【不定期更新】ラッキースケベに憧れて 〜明るく楽しい異世界生活〜

香月ミツほ

文字の大きさ
26 / 66

26.薬湯が流通しない訳

執事のヴァルターに先導されてベイセルの後ろから客間に入ると、お客さんが立ち上がったようだ。オレはベイセルの真後ろにいるので、全く見えない。

「ご無沙汰いたしております。フェルンストレーム師団長閣下におかれましては……」
「モーゼス、その口上は言わないと済まないのか?」
「仕事だろ。……ん? そちらは?」

モーゼス……?

「あぁ、こっちはタカラ。あー、私の恋人だ」
「……さきほどはどうも」
「もう会ってたのか?」

オレはついさっき露店を見て回ってたときに会ったこと、この人がレーチェの知り合いだったので紹介されたことを話した。

「好みがベイセルじゃあ、俺に靡かないのも道理だな」
「顔を隠して声をかけてきたら警戒するのが当たり前でしょう?」
「いや、大抵は好意的だぞ」
「口調も全然違うし」
「あれは営業用」

ニヤリと笑ってどかりと座る。大仰に足を組んでそっくり返る姿はワイルドだ。そう言えばフェイスベールをしていない。褐色肌に黒髪の巻毛、瞳はオリーブ色で細い目、薄い唇がシャープで顔立ちは整っている。

だけど、どこまでも胡散臭い。

お茶を飲みながら話を聞く。
オレは警戒を解いてないから2人掛けのソファでベイセルにピッタリくっついて座っているけどね! モーゼスは向かい側、3人掛けのソファの真ん中に1人で座っている。

「タカラ、モーゼスは海路を利用した情報屋だ。リンホウも探ってもらっていた」
「おい、聞かせていいのか?」
「タカラは関係者だ」

そう言ってくれるのは嬉しいけど、まだまだこちらの常識を知らないよ? それに痛いの嫌だから拷問されたらペラペラ喋っちゃうと思うし。

「影の護衛がついてる。拷問なんかさせない」
「影の護衛! なにそれかっこいい!!」
「……気が抜けるな」

能天気でごめんなさい?

モーゼスの報告によると、例の香木はリンホウの魔術師長が手配したもので、トラソタルという国で採れるものらしい。かぶれた人にはあの香木を少量入れた媚薬が普通より効くらしく、手駒に使えそうな人を探してたんじゃないか、って。……ちょっと不安。

そういえば木の粉末ってことはおがクズで、そんなのが入った水でお尻洗ったら傷つくよねー、とか考えてたんだけど、『香木』って名前ながら乾燥させた樹液を加工した粉だったので、水に溶けるんだって。

ずっと気になってたことが分かってスッキリ!!

「王妃がアンタにご執心らしいな」
「迷惑な話だ」

あぁ、ベイセルを性的に味わいたかったみたいだもんね。隷属もさせたかったみたいだし。そうか、ベイセルのことが好きなのか。

あげないよ!!

「王妃があんなにアホっぽくて、あの国は大丈夫なの?」
「お? あの王妃を知ってんのか。あの女はな、阿呆だが美貌で家が筆頭侯爵家。しかも貴族では珍しい好きものなんだ。清楚貞淑を尊ぶ貴族令嬢には不可能な閨の技術で国王を籠絡している。まぁ、他の令嬢だって陰ではどうだか分からんがな」
「それ、王様は耐性つけとかないと危ないやつ!!」
「だが王は王妃に守られる結果になってる」

王妃が自分の地位を守るために王様を狙う人達を遮断してるのか。閨以外は近衛が守っている。国は大丈夫なの?

有力貴族が財産を出し渋るので大きな戦はできず、小競り合いばかりだからあまり疲弊していないという。ベイセルが行ってたのも小競り合いで、和平交渉もいつも通り。それでも戦えばそれなりに疲弊すると思うんだけどなぁ。

案外、豊かな国なのか。

後はオレとは関係ない部分だから、と部屋に戻されたので久しぶりに文字の書き取りをしてベイセルを待った。

そう言えばユピピアのトルスティ公子殿下に手紙を書く約束したんだった。
……オレから書くべき?
届いてから返事をすればいい?

悩む。

程なくしてモーゼスが帰り、ベイセルといちゃいちゃして眠る。寝る前に少量の薬湯を飲んでおくと朝の目覚めがスッキリすることが分かった。大発見!!

