、壊れたみたいに泣き続け…両側に、ファントレイユもレイファスも付いて必死でテテュスを、無言で慰めた。
ワーキュラスがもう一度、とても悲しげに微笑むと、彼から金色の光が小さな渦のように放たれて…それが三人の周囲を包むと、途端に三人の、意識が薄らいだ。
泣き疲れたようなテテュスの肩を抱いて…ファントレイユも…そしてレイファスも、崩れ落ちるように眠りに付いた。
薄目明け、最後迄抗うように…レイファスは重い瞼を持ち上げていたけど…ワーキュラスの金の姿を目に焼き付け…そしてとうとう、テテュスの温かい体の上に、顔を倒し深い眠りについた。
ワーキュラスは目前に折り重なるように眠る三人の子供と…そして消え行くアリルサーシャの
『ありがとう…』
とささやく、優しい声を聞いた。
ワーキュラスが顔を上げて空を見る。
まるで本来の自分の大きさを、越える程のテテュスの悲しみに、胸打たれたように顔を上げたまま、暫くそうする。
やがて…晴天は雲に覆われる。
サーチボルテスもアッカマンも、窓辺を見つめた。
ぽつり…ぽつりと雨粒が、落ちて来る。
“里”中の住民がその雨に、音の無い声でささやき合う。
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天からの雫を皆がそう、呼んだ。
『神の涙が降って来た』
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