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10.毒と薬の分け目とは?
「タカラ様、昨日の患者が夜中にまた苦しみ出しまして、様子を診ていただきたいのですが」
「え! それ、オレの力じゃ効かなかったってことじゃない? オレが診ていいの?」
「傷も一瞬で治るわけではございません。病ならば尚更、時がかかるのでしょう」
そう言われてここにはエコーもCTもMRIもないことを思い出した。
エコー……!?
魔力による探査を人の体にしたら何か分かるかな?
患者のところに行って痛む場所を詳しく聞けば、腹痛というより腰だった。これ、尿管結石じゃね?
身体の中に余分な物がないか、魔力を注いでみる。すると痛がっている部分に反応があった。
やっぱり硬いものがある。
土魔法で土を耕すように、小さな塊を砕いてみた。
「痛みが! 痛みがなくなりました!!」
「やっぱり尿管結石だったのか」
「にょうかん……? それは何ですか?」
喜ぶ患者にもう一晩安静にするよう言ってナゼール院長と院長室に行った。そこで人の体内に石ができることがあるのと、できやすい場所、それを砕けば痛みは無くなり、尿と一緒に排泄されて完治することを話した。
「魔力を注いで対象を見つけ、土魔法で砕くとは、考えもしなかった治療法です。いや、素晴らしい!!」
「たまたま知っていただけですよ」
オレもやったことがあって七転八倒したからね。あれは痛かった。
「それよりこの魔力による探査が誰でもできるようになるといいですよね」
「それは一体どのように……」
音の反響を言葉で説明し、洗面器を使って波紋の説明をすると理解できたようで、ナゼール院長はさっそくオレと一緒に実践を始めた。
骨折している人は骨の凸凹が分かりやすい。
「病気や怪我によって魔力の反射も違うでしょうから、研究を、重ねましょう」
「はい! 経験の積み重ねが大切ですよね」
治療を手伝いながら探査魔法の研究(?)を続けることになった。魔術研究所にも連絡しなきゃね。
*******
予告通り、ベイセルは帰ってこない。
夕飯を食べてシャワーを浴びて、部屋でくつろいでいると来客を告げられた。
こんな時間に……?
「やぁ! 夜分にごめんね? 今日探査魔法ってのを聞いてね」
やってきたのは魔術研究所のエルンストだった。ベイセルの従兄弟だからこんな時間でも気安く訪ねて来られるのか。
「こっちこそこんな格好でごめん」
「服なんてどうでもいいよ! それよりさ……」
こちらの寝巻きはほぼバスローブだ。袖はゆったりとした筒型で、前合わせを腰帯で抑えている。通常のお客様なら着替えるべきだけど、執事のヴァルターもメイド頭のカマリエラもエルンストならそのままで問題ないと言うので、ストールを羽織っただけで出迎えた。
2人にとってエルンストは親戚の子供みたいな感じかな?
探査魔法のやり方と、他に新しい魔法はないか聞かれた。何が新しいか分からないけど、伝声管魔法はロニーが喜んでたから新しいと思う。長くなりそうだと思っていたら1時間程度でヴァルターから時間切れを言い渡され、エルンストは帰って行った。
「ヴァルター、ありがとう」
「いいえ、こんな時間にお通しして申し訳ありませんでした」
「オレが良いって言ったんだから気にしないで。それにエルンストが研究してくれるとみんなの役に立つんでしょう?」
「はい。私もそう考えました」
それに明日研究所に行くと言っても聞かなかっただろうしね。ああいうタイプは我慢させると暴走すると思う。
ヴァルターにおやすみを言って部屋に戻り、ネタになりそうな魔法について考えながら眠った。
オレが通う治療院は正式には王立総合治療院といって、主に貴族や王宮職員、兵士達が行く治療院。エルンストのいる王立魔法研究所とともに王宮に隣接している。ベイセルがいるのは軍務局で王宮の西側1階に将官達と事務方が勤める部屋がある。軍人は国境や関所に散らばっているので王宮にいる人数は少ないらしい。
王宮内で連絡を取り合う必要があるときは配達人が書類を届ける。急ぎや遠隔地の場合は通信魔法が使われるけど、通信魔法では短いメッセージしか送れないらしい。どんな方法なんだろう? 興味あるな。
今日も朝から治療院へ来ています。姫様の傷はすっかり治り、日焼け対策さえしておけば素顔を晒しても大丈夫になっている。本人からも侍女からもとても感謝された。
そして次は探査魔法の実験!
