【不定期更新】ラッキースケベに憧れて 〜明るく楽しい異世界生活〜

香月ミツほ

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記憶喪失……?

2-1.漂流人間

「う……ぅ、こ、ここ……は?」
「おぉ、赤毛のダンナ、目ぇ覚ましたかい!」
「ほぁぁ、いがったなぁ! あぁ、ダンナぁ、怪我しとるけん、無理すんなぁ」
「んだんだ。でぇ、ダンナぁ名前はなんてんだ?」
「……名前。俺の、なまえ……?」
「あんだぁ、忘れちまったんかい?」
「俺、は……?」
「あんれまぁ、海神さまに思い出貸したんか。そのうち戻ってくるで、ゆっくり養生しなっせ」



*******



「船長~! 人が流されてる~。いい服っぽいし、助ける?」
「うん? あれか。拾ってみるか」
「りょーかいー!」

見張りが軽やかに海に飛び込み、救助用の大きな籠を使って引き上げた。そいつは、帝国の北西クヴァノス公国の奥方の服を着ていた。

「顔立ちはクヴァノスじゃねぇな」
「美人だし、金持ちに見染められたんすかね」
「まぁいい。医務室に運ぶから先に行ってジジイに言っとけ」
「着替えさせるんすね! 手伝います!!」
「手伝いなんざいらねえよ!」
「船長ずりぃ!」

笑いながら駆け出す見張りは船内で1番若いハリー。成人したてで人懐こく、可愛がられているがケンカっぱやくて落ち着きがない。

拾いものを抱いてその後をゆったり追えば、医務室では応急処置担当のジジイがベッドと呼ぶには簡素に過ぎる板張りの診察台の前で待っていた。

「おら、お前は出てろ」
「見守り~」
「いらん」
「ちぇーっ!」

拾いものを診察台に下ろしながらハリーを追い出し、ジジイに診せる。その間に俺は服を脱がせて体を拭……?

「男だな」
男嫁おとこよめだったのか」

横たえられ、濡れた服を脱がされた姿を2人で見下ろしながら呟いた。女にしては骨格がしっかりしていると思ったが、男としては華奢で筋肉もなく、平らな胸を見てなお、男だとは思わなかったのだが。

が、付くべきモノが付いていればさすがに理解するしかない。

下腹部には髪と同じ黒い下生えが白く滑らかな肌と使い込まれていないであろう局部を強調している。

「やべぇ……」
「ふっ、くくく、惚れたか?」

ジジイにニヤニヤされ、思わず顔を顰めたが流す。女しか相手にしてこなかった俺が男に惚れるはずはない。どれだけ艶かしくとも。

ジジイは俺を鼻で笑いながら手際良く男嫁の身体を確認し、水気を拭き取り、怪我人用の寝衣を着せる。軽い打撲の他に怪我はないようだった。

「気を失っているだけで幸い水もほとんど飲んでおらんようだ。病もなさそうだし、そのうち目を覚ますじゃろう」
「そうか。部屋は……、そうだな、俺の部屋でいいか」
「好きにしろ」

なんとなく船員達に見せるのはもったいなくて、シーツで包んで抱き上げる。意識のないまま身を委ねる男嫁を自室に運んでベッドに寝かせた。

何者なんだろうか。

服はクヴァノス公国の既婚女性のもの。
身につけた装飾品は耳飾りと、指輪。

耳飾りには赤い石。
指輪には見たことのない形に整えられた赤い石と黒い石が並ぶ。黒はこいつ本人で、赤が夫なのだろう。おそらく、婚姻の証。

なんで俺はイラついてんだ?

金持ちなら礼金がっぽりもらって終わりだ。既婚者だろうと未亡人だろうと関係ない。

……未亡人。

もし夫も共に流されて亡くなり、こいつが未亡人となっていれば、それなりの遺産を持つことになる、……か?

くだらねぇ。

悪いが装飾品は預からせてもらう。色を示すだけのモノは問題を引き寄せる場合もあるからだ、と心の中で言い訳をしながら自分らしくもねぇ妄想を振り払い、外の空気を吸おうと部屋を出た。



*******



うーん……。
見知らぬ天井、見知らぬ部屋、見知らぬベッドに見知らぬ服。しかもなんか揺れてる。

どうしてこうなった。

思い切って買ったエネマグラで充実の週末アナニーライフを堪能しようと下準備したところまでは覚えてる。気持ちよかったかどうか、そもそも使ったかどうか、記憶がない。

なんか髪も伸びてる……?

