十字架のソフィア

カズッキオ

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第一章

腐った領主

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 宿屋でライルとソフィアはこの街をどう救うか考えていた。

「やはり一番の原因は領主ですね   」

「そうだな、領主を何とかしないとな   」

「やはり一度話し合って見ましょう  」

ソフィアの言葉にライルは頷く。

「ああ、一度話し合って言う事を聞かなければ武力行使って方向かな   」

「はい、では早速領主の屋敷に行きましょう!  」

とりあえずライル達は領主の屋敷に向かう事にした。

 

 「何だ貴様ら!  」

領主の屋敷の門に着きソフィアは堂々と当たり前の様に敷地内に入って行くのを警備兵に呼び止められる。

「何だと言われても私は領主に合いに来ただけです   」

ソフィアは何が間違ったのか分からないという感じに言い返す。

「何 、領主様にか?  そんな報告受けていない。帰れ!   」

「ちょっと待って… 」

警備兵がしっしっと手を振るのでソフィアは抗議しようと前に出ようとする。しかしライルはソフィアの肩を掴みそれを止める。

「すまない、実は帝国軍からの視察何だ。名乗るのを忘れていた   」

「む、帝国軍からか? ならば軍の証明証を見せてみろ  」

ライルはロングコートの内ポケットから帝国軍の証明バッチを出す。
ライルが帝国軍時代に使っていたものだ。

「これでいいか?  」

警備兵はそのバッチを見る。
そこに刻まれているのは帝国軍大佐を表す紋章。
警備兵は目を見開く。

「こ、これは上官様でありましたか失礼しました!   」

「ああ、構わない。警備兵は用心深い方が良いからな   」

「あ、ありがとうございます!  しかし、そちらのシスターはどの様な?  」

警備兵がソフィア見る。

ライルは内心焦る。何故ならソフィアに関しては何も考えていなかったからだ。

「え、あ、彼女か?  彼女は…… 」

ライルが戸惑っているとソフィアが口を開く。

「わ、私はライルのこ、こ、婚約者です! 」

ソフィアの言葉にライルは驚くが口裏を合わせる。

「そ、そうだソフィアは俺の婚約者だ   」

ライルは口裏を合わせると警備兵は更に疑問をぶつける。

「しかし、修道女は結婚出来ないはずですが… 」

「ええ、もう直ぐ修道女を辞めるのでそうしたら結婚するんです  」

ソフィアは冷や汗をかきながら言う。

「ああ、そうでしたか。しかし本日は領主様はいらっしゃらないのでまた明日来ていただきたく思います  」

「分かりました。ではまた明日   」

何とか警備兵を納得させたソフィアは屋敷の門を後にするのでライルも後に続く。

警備兵が見えなくなってからライルとソフィアは同時にため息を吐く。

「どうなるかと思った……   」

「はい、そうですね…… 」

「まあでも何とかなってよかったな   」

ライルはもう一度ため息を吐く。するとソフィアが聞く。

「それでライル、夜までまだ時間がありますがどうしますか?   」

「ああ、少しギルドに行こうと思う  」

「ギルド?  それはどんなものですか?   」

ソフィアが頭にハテナマークを浮かべる。

「ギルドは俺たちみたいな傭兵に仕事をくれたりする場所だ。仕事には種類があって魔物討伐や護衛任務、そして戦争への参加がある。それぞれ仕事をこなすとお金が貰えるんだ  」