病人に魔力を注いで違和感を探る。
もちろん自己申告もしてもらうけど恥ずかしい場所だと言ってくれないじゃない?
高位の文官さん、痔でね。
座るのが辛いとか痛いとか言ってて腰痛かと思ったら痔でした。普通の傷薬で良いけど塗る前に水魔法で出した綺麗な水でお尻を洗ってから薬を塗ってくださいね~。
と言いながら実地で塗ってあげた。
中に塗る時、ものすごく緊張してるのが分かって楽しくなっちゃったけど、これは治療だから。イケオジのイイトコロ探しちゃダメだから!
オレがタチだったら危なかったな。
いやいや、まじめにやりましょう。
お尻の中は浄化でもいいのでは? って言われたけど菌をイメージできないと難しそうだからやっぱり水の方がいいと思う。
両方試してみてもいいけど。
今日も1人、結石を発見。
後で聞いたら結構多いらしい。
飲食物のせいか種族的特徴か、何か原因はありそうだけどそこまで研究できないなぁ。
外傷は傷を綺麗に洗って薬を塗れば済むので簡単。骨折は治療士にまっすぐにしてもらって、塗り薬だけをオレが担当。包帯も治療士にやってもらう。風邪に似た病気はこれといった魔力の反応がないので判断がつかなかった。
探査魔法を10人にかけ、その人たちの治療をしたら魔力切れの症状が出始めたので終了した。
「お疲れ様」
「ふぃぃ……。結石と骨折は分かりやすいけど、風邪は分からないな。あと毒も分かりにくい……」
「そうなのですね」
「うん。多分飲んだ直後はもっと分かりやすいと思うんだけど、消化吸収されると散らばっちゃうみたい」
患者の中に毒を盛られた人がいたのだ。
全身の倦怠感、食欲不振、肌荒れ、そして頭痛。毒の種類は判らないけど、うっすらと口の中から食道、胃にかけて反応したから何か飲んだんだろうな、と考えてナゼール院長に告げたらこの症状が出る毒を数種類出してくれたので反応を確認した。
今回は入手しやすいメジャーな毒で蓄積型だったからピンときたらしい。すぐにサンプルを出してくれて、反応の確認ができた。
犯人探しは治療院の仕事ではないので、治療院では中和剤を処方する。患者さんは貴族院調査局ってところに依頼して調査してもらうようだ。
……貴族院調査局、って所にも探査魔法教えなきゃダメかな? 院長かエルンストから教えてくれない?
「教え方を教えてもらったのでこちらで対応することはできます。毒や病気に対しての魔力の反応はこちらで経験して覚えていくことにしますよ。タカラには緊急時だけ薬を塗りにきてもらいたい」
「緊急時だけでいいの?」
「つい今しがた、王命が下りました」
王命!?
酷い怪我は怖いからありがたいけど、なんで?
「王から緊急時に魔力が枯渇していると困ると言われました」
「あー、お姫様の顔の傷みたいな緊急時?」
「えぇ、王妃様たっての願いらしいです」
なるほど。
お肌の手入れとかしたら効果もありそうだけど、キリがなくなりそうだよね。オレの力は治癒が早まるだけ! お肌のはりと潤いには効果なし!! ということにしておこう。
若返りの効果があったら狙われそうだからね。
探査魔法は有用性が高いので広まっていくだろうけど、女性の秘密(服の中の詰め物とか)がバレると揉め事になりそうだからオレが広めたとか知られたくないなぁ。あ、男だってシークレットブーツとか履いてる?