この粉薬、味にクセがあるせいで輸入されてないらしいけど、オレのために入れて欲しいなぁ。ちょっと粉っぽくて土みたいな香りだけど、高麗人参に似てる。あと体育倉庫の匂いもする。体育倉庫の匂いはたぶん、ライン引き用の消石灰。

美味しくはないけど許容範囲です。



*******



翌日、研究所に行く。

薬湯のおかげでいちゃいちゃしたにも関わらず早起きできたのでベイセルと一緒の馬車。朝からデート気分~!

そして研究所に着くと、珍しくベイセルの従兄弟で研究所所長のエルンストがいなかった。住み着いてるかと思ってたんだけど、たまにはちゃんと家に帰るんだね。

「あぁ、モーゼスさんて人が来たので所長は2~3日お休みっす」
「モーゼスとエルンストって仲良いの?」
「ご存知だったんですか? えぇ、まぁ……、そうですね」

歯切れが悪いけど仲はいいらしい。
勝手にお茶を淹れてあげると、ジョシュアはちゃんとお礼を言って飲んだ。

「ぶーーーーっ!!」
「うわっ! 汚な!! なんだよ」
「これ、何を入れたんすか! 不味いっす! めっちゃ不味いっす!!」
「ユピピアで買った滋養強壮薬。良く効くよね」
「鬼だ……、鬼がいる……!」
「そんなに?」

癖がある、とは聞いてるけどオレは大丈夫なのになぁ。
アレか。ダメな人と全く気にならない人がいる人工甘味料みたいなものか。あれ、後味で口の中がカオカオする、って言っても誰にも伝わらなかったんだよなぁ。誰か共感してくれ!!

いや、こっちの世界に甘味料なんてなかったわ。

オレには分からない不味さがあるらしい。

「この粉薬、お土産のつもりだったのにダメかぁ。じゃあコレは?」
「あ! 松露酒っすね。高級品じゃないっすか」
「うん。少ししか買えなかったからエルンストには内緒ね?」
「天使!!」

鬼と天使て。
宗教観が謎だ。

いや、自動翻訳だから深く考えなくていいのか。

エルンストがいないので治療院へ行く。
この薬、治療院なら扱ってるのかな?



「こんにちは」
「おや、タカラ様。お元気でしたか?」
「はい。ちょっと国境に行ってたんでお土産を買ってきたんですが、不評で」
「不評ですか?」
「これです」

紙のような包みに小分けされた粉薬を見せると、ナゼール院長は苦笑いをした。

「良く効くのですが皆なかなか飲んでくれないんですよね」
「オレはお茶に入れて飲むんですけど、どうやって飲ませてます?」
「お茶に!? 大丈夫なのですか?」

逆に心配された!!

やっぱり味が悪いから輸入量は少なく、無理に飲ませると余計に具合の悪くなる人もいるらしい。糖衣錠はないのかな?

「丸薬にしたら飲めません?」
「丸薬ですか」

ただ丸めても昔の正◯丸みたいに飲めると思う。でも糖衣錠かカプセルにできたらもっと良いよね。

あ!
水飴で練ってみたらどうかな?

「ちょっと思いついたことがあるので帰ります!! 今度、試作品持ってきても良いですか?」
「えぇ、まぁ。ここには患者も来ますしね」

水飴作りについては誰に聞けばいいんだろう?とりあえず自作したやつ使えば良いか。

人に道を聞きながらベイセルの部屋に行き、先に帰ることを伝える。ベイセルは今日は帰れないらしいのでロニーには少しの間席を外してもらい、深い口づけを交わしてベイセルを補充した。

よし!!
丸薬作り、やるぞー!!
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

魔王(よしこ62歳)と勇者パーティ

歩人
ファンタジー
保育園を定年退職した田中よしこ(62歳・大阪)が目覚めると、異世界の魔王になっていた。討伐に来た勇者パーティは全員ボロボロの少年少女——よしこの目には、ごはんも食べていない、ろくに眠れていない「要保護児童」にしか映らない。「まずお手て洗おうね(^^)」から始まる、世界で一番やさしい魔王の物語。魔王軍の幹部も勇者も、みんなまとめて面倒を見る。だって元保育士やもん。剣でも魔法でもなく、「ちゃんと見てあげること」が最強の武器だった——ごはんと「えらいな」で世界を変える、おばちゃん魔王の子育てファンタジー。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。