【不定期更新】ラッキースケベに憧れて 〜明るく楽しい異世界生活〜

香月ミツほ

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29.砂糖はごちそう

「責任者……、って……」
「タカラ、よろしくね」
「よろしくお願いいたしますわ」

翌日、準備万端で迎えた水飴工房の責任者は。

「第二王子殿下……、ご無沙汰しております……?」
「あはははっ! 驚いた? 何しろ国営事業だからね。責任者は王か王妃か、王子か王子妃になるんだよ。僕のことはラーシュって呼んでね」

マジかー!!
まぁ、いい人そうだからいいか。それで隣の方は?

「タカラ、こちらは伯爵家の次女でぼくの婚約者のカロリーナだ。僕が代表で彼女が補佐をしてくれる」
「カロリーナ=エイデシュテットと申します。殿下共々、よろしくお願いいたします」
「タ、タカラ=カンバです。平民なので失礼があると思いますが、ご容赦ください」
「家名があるのに平民なのですか?」
「オ……、私のいた国には身分制度がなく、全ての国民に家名があります」
「まぁ……! それは……、遠くからいらしたのですね」

えぇ、そりゃあもう!!
行きたがってもたどり着けない遥かな世界です。

「まぁそんなわけでこちらの国で知られていない技術を少々知っているのです」
「その……、まずは味見をさせていただけませんか?」
「いいですけど、毒味は私がすればいいのですか?」
「毒味なんて不要です!!」

ふんすふんすと気合い充分な御令嬢。
甘いものが好きなのかな?

試しに作った水飴の最後のひと瓶を客間に持ってきてもらい、スプーンで掬って小皿に置く。ラーシュ殿下とカロリーナ様、それぞれの侍従・侍女・護衛達の分を用意して味見を勧めた。

「こっ! これは!!」
「砂糖とも蜂蜜とも、蜜松の露とも違うね」

蜜松の露というのは松露のことだろう。商品名かな?

「コクがあって美味しい~!!」
「気に入ってもらえてよかったです。生産が始まったら色々な食べ方も考えましょう」
「このままか、お茶か料理に入れるかじゃないの?」
「それでもいいですが、飴にしてはどうかと」

昨日、水分を抜いたら飴になったやつ。
そのまま飴としてオイルペーパーに包んで販売したら売れる気がするから。

「先のことはおいおい考えるとして、早速作りましょうか」
「「はい!!」」



庭の作業小屋は物置を改造したもの。6畳程度の小さな小屋で床は土間に板を敷き詰めた簡易的なフローリング。大人数が入れるように作ってないけど、1つの壁が観音開きの扉になっているので全開にして追加で板を並べた。

浄化魔法で綺麗にしてあるけど、ここで作った水飴では日持ちはしないだろう。

それはともかく、護衛以外はエプロンと三角巾を装着。オレの助手はセルヴォ……、の予定だったけど殿下達を見て逃げてしまったのでヴァルター。説明しながらだからやり方を知らなくても大丈夫!

まずは説明しながら麦芽を見せ、薬研で粉にする。少し体験してもらい、できている麦芽粉を見せる。

次に芋粥(?)を作ってもらうと、みんなが七輪に食いついた。でも野営ならキャンプ用の焚き火台の方がいいと思うので、後でベイセルに言っておこう。

そしてできた芋粥に麦芽粉を入れ、七輪の火を消して保温する。一晩(8時間)かけて澱粉を糖化させる。

まぁ、今朝から仕込んだものがあるんですけどね!

「これがだいたい一晩置いたものです」
「……ほんのり甘い?」
「あんまり甘くないね」

味見をした感想。
これを濾してアクを取りながら煮詰めるのだけど、アクが取れたらあとは魔法の出番です。

「この泡が苦味や渋みになるので丁寧に掬って、なくなったら火を止めて水魔法でこの液体の水分を減らします」
「水魔法で液体の水分を減らす?」
「はい。普通は空気中の水気を集めますよね? それを空気中ではなく、この液体から集めるのです」
「やらせてください!」