長めのショートカットだったのがセミロングになっている。こんなに伸ばしたらますます内定が遠のくと思うんだけど。こんなに伸びるのって1年以上かかるよな。なにかの事故で植物状態で就職逃したとかだったら辛過ぎる。

けどまぁ、しかたないか。

ギィ……

「お、起きたか」

イ、イケメンがいる!!
ダークブラウンの髪に鮮やかな海の色の瞳、生成りのシャツに茶色のベスト、すっと通った鼻筋にニヤリと笑うちょっと危険な香りが漂う口元。

かっこいい!!

あと数年したらどストライク過ぎてやばい!
今も将来性があり過ぎてやばい。
理想は30代だけどこのイケメンは20代半ばから後半か。

きゅんきゅんする!

「あの……、オレ……」
「あぁ、勝手に着替えさせて悪かった。海に流されていたところを救助したからずぶ濡れだったんだ。うちの船医に診せて大丈夫そうだったからここに運んだがな」
「海?」
「海だ。ここは俺の商船の船長室で、アンタは多分、河口付近で海に落ちたんだと思う。家まで送ろう」

家?
海に落ちた?

オレのアパートは海からは遠く、出かけた記憶もない。川は無いこともないが海まで流されたら生きていられない気がする。

うーん……。

「えぇと、ここがどの辺りか教えていただけますか?」
「ここか。ここはリンホウ王国の南の海域を西に進み、グバシュルヌ帝国に入ろうかという辺りだ」
「り、りんほう? ぐしゅ……?」

帝国とか聞いたことないんですが。

オレがアホだからじゃないよね?

「……日本て判ります? アメリカとかロシアとか」
「ニホン? アメリカ? ロシア?」

あかーん!!
これ絶対夢! 夢の異世界!!!!
異世界と言えば!!

「まっ、魔法は使えますか!?」
「この程度だが」

ベッドサイドの金属のコップにイケメンが手を翳すと、どこからともなく湧き出る水。

でもコップ半分にもならない。

「ま、魔法……、がない国から来ました……」
「は……?」

オレの顔はきっと蒼白だろう。
ちょっと見てみたい。
じゃなくて!!

「帰り方が分かりません」
「そうなのか? だがアンタが着ていた服はクヴァノス公国の既婚者のものだ。まさか拐われたのか?」
「………………?」

オレが着ていた服はその国の風習では嫁が着る服らしい。女装!?

「身分を示すために男嫁にも着せるから女装とも限らないがな」

身分とともにネコ宣言!?

いやそれよりも!

「オレ、結婚したってこと?」
「……じゃねぇの?」

覚えてない。
結婚指輪もしてないし、仮装かなんかか?

とにかく分からない事だらけなのでしばらくお世話になることにした。夢ならそのうち覚めるだろうし。

「置いてください何でもします!!」
「へぇ、何でも、ねぇ」

はぅあっ!!
なにそのエロかっこいい顔!
ふっくらしちゃうでしょうが!!

と、ここで気づいた新事実。
なんでオレ、ノーパンなの?



新しい下着がなかったからだそうで、次の港で買ってくれるって。夕方には着くらしいのであと2時間くらい。

それまでは診察してもらってしっかり休むように言われた。ノーパンで床掃除とかさせられなくて良かった。

まぁ、ゲイじゃないなら誰得だよね。



*******



港に到着し、買い物に行こうとしたけど着ていた服はまだじっとり濡れている。今着ているのは手術着というか検査着みたいで防御力よわよわ。借りるにしてもみんなガタイが良くて誰のを借りても彼シャツになってしまう。

サイズ的にまだまし、と一番若い船員ハリーの服を借りた。

成人したての18歳。それでもオレより厚みがある。ははは……。

いやそれよりもノーパンに直接履くにはズボンがゴワゴワ。

……我慢!!

でもゴワゴワ……。

ガマン!!

ゴワゴワ…………。

「ぶふっ! タカラ、なんでそんなに、ぶふふふっ!!」
「うっ、うるさいな! このズボンゴワゴワするんだから、仕方ないだろ!」
「それでクネクネしてんのか」
「あの柔肌ならしかたなかろう」

ハリーに笑われ、船長に呆れられ、じぃちゃん先生に納得された。

あらぬところがざりざりチクチクして、気になってまともに歩けない。仕方ないのでまずはハリーにひとっ走り、肌触り重視のお高いパンツを買ってきてもらいました。どうにか稼いで返すからね!
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