若き騎士達の危険な日常

あーす。

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シェイルの涙とローフィスに突き刺さる冷たい視線

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 ローランデとフィンス、ヤッケルは…ローフィスらの寝室になんとなく背を向け、練習場はきっと凄く混み合ってると話してると、扉が開く。

ローフィスは着替えてて…むっつりした表情で三人を見る。

「聞きましたか?
試合の話」

それでも微笑むローランデに、ローフィスは硬い表情をほぐすように崩し、肩を竦める。
「聞いた」

けれどその後、背後からシェイルがガウン姿を見せるから、ヤッケルが声をかけた。
「着替え、持ってきたぜ。
ついでに剣も。
練習場の剣なんて、ボロボロだから1試合も保たな…」

けれどシェイルは俯いて…突然ポロポロと涙を頬に、零し始めるからフィンスはぎょっとして。
直ぐ、横に付くと尋ねる。
「…どこか…痛い?」

ローランデはローフィスと、シェイルに尋ねるフィンスの様子を…首を振って見回し、伺う。
ヤッケルは直ぐ、理由が分かって俯いた。

扉が開いて、ディングレーとオーガスタス、そして二年大貴族らが入って来る。

泣いてるシェイルを見て、皆がぎょっ!とした。

「…なんで…シェイル、泣いてる?」

ディングレーがローフィスに尋ねるけど…ローフィスは理由が分かって、けど俯いたまま。

「…シェイル…?」

問われてシェイルは顔を上げ、尋ねたフィンスにでは無く、ローフィスへと叫ぶ。

「どうして僕じゃダメなの?!
金髪で…無いから?!
胸がおっきく、無いから?!
大人の女…じゃ…無いか……………」

シェイルはもう、それ以上言えなかった。
泣いて、顔を下げて…そしてフィンスの肩に、顔を隠して…。
そして細い肩を震わせて、泣き出した。

室内は一斉に、ローフィスに冷たい視線を送る。

ヤッケルと…オーガスタスを除いて。

「…シェイルは、望んでいるのに…。
そんなに…大変なことですか?」

そう呟くローランデの声は困惑に満ち、それでも…優しげだった。

「…シェイルはあんたじゃないと!
ダメだって分かってるだろう?!」

珍しく…ディングレーがローフィスにそう怒鳴る。

オーガスタスは憤るディングレーの横に立つ。
ディングレーはオーガスタスから体を背けて怒鳴る。

「ローフィスに、怒ってない!
ただ俺は、シェイルが泣いてるから!!!」

オーガスタスが、呟く。
「…まあそりゃ…お前だったら、相手に求められて勃たなかった男の気持ちなんて、分からんだろうな。
俺は経験あるが」

室内の男達の視線が、シェイルから一斉にオーガスタスに移り、驚愕に満ちて注がれた。

ディングレーですら、目を見開いて尋ねる。
「…あんたでも、あるのか?」

オーガスタスは首を垂れて、腕組みする。
「それが…凄い女で。
視覚的にも。
つまりそれで…望まれてもどうしても勃たなくて。
“役立たず”
と、大勢の前で罵られて、大恥かかされた。
そんな体験してたら、絶対ローフィスを糾弾出来ない」

フィンスだけが、シェイルに肩を貸したまま顔だけ振り向いて、尋ねる。
「…シェイルは、こんなに綺麗だ!!!」

オーガスタスは首を垂れたまま、ため息交じりに言い返す。
「…けど…男だ。
男を対象にすることに慣れてないと、なかなか…」

突然室内の男達は、ため息交じりに同意する。

オーガスタスは、尚も言った。
「更に大切に大切に、大切にしてきた、大事な大事な大事な可愛い弟。
それを…そうホイホイ、簡単に抱けるか?」

男達はまた、同意のため息を吐く。

けれどフィンスはまだ、きつい目でローフィスを睨み、ローランデは
“…けど!!!”
と異論を口に出来ず、俯いてた。

が、オーガスタスは場の状況を読み切って、畳みかけた。

「…試合は、甘くない。
学年一になっても、いずれディアヴォロスとの対戦で、間違いなく負ける」

突然、二年大貴族らは“負ける”の言葉に慌てふためき、浮き足だって
「失礼します!!!」
とディングレーに叫び、部屋を駆け出て言った。

シェイルが、フィンスの肩から顔を上げて、姿同様大らかな微笑をたたえる、オーガスタスを見上げる。

オーガスタスは苦笑して囁いた。
「…時間を、やってくれ」

シェイルはそれを聞いて…泣くのをやっと止め、こっくりと頷いた。

ローフィスは暫く、俯いたまま動かなかったけど…横を通り過ぎるオーガスタスの腕を、俯いたまま軽く、握る。

オーガスタスはその手を外し、顔を上げないローフィスの、肩をぽん。と軽く叩いた。

ヤッケルは…ローフィスがオーガスタスに、無言の感謝を示し、それを受け止めるオーガスタスを見て…ほっとした。

そして、シェイルを見る。

「お前、試合出る気なんだろう?!
全校生徒の前で一発ブチかまして、お人形さんじゃ無いと。
奴ら全員に、教えてやれ!!!」

シェイルはヤッケルの気合いのこもる言葉を聞いて、引き締まった表情を見せ…。

ヤッケルを見据え、しっかりと頷いた。

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