まぁ、危険がなければ黙認されるだろうし、犯人を泳がせる場合もあるだろうからしばらくは公にはしないかもなぁ。
なんて考えていたらこの日、家に帰る頃になって探査魔法のことは口外しないよう通達がきたという。怪我や病気を調べるのには有用だけどこっそりとやるように、って。
「え! それ、オレの力じゃ効かなかったってことじゃない? オレが診ていいの?」
「傷も一瞬で治るわけではございません。病ならば尚更、時がかかるのでしょう」
そう言われてここにはエコーもCTもMRIもないことを思い出した。
エコー……!?
魔力による探査を人の体にしたら何か分かるかな?
患者のところに行って痛む場所を詳しく聞けば、腹痛というより腰だった。これ、尿管結石じゃね?
身体の中に余分な物がないか、魔力を注いでみる。すると痛がっている部分に反応があった。
やっぱり硬いものがある。
土魔法で土を耕すように、小さな塊を砕いてみた。
「痛みが! 痛みがなくなりました!!」
「やっぱり尿管結石だったのか」
「にょうかん……? それは何ですか?」
喜ぶ患者にもう一晩安静にするよう言ってナゼール院長と院長室に行った。そこで人の体内に石ができることがあるのと、できやすい場所、それを砕けば痛みは無くなり、尿と一緒に排泄されて完治することを話した。
「魔力を注いで対象を見つけ、土魔法で砕くとは、考えもしなかった治療法です。いや、素晴らしい!!」
「たまたま知っていただけですよ」
オレもやったことがあって七転八倒したからね。あれは痛かった。
「それよりこの魔力による探査が誰でもできるようになるといいですよね」
「それは一体どのように……」
音の反響を言葉で説明し、洗面器を使って波紋の説明をすると理解できたようで、ナゼール院長はさっそくオレと一緒に実践を始めた。
骨折している人は骨の凸凹が分かりやすい。
「病気や怪我によって魔力の反射も違うでしょうから、研究を、重ねましょう」
「はい! 経験の積み重ねが大切ですよね」
治療を手伝いながら探査魔法の研究(?)を続けることになった。魔術研究所にも連絡しなきゃね。
*******
予告通り、ベイセルは帰ってこない。
夕飯を食べてシャワーを浴びて、部屋でくつろいでいると来客を告げられた。
こんな時間に……?
「やぁ! 夜分にごめんね? 今日探査魔法ってのを聞いてね」
やってきたのは魔術研究所のエルンストだった。ベイセルの従兄弟だからこんな時間でも気安く訪ねて来られるのか。
「こっちこそこんな格好でごめん」
「服なんてどうでもいいよ! それよりさ……」
こちらの寝巻きはほぼバスローブだ。袖はゆったりとした筒型で、前合わせを腰帯で抑えている。通常のお客様なら着替えるべきだけど、執事のヴァルターもメイド頭のカマリエラもエルンストならそのままで問題ないと言うので、ストールを羽織っただけで出迎えた。
2人にとってエルンストは親戚の子供みたいな感じかな?
探査魔法のやり方と、他に新しい魔法はないか聞かれた。何が新しいか分からないけど、伝声管魔法はロニーが喜んでたから新しいと思う。長くなりそうだと思っていたら1時間程度でヴァルターから時間切れを言い渡され、エルンストは帰って行った。
「ヴァルター、ありがとう」
「いいえ、こんな時間にお通しして申し訳ありませんでした」
「オレが良いって言ったんだから気にしないで。それにエルンストが研究してくれるとみんなの役に立つんでしょう?」
「はい。私もそう考えました」
それに明日研究所に行くと言っても聞かなかっただろうしね。ああいうタイプは我慢させると暴走すると思う。
ヴァルターにおやすみを言って部屋に戻り、ネタになりそうな魔法について考えながら眠った。
オレが通う治療院は正式には王立総合治療院といって、主に貴族や王宮職員、兵士達が行く治療院。エルンストのいる王立魔法研究所とともに王宮に隣接している。ベイセルがいるのは軍務局で王宮の西側1階に将官達と事務方が勤める部屋がある。軍人は国境や関所に散らばっているので王宮にいる人数は少ないらしい。
王宮内で連絡を取り合う必要があるときは配達人が書類を届ける。急ぎや遠隔地の場合は通信魔法が使われるけど、通信魔法では短いメッセージしか送れないらしい。どんな方法なんだろう? 興味あるな。
今日も朝から治療院へ来ています。姫様の傷はすっかり治り、日焼け対策さえしておけば素顔を晒しても大丈夫になっている。本人からも侍女からもとても感謝された。
そして次は探査魔法の実験!