ライルが簡単に説明するとソフィアはなるほどといった風に納得する。

「なるほど、では仕事を探すのですね  」

「いや、換金しに行く  」

「換金ですか?   」

ソフィアのさらなる疑問にライルは答える。

「この前ガルムを何体か倒しただろ、あいつらの牙や爪はギルドに持って行くとお金に変えてくれるんだよ   」

ライルはお金が入っている革袋からガルムの牙を見せて説明する。

「いつも干し肉とパンじゃ飽きるだろ、街にいる時は美味い飯食べようぜ   」

「なるほど、この街を救う前の景気付けですね楽しみです  」

ソフィアはいかにも美味しいご飯が早く食べたいといった風に頬を緩める。

「それじゃ早いとこ換金に行くか   」

ライルとソフィアはギルドに向かう。

しばらくしてギルドがある酒場に着く。

どうやらこの街はギルドと酒場が一緒の建物にあるらしい。

ライルが建物のドアを開け中に入ると中にいる人々がこちらに視線を向ける。

ソフィアはその視線を受け少し萎縮する。

「結構人がいるのですね… 」

「ああ、旅の途中で立ち寄った奴らと昼間から飲んでる奴らだろうな  」

ソフィアはキョロキョロと周りを見回す。
するとライルはガルムの牙や爪が入った革袋を持ちソフィアに言う。

「それじゃちょっと換金してくるからソフィアはここに居て   」

「あ、はい。分かりました  」

ソフィアはコクリと頷くとライルは傭兵達が並んでいるカウンターの最後尾に並ぶ。

ソフィアは邪魔にならない様に入り口付近の隅っこによる。

すると二人組の男がフラフラとこちらにやってくる。

その一人は左手に酒が入った木製のジョッキを持っている。

「おやおや、シスターのお嬢ちゃんがこんな所に何の用かなぁ?  」

ジョッキを持った男がソフィアに話しかけてくる。

「あ、いえ。少し人を待っていまして  」

ソフィアが少し警戒しながら答えるともう一人の男が言う。

「へーそうなんだ、じゃあさ俺たちと少し遊ぼうぜ。何でも奢るからさ  」

「いえ、待ち人もそんなに時間はかからないので遠慮します  」

ソフィアが断るとジョッキを持った男がいきなりソフィアの肩に左腕を回してくる。

「えーいいじゃん遠慮しないでさ、俺たちと遊ぼうぜ   」

酒の匂いがソフィアの鼻を刺激する。
かなり酔っている様だ。

ジョッキを持った男はそう言うとジョッキを傾けソフィアの胸元に酒を掛ける。

「え、ちょっ、やめ… 」

修道服のちょうど白い生地に赤い酒が掛かりソフィアの着ている下着が少し透ける。

「へへへ、かわいい下着着けてんじゃんシスターさんよ~  」

ジョッキの男の右手がソフィアの胸に伸びる。

ソフィアが助けを呼ぼうと叫ぼうとしたその時、

ジョッキの男の右腕を誰が掴む。

「あ?  何だてめぇ 」

ジョッキの男が自分の右腕を掴んだ人物を睨む。

「悪い、この子は俺の雇い主なんでね  」

ソフィアは声の方を見ると黒髪の少年が立っていた。

そう、ライルだ。

「あ! ライル   」

「悪いソフィア待たせたな   」

ライルはソフィアに詫びる。

すると二人組の男が言う。

「おいおい、こっちは今取り込み中なんだ邪魔すんじゃねぇ   」

そのことにライルは相手を馬鹿にする様に言う。

「何だ聞こえなかったのか?  この子は俺の雇い主何だよ、だから離してくれないか?  」

するとジョッキの男はソフィアに回していた左腕を離すのでライルも右腕を離してやる。

「ああ、そうかいそれは悪かったな  」

ジョッキの男がそう言った瞬間、ライルの背後に回っていたもう一人の男が片手にナイフを持ち切りかかる。


「おら、死ねや!   」

しかしナイフはライルに当たる前にライルがその腕を掴み止める。

「何!   」

「隙ありだ!   」

しかしジョッキの男もナイフを持ちライルに突っ込んでくる。

ライルは掴んでる腕を離し最初切りかかってきた男の腹を蹴り飛ばす。
男は酒場のテーブルに突っ込む。

更にジョッキの男のナイフを半身で避け、すれ違いざまにうなじに手刀を入れる。
それだけでジョッキの男は気絶する。

「ふー、物騒な奴等だな  」

「ありがとうございますライル   」

ライルが一息つくとソフィアはライルに例を言う。

「いいよ、それより服汚れちゃってるけど大丈夫か?   」

「はい、そうですね一度宿に戻りましょうか  」

「そうだな、着替えてから飯に行こう   」

そう言って二人はギルドを出る。


『しかしまあ、この街は駄目かもな。腐った領主と腐った領民…街一つが崩壊する条件が揃ってる、ソフィアが今更何か言ったところで変わるかどうか……  』

ライルは宿屋に向かう道でそう考えた——————。










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