やる気満々な令嬢が、鍋に手を翳す。
すかさずコップを手渡す侍女。コップのなかに水が溜まり始め、ゆっくりと鍋の中の水位が下がっていった。

「はぁっ、はぁっ……、これはどれくらいで出来上がりですの?」
「かき混ぜてみて粘りが出たら、ですね」
「うぅ~、まだですわ」
「では僕が」

令嬢に代わり、王子が水気を取る。

オレがやるよりゆっくりだけど、何が違うんだろう? 水分子をイメージするといいんだけど。

「殿下、この中には目に見えないほど小さな砂糖と水が入っています。その砂糖の間をすり抜けて水がコップに飛び込んでくる様子を思い描いてください」
「砂糖の粒の間の水? ふむ、んん、こうか?」
「殿下! 素晴らしいです! 魔力量はいかがですか?」
「あぁ、少々疲れたが……。うん。できたようだね」

鍋の中にはしっかりとしたとろみのついた薄茶色の水飴。砂糖にするのは大変そうだから、今回はここまで。

「完成です」
「こう言っては何だが、案外簡単なんだな」
「はい。分かってしまえば簡単です。ですが、見つけるのが大変なのです。先人の知恵に感謝ですね」
「はい、この幸せをもたらしてくれた先人とタカラ様に感謝を!」

お嬢様、つまみ食いははしたないのでは?

鍋からスプーンで掬って味見してるけど、口をつけたスプーンはもう入れちゃダメですよ。

用意した容器に水飴を移し、少しだけ鍋に残して火にかける。沸騰させると割とすぐ金色に色づいた。それをヘラで集めてオイルペーパーに垂らして冷ますとべっこう飴のできあがり!

「こちらもお土産にお持ちください」

包む前のべっこう飴を見て、カロリーナ様は琥珀みたい、とうっとりと呟いた。



*******



「ヴァルターは知ってたの?」
「はい。旦那様から第二王子殿下がおいでになると聞いておりました」

ヴァルターに聞けばベイセルから聞いて知っていたらしい。言ってくれれば驚かなかったのに!

「ですがタカラ様はご立派にお相手なさっておられましたので、必要なかったかと存じます」
「まぁ、2人とも気さくでいい人たちだったけどさ」

セルヴォが逃げただけで。

「ひとまず王宮内に簡単な施設を作って経験を積むと仰っておりましたが、こちらはどうなさいますか?」
「自分でももう少しやりたいから、このままにしてもらっていい?」
「はい。もちろんでございます」

料理長もメイドさん達も甘いものは大歓迎してくれるので、もっと作ろう。

戻ってきたセルヴォに片付けを任せ、厨房に顔を出した。

「料理長、昨日の粉糖は試してみた?」
「おぉ、タカラ様。実は菓子に使うにはすぐに使い切ってしまいますし、料理に使うのはどうにも思い浮かばず。途方に暮れています」
「言われてみれば量が少ないね。甘い果物ある?」
「甘いものといえば果物ですからね。ありますよ」

桃、マンゴー、キウイによく似た果物が出てきたので、それらをカットして短時間だけ加熱し、ドライフルーツも入れて寒天もどきを溶かしたシロップに入れて固める。良さそうな銀のボウルがあって良かった。

冷やすのってどうすればいいだろう。
分子の動きを止める、なんて無理だから気化熱か。ボウルに濡らした布巾を巻いてしばらく風を送ると冷えてきた。

よし!

食べる直前に冷やそう。

「今から冷やすと魔力が足りなくなりそうだから、後でやるね」
「冷やす?」
「うん。水に濡らして風を送ると涼しくなるでしょ?」
「あぁ、そうですね。ですが食べ物を冷やすのですか?」

寒天もどきがあるのに冷たい食べ物はないの?
あ、煮凝りとかソースのとろみつけか。常春の国だから冷たい食べ物も美味しいと思うんだけど、冷蔵庫がないから冷たいデザートがないのか。冷蔵庫は構造を知らないから作れないなぁ。氷魔法ぷりーず!!

そうこうしている間にベイセルが帰ってきたので、夕食。食後に向けて着替えてくるベイセルを待ちながら部屋の隅でデザートを冷やすよー!

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