病人に魔力を注いで違和感を探る。
もちろん自己申告もしてもらうけど恥ずかしい場所だと言ってくれないじゃない?
高位の文官さん、痔でね。
座るのが辛いとか痛いとか言ってて腰痛かと思ったら痔でした。普通の傷薬で良いけど塗る前に水魔法で出した綺麗な水でお尻を洗ってから薬を塗ってくださいね~。
と言いながら実地で塗ってあげた。
中に塗る時、ものすごく緊張してるのが分かって楽しくなっちゃったけど、これは治療だから。イケオジのイイトコロ探しちゃダメだから!
オレがタチだったら危なかったな。
いやいや、まじめにやりましょう。
お尻の中は浄化でもいいのでは? って言われたけど菌をイメージできないと難しそうだからやっぱり水の方がいいと思う。
両方試してみてもいいけど。
今日も1人、結石を発見。
後で聞いたら結構多いらしい。
飲食物のせいか種族的特徴か、何か原因はありそうだけどそこまで研究できないなぁ。
外傷は傷を綺麗に洗って薬を塗れば済むので簡単。骨折は治療士にまっすぐにしてもらって、塗り薬だけをオレが担当。包帯も治療士にやってもらう。風邪に似た病気はこれといった魔力の反応がないので判断がつかなかった。
探査魔法を10人にかけ、その人たちの治療をしたら魔力切れの症状が出始めたので終了した。
「お疲れ様」
「ふぃぃ……。結石と骨折は分かりやすいけど、風邪は分からないな。あと毒も分かりにくい……」
「そうなのですね」
「うん。多分飲んだ直後はもっと分かりやすいと思うんだけど、消化吸収されると散らばっちゃうみたい」
患者の中に毒を盛られた人がいたのだ。
全身の倦怠感、食欲不振、肌荒れ、そして頭痛。毒の種類は判らないけど、うっすらと口の中から食道、胃にかけて反応したから何か飲んだんだろうな、と考えてナゼール院長に告げたらこの症状が出る毒を数種類出してくれたので反応を確認した。
今回は入手しやすいメジャーな毒で蓄積型だったからピンときたらしい。すぐにサンプルを出してくれて、反応の確認ができた。
犯人探しは治療院の仕事ではないので、治療院では中和剤を処方する。患者さんは貴族院調査局ってところに依頼して調査してもらうようだ。
……貴族院調査局、って所にも探査魔法教えなきゃダメかな? 院長かエルンストから教えてくれない?
「教え方を教えてもらったのでこちらで対応することはできます。毒や病気に対しての魔力の反応はこちらで経験して覚えていくことにしますよ。タカラには緊急時だけ薬を塗りにきてもらいたい」
「緊急時だけでいいの?」
「つい今しがた、王命が下りました」
王命!?
酷い怪我は怖いからありがたいけど、なんで?
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「あー、お姫様の顔の傷みたいな緊急時?」
「えぇ、王妃様たっての願いらしいです」
なるほど。
お肌の手入れとかしたら効果もありそうだけど、キリがなくなりそうだよね。オレの力は治癒が早まるだけ! お肌のはりと潤いには効果なし!! ということにしておこう。
若返りの効果があったら狙われそうだからね。
探査魔法は有用性が高いので広まっていくだろうけど、女性の秘密(服の中の詰め物とか)がバレると揉め事になりそうだからオレが広めたとか知られたくないなぁ。あ、男だってシークレットブーツとか履いてる?
まぁ、危険がなければ黙認されるだろうし、犯人を泳がせる場合もあるだろうからしばらくは公にはしないかもなぁ。
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